カケラ

著者 :
  • 集英社
3.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717167

作品紹介・あらすじ

美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久しぶりに訪ねてきた幼なじみから「やせたい」という相談を受ける。カウンセリングをしていると、小学校時代の同級生・横網八重子の思い出話になった。幼なじみいわく、八重子には娘がいて、その娘は、高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか――?
「美容整形」をテーマに、外見にまつわる自意識や、人の幸せのありかを見つめる、心理ミステリ長編。

【著者略歴】
湊かなえ(みなと かなえ)
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞、受賞作を収録した『告白』でデビュー。同作で09年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。18年『贖罪』がエドガー賞候補となる。その他の著書に『夜行観覧車』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『山女日記』『リバース』『未来』『落日』など多数。

感想・レビュー・書評

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  • 生まれながらの逸脱した美貌を持つ橘久乃が美容外科医の視点で思い出話に花を咲かせるインタビュー形式の物語。臨場感は無いが読み易い。
    これが後に、「ドーナツに囲まれて自殺したモデルみたいな美少女」という、初見だとどこかコメディ感じる謎の事件に繋がるのだが、いやぁ、、最近の著者の作品は拗れませんなぁ。真っ直ぐ真実に突き進んでいた事を認知できていなかったので、唐突な真相に私の身体は衝撃待機が出来ていなかった様です。残ったのは有羽ちゃんの心情を考えるとかわいそうで、かわいそうで、苦しくて堪らない。という感情。なるほど、
    「イヤミス」嫌な気持ちになるミステリー
    とはこういう事なのかーーーー。

    終始、久乃視点ではあるものの彼女のセリフ(?)は冒頭の「夜通し生激論」と末尾の「橘久乃講演会」の数ページのみだ。本書のほとんどは対象者が久乃に対して善意、時には悪意を剥き出しにしてマシンガントークを繰り広げる様なのでこれがまたなんとも薄気味が悪い。実際には久乃が相槌を打っているであろう描写はあるものの、取り憑かれたように話し続ける「対象者」達にどれも色んな種類の狂気を少なからず感じた。

    主人公の感情が読めない状態で進む物語は、新しい街に踏み込み右も左もわからずワクワクするあの感覚に似ており、それがとても楽しかった。自分が持った久乃への感情と、末尾の「橘久乃講演会」での久乃の心情のズレ。これこそが彼女が「ドーナツ自殺」を振り返った末に真に訴えたかった事なのやもしれない。

    と、頑張って纏めてみたのですがやっぱ内容がなぁ..、有羽ちゃん思い出すとダメ...苦しい...。つまり本書で得た教訓というか驚愕の事実というか、歓迎してないけど知ってしまった事は、
    【暗黒耐性は「かわいそう」には弱い】
    といった所だろうか。

    比較的短い作品であり最初こそ読みやすかったのだが、伏線集結の後半は
    「女性目線の人によって呼び名が変わるアレ」という安定の複雑さに、脳内修復追加工事が忙しく少し疲れてしまいました、無念。
    やり場の無い気持ちではありますが、無性にドーナツが食べたくなります、手作りのヤツ。ぐぬぬ...デブ活しよ...

  • ある少女の自殺。その自殺の背景とは。彼女をとりまく人たちが、一人語りをすることで徐々に浮かび上がってくる、少女の像。最後に明かされるその真相があまりにも衝撃すぎて、眠れなくなった。やっと眠れたのは朝方。外はようよう白くなりゆく。

    先日の王様のブランチで、ネタバレすれっすれで紹介されていた本作品。湊さんもリモートで出演されており、この作品についての想いを語っておられました。
    本中に何度も出てくる、ドーナツ。それは、真ん中が空洞になっているという珍しい形状から、比喩にも使われることが多い。ドーナツ化現象、とかね。この作品においても、ドーナツは「甘くて美味しい」以外の意味合いを持つ。王様のブランチで湊さんは「人間が誰かを見る時、その誰かの表面しか見ていない。中心の部分を見ていない。ドーナツはその象徴である」と、そうおっしゃっていた。

    「流浪の月」でもそうだったのだけれど、人は、一部の情報やその人の見た目から、勝手にイメージを切り貼りして、物事の、事件の全体像を作り上げてしまう。
    今回、こんな出だしから始まる。
    “田舎町に住む女の子が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。モデルみたいな美少女だとか。いや、わたしは学校一のデブだったと聞いたけど―”。
    作品が美容整形をテーマとしていることは帯を見ればわかる。なので読者に、「ははーん、きっと体型にコンプレックスを持った女の子が美容整形を行ったものの、完成したその見た目に納得がいかず、さらには罪悪感まで芽生えてしまって自殺を図ったのでは」と、そんなイメージを与える。いや、あくまでわたしがこの作品を手に取った瞬間の、安直なイメージであることを認める。にしても安直すぎる。

    そして本作品を読み終えたタイミングで、ビリー・アイリッシュの、ボディーシェイマー(わたしは初めて知った言葉でしたが、「他人の体を中傷する人」という意味だそうです)に対する「Not My Responsibility(私の責任ではない)」というメッセージ動画のことを知った。
    https://spur.hpplus.jp/culture/celebritynews/202005/28/EhUkhhA/
    こちらの記事には、動画だけでなく日本語訳もついているので、動画だけでなく歌詞の方も、是非見ていただきたい。
    この曲やメッセージが、本作品とまるっきし重なったわけでは、もちろんない。
    けれど、太っているというだけで「自分で自分のことを管理できない人」というレッテルを貼られ、なぜか見下されていい対象になることがある。それによって、太っている側は口を閉ざし、見下した側だけが饒舌になり、それは傍から見れば「太っている側が何も言えないのは見下した側の言っていることを否定しないからだ」ということになり、結局は見下した側の言っていることが事実となってしまう。
    そんな構造に、この曲はもの申してくれていて、作中に出てくる人に聞かせてあげることができたらな、とそんな風に思ったわけで。
    ただ、普段わたしたちが無意識にしている決めつけや視野狭窄を払拭してくれる、という点では「Not My Responsiblity」も「カケラ」もおんなじだ。

    本を読んでいると時折、こうした奇妙な偶然があったりして、ものすっっっごく刺激を受ける。
    そしてこんな風に、誰かに話したくなる。

  • 大変おもしろく読んだけど、エピローグがよくわかりませんでした…。

    ドーナツの中心の空洞の話。最も美味しいけど、食べることのできない部分。

    美容整形は、そのドーナツの中心を手に入れようとする行為なのかもしれない。
    僕は否定しないし、幸せになれるならすればいいと思う。

  • 語る人によって語られる人の人物像がまったく違う。
    他人の一面だけを見て、その人の全てを知った気になって語るのがいかに愚かか。
    そういう人に限ってやけに饒舌だし、聴く側も真にうけでしまいがち。
    そんな人たちの独りよがりな語りがひたすら繰り返される構成で、ちょっと嫌気がさしてしまった。

    エピローグ、もっとすごい大どんでん返しが来るかと期待しすぎてしまった。
    『リバース』みたいに、最後にぞぞぉ〜ってなるのかなと思っていたが、きれいにまとまっていて少し残念。

  • 美容外科医の久乃は、美しくマスコミにも時折登場するコメンテーターでもある。
    彼女の美容クリニックへ、痩せたい幼なじみが受診して、一人の少女、彼女達の同級生の義理娘の自殺を知る。少女は、揚げたてのドーナツに囲まれて亡くなっていた。
    久乃が、故郷の知人達に話を聞きとりながら、少女の自殺の真相を探っていく。
    久乃が自殺について調べてはじめるというところが唐突。各章、語り部は知人達。少女に関わることだけでなく、久乃自身への他人からの評価も語られる。
    自殺の真相を探す理由も多少わかってくる。ストーリーも思った以上に女性達の心理戦が込み入って面白い。周囲の評価からの逃避手段としての美容整形。それは、生き方へのきっかけであって、足りないものを埋めていくのは自分自身ですかね。
    エピローグでの久乃の感情は、読み取りにくい。揺らがない女性ってことで良いのかな?

  • 美容整形外科医の橘久乃…彼女の元を訪ねた友人から、小学校時代の同級生横網八重子の娘が自殺した、しかもドーナツのばらまかれた部屋で…と聞き、何がそうさせたのかを、関係者からの聞き取りから明らかにしようとするストーリー。

    ちょっと読みにくかったかな…久乃が聞き取りしているのだけれど、関係者が一人で話をしている感じ…ストーリーはよかったし、ほぼ一気読みしてしまったけれど、エンディングが…なぜ少女は自殺したのかの核心に触れることなく(私が読み取れなかっただけかもしれないけれど…)、なんとなぁ~く消化不良気味かな…そう感じてしまいました。

  • ー美しさー
    それは、見た目の美しさだけだとは
    思いたくない。
    内面の美しさも、とても大事だと思う。
    痩せていても、体格が凄く良くても。

    美容外科医の久乃は、久しぶりに会った
    同級生から、地元の同級生の娘が自殺を
    したことを聞いてしまう。

    同級生というのは、いわゆる肥満体型で
    学生時代から、からかわれていた。
    娘も同じ体型だったらしい。
    子供は残酷なもので、チビ、デブ、と
    平気で言う。

    人は、カケラの集まりらしい。
    大きな目。垂れて細い目。
    私の場合は、背が低い。あと5センチ
    欲しかった。
    いろいろなパーツが集まって、人は成り立っているという。
    そのカケラは、人それぞれだ。十人十色
    違うからこそ、カケラは素敵なものに
    なるのだと思う。

    久乃は同級生の娘の自殺を知ると、地元の人々に話を聞いて廻る。
    何故、そんなことが起きたのか・・・・
    そして、久乃は何故そんなにあちらこちらを調べるのか・・・・

    私なりに、予想はしたがそれがあっているか?自信はない。


    2021、12、16 読了

    • アールグレイさん
      ポプラさん、こんばんは★

      ふ~ん、確かに男性目線では容姿ってとても大事ですよね。女性だって同じ。格好いい男性の方が良いかと。
      とにかく、先...
      ポプラさん、こんばんは★

      ふ~ん、確かに男性目線では容姿ってとても大事ですよね。女性だって同じ。格好いい男性の方が良いかと。
      とにかく、先程のポプラさんのコメントはカチンとくる部分がありました。言いたいことをハッキリ言ってしまうこの性格、お許しを。
      2021/12/18
    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、コメントいただいていましたね。見逃していました。カチンときましたか!自分が容姿で判断しているということは言っていないけど、やっ...
      ゆうママさん、コメントいただいていましたね。見逃していました。カチンときましたか!自分が容姿で判断しているということは言っていないけど、やっぱり男性・女性目線で容姿というのは大事なようですね。TVの視聴率も左右しますからね。娘たちには「容姿なんて関係ない!」と強く生きていって欲しいです(笑)
      2021/12/24
    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、久しぶりに挫折しました。いやー、読みにくい。なにこれ。。。主人公の会話がない。直球でこの話しを攻めればよかったのに!と思いまし...
      ゆうママさん、久しぶりに挫折しました。いやー、読みにくい。なにこれ。。。主人公の会話がない。直球でこの話しを攻めればよかったのに!と思いました。この話し、残念です。
      2022/07/15
  • 途中で読むのや~めた。非常に読みニクイ!湊さんってこんなに冗長な物語を書く作家さんだっけか?この内容は半分のページ数で収まるんじゃないかな。さらに主人公の美容整形外科医・ほとんどしゃべらない。おそらく自分の中で好きな登場人物だと思う。このまどろっこしさ。どこかのサイトで見つけたダイジェスト・ストーリーを読んで、ラストも面白い内容なのだから、直球で勝負した方が絶対に面白さは伝わったはず。自分の中でイヤミスの女王として君臨する湊さん、最近手に取るのが怖くなってきた。誰か、自分をこの沼から出してください。①

  • 一風変わった変化球のミステリー
    田舎出の橘久乃は今や売れっ子の美容外科医で一流のクリニックを運営しつつマスコミでも活躍している。
    そんな彼女と関わりある七人の一人語りみたいな七章で構成されていてもちろん皆の前には話相手たる久乃が居るのだけど存在感はないように作られている。
    核心は一人の若い子が何故だか大好きなドーナツの散らばる中で自殺したらしいこと。
    はたしてこれは事故なのか事件なのか?
    その真相を追う形で久乃が次々に関係ある人に面談している次第だけど真相の意外性は小さかった。ちょっと湊さん、狙い過ぎた作りだったかなあ?!

  • 彼女がドーナツに囲まれて生き絶えた経緯が、感動も束の間、悲しくて切ない結果だったことに胸が苦しいです。こんなトドメをさされるとは。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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