逆ソクラテス

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1899
レビュー : 118
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717044

作品紹介・あらすじ

惑わされるな。天地をひっくり返そうぜ。
伊坂幸太郎、作家生活20年目の真っ向勝負!

【著者略歴】
伊坂幸太郎(いさか・こうたろう)
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞(短編部門)、08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞・第21回山本周五郎賞を受賞。他の著書に『重力ピエロ』『終末のフール』『残り全部バケーション』『AX』『ホワイトラビット』『クジラアタマの王様』、阿部和重氏との合作『キャプテンサンダーボルト』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作の「逆ソクラテス」のところだけ、ネタバレしているので、これから読まれる方はお気をつけてください。

    「少年や少女、子供を主人公にする話を書くのは難しい」と作者の伊坂幸太郎さんはおっしゃっています。
    「こちらにその気がなくとも子供向けの本だと思われる可能性があります。懐古的な話や、教訓話、綺麗事に引き寄せられてしまうのは寂しいですし、かと言って、後味の悪い話にするのもあざとい気がします」ともおっしゃられています。

    この五編の子どもたちを主人公にした短編小説は、見事にその条件をクリアしていると思いました。

    例えば、私が一番、印象的だった「逆ソクラテス」。
    6年の4月に転校してきた安斎が僕たちに「久留米先生の先入観を崩してやろうよ」と言い出し、自分の判断がいつも正しいと思っている久留米先生を先人のソクラテスの逆だと言い、久留米から目の敵にされている、草壁という同級生をクラスの皆で持ち上げる作戦をいくつか用意します。
    作戦は大成功しますが、最後に胸がキュンとせつなくなる話でした。

    他の4話もおなじみの伊坂さんの会話劇が楽しかったり、面白いキャラクターの父兄が登場したりして、後味の悪い話はなかったです。

    何度か登場する、磯謙(イソケン)という小学校の先生は伊坂さんの小学校時代の先生の名前を借りているそうで、大事なことをいくつも教えてくれた方だそうです。

    私事で恐縮ですが、私にも恩師と呼ばせていただきたい先生がいますが、今年の年賀状に、ブクログの登録したことを書いたら「覗いてみようか」と返事をいただいたのでもしかしたら読んでくださっているかも(たぶんいないでしょう)しれません。
    私は子供の頃から転校が多くお世話になった先生の数も人一倍多いのですが、恩師と呼ばせていただけるのは、その先生だけなんです。他の先生もおそらく先生としていい先生はいらしたと思うのですが、個人的にまで特別お世話になったと思える先生はなかなかいないものです。

    この本で一番、印象に残った言葉は「相手によって態度を変えることほど、格好悪いことはない」です。
    そして、最後になりましたが、伊坂さんの人間を見る目はなんてあたたかいのだろうと、心打たれました。

  • 自粛長期戦、今この作品に出会えてよかった。

    この作品が山積みされた本屋さん。そのすぐ近くにちんまりと置かれた伊坂先生からのメッセージ「読者の皆さまへ」。この作品に対する思い、「大変な現実」を前にした時に作家としてできること、について記載されていて、そのメッセージも手に取って、他の単行本も数冊手に取って、人との間隔を空けて、レジへ並んだ。そうそう、単行本は通勤には非常に骨が折れるのですが、とりあえず自粛期間中は通勤気にしなくていいし、まとめて単行本を買ったのです。

    デビュー20周年となる今回の伊坂作品のテーマは、「先入観」と「逆転」。
    短編にも関わらず、勧善懲悪的な爽快感と、きれいな伏線回収はやはりお見事。
    また、短編集ではありますが、それぞれが少しずつ重なり合っている連作短編集です。

    爽快感で満たされる。いつも一気読みだ。
    伊坂作品の一気読みは、内容の面白さだけではなく、時間の経過という点でも言える。
    一つの作品の中に、瞬間の積み重ねが、詰まってる。瞬間の中での仕草、会話一つ一つの描写がとても丁寧で、緻密。
    ドラゴンボールに例えると、「ナメック星の爆発まであと5分!」と言っておきながら、そこから何話も続いていって、その5分が異様に長く、その中で何か奇跡が起きてほしい、あーもう5分経っちゃう、いやでもまだ終わってほしくない、むしろここで終わられたら困る、どうなるのどうなるの、そんな気持ちで結局ラストまでぐいぐい読まされる。ものすごいドキドキして、身体中の血液がごうごうと動き回り、それに伴って心臓も早鐘をうつ。その瞬間が終わるとゴールテープを切ったかのような爽快感と疾走感。そこで今まで呼吸が浅くなっていたことに気付かされる。

    今回は全編、小学生が主人公です。
    でもわたしが全編を通して好きなキャラクターは磯憲(先生)です。なのであとがきは感動ものでした。
    小学生の時に素敵な先生と巡り合うというのは、本当に素晴らしい体験だと思う。羨ましい。
    一番好きなお話は、「スロウではない」。ラストで思わず泣いてしまって。ちなみに、ラストが一番すっきりしたのは「非オプティマス」。

    最近はメンタリストDaiGoさんの動画ばかり見ているのですが、その中で、今回伊坂先生が敵として取り上げている、先入観や圧力で人を侮辱してくる人たちが結構出てくるんですね。わたしもよく被害に遭うので、動画を観ながら対策を勉強しているのですが。まさか伊坂作品でこうして出会うとは思っておりませんでした。普段から人の顔色ばかり窺っている、という人には、とてつもない爽快感と、少しの勇気をもらえます。カバーに記載されている「伊坂幸太郎史上、最高の読後感」。期待を裏切らないよ。ちょっと欝々としてきたこの自粛の日々に、これほどまでに気持ちを高めてくれる作品に出会えて、本当に幸せ。

    ※こちらのレビューは、noteにも掲載しております。(https://note.com/tattychannel/n/n055275c27e10

  • 5つの話からなる短編集。
    1話目の表題作を読み終わった時点で感動と興奮で震えた。
    思えば伊坂幸太郎さんの作品は、先入観を捨てて、自分の頭で考えろ。自分の目で物を見ろ。というメッセージが込められたものが多い。

    小学生から大人まで、その場で力を持つ者の意見に無責任に乗っかる人々の、その圧倒的な壁のような威圧力と顔のない暴力性に嫌悪感と閉塞感を感じた人は少なくないはすで、でもそこにどうやってヒビを入れたらいいのかわからず、あるいは抵抗することに疲れて、沈黙してしまった経験は、きっと多くの人に共通するものだろう。
    今作はそんな思いに唇を噛んだことのある人たちにとって間違いなくとても痛快で、帯文にもあるように最高の読後感を残してくれる傑作である。

    大人にはもちろんだが、小学校の高学年くらいの子にもぜひ読んでほしい。これから長い人生を生きる上で、きっと自分の心を守り支える強い防具となるはずの、素晴らしいメッセージがここにはあるから。
    そして、この本を読んで大人になる子どもたちが多ければ多いほど、この先の世の中、いじめや、大人からの理不尽な暴力で泣く人たちが少なくなっていくはずだから。

    ああ、感動と興奮のあまり普段と違う硬い文体になってしまいました。
    小学生が主人公だし、短編集なので子どもにも読みやすく、でも大人だからこそ沁みる部分もあって、本当にいい作品です。
    ラストの電器屋さんの涙に、私も泣きました。
    伊坂幸太郎さんの作品には、もう信頼感が半端ないです。

    表紙のjunaidaさんの絵も素晴らしく、装丁の美しさも際立っています。栞紐の色が学童帽と同じ黄色〜!とか、この紙質‼︎とか、私は装丁マニアではありませんが、やっぱり紙の本っていいなぁ、好きだなぁ、とうっとりしながら読みました。

    この本の感動を、多くの人と分かち合いたい!と強く思った一冊です。おすすめします!

    • かおりさん
      まことさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます❤︎
      伊坂幸太郎さん、いいですよね〜!私も大好きです。

      逆ソクラテス、読まれたらまこ...
      まことさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます❤︎
      伊坂幸太郎さん、いいですよね〜!私も大好きです。

      逆ソクラテス、読まれたらまことさんの感想もぜひお聞きしたいです。
      感動を分かち合いましょう!レビュー楽しみにお待ちしています。
      早く届きますように。
      2020/04/25
    • まことさん
      かおりさん♪再度、こんにちは!

      読了しました!
      よかったです(*^^*)
      伊坂さんの小説にはいろいろなタイプがありますが、こういう...
      かおりさん♪再度、こんにちは!

      読了しました!
      よかったです(*^^*)
      伊坂さんの小説にはいろいろなタイプがありますが、こういう少しほのぼのとした伊坂さんもいいですね。
      主人公は子供たちだけど、出てくる大人たちが、子供たちをさとす、決めのセリフには勇気をもらいました。
      あの、子供たちを、変質者から守ろうとするお母さん、最高!でした。
      2020/04/30
    • かおりさん
      まことさん、こんにちは^_^
      再びありがとうございます!
      逆ワシントンのお母さん、お姉ちゃんの教室での突然の演説もよかったですね。

      子ども...
      まことさん、こんにちは^_^
      再びありがとうございます!
      逆ワシントンのお母さん、お姉ちゃんの教室での突然の演説もよかったですね。

      子どものうちに、良い影響を与えてくれる大人に出会える人は幸福だな、と思います。
      すべての人にそんなチャンスがあるわけじゃないから、せめて良い本に出会えたらいいですよね。
      2020/04/30
  • 控えめに言ってもサイのコー!すっごく面白かった!!!
    この勢い、この展開、この読後感、まさに伊坂小説の真髄!!
    小学生が主人公の5つの物語。
    小さな世界で生きている彼らの毎日。大人から見ると、あるいは大人になった彼らから見ると「そんなこともあったっけ」ってぐらいの出来事かも知れない。
    でも、その時の、その時間の彼らにとってそれは、もう、とにかく毎日が大きな大きな事件たちなんだ。あ、いや、中にはホントの大事件もあったけど。
    世界は大人でできている。そんな中で自分の歩ける距離の中で生きる小学生たちのが一生懸命考えて、一生懸命立ち向かう。何に?そう、世界に!
    世界をひっくり返すのは、君たちだ!あぁ、もう、どの子たちも大好きだよ!
    まっすぐまっすぐ生きていけ!!

  • 伊坂さんの新作とのことで、即購入&読了。

    いやーーー、めちゃくちゃ面白かったぁぁぁぁーーーーー( ̄▽ ̄)

    読んでる時間、ずっと幸せでした( ´ ▽ ` )
    小説ってやっぱ楽しいなぁぁぁぁー(о´∀`о)

    終始笑いっぱなし、騙されっぱなし、ニヤニヤしっぱなし…
    そしてそれだけじゃなく、この先の自分の人生で大切にしたいなぁと思える言葉もあり。

    本作、伊坂さんの作品の良さが全て詰まっていると思います。

    お得意のエンタメ要素はもう増し増し盛り盛りです。
    巧みな構成・展開とウィットに富んだセリフ、そしてキャラクターの個性、やっぱり素敵ですねー。

    さらに、伊坂さん自身の人生哲学というか…
    そういったところも、今回の作品には表現されているのではないかと思いました。

    「デビュー20年目の真っ向勝負!」
    久々に帯に騙されなかったパターン( ̄∇ ̄)

    この感覚、久しぶりだなぁ…
    伊坂さんのファンで居続けて良かったなぁ…としみじみ(涙)

    またこのクラスの作品をバンバン読みたいなぁ…

    以下、それぞれの作品について。

    ●逆ソクラテス

    コレすんごい面白い。
    終始ニヤニヤです。
    面白フレーズも多数、特に「打点王氏」とかもう…(笑)
    「僕はそうは思わない」、すごく大切な言葉をもらった気がしました。
    たしかに、客観的な評価ができないものって、結局人によって感じ方が違うものだよなと。
    幼少期は自分も虐げられる側の人間だったので、けっこう入り込めたかも(笑)

    ●スロウではない

    こちらも軽快な文章、好きだなぁ…
    ドン・コルレオーネとのやり取り、めちゃおもろい。
    最終的なオチは「消せ」です。
    「足が遅い男子を馬鹿にする女子」とかも消されます(笑)
    由緒正しいデタラメ、素敵でした。

    ●非オプティマス

    人にとって重要なのは「評判」。
    人間として問われることは、法律・ルールブックには載っていないことが多い。
    他人に迷惑をかける人間は「自分たちだけでは楽しむ方法が思い付かない、可哀想な人」。
    伊坂さんの考え方が凝縮されている気がしました。
    個人的にはとても芯を食っている気がして…
    この先の自分の人生、そして子育てする上でも大切にしたい言葉だと思いました。

    ●アンスポーツマンライク

    熱いなぁ…スポーツ、バスケ(´∀`)
    スリリングな展開と、最初と最後のシーンのリンク、そしてアンスポまで繋がる展開…
    希望のある終わり方も含め、とても良い作品でした。
    実は「逆ワシントン」とリンクしてるところも最高です(*´꒳`*)

    ●逆ワシントン

    この話も面白い。
    正直者、真面目な人が得をする。
    個人的には「頼む教授、頼む自由研究」がツボに入って爆笑でした(笑)
    あと、なにせ前の話とのリンクが最高です。
    多少甘過ぎるぐらいのハッピーエンドが自分的には好きだなぁと。
    上手くいかないのは現実世界だけでもう十分( ´ ▽ ` )

    <印象に残った言葉>
    ・今まであちこちの学校に通ったけどさ、どこにでもいるんだよ。「それってダサい」とか、「これは恰好悪い」とか決めつけて偉そうにする奴が。で、そういう奴らに負けない方法があるんだよ。『僕はそうは思わない』この台詞。(P21、安斎)

    ・そしてその右手の拳部分には、これ見よがしに、包帯が巻かれている。(P46)

    ・打点王氏はチームの主軸として活躍し、充実した野球生活を送っていたため、心にも余裕もあったのだろうか、自ら執筆した子供向けの絵本を出版したばかりだった。(P48)

    ・先生、僕は。僕は、そうは、思いません(P59、草壁)

    ・お母さんは消さなくていいです(P75、司)

    ・ブタゴリラ君は、そんな綽名をみんなに許している時点で、寛大で、大物だよ。(P81、磯憲)

    ・申し訳ないが、あれは由緒正しい。正真正銘のでたらめだ(P91、磯憲)

    ・相手によって態度を変えることほど、恰好悪いことはない。相手が弱くて、力が通用しそうな時は、ビンタをするけれど、相手が屈強だったり、怖い人の子供だったら、ビンタはしない。そんなのは最低だし、危険だ(P159、久保先生)

    ・そういう意味では、一番重要なのは。評判だよ(P160、久保先生)

    ・そういう人に、君たちは困らされるかもしれない。迷惑をかけて面白がる人に君たちが、良くないよ、と言っても、彼らは変わらない。反省もしてくれないことが多い。だから君たちは心の中で、可哀想に、と思っておけばいい。この人は自分では楽しみが見つけられない人なんだ、と。(P161、久保先生)

    ・悪いことをすれば法律で罰せられる。スポーツのルールもそうだ。だけど、その法律やルールブックには載っていないこともたくさんある。法律には載らないような、ずるいことや意地悪なこともある。そしてね、人が試されることはだいたい、ルールブックに載っていない場面なんだ。(P161、久保先生)

    ・福生はにやけたまま、答えるために、すうっと息を吸った。(P168)

    ・もしアンスポーツマンライクファウルだったら、相手はフリースローが与えられた上で、さらにリスタートの権利がもらえる。そのことを僕は、男に伝えたくなった。(P227)

    ・はなはだ簡単ではありますが、これでわたしの掃除に代えさせていただきます(P235、母)

    ・子育ては初めてだし、何が正解なのかいつも分からないから、ほんと難しいよ。ただ少なくともお父さんは、自分が親に言われたり、やられたりして嫌だったことはやらないようにしているつもりなんだ。だから謙介も親になったら、お父さんたちの良かった部分は真似して、駄目だった部分はやめるんだぞ。そうすれば、ほら、だんだん完成形に近づいていくんじゃないか?(P246、父)

    ・頼むぞ〈教授〉、頼むぞ自由研究。(P251)

    ・さぞや素敵な方なんでしょうね(P270、母)

    ・違います。知りません(P275、家電量販店の店員)

    <内容(「Amazon」より)>
    敵は、先入観。世界をひっくり返せ! 伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負! 無上の短編5編(書き下ろし3編を含む)を収録。<収録作>「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」

  • 子どもを主人公にした5編のお話し

    あとがきにもあるように
    表現も確かで、懐古的、教訓的、綺麗ごとではなく、
    後味はすこぶるいいのです。
    さすが、伊坂幸太郎!です。

    誰にもあった子供時代、そして、今、
    考えさせてくれます。

    いい本を出してくださいました。

    ≪ くつがえせ 先入観が 敵なんだ ≫

  • 最新作ということで購入。

    「先入観」をテーマにした全5編の短編集です。共通しているのは、主人公は小学生。小学生なので、難しい言葉はないものの、読んでいると子供ではなく、大人っぽい雰囲気を醸し出しています。そのバランスが秀逸でした。正に「見た目はコドモ、頭脳はオトナ」でした。

    短編集ということで、一見バラバラの話なのですが、読み進めるうちに「あれ?この人ってもしかして?」と登場する人もいるので、その辺も楽しめました。
    子供だけでなく、大人もそうですが、今までの経験や知識だけで、初対面の人はこういう人だと決めつけてしまいます。
    実際接してみると、そうではなかったりということが多々あります。この作品でも各編の最後では、初めと終わりの印象では、ガラリと変わる人もいたので、面白かったです。

    個人的に好きだった章は、「スロウではない」でした。運動会を舞台に強い人と弱い人という優劣がありながらも、段々と崩れていく流れは、読んでいてスカッとしました。それだけでなく、相手の気持ちに寄り添う姿にユーモアを交えながら楽しむことができました。

    伊坂作品というと、地元宮城県の地名などが登場しますが、今回は特にありませんので、より身近に感じれるのではないかと思います。また、前作の「クジラアタマの王様」よりも読後感が良く、日常的で大きな盛り上がりはないながらも読み応えのある作品でした。

    小学生の思い出というと、喜怒哀楽の激しい印象的なことしか覚えていませんが、何年か後に同級生と会うことで、不思議と色んなことが思い出されます。
    年を重ねるにつれて、同級生と会うことは滅多になくなりましたが、もう一度会ってみようかなと思うようにさせてくれました。

  • 小学生の頃には気付けなかった、大人になったらわかる小さな世界の中の話。それぞれが必死に生きる中でそれぞれの正義がある。当時の自分は自分の正義100%で生きていたけれど、誰かにとって悪だったんだろうか?
    それなら今の自分はどう生きるか。
    伊坂幸太郎さんの小説はいつだってシュールでいつだって考えさせてくれる。今回は読み終わった後全ての章で爽やかさがあった。

  • どの話も抱きしめたくなるような、とても愛おしい感情を与えてくれるものでした。
    ほっこりする話とありきたりな言葉ではまとめることができない、帯通り「最高の読後感」だった。
    出てくる人みんなが魅力的であり、自分の心に訴えかけてくるものがあった。
    あの頃が愛おしくなるような切なくなるような、大切なものだったんじゃないかなと思わせてくれる。
    この本とは、高校生の時出逢いたかった。周りの目を気にして、悔しいことも押し殺していた過去の自分を勇気づけてくれるものだったんじゃないかなと思う。
    ここ数年で1番よかった。

  • 「逆ソクラテス」
    伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負!


    無上の短編5編(書き下ろし3編を含む)を収録。収録作は「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」。


    敵は先入観。世界をひっくり返せ!である。誰しも持つ先入観を小学生達が、あの手この手で覆してみせる。悪人も出てくるが、主人公達と恩師の掛け合いが軸なストーリーが多く、5編全体を通して穏やかな作品である。


    「逆ソクラテス」は2度目なのだけど、小学生にとっては絶対的な存在である教師の先入観をひっくり返そうとする様は痛快。昔に比べて今はとか言われるだろうが、今に比べて昔はと言われる面もあり、いつの時代も逆ソクラテスは存在するだろう。人は考える葦でなければならない。


    印象深いのは「スロウではない」である。伊坂幸太郎の作品でこのようなタイプはあんまり読んだことがない。志向としては含まれてないんだろうなと思っていた。その点で推しである。


    書き下ろしに関しては、らしさを感じさせる。既視感ある展開であれ、それが心地よくなってくるように仕上げてきたらそれは作者の勝ちだと思っているのだけど、一本勝ちである。「逆ワシントン」で纏める辺りも、ファンからしたら皆好きな締めかなと。


    因みに、磯憲と言う教師が度々登場する。伊坂幸太郎の小学生時代の担任の先生がモデルらしい。凄い良いこと言ってるのよ、磯憲。セリフは当然違うだろうけど、その先生は短編のモデルになったエピソードでは、モデルになるような話をしたに違いない。そう思うと今回の作品の生みの親はその先生であったりもする。


    さて、デビュー20年おめでとうございます。また新作待ってます。読みたくなるのよね、これが。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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