カケラ

著者 :
  • 集英社
3.21
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本棚登録 : 1232
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717167

作品紹介・あらすじ

美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久しぶりに訪ねてきた幼なじみから「やせたい」という相談を受ける。カウンセリングをしていると、小学校時代の同級生・横網八重子の思い出話になった。幼なじみいわく、八重子には娘がいて、その娘は、高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか――?
「美容整形」をテーマに、外見にまつわる自意識や、人の幸せのありかを見つめる、心理ミステリ長編。

【著者略歴】
湊かなえ(みなと かなえ)
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞、受賞作を収録した『告白』でデビュー。同作で09年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、16年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。18年『贖罪』がエドガー賞候補となる。その他の著書に『夜行観覧車』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『山女日記』『リバース』『未来』『落日』など多数。

感想・レビュー・書評

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  • ある少女の自殺。その自殺の背景とは。彼女をとりまく人たちが、一人語りをすることで徐々に浮かび上がってくる、少女の像。最後に明かされるその真相があまりにも衝撃すぎて、眠れなくなった。やっと眠れたのは朝方。外はようよう白くなりゆく。

    先日の王様のブランチで、ネタバレすれっすれで紹介されていた本作品。湊さんもリモートで出演されており、この作品についての想いを語っておられました。
    本中に何度も出てくる、ドーナツ。それは、真ん中が空洞になっているという珍しい形状から、比喩にも使われることが多い。ドーナツ化現象、とかね。この作品においても、ドーナツは「甘くて美味しい」以外の意味合いを持つ。王様のブランチで湊さんは「人間が誰かを見る時、その誰かの表面しか見ていない。中心の部分を見ていない。ドーナツはその象徴である」と、そうおっしゃっていた。

    「流浪の月」でもそうだったのだけれど、人は、一部の情報やその人の見た目から、勝手にイメージを切り貼りして、物事の、事件の全体像を作り上げてしまう。
    今回、こんな出だしから始まる。
    “田舎町に住む女の子が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。モデルみたいな美少女だとか。いや、わたしは学校一のデブだったと聞いたけど―”。
    作品が美容整形をテーマとしていることは帯を見ればわかる。なので読者に、「ははーん、きっと体型にコンプレックスを持った女の子が美容整形を行ったものの、完成したその見た目に納得がいかず、さらには罪悪感まで芽生えてしまって自殺を図ったのでは」と、そんなイメージを与える。いや、あくまでわたしがこの作品を手に取った瞬間の、安直なイメージであることを認める。にしても安直すぎる。

    そして本作品を読み終えたタイミングで、ビリー・アイリッシュの、ボディーシェイマー(わたしは初めて知った言葉でしたが、「他人の体を中傷する人」という意味だそうです)に対する「Not My Responsibility(私の責任ではない)」というメッセージ動画のことを知った。
    https://spur.hpplus.jp/culture/celebritynews/202005/28/EhUkhhA/
    こちらの記事には、動画だけでなく日本語訳もついているので、動画だけでなく歌詞の方も、是非見ていただきたい。
    この曲やメッセージが、本作品とまるっきし重なったわけでは、もちろんない。
    けれど、太っているというだけで「自分で自分のことを管理できない人」というレッテルを貼られ、なぜか見下されていい対象になることがある。それによって、太っている側は口を閉ざし、見下した側だけが饒舌になり、それは傍から見れば「太っている側が何も言えないのは見下した側の言っていることを否定しないからだ」ということになり、結局は見下した側の言っていることが事実となってしまう。
    そんな構造に、この曲はもの申してくれていて、作中に出てくる人に聞かせてあげることができたらな、とそんな風に思ったわけで。
    ただ、普段わたしたちが無意識にしている決めつけや視野狭窄を払拭してくれる、という点では「Not My Responsiblity」も「カケラ」もおんなじだ。

    本を読んでいると時折、こうした奇妙な偶然があったりして、ものすっっっごく刺激を受ける。
    そしてこんな風に、誰かに話したくなる。

  • 「大量のドーナツに囲まれて自殺した女の子」というパワーワード。
    何があったんだ。何をどうしたらドーナツに囲まれて命を絶とう、なんて考えるんだろう。

    動機は?目的は?方法は?いくつもの「?」が浮かぶ。
    だけど、そうそう簡単に答えのヒントはくれない。遠くからじわじわじわじわと近づいていく感じ。

    美貌の美容整形外科医久乃への、それぞれの語りだけで物語は進行していく。
    脂肪吸引を頼みに来た元同級生、地元の後輩にあたる格下アイドル、高校時代の元カレとその息子、元同級生の妹で自殺した女の子の中学時代の元担任、自殺した女の子の高校時代の元担任、元同級生で自殺した女の子の母親、そして本人。
    それぞれが語る、自分の話、そして自殺した女の子の話。
    少しずつ、少しずつ、見えてくる事実、あるいは女の子にとっての現実。
    美しいこと、あるいはい太っていること、痩せていること、その外見、つまり外にいる他人の認識と本人の意識。
    うーん、面白いなぁ。人の内側からにじみ出てくる狡さとか小ささとか怖さとか、そういうのをじくじくと見せつけてくるの、サイコー。やっぱり湊かなえはこうでなくっちゃ。
    ここしばらくいい人系の話に寄っていた湊小説。こういう湊小説が読みたいんです、私は。

  • 私に欠けているもの、全部ちょうだいよ。主人公?久乃、サノちゃんの周りの人たちが語る言葉で物語が進んでいく。主人公はプロローグとエピローグでしか語らないのだ。その進みかたがクセになった。ドーナツ、ドーナツ、ドーナツ、読み進める度に広がる甘味と深まる苦味。美しいとはなんだ?

  • 最新作ということで購入。

    一つの自殺?事件を皮切りに美容外科医が、様々な人に会うことで事件の概要、そうさせてしまった背景が浮き彫りになっていきます。そもそも何故、様々な人にインタビューをしているのか?じわじわと真相がわかってきます。

    美容外科医のインタビュー形式で、相手の一人語りで章ごとに変わっていきます。似ている作品では、「告白」や「白ゆき姫殺人事件」が浮かぶのですが、それと比較すると、この作品は、事件の背景を重視している印象でした。
    何故このような事件になったのか、一言では言い表せない様々な事情が、ボタンのかけ違いのように複雑に絡まっていきます。2作品のような衝撃度はありませんし、明確な真相は語られず、匂わす形式になっていますが、おそらくこうだろうと想像がつきます。登場人物が多く登場し、それぞれの関係性が段々と複雑になるので、相関図を書いた方が楽しめるかと思います。

    一人語りだけで物語は進行するのに人の嫉妬、妬みなど人間の陰となる部分を引き出して、読み手を不快にさせてくれるのは、さすが湊さんだと思いました。
    自分の思想と相手の思想が必ずしも合致するとは限りません。実際に作品に出てくる登場人物は、人が変わるごとに考え方の違いが出てきます。自分はこうと思うのに他人からはこう思われている。様々なズレが発生することで、人間関係をこじらせてしまいます。

    現実でもニュースに出てくる出来事も別の角度から見たら、もしかしたら違う景色が見えるかもしれません。
    自分の中の固定概念を通すだけでなく、柔軟に相手の気持ちも汲み取ることも大切だなと思いました。

    イヤミスというわけではありませんが、最後は考えさせられました。

  • 最後の最後で切なくなる。他の湊かなえと比べたらどしんとした重みはあまり感じなかったけれど、やっぱりどこかで残るものはあって好きだなあと思った。

  • 最新刊は湊かなえワールド全開な読みやすい作品でした。それにしてもよくもまあいつもいつも人間の本質みたいなところをグリグリと描くなあ、と。あと、多分、ご自分の記憶によるところだと思うのですが、多くの人が覚えているような中高生くらいの時の感覚をうまくトッピングするなあといつも感心します。シューベルトの「魔王」がダダダ ダダダって、あ〜、あったあった。でもって、最後の最後に「カケラ」が出てきてオチも付いてました。

    ドーナツが食べたくなりました。

  • 久々の独白形式、湊かなえさんにはあまりない美容整形関連の内容。
    「大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい」というパワーワードに惹かれて一気に読んでしまいました。

    プロローグで語る久乃には、容姿に悩んでいる多くの人に関わるとこで得られた経験から、学校や現代社会の問題点を論じているようにも思えます。
    自殺した少女に関連する人物から話を聞いていくことで、少しずつ情報が加えられていき謎が明らかになる展開にドキドキさせられ、さすがだと思いました。

    また、ミステリ的な要素以上に、自殺した少女の関係者から話を聞いていくことで久乃の考え方の変化が見られるのが特に良かった!
    プロローグとエピローグでは大きな差が生まれてて、読み終わったあと改めてプロローグを読み直しました。

    人それぞれ違う考え方、外見、嗜好を持っていて、何を持って「個性」と判断するのか。自分自身がどう思っていようと、その個性を判断するのは他者で、その判断に対して過剰に反応して萎縮してしまうのが今の学校なんだなとも思いました。個性とは何たるや。

  • 久しぶりに湊かなえさんの新刊買いました。最近は新聞紙上のエッセイばかり読んでいて、先生の人となりの方に親近感抱いていました。小さな専用スペースで今作も書かれたんだなあ、と思い浮かべながら読みました。
    今作も人のドロドロしたところが次から次へと、、。定番の独白シリーズですが、実に濃い。様々な場面があぶり出され、一言ももらさず読み尽くしたので疲労感すら覚えました。人名がたっぷり出てくるので、読みながら相関図書いたほど。サノちゃんは、結局何をしたくて色々話聞いたんでしょうね。エピローグ読んで、考えさせられました。「いざという時、何が助けてくれる?」とか「今の世の中、失言した方が負け」とか、刺さるワードもたっぷりでこれぞ湊かなえワールド。ドーナツが散々登場するので食べたくなりましたね。どこかとタイアップしてもいいかもー。

  • 湊さんの最新作。またまた意味ありげなタイトル。構成はお得意のインタビュー形式。このやり方、なんか物語にハマっていく。

    地方都市、学生時代に肥満でいじめられていた八重子。その娘が自殺したと聞き、同級生で美容クリニックに勤める才色兼備の久乃が色んな人に会って話を聞く。そこには人の本性、悪意、嫉妬、羨望などが蠢いていた。自殺した娘は母と同じく肥満だったが、母親の作るドーナツが大好物で明るくみんなからも慕われていたのになぜ?徐々に全貌が見えてくる。そこには憎悪の籠った復讐が…。

    娘の高校の担任の先生、あの教師はないわー。

  • この、突然ぷっつりと話が終わる感じ。
    話によっては、そんな終わり方にすごく疑問を残すこともあるけど、私はこの物語の終わり方がすごく好きだった。
    ドーナツの真ん中なんて考えたこともなかった。
    今までも、私は周りの人の中身ときちんと向き合ってきただろうか。
    幸せの味がするドーナツの真ん中を食べてみたいと思った。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年に「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。2009年の本屋大賞を受賞。映画化を経て累計300万部のベストセラーに。2012年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。その他の著書に『少女』『贖罪』『花の鎖』『境遇』『サファイア』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『絶唱』『リバース』『ユートピア』『ポイズン・ドーター、ホーリー・マザー』などがある。

「2018年 『ブロードキャスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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