塞王の楯

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 2621
感想 : 242
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717310

作品紹介・あらすじ

どんな攻めをも、はね返す石垣。
どんな守りをも、打ち破る鉄砲。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説!

越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。
幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。
匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。

秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。

大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける――。

【プロフィール】
今村翔吾(いまむら・しょうご)
1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、同作で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年「童神」(刊行時『童の神』に改題)で第10回角川春樹小説賞を受賞、同作は第160回直木賞候補となった。『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。2020年『じんかん』で第11回山田風太郎賞を受賞、第163回直木賞候補となった。2021年、「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。他の文庫書き下ろしシリーズに「くらまし屋稼業」がある。

感想・レビュー・書評

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  • 第166回直木賞受賞作。

    図書館で一度は借りようと予約を入れたら40人待ちで、購入しました。時代小説が好きな人が周りにいないので、次は、なるべく高値がつくうちにブックオフに持っていくので、帯からストーリーを引用させていただきます。


    「最強の盾」対「至高の矛」
    幼い頃、落城によって家族を失った石工の匡介(きょうすけ)。彼は「絶対に破られない石垣」を造れば、世から戦を無くせると考えていた。
    一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦一郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。
    秀吉が死に、戦乱の気配が近づく中、琵琶湖畔にある大津城の城主・京極高次は、匡介に石垣造りを頼む。攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲造りを依頼した。
    大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。


    以上、帯より引用。



    時代小説は苦手で、前半はなかなか読み進みませんでした。
    ところが551ページあるうち400ページをすぎたあたりからページをめくる手が止まらなくなりました。
    最後の大筒で彦九郎に大津常の匡介らが砲撃される場面は迫力がありました。

    「城が落ちるということは生殺与奪の権を敵に与えるということ。命を懸けて約定を取り付けても、それが守られなかった例もごまんとあります」
    戦はとても恐いと思いました。今のウクライナの人たちの心情が想われました。

    「彦九郎が問うたのは心である。この距離で大筒を放たれたことはあるまい。恐れが心を支配し、二度と立ち上がれないのではないか。それで決着がつくのだから、少なくともお前たちは死なずに済むのだから」
    これはプーチン政権の論理と同じではないかと思いました。とても恐いことだと思いました。

    武器を造ることを生業とした者たちも私たちと同じ日常生活を送っている一人の人間なのに。毎日何を考えながら武器を造っているのでしょうか。

    最後に、今の平和な日本に生まれて幸せだと思いました。外から攻撃されることはなきにしもあらずですが、少なくとも今は国内での争いはありませんから。

    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪

      今の世界情勢を絡めたさすがのレビューです。

      また読んだら刺さる部分がいっぱいありそう。あ、私もこれ購入...
      まことさん♪おはようございます♪

      今の世界情勢を絡めたさすがのレビューです。

      また読んだら刺さる部分がいっぱいありそう。あ、私もこれ購入しちゃいました¨̮♡
      2022/04/24
    • まことさん
      くるたんさん。おはようございます♪

      今、レビューにウクライナ情勢を書かれている方は本当に多いですよね。
      やっぱり書かずにはいられない...
      くるたんさん。おはようございます♪

      今、レビューにウクライナ情勢を書かれている方は本当に多いですよね。
      やっぱり書かずにはいられないですよね。
      この情勢が世界中に飛び火することがどうぞありませんように。
      ウクライナの人々が早く平穏な日常生活に戻れますようにという気持ちでいっぱいです。
      2022/04/24
  • 手に汗を握る大津城の攻防が見所です。
    塞王の楯
    2021.10発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。2022.04.25~05.14読了。★★★★☆
    戦国時代の近江の石垣職人集団、穴太衆飛田組頭の飛田匡介(きょうすけ)の物語です。
    都(京都)に近い近江には、色んな職人の集団が発生しています。本書では、忍び集団として甲賀衆。石垣職人集団として穴太衆。鉄砲職人集団として国友衆を登場させて競わせます。

    石垣(城壁)造りの穴太衆の中で特に優れた力量を持つ飛田組を率いる源斎の跡継となった匡介は、越前の国で織田信長に攻め滅ぼされ行き場がなくなったところを源斎に助けられます。源斎は、匡介が石の声を聞こえる特殊な能力を持っているのに気が付き飛田組の次代を託します。匡介は、太平の世を作るための楯としての城を作ることを目指します。
    近江の鉄砲職人集団の国友村で国友三落の後継者となった彦九郎は、孤児となったところを三落にその才能を認められます。彦九郎は、太平の世を作るには、最強の矛としての鉄砲を作ることを目指します。
    この二人が、天下分け目の関ヶ原合戦を前にして、石田三成率いる西軍が近江の大津城の攻めます。彦九郎は、城を攻める西国無双の立花宗茂側に付き。匡介は、城を護る大津城主の京極高次側についての攻防が見ものでした。
    穴太衆の中で一番優れた石垣造りの職人を「塞王」といい。国友衆の中で一番優れた鉄砲職人を「砲仙」といいます。飛田匡介は、義父源斎の後を継ぎ塞王といわれ。国友彦九郎は、義父三落の後を継ぎ砲仙といわれます。

    【読後】
    字が小さくて本当は読むのを中止するつもりでしたが、どうしても読みたくて毎日少しずつ読んできました。このために約3週間かかりました。今まで今村翔吾さんの本を読んだ中で一番感動しています。そしてテーマが泰平を作り出す方法について矛(鉄砲)と楯(城壁)を取り上げ物語の中で、矛の国友彦九郎と楯の飛田匡介が理想をかけて話し合い。大津城で彦九郎の大砲と、大砲を阻む石垣を造る匡介のせめぎ合いが凄かったです。

    【直木賞、小説すばる】
    第166回直木賞受賞作品。
    小説すばる2019年8月号「塞王の楯」連載1回目~2020年12月号連載16回目までを読みました。2021年3月号~8月号までは、読んでいません。

  • 2021年下期直木賞受賞作品

    今村翔吾作品は初読みだ。いや〜しびれた!

    城好き、石垣好きにはたまらん小説だ。
    そういえば城好き、いや石垣好きが芸能人にも確かいたよな、タモリや高橋英樹だったっけ。この作品をぜひ薦めたい(笑

    まず作中の一人称が、矛さん楯さんともに「己(おのれ)」であることになんとなく作者のこだわりを感じた。

    今風に言えば、あらゆる国が防衛力強化を図り、勢力均衡を実現しもって平和な世をつくることを目指す穴太衆飛田屋と新種の兵器を開発生産させることにより抑止力効果を発揮し戦争のない世をつくろうとする国友衆との激突を描いた作品。

    穴太衆の乱世最強の楯と国友衆の至高の矛、どちらが勝つのかは読んでみてのお楽しみだ。

    それにしても京極高次の魅力的な人柄がこの作品に豊かな彩りを与えているのは確かだ。あくまで個人の見解だがまるで三国志の劉備玄徳的な人に感じた。

    歴史好きのみならず広くオススメしたい一冊だ。

    最後に予言を一つ…数年後に映画化される、間違いない!
    というか映画化されること想定して書かれている気もしないではない。
    気が早いが映画を見るのが今から楽しみだ。

  • 今村翔吾さんの直木賞受賞作。
    今村さんの作品で、シリーズもの以外を読むのは初。職人の仕事への心意気と情熱、テンポのよい疾走感を味わえる一冊だった。
    歴史小説に詳しいわけじゃないけど、戦国の世を舞台にしながら、武士ではなく、脇役のはずの石工「穴太衆」を主人公にする目の付け所が面白いよね。

    あらすじはこんな感じ。
    朝倉氏の一乗谷城が織田信長によって攻め滅ぼされたとき、その混乱の中で家族を失った匡介は、石垣造りを生業とする穴太衆飛田屋の頭、飛田源斎に助けられ、そのまま飛田屋の後継者として育てられる。
    どんな大軍をも撥ね返す『楯』があれば…。
    泰平の世を夢見て石垣造りの修行をする匡介のもとに、城主の京極高次直々の仕事が舞い込む。琵琶湖畔の水城、大津城をより堅固にしたいー。匡介は、大津城の外堀に水を引き入れ、完全な水城とする。

    天下統一を果たした秀吉が1598年に死亡。再び戦乱の気配が濃厚となる中、西軍と東軍双方から味方になるように求められた京極高次は、大津の地が戦乱に巻き込まれることを避けるため、大津城への籠城を決める。そして飛田組に、戦の中での石垣の修復を請け負う"懸(かかり)"を依頼、匡介らはこれを受けて大津城に入る。

    敵は西軍の毛利元康、西国無双の立花宗茂ら四万の大軍、そしてどんな城も落とす砲を作る鉄砲職人"国友衆"の国友彦九郎。開戦を前に、一日も早く大津城を落とさねばならない西軍の新式の鉄砲と大砲を前に、匡介は大津城を守ることができるのかー。

    昔のバラエティ番組「ほこ×たて」の、絶対に穴の開かない金属と、どんな金属でも穴の開けられるドリルを思い出す、匡介と彦九郎のライバル対決。
    匡介は守りの要となる石垣を作ることで、彦九郎は攻めの要となる鉄砲や大砲を作ることで、相手を牽制し、泰平の世にしたいと思っている。
    (とはいえ、実際は、互いに技術を磨き続けることで、核武装に行き着くという、理想と矛盾した現実があるわけではあるが…。)

    大津城の戦いの場面は、いやー、なんて無茶な!という少年漫画並みのウルトラCな展開が続く。
    一気読みだった、と言いたいところだけど、どう展開するかわからなくて、ハラハラしすぎて何度か休憩しながらじゃないととても読めなかった。
    こんな大乱戦だというのに、ラストの持って行き方はとても好き。エンタメ小説はこうでなくちゃ。

    ところで私、滋賀といったら彦根城しか行ったことがなく、他にも安土城跡とか、長浜城跡とか、有名な城跡がいくつかあるようだけれど、大津に大津城があったことを知らなかった。琵琶湖の湖畔に建てられ、堀で囲んでかなり堅牢な造りだったが、大津城があったのはたったの16年。(先に大津城調べて、その行く末を知ってしまった…)
    現存する石垣はごくわずか。大津城のあったところは、堀も琵琶湖側も埋められ、市街地となっているようだ(掘ったら石積みが出てきそうやけど)。

    今村さんのインタビューによると、滋賀県の粟田建設で、実際に石積みの取材をして話を練り上げたとこのと。
    そもそもが堅固な石造り。そして江戸時代になるの一国一城制度となり新しく城を築くこともなくなり、泰平の世では修復する必要もなくなる。
    願ってきた平和が訪れて、職人たちは離散、今も穴太衆伝統の野面積(のづらつみ。自然石の形をそのままに、熟練の職人が比重のかけかたや組み合わせで堅牢で美しい石垣を積み上げる方法)を継承しているのは、この粟田建設だけらしい。

    大津城の戦いにも興味がわいたが、読了後は、とても石垣が見たくなる。
    色々な野面積の画像を見て、ほうほうほうと思うようになること請け合いである。

  • 惚れた、一冊。

    戦国の世、戦いを支えた職人たちの物語。

    石垣と銃。盾と矛。まさに矛盾という相反するもの。
    なのに根底に流れるのは共通の願い。

    そこに心揺さぶられその揺れは最後まで止まることを知らなかった。

    今、ここで何をすべきか…匡介の、己に問いかけ葛藤する姿、心情もまた心を揺さぶる。

    世の泰平に不可欠なのは誰もの熱き想い。

    その想いが立場違えど一つ一つの石になり支えあう。
    時に誰かの要の石になったりしながら。

    穴太衆、国友衆、京極夫妻、登場人物誰もに惚れた。

    そして何よりも熱さと涙のブレンドが沁み渡るこの物語に、惚れた。

  • 〈塞王〉と呼ばれる、穴太衆飛田屋の頭・源斎。
    その後継者として育てられた匡介は、石垣によって戦のない世を作ろうとしていく。

    第166回直木賞受賞作。

    おもしろかった!

    穴太衆とは、石垣づくりとは、から始まり、丁寧に描かれていく世界。
    ボリュームはあるが、人物がみんな魅力的で、最後まで引き込まれる。

    城を護る最強の楯・石垣。
    それを破ろうとする、最強の矛・鉄砲。

    同じ太平の世を目指しながら、選ぶ手段が異なる者たち。

    大名らしからぬフランクさの、京極高次とお初。
    彼らを支えたいと思う、家臣たち。

    大津城の雰囲気があたたかく、魅力的。
    籠城戦でありながら、さまざまな駆け引きがあって、読み応えがあった。

  • 第166回 直木賞受賞作

    「最強の楯」対「至高の矛」

    石工の匡介は、幼い頃、落城により家族を喪った。
    それゆえ「世の中から戦をなくす為には、絶対に破られない石垣を造ればよい」と考えていた。
    一方、鉄砲職人・彦九郎は「どんな城も落とす砲」を造り、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者は居なくなる。と、考えていた。

    そして二人は「塞王」「砲仙」を目指し研鑽を重ねるが「自分の選択は、間違いではなかったか」と考えるようになる。

    『戦いの無い世の中』という理想は同じ、だがそこへ行き着くまでの道程が違う二人は、天下分け目の関ヶ原の戦いの前哨戦と言うべき、大津城で、相見えた。

    「きっと、この戦いで、答えが出る」

    二人は、真正面から、己の矜持を掛けての戦いに挑む。

    大砲を撃つ彦九郎、石垣を、崩されては、組み上げる匡介。
    又、火薬を込め、撃つ。
    又、組み上げる。
    まるで千本ノック。

    最後は、ホンワカと終わったが、
    男同士の熱い戦いと、彼らを取り巻く、魅力溢れる男達に心躍らせながら、ワタシも、目痛と戦い、一気読みした。

  • もっそい面白かった!城の石垣をつくる穴太衆の飛田屋、石の声が聞こえる天才匡介、対する敵は鉄砲を作る国友衆の彦九郎、モブに甲賀の鵜飼、近江の特殊技能集団が、関ヶ原の前哨戦、大津城の戦いでブチ当たるという、石工視点の戦国バトルもの。実は個人的に京極高次はそんなに気になる大名ではなかったんだが、ここに出てくる高次は魅力的に描かれている。とはいえ、すごく好きというタイプでもなく、武将でもないんだが、
    P330
    「ふざけるな」
    ここのシーンはええねぇ。脳内でビジュアルがどどーんと出てくる。
    この本より先に『黒牢城』のほうを読了済みだったんだが、塞王のほうにもチラッと村重がでてきたりとか、なんか面白い。

    >大名から民まで心一つになった大津城。これこそが
    ー塞王の楯。

    読了感の良い、とても面白い視点のストーリーであった。
    さすが。

  • 戦国を舞台に「絶対に破られない石垣」と「どんな城も落とす砲」を作り上げる職人同士の信念のぶつかりあいを描いた胸熱戦国お仕事小説

    戦国時代の歴史小説の舞台って色々あるけど、今作はあの籠城戦をこういう角度で楽しめるなんて!!めちゃくちゃ面白すぎるし歴史小説の舞台としてもその後の歴史を左右するくらいの熱い展開の舞台で最高やし、歴史を知っていればクライマックスをわかってるのに最後までハラハラドキドキ読めてしまう直木賞受賞も納得の圧倒的な戦国小説やわ!

    今村翔吾さんの作品は「じんかん」を読んだ時も思ったけども歴史上の人物の元々持っていたイメージを超える新たな魅力をふんだんに感じさせてくれるなぁ〜

    職人の姿を描いているのでなんか仕事への向き合い方とか情熱を感じて、読み終わった後、自分の仕事に対してのモチベーションが上がった!

    やっぱ私も男の子なので職人への憧れはあるので「男」というより職人の「漢」達の姿を読んでると胸熱ゲージが満タンになって熱い気持ちが溢れてくる。

  •  群雄割拠の時代が一瞬止まったかのような感じがする豊臣秀吉の天下統一後は、しばらく大きな戦がなかった。

     主人公(匡介)は、織田信長の一乗谷攻めで幼い頃両親と妹と生き別れになった。そんな匡介を拾ってくれた恩人は、穴太衆飛田屋(飛田源斎)という。代々伝わる城郭の石垣を積む職人集団の頭だ。人呼んで「塞王」という。

     飛田屋の頭は、世襲制ではない。穴太衆の技術者になり源斎のもとで修行し三十歳になった匡介は、一人前の職人に成長した。幼い頃落城を経験した関係で、絶対落ちない城を造れば誰も攻めようとは思わず乱世が終わると考えていた。

     そんななか、風雲急を告げる報せが入った。
     “太閤が死んだぞ”

     そして使者が穴太に来た。― 伏見城をなんとしても落ちぬ城にとの依頼が舞い込み、源斎が出向くことになる。

     伏見城攻めは、徳川方東軍で家臣鳥居元忠が籠城し守りを固めている。源斎は絶対に落ちない城などあり得ない。と考えていた。

     西軍の攻めは後に宇喜多勢が加勢し総勢四万の大軍で落城した。源斎は最後まで城に残り、戦況を見極めた。関ヶ原の戦いの前哨戦である。伏見に匡介は行かなかった。

     穴太の屋敷に多賀孫左衛門が駆け込んできた。今度は大津城、孫左衛門は「殿(京極高次)は穴太衆飛田屋に力を貸して欲しい」と。

     「承った」間髪を容れず匡介は凛然と答えた。「時がねえ。すぐに支度だ!すべて用意しろ!」

     現状のままでも十分に固い城を、さらに強固にするという。その考えは、民を城内に入れ、そして誰の命も失いたくないという。

     伏見城と大津城、攻め手の中に、匡介のライバルがいる。知己の仲である国友彦九郎で師は三落といい、「砲仙」の異名で呼ばれた。どんな固い城でも至高の「矛」(鉄砲)を作り、破ってきたのだ。互いに泰平の世を作りたいと考えている。しかし、互いに戦に矛盾はない必ず答えが出ると信じている。

     直木賞に相応しい作品だと思う。
     読書は楽しい。

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著者プロフィール

今村翔吾

1984年京都府生まれ。2017年刊行のデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で、18年、第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。同年、「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞。『童の神』と改題された同作は第160回直木賞候補にもなった。20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞と第8回野村胡堂文学賞を受賞。同年、『じんかん』が第163回直木賞候補になるとともに、第11回山田風太郎賞を受賞。21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の文庫シリーズに「くらまし屋稼業」「イクサガミ」がある。

「2022年 『幸村を討て』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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