ベーシックインカム

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 158
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716795

作品紹介・あらすじ

遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカム。
未来の技術・制度が実現したとき、人々の胸に宿るのは希望か絶望か。
美しい謎を織り込みながら、来たるべき未来を描いたSF本格ミステリ短編集。


日本語を学ぶため、幼稚園で働くエレナ。暴力をふるう男の子の、ある“言葉"が気になって――(「言の葉の子ら」 第70回推理作家協会賞短編部門ノミネート作)

豪雪地帯に取り残された家族。春が来て救出されるが、父親だけが奇妙な遺体となっていた。(「存在しないゼロ」)

妻が突然失踪した。夫は理由を探るため、妻がハマっていたVRの怪談の世界に飛び込む。(「もう一度、君と」)

視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術の被験者に選ばれた。紫外線まで見えるようになった彼女が知る「真実」とは……(「目に見えない愛情」)

全国民に最低限の生活ができるお金を支給する政策・ベーシックインカム。お金目的の犯罪は減ると主張する教授の預金通帳が盗まれて――(「ベーシックインカム」)


【著者略歴】
井上真偽(いのうえ・まぎ)
神奈川県出身。東京大学卒業。
『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞してデビュー。
第2作『その可能性はすでに考えた』が、2016年度第16回本格ミステリ大賞の候補に選ばれる。
その続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』は、「2017本格ミステリ・ベスト10」の第1位となる。さらに「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい! 2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にもランクイン。2017年度第17回本格ミステリ大賞候補、「読者に勧める黄金の本格ミステリー」にも選ばれる。
同年、本作に収録されている「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。
2018年には『探偵が早すぎる』が滝藤賢一、広瀬アリス、水野美紀出演でドラマ化され話題となる。

感想・レビュー・書評

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  • 良質な短編集。従来の作者の小説よりも感情の機微などの表現が素敵で小説がうまいなぁと感じる。惜しむらくは装丁。でかでかとSFミステリを標榜し、書店員のお勧めと粗筋が書いており下品に感じる。読んだときの驚きが少し半減するから文庫化の際には変えてほしい。恐らく理系分野出身ではないかという作者からの未来への期待の優しいメッセージを感じる。

    言の葉の子ら、、、幼稚園の園児のちょっとした発言から隠された真実が分かるという、正統派の日常の謎。せっかくの大仕掛けがSFミステリとバレていることで台無しに。

    存在しないゼロ、、、豪雪地帯に取り残された家族、父親だけが片腕のない死体。哲学的で法月さんみたいでよい。ただこれもSFのくくりを知らないほうが楽しめる。

    もう一度、君と、、、VR怪談に没入する妻が突然失踪する話。これはすごい好きでした。真相までの期待感もあり、最終的にホロリとする良い話。

    目に見えない愛情、、、盲目の娘が人工視覚手術を受けることになり、そこで見える真実とは。これ多重解決型バカミスでよいです。温かみのあるいい話なんだけど、仮説でちょっと笑ってしまった。

    ベーシックインカム、、、研究所の盗難事件。これ、ベーシックインカムが事件に直接は関係していないのです。なぜこれを全体のタイトルにしたのだろう。正統派密室盗難物。登場人物が前の4作を書いたメタ設定かと思いきや、、、全体の伏線回収がなかなかよい。

  • 5つのSFミステリー短編集。どの作品も、現在すでに生み出されている最新技術が発達し、普及した10年くらい先の未来が舞台。そして、どんでん返しがラストに待ちかまえる本格的ミステリーの王道。さらに、最初の4つの短編を効果的に使った書き下ろしの第5話で締める。これぞエンターテイメント小説集だ。

    本書で取り上げられる人工知能や仮想現実など最新のテクノロジーは間違いなく社会を豊かにする。その一方で、感情や不器用さを持つ人間はそれに対応できるのかと、心配になる。技術と一緒に進化する人間がこれからは求められるのだ。

    進化できない人はベーシックインカムをもらって満足しているしかない。

  • 「言の葉の子ら」でガツンと洗礼を受ける。日本推理作家協会賞の候補作なのも頷けるすばらしい出来栄え。「存在しないゼロ」で出てきた「今の大人には解決方法が分からない、こんがらかった難しい問題は、もう子どもの世代に託すしかない」という意見は、劇場版『G-レコ I』のインタビューで富野由悠季監督も言ってた。それはそうと、もうちょっとミステリっぽいタイトルのほうが良かったんじゃないかなぁ。

  • ジャンルはSFミステリーとあるが、ミステリーが9割ほどで、SF要素は味付けにとどまっている。普段、ハードなSFを好んでいる読者にはSF要素が足りないと感じるかもしれない。トリックの種明かしのフェーズで、これから来たる新技術がもたらす社会の変動とそれに伴った人間の心情の変化が絡められている。短編集と見せかけた連作短編集でよくある、最後の短編でこれまでの短編を総まとめするという構造に見せかけて実はそうでは無いというのは、ひねりが効いていると感じた。ベーシックインカムの話はベーシックインカムに対する著者の主張が連なっていたが、トリックや、人物の動機にはあまり関係ないのでは?と思った。

  •  井上真偽さんの新刊は、これまでとはかなり毛色が異なる。SFミステリの短編集だという。ゴリゴリのSFはあまり得意ではないが、ミステリ作家・井上真偽の作品ならば、読んでみよう。

     全5編中、最初の4編は、それぞれ現代でも耳にするキーワードがテーマ。「言の葉の子ら」。日本語を学習中の保育士が、ある園児の異変を見抜いた。彼女にしかできない方法で。彼女の正体は漠然と予想はできたが、姿はかなり違っていた…。子供の方が順応しやすいのは、現代と同じか。

     「存在しないゼロ」。タイトルから内容は想像できまい。山間の豪雪地帯で起きた不可解な事件。背景には、未来世界ならではの理由があった。それは現代でも深刻な問題だが、このような技術の進歩は、人類にとって福音なのか否か。

     「もう一度、君と」。VR(Virtual Reality)という言葉が持て囃されたのはかなり前のことだが、技術は着実に進んでいる。いずれはここまで進むのだろうか。誰だって最初から自信などない。こればかりは、技術が解決してくれない。

     「目に見えない愛情」。人工視覚の実用化に目処が立ってきた世界。生まれつき目が見えない娘に、被験者になるチャンスが巡ってきた。何としても手術を受けさせたい。そのために、父はどうしたか。親心に現代も未来もない。

     最後にやや長い表題作「ベーシックインカム」。このキーワードは聞いたことがあるが、技術用語ではない。作家らしい男性と、恩師の教授の駆け引き。時代は現代のようでも未来のようでもあるが、本作中初めて本格ミステリらしい内容。

     推理そのものはアナログなのが、井上真偽らしい。注目すべきは動機だろう。AIによって多くの仕事がなくなると言われている。技術の進歩は、必ずしも幸福とは結び付かないかもしれない。しかし、流れを止めることはできない。

     環境保護を訴える機運も高まりつつある昨今。テクノロジーがもたらす未来に、夢や希望はあるか。でも、もはやスマホは手放せない。

  • 5つの完全実現可能な近未来の技術がこんな面白いSFミステリになるなんて!!
    おもしろい!おもしろいじゃないか!科学技術だのSFだのにあまり親しんでいないアタクシでも、めちゃくちゃ楽しんでしまったぞ。
    人工知能にニヤリとし、遺伝子工学にヒヤリとし、人工現実感にホッとし、人間強化にグッときて、ベーシックインカムにうならされる。
    理系全開なのに難しくない。まもなくやってくる近い未来に一番乗りした気分だ。

  • AIとか遺伝子操作などが当たり前の世の中の話。今はまだない技術が上手くミステリに絡まっていて面白かった。ベーシックインカムはその言葉自体知らなかったので、余計にだらだらと長い気がしたが、それまでの短編も前振りだったという…。

  • 久しぶりに良質のSF作品を読みました。

    短編ですが、ひとつひとつの完成度が非常に高く、文字を追うのが止められません。

    最後の作品「ベーシックインカム」を読むことでこの本が連作であったことを知る。

    かなり面白かった。他の作品もぜひ読んでみます。

  • 近未来の最先端技術をテーマにしたSFミステリ短編集。いつかはこんな時代が来るのかもしれません。そしてそれが神の恩恵であるのか、それとも悪魔の誘惑であるのか。誰にもわからないことかも……。
    お気に入りは「もう一度、君と」。リアルを追求したVRの物語。単なるエンターテインメントとして扱う分には面白そうだけれど。少しばかり危惧を感じなくもありません。が、こういう使い方もありなのかなあ……?
    そしてラストの表題作「ベーシックインカム」。もうひとつのバージョンの短編集も読んでみたい気がしました。果たして技術が希望になるのか絶望になるのか、それは現実でも同じことだし。どんな制度だって悪用されない保証はないというのがむしろ現実だと思えば。もうひとつの方がリアルかも?

  • 捻りの効いた近未来ミステリ短編集。最後、表題作の仕掛けも悪くない。「その可能性はすでに考えた」の悪い印象が一変した。

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著者プロフィール

井上 真偽(いのうえ まぎ)
神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
2017年刊行の『探偵が早すぎる』は2018年に滝藤賢一・広瀬アリス主演でテレビドラマ化された。

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