紅蓮の雪

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 218
感想 : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717389

作品紹介・あらすじ

伊吹の双子の姉・朱里は20歳の誕生日を向かえた日、なんの前触れもなく自殺した。朱里の遺品の中から大衆演劇「鉢木座」の半券が見つかり、それが死ぬ前の最後の足取りであることを知った伊吹は、少しでも真相に迫るべく一座の公演に行った。公演後、座長に詰め寄る伊吹の姿を見た若座長の慈丹は、その容姿を見初め、入団を強く進めた。伊吹は何か手がかりが掴めるのではと入団を決意し、以降、訓練と舞台に追われながらも、「女形」としての人気も得始めていた。そんなある日、ひょんなことから両親と鉢木座との繋がりが露見することに。それは鉢木座の過去に秘められた禁断の事実だった……。血脈に刻まれた因縁、人間の最果てと再生を描いた問題作。

【著者略歴】
遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年、大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒業。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。著書に『アンチェルの蝶』(第15回大藪春彦賞候補)『冬雷』『蓮の数式』『ドライブインまほろば』(第22回大藪春彦賞候補)『廃墟の白墨』『銀花の蔵』(第163回直木賞候補)『雨の中の涙のように』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 牧原伊吹の双子の姉の朱里が20歳の誕生日に「伊吹ごめん」と書置きを遺して飛んでしまいます。

    伊吹はこの世でただ一人本当の心の内をみせることができる姉の死の真相を知ろうと、姉が亡くなる1週間前に観に行った、芝居を観に行きます。
    そこで若座長の鉢木慈丹に出会い、そのルックスを見初められ、伊吹が剣道と日舞をやっていたことを知るとすぐさま旅の一座、鉢木座にスカウトされ、座長に引き合わされ、トントン拍子に入座して慈丹と同じ女形になります。

    初舞台は大成功しますが、伊吹は子供の頃から父親に「汚い」と言われて育ち、他人に触れることができないという秘密があります。
    それでお客の女子高生が公演後に伊吹に「お花」を付け、触れようとしたのを突き飛ばしてしまうという失態をおかしてしまいます。
    それでも、お客の女子高生には謝罪をして、伊吹は慈丹とともに、一座のツインタワーを成す人気役者になっていきます。

    しかし、伊吹は途中で鉢木座と自分との古い因縁を知り、自らの出生の謎にたどりつき、姉が何故自殺したのかを知ってしまいます。

    とても哀しい痛ましい真実が隠されていました。
    でも、伊吹は慈丹と巡り合ったことによって、姉のあとを追うことはせずに、雪は雪でも紅蓮の雪を舞台に降らせ続けながら生きていくことができるのでしょうか。

    • まことさん
      くるたんさん。
      私も、またコメント欄でお会いできて嬉しいです。

      朱里の気持ちはとても切なかったです。
      慈丹の存在が救いでしたね。
      ...
      くるたんさん。
      私も、またコメント欄でお会いできて嬉しいです。

      朱里の気持ちはとても切なかったです。
      慈丹の存在が救いでしたね。
      これから、伊吹たちに幸せがたくさん訪れるといいですね。

      では、これからも、よろしくお願いします!
      2021/04/12
    • しずくさん
      >朱里の気持ちはとても切なかったです。

      myレビューでは触れませんでしたが、彼女の伊吹を想う気持ちは痛々しく、自死を選んでしまう他には...
      >朱里の気持ちはとても切なかったです。

      myレビューでは触れませんでしたが、彼女の伊吹を想う気持ちは痛々しく、自死を選んでしまう他には救いようがなかったのかしらと無念で仕方ありません。
      2021/04/29
    • まことさん
      しずくさん。
      そうですね。
      これは、物語だから、朱里の自死から始まりますが、本来ならば、朱里を救うのが、一番、あるべき形でしたよね。
      しずく...
      しずくさん。
      そうですね。
      これは、物語だから、朱里の自死から始まりますが、本来ならば、朱里を救うのが、一番、あるべき形でしたよね。
      しずくさんのレビューされている、映子への批判は、もっともだと思います。
      2021/04/29

  • 吐息の一冊。

    読後、思わず吐息がもれた。
    何度もギュッと心を締め付けられる感覚、苦しみにのみ込まれそうな感覚。これこれ!久々の遠田劇場だ。

    親の愛を得られなかった理由、秘密とは…伊吹達の苦しみに連れ出された世界は苦、美、紅、白の世界。

    随所でしぼりだされる苦しみは痛み一色の真紅の血を思い浮かべるほど。

    子には何の罪もないのに親を選べず、身勝手さに左右される人生のつらさがのしかかる。

    慈丹の存在に救われたな。まさに光へとの導きを感じた。

    匂いたつような美を感じる大衆演劇の世界、降り止まぬ純白の紙雪。

    雪が血を苦しみを何もかもを覆い尽くせ!
    そう願った。

    • まことさん
      くるたんさん。こんにちは!

      やっと読むことができました。
      なんと今年初の図書館本なんです。
      今まで、雪がいっぱいあって図書館にいけ...
      くるたんさん。こんにちは!

      やっと読むことができました。
      なんと今年初の図書館本なんです。
      今まで、雪がいっぱいあって図書館にいけず、積読本中心に読んでいました。
      『紅蓮の雪』は設定が『月桃夜』に似てる気がしましたが、また違う話で読まされました。引き出しの多い作家さんですね。
      これからまた、くるたんさんの本棚からもお借りしに行きますのでよろしくお願いします(*^^*)。
      2021/04/12
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪
      わ、まことさんは雪国にお住まいなんですね。

      これは久々の遠田劇場って感じでしたね。たしかに月桃夜の関係ですね…せ...
      まことさん♪こんにちは♪
      わ、まことさんは雪国にお住まいなんですね。

      これは久々の遠田劇場って感じでしたね。たしかに月桃夜の関係ですね…せつない。

      次作も楽しみですね¨̮♡
      2021/04/12
  • 出自で悩む主人公たちの思いは計り知れない。ましてや自分が近親相関の両親の間にできた双子(姉弟)であり、親から汚れていると云われ愛情を受けずに育ったのであれば。
    冒頭から、双子の姉はその事実を知り、弟の伊吹に「ごめん」という遺書を残して飛び降りる。伊吹は遺品に大衆演劇の雑誌と入場券の半券を見つけ、自殺の原因を探ろうと大阪の大衆演劇「鉢木座」の公演を観に行く。逆に、伊吹は大衆座若座長の慈丹にスカウトされ、新人女方としてデビューする運びとなった。
    大衆演劇にかけられる舞台演目『一本刀土俵入』『三人吉三廓初買』『八百屋お七』『牡丹灯籠』などの濃いどろどろとした情念が、まるで本作を引っ張っていき、引きずり込まれそうだ。その重い情念に耐えきれず、一旦は読むのを止めたが、とにかく読了して伊吹の行く末を見守ろうと気を取り直して再びページを繰った。理由は、劇団の若座長・慈丹の存在と、私も演劇部に所属していたから。
    双子の母親・映子を何とか分かろうとしたが、最後まで理解できないキャラクターだった。実の兄を愛し子を身籠り周囲の反対を押し切り産む決意をし、兄と共に家族を作り双子を成人するまで育てたのに。外目では仲の良い夫婦を演じ続け、生んだ子には人の道を踏みはずしてできた子供と恥じている。外れた生き方を選択したのであれば責任持ってつき進んで欲しかった。その強さがなければ子供まで巻き込む生き方を選ぶべきではなかった。生まれた子供たちが自らを肯定して幸せになれるはずがない。自己憐憫に陥り、自分のことでいっぱいいっぱいの映子は憐れすぎた。仲立ちに入った慈丹が「伊吹の前に今後現れないように」と、親子の絶縁状を言い放った時には、当然のように思われた。一欠けらの同情すら覚えないのは非情だろうか。
    出自は簡単に笑い飛ばせるものではないだろう。平野さん著『ある男』で、殺人事件を犯し死刑となった父を持つ息子が、戸籍を買い別な人物になりすます件が或る。自分が両親の嫌いな欠点を受け継いでいると感じる時でさえ、嘆きたくなるのだから、彼らの苦しみは筆舌に尽くしがたいだろう。『血は争えない』は充分人を傷つけてきたはず。クローンで生まれた子供たちを違う環境で育て、異なる性格に成長したという話もある。
    伊吹君、人は変われる、自信を持ってこれからの人生を歩んでいって!

  • 朱里と伊吹の出生の秘密が気になりながら読んでいた。途中から大体の予想はついていたけれど、それでも、座長が真実を語り始めると、読んでいる自分も覚悟を持って、ただただ夢中になっていました。そしてその事実は、想像していたよりも過酷な運命で、心が震えました。
    過酷な運命を背負い、父と母に無視され生きてきて、事実を知った朱里と伊吹の気持ちが、辛いほど伝わってくる。でもそれ以上に、私は、誰にも知られてはいけないその秘密と鉢木座を背負って生きてきた座長の秀太が、どれだけの思いを抱えていたのだろうと思うと、凄く胸が痛みました。
    最後は舞台に舞う雪のように真っ白な気持ちになり、その雪に、伊吹と鉢木座のこれからが、愛情いっぱいに包まれたものでありますようにと願い読み終えました。
    余韻が覚めない、激しく夢中になった一冊でした。

  • ふらっと立ち寄った図書館で新書コーナーにあったので、即借り笑
    相変わらず話に引き込む展開づくりがうまい。。
    未知なる大衆演劇の世界も知れて、それ含め面白かった。

  • 三か月前に遠田潤子さんの『緑陰深きところ』を読んで面白かったので、こちらも読んでみました。
    どちらも暗いです。

    『紅蓮の雪』はそのうえ気持ち悪いです。
    でも妖艶な感じに仕上がっているのは
    松浦シオリさんの表紙のおかげじゃないでしょうか。

    めちゃ好みなので調べてみたら
    私の大好きな上村松園さんの影響を受けているとのこと!

    さて話を小説に戻しまして、だいたい真ん中あたりで
    両親の関係は読めてきました。
    一般にそこからどんでん、どんでんとなることも多々ありますが、この本はそういうことはなく、ひたすら深く入り込んでいくというのが凄く良かったです。

  • 双子の妹が身投げして死んだことから始まる、親子の因果を辿る物語は、作者らしくじっとりと陰鬱な側面を持ち、それこそべったりした雪のように肩を重くするような感覚を読むうちに持たされていきます。それでも語りが巧いので、するするとその重い物語世界の沼に沈んでいくのです。

    そうして序盤から匂わされる普通ではない家庭環境と過度に他人との接触を拒む主人公、彼の過去は実際、相当な禁忌に包まれたものでした。

    ただ、その題材を煽るように使うのではなく、まっすぐに向き合って描いているので、愛情のままならなさがゆえの悲しみを、怒りと憎しみを爆発させる彼らのあいだから感じ取りもしました。

    最期の情景が絵としても心象風景としても美しく、印象的でした。また、これも作者の作品らしいと思うのですが、どんなに辛苦を味合わせた登場人物にも、ひとすくいの希望を持たせてくれる、しっかりした明るさが描かれているのが好きだなと思うのです。

  • 双子の姉が自殺をした。突然の出来事に弟や元婚約者は、信じられないでいた。姉は自殺する1ヶ月前、突然婚約を解消した。なぜ?遺品を整理しているうちに、ある大衆演劇の版権のチケットが。自殺する一週間前だったので、その足取りを辿ろうと訪ねる。
    そこで、若座長からスカウトされる。戸惑いながらも大衆演劇の道に踏み込みながら、姉の自殺の真相に迫っていきます。

    姉の死の真相もそうですが、大衆演劇の魅力も描かれていて、その描写は美しく儚く、切なかったです。兄弟愛、家族愛、禁断の愛など良くも悪くも色んな「愛」が詰まっていました。
    特に遠田さんの大衆演劇「愛」も伝わってくるくらい、大衆演劇の裏側や演者たちの芝居に対する愛などちょっと見てみようかなと思わせるような表現でした。
    テレビでしか大衆演劇について知らなかったのですが、その裏側では壮絶な戦いが巻き起こっていて、改めてその奥深さを知りました。

    最初は姉の死の真相に迫るということでミステリー要素かなと思いましたが、そこは一旦置いて大衆演劇での苦悩が描かれています。歌舞伎とも演劇とも違った手法やお客さんとの距離、楽しませるために色々なことをしている描写に凄まじさを感じました。改めて梅沢富美男さんや早乙女太一さんなど演劇人の魅力や素晴らしさを再発見しました。

    弟の大衆演劇生活がちょっと落ち着いた頃に事態は急変し、弟の家族の秘密や姉の死の真相について迫っていきます。怒涛の如く、次々へと色んな出来事が起きるので、その世界観に引き込まれました。過去を振り返りながら、姉と弟との壮絶な過去が描かれるのですが、精神的に過酷すぎて酷いなと思いました。
    後の方で、その真相が分かるのですが、とにかく複雑に絡まりすぎて、濃厚な人間ドラマを見ているようでした。

    そして最後のシーンは感情と感情とのぶつけ合いで、ジーンと感動しました。それまでも登場人物たちの感情のぶつけ合いが多くあったのですが、最後が一番印象深く、涙を誘いました。現実だけれども、芝居を見ているかのようでした。
    重厚感あふれる言葉、登場人物の表情、ついついページを捲るのがたまりませんでした。

    様々な過去を経てからの人生に新たなる幸せの1ページを送って欲しいなと思いました。

  • 大衆演劇の世界は、観たことが無いので詳しくはわからないが身内で固めて地方をまわっているのかな…と思っていた。
    双子の姉が、突然自殺をした。何故かわからず最期の足取りを追った青年がその世界へはまっていく。
    まるでそれは必然のように…
    全ては、縁で繋がっていた…
    哀しさだけが残る。

  • ドS作家と思っている遠田順子さん。登場人物へのこれでもかといういじめっぷりと、その先に見える光のせいで読む手が止まらない作家のひとりで有ります。
    この作品は大衆演劇を舞台にした、禁忌的な2代に渡る恋愛物語ですが、ギチギチに痛々しいお話で遠田節全開です。ここの所テイストが少し変わったなと思っていましたが、それもなかなか良かったので器用な人なんだなと思っていましたが、やはりこちらが本性か。
    ディープに倒錯した世界観で悪酔いしそうな展開ですが、女形という華やかで倒錯した明るさが中和してくれて読み心地は良かったです。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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