- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087717334
作品紹介・あらすじ
標的は、日本国民1000万人――。
羽田空港に突如、中国のステルス爆撃機が飛来した。
女性パイロットは告げる。「積んでいるのは核兵器だ」と。
核テロなのか、あるいは宣戦布告なのか。
警察庁の鶴来(つるぎ)は爆撃機のパイロットを事情聴取しようとするが、護送中に何者かに拉致されてしまう。
囚われた彼女を助けたのは鶴来の義兄で警備員の真丈(しんじょう)だった。
真丈は彼女に亡き妹の姿を重ね、逃亡に手を貸す決意をする。
核起爆の鍵を握る彼女の身柄をめぐり、中国の工作員、ロシアの暗殺者、アメリカの情報将校、韓国の追跡手が暗闘する。
一方、羽田には防衛省、外務省、経産省の思惑が交錯する。
いったい誰が敵で、誰が味方なのか。なぜ核は持ち込まれたのか。
爆発すれば人類史上最大の犠牲者が――その恐怖の中、真丈と鶴来が東京中を奔走する。
『天地明察』、『十二人の死にたい子どもたち』、「マルドゥック」シリーズ等数々のヒット作を生み出した著者が、作家生活25年のすべてを込めた極上の国際テロサスペンス。
冲方丁デビュー25周年記念作品。
【プロフィール】
冲方 丁(うぶかた とう)
1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。
2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。
主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『麒麟児』『もらい泣き』などがある。
感想・レビュー・書評
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羽田空港に飛来した、中国のステルス爆撃機。
亡命を希望する女性パイロットに対応する、警察庁の鶴来。
一方、義兄の真丈は、警備会社の上客が襲われているのを発見する。
格闘のプロ集団を相手に、それを上回る能力で、ひとりで制圧していく。
無力化するため、急所を狙いつづける、アクションシーンが壮絶。
肉体派の警備員・真丈と、頭脳派の官僚・鶴来。
軸となる部分が、ふたりのつながりである、真丈の妹とその事件。
さらりと説明されるだけで、前作でもあるのかと思ってしまった。
前半は引き込まれたけれるが、途中でやや間延びした感。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国から現れた謎の爆撃機からの「亡命依頼」。
事もあろうに羽田空港に着陸した、その機体から現れた女性パイロットが告げる。
ーこの機体には核弾頭ミサイルが積まれている。
パイロットを巡り、各国が保有する隠密部隊が活躍するのだが……。
「新元号が示す通り、我が国は、近隣国と美しい調和をはかるべきだよ。我が国以外の先進国が互いに熾烈な争いを繰り広げる中、我が国だけは全ての国と平和で穏便な距離を保つのだ。国際競争などには付き合わずにね。それこそが調和だ。そうは思わないかね」
あらすじを読んだ限りでは好きな展開だったんだけども。とりあえず、人智を超えた武術の使い手が、あちらこちらから登場し。(というか、もはや並の人間が登場しないんじゃないかなというくらいの強さと知性の持ち主が勢揃いする)
相手の身体の、どの部分をどのように破壊するかという所にページがガンガン割かれていくのが、私の好みではなかった。
交渉戦の描写も丁寧で、そちらはドキドキしながら読めた。
まぁこの辺りは好き嫌い分かれる所ということで。
つまりは、アクションシーン小説。 -
中国から最新の軍用機に乗って日本に亡命希望を出してきたところから物語は始まります。
軍用機に核兵器が積まれているらしく、誰がなんのために?
1歩間違うと、東京全滅という危機に立ち向かう、正反対な性格というか動きというか、その2人の義兄弟の目線から書かれています。(動の義兄と、静というか、室内で人を動かして対処する義弟)
実写化したら、アクションが確かにすごいかも。と言うぐらいアクションシーンが細かく書かれているので、アクションより頭脳派が好きな私は、多すぎるアクションのせいでこんなに本が分厚いのでは?と、思ってしまいました。 -
意外に面白い。格闘シーンに迫力がある。主人公が最強すぎ?
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借りたもの。
SF、しかし日本の国防・外交のリアリティに基づいた長編小説。
突然、日本領空に飛来するステレス爆撃機。目的は不明。亡命を希望?何故か民間の羽田空港に着陸…
日本側の対応も「だれがそれを許可したか分からない」という状態からの不信と不安。
並行して、民間の警備会社員のところに中国人顧客からの緊急連絡。
その2つの事件が次第に結びついてゆく……
太平洋戦争での日本敗戦以降の外交、国防、さらに国内の組織体制がリアルに書かれている……
日本の動きづらい組織形態がよくわかる。
難しい専門用語などはさらっと書いて、端的でわかりやすい。
細分化されていて管轄がまるで異なっているため、連携がとれない指揮系統。
矢部宏治『知ってはいけない』( https://booklog.jp/item/1/4062884399 )で言及される「戦後レジーム」に縛られ“自国を守る”ことに非常に不安定なままの日本組織。(それを是とし、経済発展に力を入れ、老後の社会保障に力を入れ続けていた70年)
中国から日本の防衛力は弱く問題視されていないこと、むしろ後ろにいるアメリカを敵視していることが具体的に指摘。…現実、情報は開示されているようなものだから当然か。
また、日本のこうした体制が何故起こっているのか、そして過去の外交的な緊張を与えた実際の事件を引き合いに出し、そのリアリティを肉付けしている。
その過去の事例・事件を知らないと少し読みづらいかもしれない。
金大中事件(韓国大統領拉致事件,1973年)、ベレンコ中尉亡命事件(真空管の戦闘機で来た,1976年)、九州南西海域工作船事件(2001年)など……
『シン・ゴジラ』( https://booklog.jp/item/1/B01MSZDGVF )に匹敵する、情報量としてはそれ以上だった。
数多久遠『航空自衛隊 副官 怜於奈』( https://booklog.jp/item/1/4758443300 )の専門特化したリアリティとはまた異なる。知らない人でもわかりやすい言葉。表現でどんどん読み進められた。
映像化できそうな表現で、アクションも描いている。
…でも日本映画では、このスケールをそのまま実写映像化はできないだろうな。
フィクションなのは今時、自由落下式核弾頭だったり、アーム型?操縦補助ロボットが出てくる事だろうか……
帯にあった「標的は、日本国民1000万人」というコピーは、いささかミスリードである気がするが…… -
小説すばる2018年4月号〜2019年12月号のものに加筆修正を加え2021年1月集英社から刊行。日本を舞台にした国際アクション。天才的な体術を使う真丈とステルス爆撃機で中国から亡命してきた女性パイロットの二人の活躍が楽しい。でも、冲方さんなんだから、マルドックスクランブル並みの展開を期待してしまいます。ラストの爆撃機の秘密的な要素が明らかになるくだりは、ちょっと拍子抜けでした。
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羽田空港に突如、中国のステルス爆撃機が飛来した。
女性パイロットは告げる。「積んでいるのは核兵器だ」と。
核テロなのか、あるいは宣戦布告なのか。
警察庁の鶴来(つるぎ)は爆撃機のパイロットを事情聴取しようとするが、護送中に何者かに拉致されてしまう。
囚われた彼女を助けたのは鶴来の義兄で警備員の真丈(しんじょう)だった。
真丈は彼女に亡き妹の姿を重ね、逃亡に手を貸す決意をする。
核起爆の鍵を握る彼女の身柄をめぐり、中国の工作員、ロシアの暗殺者、アメリカの情報将校、韓国の追跡手が暗闘する。
一方、羽田には防衛省、外務省、経産省の思惑が交錯する。
いったい誰が敵で、誰が味方なのか。なぜ核は持ち込まれたのか。
爆発すれば人類史上最大の犠牲者が――その恐怖の中、真丈と鶴来が東京中を奔走する。
妙に細かい戦闘の蘊蓄や、えっ?という部分が気になるが、それでも日本の作家がこれだけのスケールの諜報アクション小説を書いたことを喜びたい。
次回作がありそう。 -
突如現れた正体不明の戦闘機。その要求は、「亡命を希望する」とのこと。さらに核兵器も積んでいて、着陸した羽田空港は大混乱。しかも戦闘機のパイロットは女性。護送しようと思ったら、拉致されてしまうなど、背景には大きな影が潜んでいる。2人の兄弟を中心にその影に挑んでいきます。
とにかく長かったです。単行本で約510ページというボリューミーのある量でしたが、精神的にはもっとあるように感じました。説明口調が多くあった印象だからかもしれません。
題名の「アクティベーター」は、「活性剤」や「活動的にする人」という意味だそうです。
活動的ということで、本作品ではアクションシーンが多くあり、映画を見るような躍動感がありました。プロ対プロのアクションだけでなく、プロ対プロの言葉のバトルなども楽しめました。
帯では、「核兵器」や「標的は日本国民1000万人」と紹介していますが、あまりそこを重視せず、女性パイロットや影に潜む組織を中心に描いています。最後の方で、一般市民にも影響するという緊迫感が伝わってくるので、それまではどっちかというと、その範囲だけで出来事が動いているので、範囲外に与える影響の緊張感があまりなかったように感じました。どこか遠くでいざこざが行われているという感覚でした。
難しい用語が多く登場し、現実的よりも近未来SFを読んでいるような感覚がありました。
物語の構成としては大きく二つの物語が同時進行で描いています。一人は、真丈太一。綜合警備保障の警備員で、クライアントの家から緊急出動の命令が来たことから物語が始まります。今は警備員ですが、昔は・・・という経歴を持っていて、羽田の戦闘機とどう絡んでいくのか、アクション満載で面白かったです。
もう一人は、鶴来誉士郎。警察庁の警視正で、主に羽田に留まりながら、太一の物語とどう絡んでいくのか、アクションシーンよりは、こちらは言葉のバトルを楽しむことができました。
2人は義兄弟で、段々とそれまでの経緯がわかっていきます。なかなか全てを描くことはなかったのですが、二人の掛け合いが、緊張感を緩和させることもあり、良いアクセントでした。
登場人物が多かったですが、誰が敵で、誰が味方か、背景で動く大きな組織の動き、アクションなど読み応えが多くありました。