カケラ

著者 : 湊かなえ

• 集英社 (2020年5月14日発売)

感想・レビュー・書評

[おじょーさんの感想 · 2023年1月15日]

元ミス日本の美容外科医の橘久乃はある日幼馴染のカウンセリングの最中にデブで蔑まれていた同級生、横網八重子の娘が亡くなったという話を耳にする。体格は良かったが明るく運動神経も良く人気者で、母親の作るドーナツが大好きだった娘は何故突然自殺と思われる亡くなり方をしたのか。久乃は彼女の同級生や母親の同級生（つまり自分の同級生）担任教師等からの話を聞いていき、死の真相に迫る。語り手それぞれの立ち位置から見る彼女が段々立体的になっていき、語り手達の黒さも存分に堪能出来るのは流石の湊さん。一言も話さないのに久乃嫌な奴ー、絶対近くにいてほしくないわと思わせるのも上手い。良い人もいるのが救いか。ルッキズムに囚われるのは滑稽だがそれは人間の性だと突きつけられる。インタビュー形式で進んで久乃の胸の内はゼロなので最後まで何故久乃が彼女について調べているのかが不明なのがもやもや。

[まーさん。1733348番目の読書家さんの感想 · 2023年3月15日]

登場人物の独白で物語が進みます。
色々な視点でひとりの女子高生の死の謎を解いて行く。

心の美より容姿の美を尊重するルッキズムが根底にある話です。寂しい人間の空洞を埋めるカケラを求めて。

『いじりっていうのは、いじられた側に得がないと、そう呼んじゃいけないの』

美味しいドーナツを食べながら、今後も読書を楽しみたい。もちろん心の美を求めて。

[breadandbookさんの感想 · 2020年8月19日]

横網八重子の娘が自殺した。美容クリニックの医師・久乃は幼名馴染みとの会話で知らされる。久乃が馴染みのある人達に娘のことをインタビュー、真相を追及してゆく。
美容・美しさをテーマに書いたようですね。湊さんらしくわかりやすく際立たせて書いているのかな（あんまり真実味感じませんでした）。湊さんの物語を読んでて、新しい、ハッとするもの感じるものがなかったかなあ。一つ一つの感情はわかるんだけれど、医師がもう少し出てきてもいいと思うし、全体の輪郭が掴みづらいかなあ。スカッとしないまま終わる。期待を寄せすぎたかな。
ドーナッツの先に見えるもののとこ、しんみりきました。

[あかぴさんの感想 · 2023年7月13日]

女の子が何故自殺したのか、いろんな登場人物が複雑な感情をそれぞれが語り、ちょっと考えさせられるお話。
独特の表現で読みづらいかなって思いましたけど途中で慣れました。

皆さん感想は様々だと思いますが、あたしは切なく悲しく人間てヤツはよぉぉって感じで終わりました。
(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥｀)

[demukatsuさんの感想 · 2021年3月11日]

大勢の独白を総合して、ある結果に辿り着くお話し。人にはそれぞれ言い分があってどれも間違いではなく真実も一つではなく、湊かなえさんらしいストーリーでした。「あなたというカケラがぴったりはまる場所は、必ずあるから。」結論はこういうことかなー、私的にはそんなストーリーには思えなかったけど。支離滅裂な文(涙)

[凪紗さんの感想 · 2020年8月18日]

７人の独白という形をとっていますが
八重子が人間の本質を表していると思いました。

人の心は一面ではない。

[リンネさんの感想 · 2023年5月16日]

かつての同級生の娘が自殺、その真相を追うべく関係者に話をきく美容外科医。立場によって微妙に食い違う主張、皆が皆なにかしら汚い。小さい頃からチヤホヤされてきたこの美人医師がなんのために人々から話をきいているのか色々な解釈ができそう。同級生への罪滅ぼしなのか、高みから笑うためなのか。

[オパールさんの感想 · 2021年1月12日]

久しぶりの湊かなえさん。
この語り口調が凄く読書意欲をそそる。
どんどん読み進めてしまう。
こんなあからさまに目の前の人に悪く言えるのかと小気味よくなりながら。
インタビュアーの久乃が最後は関わってくるとは思ったけど、
思ってたほどでもなかった事がちょっと消化不良ではあったかな。
やっぱり子供の頃って見た目とか重要な問題なのよね・・・
それでもいいと思ってた有羽だったのに・・・

湊さんは見えない気持ちを書かれるのが本当に上手。

[鴨田さんの感想 · 2023年7月29日]

デブの女子高生が大量のドーナツに囲まれて自殺した。何故か？

という、シチュエーションパズルのような設定でスタートする。

いろんな人のインタビューが組み合わせられることで、最終的に真実が浮かび上がる。

母親の横網（綱ではないが渾名はヨコヅナ）八重子さんが小学校の時にいじめられた時の体重が64kg。自分が小4の時に全く同じような話し　があり、その時の男の子の体重も64kgだったのを思い出した。

横網さんが、親友のメグちゃんのお姉さん千佳さんの夫を結果的に（千佳さんが亡くなった後に）「略奪」する話が、夫、メグちゃん、千佳さんにとって全く違う話に見えていることに衝撃を受ける。千佳さんにとっての真実を吉良有羽ちゃんが知っていれば、決して自殺することはなかっただろう。

ところで、吉良　有羽（きら　ゆう）という名前は、海外だと、You, killer! と言っているようで、トラブルになりそうだ。

[mengziさんの感想 · 2023年5月14日]

美容整形外科の女医が、旧友の娘の死の真相に迫る心理ミステリー小説。
テーマがテーマなだけに内容は重く、自殺に対しては明確にこの人、という犯人が浮き彫りにはならないこともあり、モヤっと感が残ったので星は低め。

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』（『望郷』に収録）で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。