- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087717167
作品紹介・あらすじ
美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久しぶりに訪ねてきた幼なじみから「やせたい」という相談を受ける。カウンセリングをしていると、小学校時代の同級生・横網八重子の思い出話になった。幼なじみいわく、八重子には娘がいて、その娘は、高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか――?
「美容整形」をテーマに、外見にまつわる自意識や、人の幸せのありかを見つめる、心理ミステリ長編。
【著者略歴】
湊かなえ(みなと かなえ)
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞、受賞作を収録した『告白』でデビュー。同作で09年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。18年『贖罪』がエドガー賞候補となる。その他の著書に『夜行観覧車』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『山女日記』『リバース』『未来』『落日』など多数。
感想・レビュー・書評
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ある少女の自殺。その自殺の背景とは。彼女をとりまく人たちが、一人語りをすることで徐々に浮かび上がってくる、少女の像。最後に明かされるその真相があまりにも衝撃すぎて、眠れなくなった。やっと眠れたのは朝方。外はようよう白くなりゆく。
先日の王様のブランチで、ネタバレすれっすれで紹介されていた本作品。湊さんもリモートで出演されており、この作品についての想いを語っておられました。
本中に何度も出てくる、ドーナツ。それは、真ん中が空洞になっているという珍しい形状から、比喩にも使われることが多い。ドーナツ化現象、とかね。この作品においても、ドーナツは「甘くて美味しい」以外の意味合いを持つ。王様のブランチで湊さんは「人間が誰かを見る時、その誰かの表面しか見ていない。中心の部分を見ていない。ドーナツはその象徴である」と、そうおっしゃっていた。
「流浪の月」でもそうだったのだけれど、人は、一部の情報やその人の見た目から、勝手にイメージを切り貼りして、物事の、事件の全体像を作り上げてしまう。
今回、こんな出だしから始まる。
“田舎町に住む女の子が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。モデルみたいな美少女だとか。いや、わたしは学校一のデブだったと聞いたけど―”。
作品が美容整形をテーマとしていることは帯を見ればわかる。なので読者に、「ははーん、きっと体型にコンプレックスを持った女の子が美容整形を行ったものの、完成したその見た目に納得がいかず、さらには罪悪感まで芽生えてしまって自殺を図ったのでは」と、そんなイメージを与える。いや、あくまでわたしがこの作品を手に取った瞬間の、安直なイメージであることを認める。にしても安直すぎる。
そして本作品を読み終えたタイミングで、ビリー・アイリッシュの、ボディーシェイマー(わたしは初めて知った言葉でしたが、「他人の体を中傷する人」という意味だそうです)に対する「Not My Responsibility(私の責任ではない)」というメッセージ動画のことを知った。
(https://spur.hpplus.jp/culture/celebritynews/202005/28/EhUkhhA/)
こちらの記事には、動画だけでなく日本語訳もついているので、動画だけでなく歌詞の方も、是非見ていただきたい。
この曲やメッセージが、本作品とまるっきし重なったわけでは、もちろんない。
けれど、太っているというだけで「自分で自分のことを管理できない人」というレッテルを貼られ、なぜか見下されていい対象になることがある。それによって、太っている側は口を閉ざし、見下した側だけが饒舌になり、それは傍から見れば「太っている側が何も言えないのは見下した側の言っていることを否定しないからだ」ということになり、結局は見下した側の言っていることが事実となってしまう。
そんな構造に、この曲はもの申してくれていて、作中に出てくる人に聞かせてあげることができたらな、とそんな風に思ったわけで。
ただ、普段わたしたちが無意識にしている決めつけや視野狭窄を払拭してくれる、という点では「Not My Responsiblity」も「カケラ」もおんなじだ。
本を読んでいると時折、こうした奇妙な偶然があったりして、ものすっっっごく刺激を受ける。
そしてこんな風に、誰かに話したくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
横網八重子の娘が自殺した。美容クリニックの医師・久乃は幼名馴染みとの会話で知らされる。久乃が馴染みのある人達に娘のことをインタビュー、真相を追及してゆく。
美容・美しさをテーマに書いたようですね。湊さんらしくわかりやすく際立たせて書いているのかな(あんまり真実味感じませんでした)。湊さんの物語を読んでて、新しい、ハッとするもの感じるものがなかったかなあ。一つ一つの感情はわかるんだけれど、医師がもう少し出てきてもいいと思うし、全体の輪郭が掴みづらいかなあ。スカッとしないまま終わる。期待を寄せすぎたかな。
ドーナッツの先に見えるもののとこ、しんみりきました。 -
7人の独白という形をとっていますが
八重子が人間の本質を表していると思いました。
人の心は一面ではない。 -
久しぶりの湊かなえさん。
この語り口調が凄く読書意欲をそそる。
どんどん読み進めてしまう。
こんなあからさまに目の前の人に悪く言えるのかと小気味よくなりながら。
インタビュアーの久乃が最後は関わってくるとは思ったけど、
思ってたほどでもなかった事がちょっと消化不良ではあったかな。
やっぱり子供の頃って見た目とか重要な問題なのよね・・・
それでもいいと思ってた有羽だったのに・・・
湊さんは見えない気持ちを書かれるのが本当に上手。 -
「告白」を思い出させる独り語りが続いてゆく。
それぞれの目線からのカケラが真実へ導いていくのかと思えばそうともいえず
最後までモヤモヤが残った。
[図書館·初読·12/1読了] -
小学校時代の同級生の娘が亡くなったことについて、美容整形外科医がその周辺の人たちに話を聞くうちに、真相が炙り出されていく。
亡くなった原因がわかったときのやるせない哀しさはあるものの、章ごとに変わる語り手の誰もが自己中心的で攻撃的、あまりにも悪意をむき出しすぎ。人間、誰にでもダークな部分はあるけれど、負の面ばかり強調され続けると、ストーリーのおもしろさを味わうよりも嫌気がさしてくる。
また、美容整形がテーマとあるが、肥満や顔の美醜についての話は多いとは言えそれが本質というほどでもなく、やはりイヤミスという部分だけが印象に残った。 -
「大量のドーナツに囲まれて自殺した女の子」というパワーワード。
何があったんだ。何をどうしたらドーナツに囲まれて命を絶とう、なんて考えるんだろう。
動機は?目的は?方法は?いくつもの「?」が浮かぶ。
だけど、そうそう簡単に答えのヒントはくれない。遠くからじわじわじわじわと近づいていく感じ。
美貌の美容整形外科医久乃への、それぞれの語りだけで物語は進行していく。
脂肪吸引を頼みに来た元同級生、地元の後輩にあたる格下アイドル、高校時代の元カレとその息子、元同級生の妹で自殺した女の子の中学時代の元担任、自殺した女の子の高校時代の元担任、元同級生で自殺した女の子の母親、そして本人。
それぞれが語る、自分の話、そして自殺した女の子の話。
少しずつ、少しずつ、見えてくる事実、あるいは女の子にとっての現実。
美しいこと、あるいはい太っていること、痩せていること、その外見、つまり外にいる他人の認識と本人の意識。
うーん、面白いなぁ。人の内側からにじみ出てくる狡さとか小ささとか怖さとか、そういうのをじくじくと見せつけてくるの、サイコー。やっぱり湊かなえはこうでなくっちゃ。
ここしばらくいい人系の話に寄っていた湊小説。こういう湊小説が読みたいんです、私は。 -
本屋さんで見かけて、表紙&帯買い。
主人公は最初と最後しかしゃべらず。
ずっと主人公が会いに行った(主人公に会いに来た)相手がずっと話している、その会話のみでできている。
自殺した同級生の娘さんの真相を調べて行く話。
章が変わると今しゃべっているのが誰で、誰とどういう関係があった人なのかをつかむまでに時間がかかる。
普通は地の文で名前とか状況が説明されているものなんだな、って当たり前のことに気づかされた。
会話しか(しかも一方向のみしか)ないし、本当に普通の会話でそうなるように、全く関係ないと思われる話も一緒にするから、全体を掴むのに時間がかかって、最初は話がジリジリとしか進んでいないように感じた。
あるところから急に今までの話が結びついて最後一気に進んだと思う。
この親子を救う方法はなかったんだろうか。
自分がこうと思っている主観も相手から見たら全く違っていて、そういうことは実際自分にもあるんだろうと思う。その相違に気づくべきなのかもしれないけど、気づきたくないとも思う。 -
久々湊さん。
推理小説だと思っていたけど、違うな。
やっぱりとっても悲しい結末だった。
内面を描くのが本当に上手な作家さんだなあ。
著者プロフィール
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