るん(笑)

  • 集英社 (2020年11月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784087717303

作品紹介・あらすじ

スピリチュアルと科学が逆転した、
心の絆が生み出すユートピア・ニッポン!
平熱は38度で、病気の原因はクスリを飲むこと。
お祈りですべての病気を治す世界で繰り広げられる、
誰もが幸せなディストピア。
『皆勤の徒』『宿借りの星』で日本SF大賞を2度受賞した
期待の星による、連作小説集。

結婚式場に勤める土屋は、38度の熱が続いていた。
解熱剤を飲もうとすると妻の真弓に「免疫力の気持ち、なぜ考えてあげない」と責められる。
……「三十八度通り」

真弓の母は、全身が末期の蟠りで病院のベッドに横になっていた。
すぐに退院させられ、今後はそれを「るん(笑)」と呼ぶ治療法を始めることになる。
……「千羽びらき」

真弓の甥の真は、近くの山が昔の地図にはないと知り、登りはじめた。
山頂付近で、かわいい新生物を発見する。それは、いまは存在しないネコかもしれなかった。
……「猫の舌と宇宙耳」

【著者略歴】
酉島伝法(とりしま・でんぽう)
1970年、大阪府生まれ。作家、イラストレーター。
2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞し、
13年刊行の作品集『皆勤の徒』で第34回日本SF大賞を受賞。
19年刊行の第一長編『宿借りの星』で第40回日本SF大賞を受賞。
他の著書に『オクトローグ 酉島伝法作品集成』がある。

みんなの感想まとめ

科学とスピリチュアルが逆転した独特の世界観が描かれた連作短編集で、登場人物たちがその異常な現実を受け入れつつも抱える疑問が、読者に不安感を与えます。特に「千羽びらき」では、息苦しさが際立ち、同時に人間...

感想・レビュー・書評

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  • 「るん(笑)」(酉島伝法)を読んだ。
    連作短編集。

    しんどい世界だな。
    特に真ん中の「千羽びらき」はさ。
    この息苦しさは「世界99」(村田沙耶香)に似たものがあるよ。
    でも最後の「猫の舌と宇宙耳」では、
    明かり取りの窓から仄かな光が差すように少しだけ救済の温もりも伝わってくるようだ。

    あの酉島伝法さんが初めて人間を主人公として書いた作品。
    というわけだが、やはりそこはそれ一筋縄ではいかない酉島伝法ワールドに呑み込まれる。

    タイトルのほのぼのさに騙されては行けないからな!

  • 「科学的であること」が笑われてしまうスピリチュアルに重きを置いた世界観においての独立した3編の日常の物語の様だ。38℃が平熱になり、タイトルの『るん(笑)』とは病名のことだった。

    「閼伽水(アクア=水?)」「ミカエル(食べ物?)」「エレメント」「避霊針」「次元上昇(アセンション)」「ひとり婚(自分と結婚すること)」「施霊院」「PCのショートカットキーは気の流れが淀むから使わない」などのパワーワードが作中に登場。実社会にも近い考え方・思想を持っている人がいるんだろうな。

    自分には世界観が難解かつ伝えたいメッセージが不明であり理解・共感が出来なかった。。『るん(笑)』というタイトルが面白いと感じた。

  • スピリチュアル・似非科学・ホメオパシー的なものが”常識”となっている日本が舞台。病院での医療や科学は本来人がもつ生きる力を奪い、携帯やPCは電磁波が出て脳をやられる。
    登場人物が共通する短編3話構成で、私は特に2話目の「千羽びらき」がこたえた。

    ネガティブな言葉を使うと気が悪くなるので言い換えがすすんでいる。タイトルの「るん(笑)」は癌の言い換えで、口に出すときは笑みを浮かべての意。
    内容に合わないPOPな水玉表紙や、章タイトルの丸ゴシック体も、すべてをポジティブにしようとするこの世界を体現してるのだろう。すごいね。

    物語が進むと、単語のやまいだれ→疒をとった言い換えが進む反面、ねこなど本来ネガティブでない単語の漢字に疒がつくようになってくる。
    登場人物やこの世界の狂気の進行と連鎖しているようで怖い。

    誰も悪人でなく、基本的に善意の一般市民が、正しいと信じているものに従っていくうちに泥の中に沈んでいく。現実でも程度は違えど同じかもしれない。
    読んでいて息苦しくなるような本だった。

  • 読み始めて半刻ほどで、簡癉に憑かれを得られます(笑)瘕だからって心縁でもない言葉に興味をもった自分が癋いんですけど(笑)あとやっぱり印刷本は思想矯正のエネルギーで触っているだけで手から冷えていくのを感じます(笑)手書き以外を読むべきじゃなかったです(笑)

    わるい冗談はさておき。
    終始怖気立って、1秒も早く読み終わりたい、抜け出したい、と願いながら読んだ。作者は人間や社会がきらいなのか……?
    知人にはちょっと薦めづらいけど、この本の被害者は増やしたい。他の方の考察も読みたい。そういう気持ちになったので、自分なりに考えたことを書き起こしてみます。結論らしいものは特にありません。

    ※作中とは順序が異なりますが、世代順で書きます。
    ■第一世代
     成人した頃からか、就職した頃からか、社会に出てからは『自分の方が、親よりも現代のあれこれに詳しい』という感覚がある。子どもの頃は、当たり前に親=大人の方が物知りであって、助けられてきたはずなのに。
    そして、新しいものごとの方が、旧いものより優れているとも思う。あのねえ、昔は噛んだものを与えたかもしれないけど、今は赤ちゃんにキスもしないんだよ。大人の虫歯菌が伝染るんだから。もうそのやり方は古いんだよ。
    障害者っていう言葉はいけないんだよ、存在が害じゃないんだから障がい者と書かなくては。いや実は障碍者と書くんだよ。それは仏教用語の誤用だからやっぱり障害者と書くんだよ。etc.
    親世代も、きっと我が子可愛さ半分、変化に抗うには衰えすぎた心身半分、言われるがまま新しさに流される。そういう風景は日本のどこでもきっと見られる。
     親子関係と共に、夫婦関係にもあるあるを感じた。
    オスが、社会と接している自分こそ正しいと信じていて、聞き齧った新しい価値観をメスに押し付けるのがキモすぎでした(後でメスのキモさにも触れるので、安心してください。)

    その他思ったこと。
    ・郊外〜田舎という舞台設定も巧妙。中途半端に情報が入ってきて、表面的なアップデートだけがすすむ。似て非なる「っぽい」ものが権威を得て蔓延る。
    ・電波がどうこう言いながら、電車やバスが走っていて利用もしている矛盾がリアルだ。無線通信を一切積んでいない車体という可能性はある。

    ■第二世代
     自分は、第二世代の話がいちばん苦しかった。固有名詞も個々の選択もまったく意味がわからないのに、根底で共感できてしまう感じ。怖かった。
    現実は、周りが科学で成り立っているから科学信仰上等と思えるだけで、いざこういう世になったら自分も染まってしまうんだろうか。例えば科学信仰の根拠を求められたら、「だってそう習ったし、みんなそう言ってるし、沢山の人が研究してきてそれが正しいってことになってるし、」としか説明できない。
    体制側の利権と対立したら、覆ることもあるんだろうか?とか考えるのは、まあ悪趣味で楽しい。
     悪趣味といえば。出産後の「アレ」と言われて、具体的な言及がなくてもソレのことかな〜とすぐ思い至った自分のキモさには引いた。(ソレを摂食する行為のキモさではなく、自分の価値観と一致しないものものを溜め込む抽斗が浅いところにあるのってキモい、という話です)
    生きているだけで、意図せずとも色んな知識を取り込んでいるものだ。
     ここのペアは、真弓の「貴方のためなのに理解ってくれない」「こんなに尽くしてるのに」「言わなくても分かってよ」みたいな旧き良きメス様ムーブにキモさがありました。
    自然派信仰であること以外は自分たちと同じ、と読者に感じさせるためなんだろうけど、あまりにもテンプレートなジェンダー像で煽るじゃん……作者はやっぱり人間がきらいなのか……?

    ・親世代とうって変わって、都会に住まうことの閉鎖感、他人との繋がり、忙しなさ、情報の雪崩、それらにも追い詰められる生活は苦しかった。
    ・竜とかナントカは最後まで得体が知れないまま読んだ。第三世代で山になったことだけは把握したが、結局なんだったんだ。
    (後日追記:他の方の感想を読んだところ、あれは異常繁殖した牡蠣のことだと書かれていた。自分が読み落としていただけらしい。丁寧な考察も添えられており、楽しく拝読した。ありがたや。)

    ■第三世代
     第三世代ともなると麻痺してきて、思考放棄気味でサクサク読める。ねこがいなくなっちゃったのはつらい。猫の声に目頭を押さえる老人たちのシーンは、なんだか心に引っかかっている。ねこちゃんたちが滅ぶまでにどんな地獄が繰り広げられたのか、考えたくもない。
     いない同級生の点呼とか、考えた人間がすごいし、なんとなく受け容れられていることもすごい。凄まじい。褒めてはいません。
     彼岸でようやく年金がもらえる、という制度もよく考えたものだ。此岸でお金を稼ぎすぎること自体がたぶん穢れなんだろう。そうでも無い限り、自然派の本質が金儲けだったら、そんな制度が受容されるはずないんだ。現実がそれを教えてくれる。

    とりとめなくなってきたので、これにて〆。

  • 「ゆきあってしあさって」で初めて知った酉島伝法先生の本。
    スピリチュアルが科学よりまさる世界に、Dr.STONE好きには驚きと面白さと難解さとごちゃ混ぜになりました(笑)

  • 『三十八度通り』では三十八度超えの微熱(?)に苦しむ男性が主人公。
    熱に苦しんでいるもののクスリや病院は頼ることができず、
    妻や周りの人のアドバイスを聞くしかない。
    そのアドバイスは、血液型、星座、エレメント、などなど今の自分の世界から見ればトンデモなものがどんどん出てくる。
    しかし、この作品はおかしいなで終わらずその後に、でも今後ありえる、、と思わされてしまう。
    この世界観を紹介しつつ、周りの人の優しさ(ただしスピリチュアル)に翻弄されていく男性のおはなし。

    『千羽びらき』では今この世界で「癌」と呼ばれる病気にかかってしまった女性のお話。
    最初は病院に入院していたものの、家族に退院させられて自宅に戻ることになる。
    そこで様々な治療を受けることになり、その一つが癌を「るん(笑)」と呼ぶという治療だ。
    この話では特に[[酉島伝法]]先生の言葉遊びが面白く、うまっと何回も思わされてしまった。
    ただし言葉遊びだけでなくお話もとてもよい。闘病中ながら母としての役目も果たす主人公と、その家族の行動がなんとも切なく、感動してしまう。

    『猫の舌と宇宙耳』では小学生の男が主人公である。
    おかしな世界を小学生の目線から見るとどうなるのか、というのが示されているような作品であった。
    不思議だと思いつつもそんなことより友だちと遊びたいという小学生の気持ちは物語内の世界も、この現実世界も変わらないのかなあと感じた。
    ちょっとズレている世界の小学生たちによる冒険はワクワク楽しめた。

  • 科学とスピリチュアルの立場が逆転した世界、気持ち悪すぎる……。
    視点になる登場人物たちがみんな多少疑問を抱きつつも基本的には世界観を疑ってない側の人間で、感情移入しながら読むとこっちまで頭おかしくなりそう。こわい。
    縁遠い陰謀論者じゃなくて、あくまで身近にいそうな「迷信信じがちな人」のグレードアップ版みたいな感じなのもまた、気持ち悪さに拍車をかけてる。
    現実と地続きのディストピア、面白くも気持ち悪い読書体験でした。

  • 連作短編集で、こんな世界になって欲しくない、これに尽きる。
    不思議を通り越してもはやよくわからない。でも、普段の生活でも実は似たようなことがあるのかもしれないと思う。
    いちいち疑いながら行動するのは大変そう。

  • 水にありがとうみたいなスピリチュアルが常識となっている社会を描くSF。現実でもありそう(笑) 序盤から意味不明なのだが、だんだん彼らが何を言っているのかわかってくる。龍ってそれ!?って確定したとき、それまで読んだ話のヤバさが後追いで!

  • 不気味。。。

  • 作者さんはスピリチュアルに恨みがあるんだろうか……? と思うぐらい、スピリチュアルの気持ち悪さが端的に分かりやすく描かれている作品でした。
    38度あっても解熱剤が飲めないのも嫌だし、なんかずっと攪拌された水って衛生面的にどうなん? と思うし、極めつけに多分この世界自殺推奨(早期なんちゃらっていう文言が自殺推奨だと察したんだけどちがうんだろか)してて、年金死後貰えますみたいな怖いこと言ってるんだが……??
    読み終わった後の「あ。この人類、近い将来に死滅するなぁ」が生々しく残る。気持ち悪い。ただここまでスピリチュアルをあしざまに悪く書いてると、それらを信じている人の目からはこの作品がどう映るのがとても気になって仕方ない。

  • オカルト好きな私ですら、やりすぎちゃう?と感じるほどの世界観。

    ただ、今の物質主義から、精神主義に置き換わったらこんな感じなんだろうなと妙に納得する部分も。

    本当に「良い」ものでも、行き過ぎた主観のせいで使いこなせないのが人間なんだろうな

    るん(笑)の世界でも、価値観の押し付け合いは健在。途中から現代の日常をただ目の当たりにしてるような錯覚に陥りました

  •  読んでいるとこちらまで微熱が出るような、変な熱に浮かされるそんな作品。三編からなる短編集だが、全てスピリチュアルと科学が逆転した世界を描いている。

     体温は高い方が良い、薬に頼るのは良くない、乳児は母乳で育てた方が良い、AB型は二重人格云々、信憑性の高さに濃淡はあれど、どれも何となく聞いたことのある内容であるが、それらが完全なる「正義」であり「善」である世界に放り込まれた時に、正常を保っていられるだろうか。よく分からないがその世界では当たり前となっているらしい単語(「丙」(「病」の意。「やまいだれ」は不謹慎なので使わない)など)が何の説明もなく連発されどんどんと進行していくので、読んで違和感を覚えている自分が異端であるかのような錯覚に陥る。

     しかしこのような世界観も、実はすぐそばに存在しているのかもしれない。それはスピリチュアルだけでなくて、例えば実しやかに陰謀論が囁かれたりコロナには花崗岩が効くという噂が流れたりするように、社会情勢の不安定さと人心とが噛み合わさってしまった時に眉唾物の話がいとも簡単にたくさんの人に信じられるという現象は実際にある。人は実は簡単に「るん(笑)」の世界観に生きることができるのだろうなと思う。

    「三十八度通り」★★
    「千羽びらき」
    「猫の舌と宇宙耳」

  • すごい…すごい世界観
    ちょっと体力ある時に読まないとしんどめ

  • ネコチャンはいてほしい。

  • 色々よくわからない世界観。狂ってるのに、それが普通という感じで進む。
    ただただ、本当よくわからないけどそれが面白い。

  • スピリチュアルな方々には世界がこう見えているのか?

    読み始めてすぐ、作品世界と自分の感覚のズレが背中を這いまわり、あまりの心地悪さに最後まで一気に読んでしまった。

    体調を崩した母親と娘の会話。
    「ごめんね。おかあさん、こんな病気になってしまって」
    「だめじゃない、そんな波長の悪い言葉を使っちゃ。病垂(やまいだれ)なんかとって、丙気(へいき)って言わないと。」

    現実世界と地続きのディストピアのリアルさに今もぞわぞわが消えない。

    なぜこの本をネットでポチったのか記憶がないのもまた居心地が悪いのに、読み終えてすぐ作者の他の作品もポチってしまいました。

  • 最初から最後まで、ゾワゾワゾワゾワした。
    良い意味で見た目とタイトルに騙された気がする。
    それにしても、こんな世界になったらシンドイやろうなぁ。
    るん(笑)

    ✩三十八度通り
    ✩千羽びらき
    ✩猫の舌と宇宙耳

  • YouTubeでお勧めされていて気になったので読んでみた。世界観がなかなか掴めず難しかった。

  • 不思議な感じ、ふわふわしている
    スピリチュアルと科学の逆転とはとおもいながら読みまた。

    こんな世の中にはなって欲しくないと思いながらも、こういう考えの人もいたりするんだよなと……。

    医療系の仕事をしているので、サプリメントや絶対にお薬を使いたくない人に遭遇することもあるけど、こういうことを考えられているのかなとふと思うような場面もありました!
    皆がこんな考えになってしまわないようにと切に願います!

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