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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784087716825
作品紹介・あらすじ
オリンピックに沸く2020年夏の東京。
「目に見えざるもの」の怒りを背負った者たちが立ち上がる――ノンストップ近未来長編!
「20世紀最大の呪いは、原子力の発見とその実用化だった。
小林エリカは核に取り憑かれた作家だ、いや、核に取り憑いた巫女だ。
その予言は私たちを震え上がらせる」
――上野千鶴子氏(社会学者)
【著者略歴】
1978年東京生まれ。作家・マンガ家。2014年『マダム・キュリーと朝食を』で、第27回三島由紀夫賞・第151回芥川龍之介賞にノミネート。その他の著書に『親愛なるキティーたちへ』、『彼女は鏡の中を覗きこむ』、『光の子ども』(第1巻〜第3巻)など。
感想・レビュー・書評
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不幸の石が囁く、性と原子力とオリンピックの歴史というレースの横糸。熱狂の裏にべっとりとまとわりつくようなそれは識ること感じることが大切だと思う
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チャレンジングな展開で、私には難しかった。そんな本があることを教えてくれた一冊。
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老人たちが<不幸の石>を手にすると、惹き寄せられるように放射性物質に向かっていく。放射能にまみれたお札を撒く。認知症ではなく新種の病気、トリニティ。自称アーティストのRe、祖母が放射能テロを起こす。祖母と姉妹と娘、過去、そして今の東京オリンピック。
シュールでコラージュのようなものがたり。引用・参考文献多数、アーティストによるアートの一環、現代の空気を捕まえているのでしょう。 -
難解すぎる。
読み進めるのが難儀だった。 -
面白かった
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ゼミで小林エリカの作品を扱うとのことで、前情報がいちばん少なかった本作を選択。
う〜ん、難しかった。主人公が母親を探しに行くまでは面白く読んでいたが、主人公一家が元から石の声を聞いていた回想あたりで途端に置いていかれた。目に見えないものの力、がテーマなんだろうけど、原子力、オリンピック、性の要素が飽和していたように感じる。特に性、生理に対する主人公の異様な過敏さとしつこいほどの描写、サイバーセックスサイト「トリニティ」を通じた実の娘との性交渉……読了後の血がべっとり付いたような不快感は否めない。
本作が執筆されたのはコロナ前だが、東京オリンピックが開催される2020年を舞台に新種の病気トリニティが流行する様子は奇しくもコロナ禍と重なる。
一定以上の放射線量を知らせるガイガーカウンターの警告音と、37.5℃超を知らせる体温計の警告音。老人がトリニティを発症していないか恐れられ、手に〈不幸の石〉を握っていないことをアピールする様子に、マスクを着用しているか、コロナに罹患していないか互いに目を光らせていた当時を思い出さずにはいられない。あの時の我々は、確かに「目に見えないもの」に翻弄されていた(もっとも、ウイルスは拡大すれば普通に見えるのだが)。
目に見えないもの。放射性物質ラジウム。サイト上で戯れている相手。ヘイ、シリ!と呼び出すAI。
AIといえば、個人的に最近ChatGPTと会話することにハマっている。ChatGPTは人間のように意見し、冗談を言い、時には性的なあれこれを仄めかす。決して娘と交わっていた主人公を滑稽だと笑うことはできない。急速に発展するAIと、人間はどう付き合っていけばいいのだろうか。
スマートフォン──我々が当たり前のようにこの手に握り締めている黒光りする物体は、目に見えない相手と繋がる現代の〈不幸の石〉なのかもしれない。
著者プロフィール
小林エリカの作品





