- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716955
作品紹介・あらすじ
認知症になった親が
死を望んでいたら
あなたはどうしますか。
認知症の父の突然死。医師同士による、ある密約。
医師の兄と、弁護士の弟は、真相にたどり着けるのか。
楡周平史上、最大の問題作。
次に挑むテーマは“安楽死"
ある晩、内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。父の久が慶子の入浴を覗いていたというのだ。久の部屋へ行くと、妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていた。久が認知症だと確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることに。弁護士をしている弟の真也にも、事前指示書の存在を伝えた。父の長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。死因は心不全。しかし、あまりに急な久の死に、疑惑を抱く者もいて――。
【著者略歴】
楡周平(にれ・しゅうへい)
1957年、岩手県生まれ。米国系企業在職中の96年に書いた『Cの福音』がベストセラーとなり、翌年より作家業に専念する。ハードボイルド、ミステリーから時事問題を反映させた経済小説まで幅広く手がける。著書に「朝倉恭介」シリーズ、「有川崇」シリーズ、『再生巨流』『プラチナタウン』『修羅の宴』『レイク・クローバー』『象の墓場』『スリーパー』『ミッション建国』『砂の王宮』『ぷろぼの』『サリエルの命題』『鉄の楽園』等多数。
感想・レビュー・書評
-
前々から読んでみたかった楡さんの医療系の本。
ようやく図書館で借りれました。
待っている間に文庫本まで出てしまいました。
※終の盟約
https://booklog.jp/item/1/4087444201
今回のテーマは、認知症と介護と安楽死。
結構テーマが重くて、年配の人にとっては、
テーマが自分に重くのしかかってくるテーマで、
中々読もうという気にならない(読んだら読んだで苦しくなってくる)本かもしれません。
特に認知症と介護は、自分にもいつかのしかかってくるテーマで、
今は見て見ない振りをしていたテーマだと改めて感じました。
小説のストーリーとしては、
ちょっとこじつけ感があって、
いつもの楡さんのシャープさを感じ取れませんでしたが、
選定したテーマを通じて楡さんが問いたかった
社会問題は感じることができる一冊かと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
つい先日、安楽死が現実世界で起こりニュースを騒がせただけに、フィクションとはいえリアリティ抜群だった。哲学的な内容に傾きすぎず、小説として絶妙なバランスを保った作品。
-
安楽死についての話。
内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で飛び起きる。
父の久が慶子の入浴を覗いていたと妻は言う。
父の書斎には妻に似た裸婦と男女の性交が描かれた作品ばかりが多数あった。
認知症だと確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることに。弁護士をしている弟の真也にも、事前指示書の存在を伝えた。父の長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。死因は心不全。
あまりに急な久の死に、昭恵は疑心暗鬼になり友人に相談。
昭恵は、久の弟の、弁護士である文也の妻。
常に兄一家を羨んでいる。あの家には全く不幸というものが起こらない。
反対にこっちはオットは弁護士とはいえ人権派なので、持ち出しも多く、裕福とはいえない暮らしぶり。そして息子は、学者目指しで勉学を続けていたが、雇い止めになりそうになり、30歳目前に、医学部受験して合格する。
いつもお金お金、と…言い続けているので、嫌なキャラに描かれている。
でも昭恵をそういうふうに捉えるのは、やっぱり幸せな人生を歩めているのではないだろうか。
私は、昭恵にかなりの部分で同意する。
ここまでオットの儲けにならない人権派弁護士について責めたりしなかっただけ、素晴らしい。私ならきっと責めて、方向変換を迫る。
お金が全てではないが、無ければ最低ラインの生活だって送れない。
医者にかかることもできない。
親を施設に入れることも、子どもを大学に行かせるのも、何もかもお金が必要にできている。
この本は安楽死がメインになっているが、そもそもまだ日本では安楽死はできないし、スイスに行ってディグニタスで頼むにも、お金は必要である。
英語力も必要だけど。
認知症だけでなく、安楽死を望むには、本当にたくさんの理由があると思う。
人工透析はドル箱だから、腎臓移植は進まない、これが今の日本の医療を象徴する一言ではないか。
医者はお金を稼げる。元手がかかっているのもわかる。
けど日本全体の医療費に悩む今、削減を考える人はいないのだろうか。選挙でも保育園を声高に伝える人も多かったが、医療費削減の人っていたかな。
一番簡単に削減できるのは、望まない人の人生を閉じることではないのだろうか。
もちろん辛くとも生きたい人もいるでしょう。
その人は生きられるよう医療を受ければいいし、辛い人には死を選ぶ人生があってもいいと思う。
こんな水面下の密約がなくとも、みんなが等しく生も死も選べるようになってほしい。
私は難病認定は受けられない、完治しない持病があり、多額の医療費が負担になっている。それだけ払っても効果があるとも言い難い状態で、これを死ぬまで続けるのはキツいと思う。
ディグニタスに行かずとも、日本できちんと死を選ぶことのできる世の中になることを願ってます。
-
老い、認知症、死、残された家族、遺産、介護など。
複雑に幾重にも絡み合っているとみるか、主題が絞り切れないとみるかは読者次第。
自分は前者と感じた。
ラストは思いがけぬ展開に。切なさが残った。 -
尊厳死、命の終わり方を選ぶことは罪なのか?
尊厳を失ってまで、延命する必要があるのか?
この本では認知症からの精神の死をもって命を終えたいと願う医師が盟約により安楽死に至る。
医師で経済的にも恵まれた兄、弁護士で人がよくお金な執着のない真也は妻昭恵に見放されそうになっても、最後まで人がいい。
もし真也が盟約を遂行して亡くなったら昭恵はどんな思いをするのか…。
兄家族も良識ある人たち、お金は大事だけど、命も大事だけど、生き方って大事だと思った。 -
すごい作品に出会ってしまった。ぼくの中では間違いなく本年度ベスト10に入るだろう。患者本人の意思とは無関係に行われる延命措置。そもそも意思の疎通が不可能な認知症。高齢化社会、増え続ける医療費、尊厳死……。人は誰のために、なんのために生きているのか? 避けられない事態になったとき、自らの死に方を選べないのか? 誰もが思っているのに言い出せないタブーを、見事な作品に仕上げた手腕に感服した。
-
認知症の医者が、盟約により安楽死で亡くなる。安楽死は、金持ちの特権なのか。
-
どうせ誰しも同じように最期がくるのだから、その時はジタバタせず受け入れたいもんだ。
ただし、痛みのコントロールだけはしてもらいたい。 -
糞便は辛い。
-
昭恵の言葉、行動にハラハラ。真也はかなり優しい。
著者プロフィール
楡周平の作品





