- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716993
作品紹介・あらすじ
『桐島、部活やめるってよ』でのデビューから十年。森永製菓、ディオール、JT、JRA、アサヒビール、サッポロビール、資生堂、JA共済など、様々な企業からの原稿依頼があった。原稿枚数や登場人物、物語のシチュエーションなど、小説誌ではあまり例を見ないような制約、お題が与えられるなか、著者はどのように応えてきたのか!?
「キャラメルが登場する小説」「人生の相棒をテーマにする短編」「ウイスキーにまつわる小説」「20を題材にした小説」など、短編小説十四本、エッセイ六本。
普段は明かされることのない原稿依頼内容と、書き終えての自作解説も収録された一冊。十周年に合わせて依頼された新作小説も収録。
【はじめに(本文より)】
ある日、某人気ミュージシャンが、「企業や番組とのタイアップのために書き下ろした楽曲のみが収録されているアルバムを発売した」というニュースを見つけた。そのとき、私の頭の中を、大変がめつい考えがぱらぱらと過った。
自分も、企業とのタイアップや他の作品とコラボして書いた文章を根こそぎ集めれば、一冊分になるのではないか……!?
それを実現するのは、デビュー十周年のタイミングしかないのではないか……!?
後ろ暗い思考を駆け抜けていったがめつい座流星群は、その後も輝きを失わず、私の頭の中でちかちか光り続けた。その結果完成したのが、この本でございます。
ただ、先述したように、作品をそのままずらりとコレクションしただけではあまりに詐欺めいているので、それぞれ、【(1)どんな発注を受けて書いた作品なのかを提示(テーマ、枚数など)】→【(2)作品】→【(3)発注にどう応えたのか、答え合わせ】という順番で掲載すれば、全体の構造として(主に私が)より楽しめるのではないか、と考えた。この一冊を読み終えたころには、皆さまにも、タイアップ作品二十本ノックをやり終えた感覚を味わっていただけることだろう。そもそも味わいたいかどうかは別にして。
(中略)
ごちゃごちゃ書いたが、いろいろ書いたのにキャンペーン終了と共に葬られちゃうのはもったいない! という私のがめつさが生んだ一冊であることは間違いない。それでは、お楽しみくださいませ。
【著者略歴】
朝井リョウ(あさい・リョウ)
1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。
他の小説作品に『チア男子!!』、『星やどりの声』、『もういちど生まれる』、『少女は卒業しない』、『スペードの3』、『武道館』、『世にも奇妙な君物語』、『ままならないから私とあなた』、『何様』、『死にがいを求めて生きているの』、『どうしても生きてる』、エッセイ集に『時をかけるゆとり』、『風と共にゆとりぬ』がある。
感想・レビュー・書評
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短編が得意ではない私にとって
中盤からなかなかの苦行でした…
一編一編は面白いんですが
入り込むのに時間がかかるタイプなので
ノってきた!と思ったら終わってしまうので
それがとても残念でした
朝井さんは、
個人的にエッセイがとても好きで
各章ごとに裏話として
エッセイ的な要素があったので
そこが面白かったです(^^)
なかなか分厚く読み応えがありました
ちょっとした空き時間に読むと
いいのかもしれません詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朝井さんが10年の間に企業から依頼されたり有名漫画等とコラボしたりと条件を提示された中で書かれた短編&エッセイ集。発注内容に対してどう対応したのか本編を読んだ後に著者自身の言い訳と言う名の感想戦に突入する形式が楽しい。なんだかんだとちゃんと求められている内容で朝井さんらしい話になっているのはやはりプロは流石だな、と関心してしまう。森永キャラメルパッケージの文字数247文字指定って!「タイムリミット」「告白の物語」「胸元の魔法」あと「アイアムアヒーロー」全部は読んでないけど「十七歳の繭」が好み。最後の「贋作」は新作だけあって別格。「額縁にされる」苦しさが的確に迫ってきて苦い。
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いろんな発注に対してのコメント付きで、どんな視点でストーリーを考えつくのかわかりやすかった。
その商品なりを知らなくてもストーリーとして面白く、後味も比較的さっぱり。
個人的には最後の話だけ朝井リョウっぽいちょっとだけざらざらした読後感。
謙遜のラインって難しいよなぁと… -
企業とのタイアップ作品集。
デビュー10周年本で、「テーマや枚数指定があると逆に燃える」朝井リョウに、お題と比較しつつお見事と心の中で拍手をしながら読みました。
朝井リョウの文章は、すーっと頭に浮かびイメージしやすく清涼感溢れる美しい表現をされていて、それでいて内容には毎回考えさせられる読後感。
癒され刺激されています。
アサヒビール「ウイスキーっておもしろい」を伝えられる小説
『蜜柑ひとつぶん外れて』
いつもの朝井ワールドが好き。
年上の大人彼氏あるあるな話です。
この話を読むと、ウイスキーのハードルを少し下げて、しかも楽しんで美味しく頂ける気持ちになります。
資生堂「◯◯物語」というタイトルの小説
『きっとあなたも騙される、告白の物語』
はい、騙されました。
ミステリーではよく使われるトリック。
朝井リョウ作品で味わえるとは面白い。ちょっとサイテー感もまた、面白い。
集英社 十周年記念本を成立させるための「受賞」をテーマにした新作
『贋作』
大トリですが、やはり一番心にずしんとくるお話。
人間って、考えすぎて、一周まわって、愚かだ。
誰も間違ってないモヤモヤした人間性を綺麗に纏めてしかも「贋作」に二重の意味を持たせる事も忘れないこれぞ、朝井リョウというような作品。
読後は毎回色々考えちゃうんですよね。
息抜きのつもりで選んだ本だったので、自身のエッセイの部分では笑い、癒されましたがやはり最後は考えてしまって息抜けない。笑
『正欲』そろそろ購入しようかな。 -
朝井リョウさんの10周年記念、各社より発注いただいた分の短編集。
発注内容、本文、感想のセットで20編。メーカー、出版社等、依頼されたもの、内容も様々。
最近の「どうしても生きてる」を感じさせる、窮屈さ、苦しさを描いたものから、朝井さん自信を感じさせる明るく楽しい内容のものもあり、メリハリある、楽しめる内容。ずっと暗いものばかりだと嫌になっちゃうし、盛り沢山でよし。中でもこち亀りょうさんとコラボのものとか、アイアムアヒーローの世界のものは面白く読めた。自分自身の感想を書いているところも楽しく読めた、いいね。小説も気になるところですが、朝井さんの人柄が強く出るエッセイ等思いをストレートに語るものは非常に楽しめる、次が待ち遠しい。 -
企業とのタイアップや、他の作品とのコラボ作品を集めた本。
依頼内容と、作品を完成させての感想戦つきなのが、おもしろい。
キャッチフレーズの挿入が必須で、PR色の強い発注から、キーワードはいれず、さりげないモチーフのひとつにすることで浮かび上がらせようとする発注まで、さまざま。
感想戦は、作家自身による創作秘話。
発注条件にどうこたえようとしたのか、創意工夫の過程はなかなか明かされないもの。
ユーモアのある語り口もたのしかった。
タイアップは、キャンペーンが終われば消えてしまい、残りにくいもの。
こうやってまとめて読めるのは、いい企画。 -
競作の案件に関しては
○○先生のが素晴らしくて
恥ずかしかった・・・というコメントが
朝井先生らしくって 分かるわかる~~
と言いたくなります
同じ縛りで鮮やかな短編を見ると
やられた~~~って思いますよね
これ なんで思いつかなかったんだ
と壁で頭を打ちたくなってそうです -
朝井リョウひとりアンソロジー本?!
小説あり!エッセイあり!コラムあり!!
「発注を受けて書いた作品たち」というただ1つのテーマで集められたテイストバラバラ作品の1冊。
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「ば、ぶ、分厚い…!!表紙からすると、コメディ小説…??」とおもって開いてみたところ、朝井リョウさんが企業などから発注を受けて書いた“おしこと”作品集でした。
依頼相手が違えば発注テーマ、発注文字数もバラバラなため、作品ごとのテイストもバラバラに。
つまり連作短編集でもなく、エッセイ集でもなく、摩訶不思議な本に仕上がっているのが、こちらの本なのです。
こんなに分厚いので、読みきれるか?とおもわれた方もいるとおもいますが、大丈夫!
ひとつひとつの依頼が独立しており、作品もバラバラなため、好きなところから読んで好きなところでひと休みできます。
その分、作品によっては好みがわかれる…という点もあり含めて、この本の魅力かもしれません。
朝井リョウさんといえばエッセイ「時をかけるゆとり」がもうイチオシなのですが、本書はエッセイよりも小説のほうが「好きだなあ」と感じるものが多かったです。
特にアサヒビールさん発注のウイスキー小説「蜜柑ひとつぶん外れて」と、サッポロビールさん発注エーデルピルスの小説「あの日のダイヤル」が、ぎゅっときました。
自分の好きな朝井リョウポイントを確認するのにも、本書はうってつけかも?しれませんね。
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若手人気作家、朝井リョウ。彼が原作の映画は見たことがあったのだが、そういえば作品をきちんと読んだことがない。本書の書評をどこかで目にして、おもしろそうかと手に取ってみた。
若手というけれども、作家生活10周年になるのだそうで、それを記念したような1冊である。
人気作家ともなれば、いろんなところから仕事の依頼が舞い込む。企業の広告となるような短い創作やエッセイ、他の番組や作品とタイアップした小品などという企画もある。
一般に「お仕事小説」といえば、何かしらの職業に就く人が悩んだり躓いたり時には喜んだりしながら「仕事」と向き合う様を描く小説だが、職業作家ともなれば、「仕事」として小説を書くことを求められるわけである。こうして書かれる小説は、ある意味、本当の「お仕事小説」と言えなくもない。
作家・朝井、10年のキャリアの中で、そんな仕事も数多くこなしてきた。そこで考えた。ミュージシャンならそんな作品をまとめてアルバムを売り出すこともあるわけで、作家だってそういう風にしてもよくない・・・?
それでできたのがこの1冊。
企業や作品とのタイアップによって生まれた小説やエッセイ、20作品をまとめたものである。
だが、この人のサービス精神は、発表時のままのものを提供するだけでは終わらなかった。「発注内容(テーマや枚数など)」→「実際の作品」→「発注にどのように答えたかの裏話、感想戦」という構成になっているのが本書の特徴的なところである。
依頼元は、菓子メーカーやビール会社、タバコ会社、出版社、競馬会、化粧品会社、商店街とさまざまである。
例えば企業の広告であれば、あからさまにある商品を推すわけではなくても、やはり何となく好感を持ってもらわなくてはならないわけである。発注内容は、「ほっとできる」とか「さわやか」とか「人生の相棒をイメージできる」とか、かなり曖昧であるが、そこからイメージを膨らませて作品に仕上げるのが職業作家の腕の見せ所といったところか。
制約のあるところから、あるいは異質のものとの出会いが、作家自身も気づかなかった自らの内なるものを揺さぶることもあるのだろう。
また、各作品を振り返っての「感想戦」も結構シニカルで、短文であるのに「ふーん、作家というのはこういうことを考えているのか」と感心させたり笑ったりさせるのはさすがといったところか。
というわけで、全体にこの構成はなかなかおもしろいのだが。
肝心の作品にあまりピンとくるものがなかった。
・・・と言っては身も蓋もないのだが。
何だろうか、観察眼の鋭さとか今っぽさは端々に感じさせるのだが、物語としてフックしてくるものがあまりない。それは読み手である自分の年齢のせいかもしれないが、それ以前に多分、感性の違いのせいというか、自分が物語に求めているものとこの作家さんが追求しているものがずれているような気がする。
もう1つ、商品の広告としては、斜め上を行き過ぎていて、今一つはまっているのか微妙な感じのものが結構あるように思う。
・・・いや、これも発注元が納得されているのなら大きなお世話なのだが。
多分、ものすごくサービス精神のある人なんだろうと思う。あれこれと工夫されているのも見え隠れする。けれども、例えば、アサヒビールのラベルに注目した作品は、いくら何でもちょっと無理があると思う。
おそらく、この人の持ち味は、人に好感を持たせるほのぼの系の(広告向きな?)物語より、もう少し「えぐる」感じの小説なのではないかな、と読んでいて思ったり。
いずれにしても、朝井リョウの最初の1冊に最適な作品ではなかったのかもしれない。
いや、まぁそれなりには楽しく読んだのだが。
著者プロフィール
朝井リョウの作品





