黄金旅程

著者 :
  • 集英社
4.09
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717747

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞第一作。

装蹄師の平野敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいる。牧場は幼馴染の和泉亮介の両親が所有していたものだったが、騎手だった亮介が覚せい剤所持で刑務所に入ったこともあり譲り受けた。敬が注目するのは栗木牧場生産の尾花栗毛馬・エゴンウレア。以前装蹄したことがあり、その筋肉に触れた瞬間、超一流の資質を秘めた馬だと確信していた。だが気性が荒く、プライドも高い馬で調教に手を焼いていて、今まで勝ち鞍がない。その馬主と競馬場で会った際、レースで突然馬が興奮するという不自然な現象に遭遇する。また、敬は出所して無職だった亮介に、本来の力を取り戻すべくエゴンの乗り役になるよう勧める。その後、レースでの不自然な現象は厩務員の一人が犬笛を使って八百長に加担していたことが判明。敬は裏で糸を引くヤクザの尾行を始めるが気付かれ、拉致され殺されそうになるも、一命を取り留める。様々なトラブルが起こる中、エゴンが出馬するレースの日も近づき、亮介による最後の調教も終わった。エゴンに人生を託した人々の想いは、二勝馬脱却への奇跡を呼び起こせるのか――。

【著者プロフィール】
馳星周(はせ・せいしゅう)
1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。96年デビュー作『不夜城』で第18回吉川英治文学新人賞、98年『鎮魂歌』で第51回日本推理作家協会賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞、2020年『少年と犬』で第163回直木賞を受賞。他の著書に『約束の地で』『雪炎』『ソウルメイト』『神奈備』『雨降る森の犬』ほか多数。

感想・レビュー・書評

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  • 間違わない、傷のない人なんて多分いないよ
    丁寧に真面目にもがくのが人間♪

    読み終えた時、この歌詞が浮かんだ。

    競馬産地で関係者のそれぞれの思いを乗せて、駆け抜けるサクセスストーリー
    みんなの馬を愛する気持ちとドキドキ感が伝わってきて、気がついたら一気読みしていた。


  • レビューで評価が高かったので興味を持った、
    初めて読む作家さん。
    馬への愛とリスペクトを感じる作品だったが、
    主人公をはじめとする人間の方にあまり魅力を感じる人物を見い出せず、少し残念。

    ここではあくまでも馬が主役。
    生き生きと描かれる馬の調教やレースシーンには引き込まれた。
    馬を取り巻く競馬界の問題、課題も
    小説の中だけの話ではないんだろうな、と感じた。

  • 黄金旅程=名馬ステイゴールドをモデルとした作品。現役時代はシルバーコレクターと言われたほど2着を入賞をいくつも果たし、最後の最後でG1香港ヴァースを制して種牡馬入りした名馬。代表産駒は三冠馬オルフェープル、ゴールドシップなど多くのG1馬を輩出。競馬好きの自分としても大好きな馬の一頭だ。
    本書はステイゴールドをモデルにしたエゴンウレアという馬を勝たせるために牧場主、調教師、育成師、蹄鉄師、獣医師が苦難を乗り越えていくという設定。

    うーーん。
    という一言が感想の第一声。笑
    馳ノワールが好きな人には良いのだが、陰湿な感じで話が進んでいくのが、どうも馴染めない笑
    途中の官能小説みたいな絡みも要らないなぁ笑
    もっとレース展開や心理戦を絡ませて、大舞台で活躍する話を期待していただけに残念だった。
    オルフェーブルの話も出てきたんだから、凱旋門賞を優勝するような内容にしたらよかったのに!
    でもまあ競馬好きとしてはなかなか楽しめた一冊でした。

  • 競馬ファンの自分には面白い話でした。

    競馬には騎手、馬主、調教師、蹄鉄師などいろんな人の想いが込められていることがよくわかる作品でした。

    1レース、1頭にかける想いというのがとてもよく伝わってくる描写が多く、競馬の競争だけではない新たな一面を見ることができたと思います。

    自分の夢が破れたとしても自分の想いを誰かに託すことや違う方法でアプローチする方法で自分の夢をみんなの夢として実現を目指す。そんな姿勢が主人公をはじめとして多くの登場人物に見られました。

    個人的にはこの作品のモデルとなったステイゴールドやモデルになって描かれている(自分はそう読み取った)オルフェーヴルやゴールドシップの走りに心を動かされた経験があるので、そこも著者である馳さんと好きなタイプが似てるなぁと思いながら読んでいました。

  • 感想
    ダビスタでなかなか強い馬が作れなかったことを思い出す。

    馬に関わるのはジョッキーだけでなく、調教師や装蹄師、獣医、厩務員、トレセンの乗り手など様々な人がいるんだなぁ。

    サクセスストーリーで読了感も良かった。

    あらすじ
    主人公の敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいる。若い頃は騎手を目指したが体重管理が出来ずに断念し、装蹄師として働いた。

    和泉牧場の一人息子だった幼馴染の亮介は元一流ジョッキーだったが、覚せい剤で逮捕され、出所して再び戻ってきた。その頃、ちょうどエゴンウレアという実力はあるが、勝てない馬のトレセンでの乗り手がおらず、亮介が雇われることに。しかし、借金取りが亮介に来て以来、なんだか雲行きが怪しくなる。

    敬は牧場を担保に入れて、馬主からお金を借り、亮介の借金を肩代わりする。それも全てエゴンウレアのためだった。

    エゴンウレアという馬と出会い、周囲の人の意識も期待も変わっていった。ノール・ファームという大型牧場に対して、日高の星としてエゴンウレアは期待され、現役最後の香港のG1戦で、黄金旅程として名前が登録され、見事勝利し、種馬として登録される。

  • いい女が脈絡も無く自分に惚れてきて、自分も憎からず思っているが割とそっけなくしても向こうからぐいぐい来るというオヤジドリームな部分がなんとも都合いいなと思いつつ、それ以外の部分はさすがの筆力だし、なんなら私もオヤジなので実はオヤジドームな部分だって楽しんで読みました。

    競馬という文化が、無数のサラブレッド達の死によって支えられているという事が、もっともこの物語の根底にあるもので、競馬賛美では決してないけれど、生き物を人間の都合の良いように作り替えるという傲慢さの先にある美しさに取り込まれるジレンマ。そういう相反する感情を持ちながら競馬に向き合っている人々の姿が目に浮かびました。
    エゴンウレアという、類まれな身体能力を持ちながら人間に御されない強靭な精神によってレースで勝つことが出来ない。しかし天寿を全うさせ、その遺伝子を残すにはG1で勝たせる事以外の道はない・・・。
    競馬に全然興味無いのですが、それでもとても面白かったので、競馬ファンならもっと深く楽しめたんだろうなと思いました。動物に深い愛情を寄せる筆者の心が現れている一方で、競技動物を生み出してお役御免で肉にしてしまう罪深さ。そういう部分をしっかり描いている事で、競馬を美化するだけではない一冊になっていると思います。
    先日早見和真さんの「ザ・ロイヤルファミリー」で馬主について知りましたが、こちらは馬の生産者、調教師、装蹄師という存在について知りました。馬券の一つも買ったことないけれど色々な経験が出来る本って素晴らしい。

  • 競馬を見る視点が確実に変わり競馬を愛する人々の気持ちが凄く伝わった
    実力はあるのに気性が荒く人間の言う通りにはならないエゴンが引退して生き残るためにはGⅠで優勝し種牡馬になるしかない
    引退が決まっているラストランの香港GⅠの優勝は感動と興奮
    そしてエゴンの血は受け継がれてゆく

  • かつての名馬「ステイゴールド」をモデルに、
    『エゴンウレア』という1頭のサラブレッドと、
    エゴンウレアに夢を託す人達の物語。
    ただただ競馬の世界を描いているのではなく、
    人馬一体を描いた、人と馬の物語だった。
    いろんな要素が詰まっていて、
    設定や展開が凄く面白くて、
    読み進めるうちにどんどん小説の世界にはまっていき、最後は競馬の素晴らしさを感じとれる、そんな物語でした。
    昔、競馬を楽しんでいた頃を思い出し、また馬券を買ってみようかなとも思いました(笑)。

  • 競馬ファンは「ニヤリ」としてしまうことが多いのではないかと。タイトルがすでに現実の競走馬「ステイゴールド」を連想する名前ですし。作中に登場するベテランジョッキー「武藤邦夫」の名前にもニヤリとしてしまいます。息子のほうでないあたり、競馬歴の長さを誇る矜持を感じるというか。
    ただ、あくまでフィクションで、ステイゴールドがモデルかと思われるメインの馬の毛色からして別馬ですし、競馬界を取り巻く現状も、現代の話です。

    ベテラン競馬ファンが描く競馬小説らしく、単なる「競馬ロマン讃美」ではない作品で、大満足で読めました。
    ギャンブルである以上、どしてもアングラと近しい場所になってしまう側面や、一方で、馬産に関わる人たちの「夢」という側面と、そして人間の思惑の外にある「馬の美しさ」など。「競馬」がもつ様々な要素を存分に味わえる小説でした。

    また、馬産地の現状がリアルに盛り込まれていました。著者は、競走馬のふるさとである浦河出身とのことなので(Wikipedia情報ですが)、昨今の競馬が、別エリアにある某大手の「運動会」である現状や、それに対抗すべく小さな牧場が努力を重ねてることなど、小説でありながらルポルタージュのようです。レースの結果なども、大きなレースはなかなか勝てないんだよというカンジも、リアルだった。
    そして何より、引退した競走馬についての話が、わりと頻繁に登場していることが、個人的に嬉しかった。主人公が装蹄師をやりながら養老牧場を運営しているあたりにも、引退馬への作者の強い想いを感じました。引退した馬たちのことを考える人が、これでまた少し増えてくれるだろうなと思うと、この作品がたくさんの人に読まれますように、と思います。

    すでにどっぷりと馬券ファンな人にも、「馬ってキレイ」という人にも、まだ馬券は買ったことないけど競馬に興味がある人にも、とにかく「馬」に興味がある人全員にオススメです。

  • 元々、ステイゴールドの話自体はよく知っていた。勝てなければ殺処分という未来と向き合いながら、馬にかかわる人がどんな思いで競馬に携わっているのかがよくわかる。人にいつも反抗して、ギリギリで差されるシルバーコレクターで、愛さずにはいられない。この馬をどうしても勝たせてやりたい。勝つことで、馬だけでなく、地域の夢を叶えられる。
    フィクションも混ぜつつ、すごく熱くなる作品。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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