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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784087717020
作品紹介・あらすじ
ホテル〈アルカディア〉支配人のひとり娘・プルデンシアは、敷地のはずれにあるコテージに理由不明のまま閉じこもっていた。投宿していた7名の芸術家が同情を寄せ、元気づけ外に誘い出すべく、コテージ前で自作の物語を順番に語りだした。突然、本から脱け出した挿絵が「別にお邪魔はしないさ」と部屋に住みつづける「本の挿絵」、何千年も前から上へと伸び続けるタワーマンションの街を調査するも、1万階を過ぎたあたりで食糧が尽きてくる「チママンダの街」など7つのテーマに沿った21の不思議な物語。この朗読会は80年たった今も伝説として語り続けられ、廃墟と化したホテル〈アルカディア〉には聖地巡礼のようにして、芸術家たちのファンが何人も訪れる。80年前、あの朗読会の後、7名の芸術家たちはどうしたのか、そしてひとり娘のプルデンシアはどうなったのか。
創元SF短編賞を受賞し、そのぶっ飛んだシチュエーションと巧みな文体で、全国の目利き書店員さんを驚倒させた作家による、全国民注目の初の長編小説。
【著者略歴】
石川宗生(いしかわ・むねお)
1984年、千葉県生まれ。オハイオ・ウェスリアン大学天体物理学部卒業。約3年間の世界放浪、メキシコ・グアテマラでのスペイン語留学など経て、翻訳者として活動。2016年、短編「吉田同名」で第7回創元SF短編賞を受賞。2018年、受賞作を含む短編集『半分世界』を刊行。
感想・レビュー・書評
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[1]引きこもったプルデンシアに読み聞かせようと彼女が好きだという『デカメロン』的な不思議で小さな物語の集積に、七人の芸術家たちが夢中になった。それがこの本になった。
[2]最初のうち、どこか神経を逆なでするような話が多く、さて、あなたはどこまで読むことができるでしょうという感じやったけど、だんだんクセになって最後まであっさり読めてしまった。
[3]ごく最近読んだオルガ・トカルチェフの『逃亡派』を思い出した。文中にオルガの名前があったりしたのでいくらか意識はしているのかも?
■簡単なメモ
プルテンシア像の構成要素をかき集めだしたのである。(p.013)
ある夜、本の挿絵がやってきた。(p.059)
いまも変わってはいるけれど変わるのが当たり前だったからつまりは変わっていない。(p.097)
「そう。彼にとっては、この世界を理解可能な範囲におさめるための儀式みたいなものなのよ」(p.099)
あのときのエミリは「恋愛ってたいてい興味を持つことから始まるじゃない」と言っていた。「だからへんちくりんな人ほど惹きつけられちゃうのよ」(p.101)
「A、轢く、B、轢かないって。わたしはその二者択一でずっとBを選択し続けて、みんなの命を救ってるの。でも、ほかのひとは結果的にBを選択しているだけで、選択肢を持ってない。その差は大きいと思うわ」(p.180)
静寂はいつだって完璧にはなれない。(p.191)
言葉が増えれば増えるだけ世界が広がっていく(p.193)
「壊れる余地があるだけましだよ。まだ壊れてないってことだからね」(p.195)
なぜ掌編なのか。その答えは専門家によりけりで、長編を書く根気がないから、心の大きさがその程度だから、世の物語全般のほうがくどくど長ったらしいのだ、云々。(p.210)
人はみずから運命の糸のほうに寄っていくのではないか(p.253)
「わたしはあらゆるエピローグの総体であり、ここから出たとたんあらゆる物語は終わりを見ます」(p.337) -
長期休みのとろとろした空気感の中で読むのにぴったり。
でも「恥辱」は人間滅べって思った -
【所在】図・3F開架
【請求記号】913.6||IS
【OPACへのリンク】
https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/455885 -
短編集でもあるが、大きな流れとして見れば長編小説でもある。石川宗生の前作「半分世界」の短編とは違って、扱う短編の数も多いし、内容の振り幅がでかい。結末の受け止め方は読書次第としているところが良い。なによりも装丁が素晴らしい。
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想像したこともない世界観に浸れます。
ある人がいて、その人が紙になってどこかに飛んでっちゃった、みたいな。 -
世界文学的なほら話の集合体(ほめ言葉)。ほらのクオリティが高く楽しめる。ドゥマゴ文学賞受賞作。
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【所蔵館】
総合図書館中百舌鳥
大阪府立大学図書館OPACへ↓
https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000940779
著者プロフィール
石川宗生の作品





