透明な夜の香り

著者 :
  • 集英社
4.24
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本棚登録 : 973
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717037

作品紹介・あらすじ

香りは、永遠に記憶される。きみの命が終わるまで。

元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。
その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人が次々訪れる。一香は朔の近くにいるうちに、彼の天才であるがゆえの「孤独」に気づきはじめていた――。
「香り」にまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。


【著者略歴】
千早茜(ちはや・あかね)
1979年、北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。翌年、同作にて泉鏡花文学賞を受賞。13年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞。同年に『あとかた』、14年に『男ともだち』でそれぞれ直木賞候補となる。その他の著書に『正しい女たち』『犬も食わない』(クリープハイプ・尾崎世界観との共著)『わるい食べもの』『神様の暇つぶし』『さんかく』など。

感想・レビュー・書評

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  • ほんとうに美しかった。

    仕事に通えなくなり半年。ほぼ引きこもり状態の一香は、とある洋館で家事手伝い兼助手として働くことになった。そこには嗅覚が異常なほど発達した朔がおり、特殊な依頼を受けていた。

    鮮やかな色彩と多種多様の匂い、ハーブを使った料理など、繊細な美しさがつまった一冊。

  • 装丁にぞくぞくする。美しく怪しく読み手を誘う。
    ある香りをかいで、忘れていた何かがふと胸の奥に湧き上がってくることがある。
    記憶という言葉では言い表せない、「何か」であったり、つかめそうでつかめない、「何か」であったり。
    顧客の希望通りの香りを作り出す調香師小川朔。名前も素敵だ。「朔」。
    人よりもはるかに多くの匂いをかぎ分けてしまう、人よりも深く匂いに気付いてしまう、そして匂いで人の秘密にも気づいてしまう、そんな才能(といっていいのかどうか)を持つ朔と出会うことで再生していく一香。
    ヒトよりも多くの刺激を受け取ってしまうということは、ヒトよりも敏感であるということで、ヒトと世界の見え方が違うということで、それはもう考えただけで生きづらい人生だろうと思う。

    朔に寄り添うようにそれでいて一定の距離を保つ幼馴染の新城。二人は聖と邪のような、静と動のような、プラスとマイナスのような、混じり合っているようでけっして溶け合わない、不思議な関係。
    そこに現れたお手伝い兼助手の一香。
    誰にも言えない、自分でも認めたくない秘密を抱えて死んだように生きていた一香が加わり、一本の線が角のある三角形になり、不思議な安定感を持ち始める。それはとても心地よい場になるはずだったのに…
    千早さんの小説には甘さと切なさとトゲがある。そして言葉から色と匂いが沸き立つ。今作は特にそう。
    しかし、なぜに人はこんなにも「香り」に惹かれるのか。「香り」の魅力に酔いしれるべし。

  • 小説すばるの中でもとても好きだったお話。単行本が出たら絶対買おうと決めていた。
    文字でしか見えないのに香り立つかのような表現と綺麗な文章だった。とても読みやすい。あと読んでいるとお腹が空く…華美ではないのになんて贅沢な食事なんだ。
    短絡的だけどこのお話に影響されてアロマデフューザーを買ってしまった…朔さんの作るような香りは体験できないだろうけど。

    タイトルを変えるとは思ってなかったので、単行本発売をずっと待ってて「朔の香り」が全然引っかからないのはそういうことか…としばらくしてから知った。
    連載中の内容と結構変わるもんですね。このお話がすごく好きだったので連載当時の内容を割と隅から隅まで覚えていて、会話のちょっとしたところも変わっているのが新鮮だった。

    一香がそう呼ぶせいか、どうしても朔さんにはさん付けして呼びたくなる。朔さんと一香の間に新城がいて良いバランスを取っているように感じた。
    棚に並んでいる香料瓶のようになりたいという一香の気持ち、とてもエモい。(語彙力…)
    誰かの一番になりたいという真っ直ぐな気持ちではなく、一香らしい控えめな、でも願望の強さが滲むところが好き。
    本当のことを友達にも肉親にさえも言えない一香が、全く違うところで関係を結んだ相手にそんな気持ちを抱くのは何故か共感できてしまうし、羨ましいとも思う。

    一香視点で話が進んでいくので、朔さんの気持ちの方も知りたいところ。
    自分を恐れる時の匂いなんて分かってしまったら傷つくどころの話じゃない。だからそれが来る前に突き放すというのも間違っている気もするけど、朔さんが初めて不器用に見えた。そんな経験がないのだから不器用で当然だ。
    執着と愛着の違い、朔さんは線を超えてしまうのを恐れているが時間の問題ではないかな。あとは一香がこの先、朔さんとどう付き合っていくか。
    でも一香が嘘をついたところで朔さんは許してしまうんじゃないかと思う。許す前に追求やら尋問やらしそうな人ではあるが、既に一香は朔にとって特別な人になったのだから、自分が気づかないうちに僅かでも変化していくんじゃないだろうか。相手に好意を抱くというのはそういうことじゃないかな。

    タイトルは朔と一香の二人を表しているような前のタイトルの方が好きだったんだけど、恋愛色をだいぶ薄めたせいか(連載中もそんな色はほぼ皆無だったが)こちらの方が今のお話には合っているような気もする。
    結末が恋として終わらなくても全然いいと思うのだけど、朔からほのかな恋の香りがするような終わり方がとても良かった。というか4章のラストで、薔薇色の空を眺める二人の会話がとても素敵で、この時点でもしかして?という気がしないでもない。
    「あなたがいなくなってから紅茶の味が違う。香りは変わらないのに」
    こんな素敵な告白ある?ってくらい胸が締め付けられた。友人としてでもきっと良い関係を築けるだろうな。
    短編集とかの番外編で続きを読みたい。今度「魚神」読んでみます。

  • なんか不思議な感じだった。
    リアリティは全くないんだけど、読んでるとその空間が浄化されるというか、香りをまとう気がする。

  • ここ数冊続いている表紙で気になった作品。

    何とも表しがたい、染み込んでくるような感覚。
    中心となる登場人物は3人で、そのどの人物にも細かな感情や人間味を思わせる想いを表現している訳では無い。その代わりと言わんばかりに、タイトルにもあるように、繊細な「香り」が充満する、そんな内容でした。

    自分には嗅いだ記憶のない、とても魅力的な香りや色彩で溢れ、それを想像しながら読みました。
    物語としての盛り上がりや驚きは少ないが、何故か飽きませんでした。それ程に、未知の、未体験の香りを「想像」することに夢中にさせられました。

    何か見て見ぬふりをしていて、逃げている事柄が自分にもあるのかもしれない。それは誰にでも当てはまる事で、何がきっかけで蘇るかはその時になって初めて分かる。
    そんな経験をしたときに、この作品のことを思い出すのだろうと思わさせられました。

  • ー記憶の中の香り、秘密の共有は甘美であり時に残酷。

    気になっていた本です。
    文庫本サイズしか基本的に買わないのに(置き場に困るから)本屋さんハシゴして取り寄せまでした本です。
    まず、この表紙とタイトルに惹かれ、帯で購入を決意しました(笑)

    匂いから様々なことを読み取り、そしてそれを「香り」として表現ができる天才的な調香師朔の元に、元書店員の一香が家事手伝いのアルバイトとして働き始める。
    亡き夫の香り、美しくなれる香り、誘拐事件の手がかりとなる香り、、、様々な香りを求めて依頼人がやってきます。
    依頼というよりも、朔と一香の不思議な関係に焦点は当てられています。
    透明な夜の香りというタイトル通り、たくさんの香りが本の中で出てきますが、色は透明で夜を連想させます。
    最後はどうなるかなぁ?!と思いました。

    誰かから聞いたのですが、香りってストレスを軽減させるのに1番時間をかけない方法らしいです✨
    そう考えると、香りの力ってすごいですよね、、
    香りの良い食べ物や飲み物も出てきて、素敵だなあと思いました。
    おすすめの本です。

  • カテゴリとしては、一言では言い難い作品でした。
    簡単なストーリーで言えば、あるきっかけで、引きこもりになった主人公が、スーパーで見つけたアルバイトの求人広告。半信半疑で行ってみると、そこは調香師が営む家。
    面接して採用されたが、その理由は、匂いが好きだったから。次々と来る客の依頼が来るごとに主人公の過去も明らかになっていきます。

    大人版の少女漫画を読んでいるようなストーリーでした。
    様々なジャンルのギリギリセーフなラインを渡り歩いている印象で、良い意味で平均的でした。少しでも突飛していると、恋愛小説に発展したり、官能小説にも化けたり、ミステリー小説はたまたBL小説にも発展できるかと思います。いわゆる匂わせ小説でした。
    おそらく、それぞれジャンルの得意な小説家が基本的なベースを基に書くと、色々化けると思います。
    文章は繊細で、ソムリエのように描写が多彩でした。
    匂いを文章で表現するのが巧みで、嗅覚だけでなく、視覚や味覚など色んな体の部分を刺激させてくれるので、頭の中で想像するのが楽しかったです。
    終始、明るく雰囲気ではなく、どんよりとした重たい空気感でしたが、最後は霧が晴れたかのような穏やかな終わり方にホッとしました。
    本を通して、匂いというものは奥深く、匂い越しに正直な自分を表していました。表面だけで自分を変えるのではなく、内面から良い匂いを発せるよう、正直に生きたいなと思いました。

  • 漆黒の夜に残る香りのようにひたひたと物語が進んでいく。
    複雑な家族環境の中で育った一香と、匂いですべてを読み取ってしまう調香師の朔。
    二人はお互いに静かに惹かれあっていくように思えるも、執着なのか愛着なのか悩む朔。

    香水に関わる部分、二人が抱える闇は透明感を含みつつも重い。
    でも、風景やハーブ、料理などの描写がとてもきれいで美味しそう。様々な良い匂いがしてくる。

    最後は二人の関係に光がさしたように思えた。
    後半は一気読みでした。

  • 香りで人は癒され、健康にもなれるような気がする。大好きな香りがあると安心感が保たれる。読了後澄んだ、透明の香りがした

  • ひさしぶりにすきな雰囲気の小説に出会えた

    読みながら香りがしてくるようだった
    イチカとサクさんのその後が気になります

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2019年 『夜に啼く鳥は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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