- 集英社 (2022年6月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (640ページ) / ISBN・EAN: 9784087718010
作品紹介・あらすじ
「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。
【著者紹介】
小川哲(おがわ・さとし)
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第三八回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。『嘘と正典』(2019年)で第162回直木三十五賞候補となる。
感想・レビュー・書評
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歴史物は苦手意識がありつつも、その時代の風景や生活を思い描きながらページをめくり、長編作品を読み終えた達成感を味わった。1899年から1955年までの間の物語。日露戦争、満州事変、第二次世界大戦と日本は外国との戦争を繰り返してきた。その中で、今まで私の生活の中で想像してこなかった、それぞれの国の人、またそれぞれの立場からの視点で物語が進んでいく。
物語の舞台は、奉天の近く架空の町、李家鎮であり、登場人物ごとに視点を変えながら物語が進んでいく。それぞれの視点で出来事、争い、相手を考えると、その時代のその人物の置かれた状況や背景によって、同じ出来事が違う景色となることを想像させられる。きっと人と人との争いは、そのようなものなのだろう、残念ながら。人と人の争いの中で起こる残虐な場面や凄惨な場面では、やりきれなさも感じたが、これがこの時代を生きた人の現実であろうと想像した。でも、今、起こっている争いも同じなのだろうか。やりきれない思いが膨らむ。
この長編作品のテーマとして、地図に記されていた実在しない場所の意味を、登場人物の思いと重ねて考え続けていた。最後にその意味が分かり、登場人物の希望に近づけた感覚を味わった。膨大な参考資料をもとに、この作品を詳細かつ丁寧に作り上げた作者の本作品にかけるものすごい熱量を感じた。 -
最初の数章は登場人物も多く、日本、ロシア、支那と視点が目まぐるしく変わるため、理解しづらくはあったが、現代からは想像もできないような当時の状況に、気づけばすっかり小説世界に引き込まれていた。
どうやら作者はプロット無しで書いているようで、予期せぬ展開に休むことなく600頁超を読み終えたが、この小説が伝えたかったことがややぼやっとしてしまった感もある。長編になればなるほど、それなりのものを期待してしまうのか、もう少し込み上げる何かが欲しかった。やや甘めに★4をつけた。 ★4.0-
2023/06/15
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コメントありがとうございます。
ちゃんと面白かったので、迷うようであればおすすめします。宜しければ感想教えてください。コメントありがとうございます。
ちゃんと面白かったので、迷うようであればおすすめします。宜しければ感想教えてください。2023/06/15
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第168回直木賞受賞作。
1901年から1955年までの間の満州での物語です。
最初に出てくるのは満州でロシア語の通訳をしていた細川。
そして細川の友人の高木は日露戦争で命を落とします。
高木の妻の慶子は妊娠中で戦争中に長男、正男を出産。細川の勧めで慶子に惚れた須田という地図職人と再婚し、次男、明男が生まれます。
やがて明男は建築を学び、学生として満州へ渡り中国の権力者孫悟空の愛娘で、父を憎み殺そうとしているチョンリンと知り合います。
そして戦争が始まっていきます。
P535より 明男のモノローグ
建築だ。建築によって都市を繫栄させる。それによって満州という国家の理念をー。
「五族協和」と「王道楽士」を実現する。それこそが自分にとっての戦争だった。米国との開戦は満州開発の終戦である。昭和16年12月、明男の戦争は完全に終わってしまったのだった。誰かを殺すための施設を作ることは建築家の仕事ではない。
ー以上引用。
明男とチョンリンはその後も何度か再会しますが…。
この物語はたくさんの登場人物が出てきますが、主人公は明男だと思います。
この物語を読んで私が思ったのは、59歳で私が生まれて半年足らずで亡くなった母方の祖父のことです。
私が生まれて4カ月で交通事故で(ジープに乗っていましたが、わき見運転のトラックに跳ねられました)59歳で亡くなりました。ので私にはもちろん記憶はなく、母が見せてくれた写真のみの記憶です。
祖父も一級建築士でした。
祖父はちょうどこの物語の後半の1941年にインドネシアで浅野セメントという会社の工場長をして働いていたそうです。インドネシアにいたときに太平洋戦争が始まり日本へは帰って来られなくなったそうです。
私の母は1941年12月10日、真珠湾攻撃のあった日に祖母が阿佐ヶ谷の自宅で産みました。祖父の留守中に産んだ子どもです。
そして帰宅できなくなった祖父はインドネシアで生きながらえて、戦後、船で帰ってきたそうですが、その船中で亡くなった仲間は海へ埋葬されたなどの痛ましい話も母から聞きました。
祖父は帰ってきて祖母と母の疎開先でその後も当時まだ木造建築が多かった建築物をコンクリートで学校や病院、住宅など精力的にどんどん建てて59歳まで生きました。
今回この本を読んで思ったのはそんな祖父の仕事の素晴しさです。今でも地元に祖父の建てた建物がたくさん残っています。
誇りに思っていいのだと思いました。 -
激動時代の価値観と恨み辛みが交錯し… 現代にも通じる建国と戦争、人類最大の難問の答えは #地図と拳
■きっと読みたくなるレビュー
20世紀の大日本帝国時代、満州の架空都市をベースに語られる群像劇で、読み応え抜群の歴史冒険&空想小説。
日本軍と満州に住む志那人が血で血を洗う戦いをはじめ、日本と満州帝国の繁栄のため妄信的かつ破滅的に突き進む日本軍が強烈に描かれています。重厚感たっぷりで単行本600ページ以上もある作品ですが比較的読みやすい。
恐ろしいほどの取材力と筆力で書き記されており、直木賞受賞も納得の傑作でした。
〇戦争がもたらす影響とは
善悪も強弱も理屈も何もかも関係なく、ただ勝たねば滅びるという強迫観念。どんなことにも勝利が最優先で、すべてのことに対して勝利で理屈が通ってしまう悲しさ。
子どもたちすらも笑顔がひとつもなく、生活のすべてが恐怖と欺瞞しかない。そりゃ何百年も恨むまれることになる。つくづく人間の業と卑しさに反吐が出ました。
戦闘描写も迫力と凄惨さがすごく、そして只々、憐れでならない。
机上での考え抜かれた作戦や未来への希望のなど、決して戦場には届かない。たとえどんなに優秀な頭脳や未来をひらける能力がある人材であっても、突撃命令ひとつで無残に死んでいく。
人々の夢や希望をすべて食い尽くしていく戦争とは、いったい何なのか。
本作で綴られた物語や登場人物はフィクションですが、遠からず事実に基づいた時代小説。日本人として胸に刻んでおきたいです。
〇国家を創造するには
人々は家をたて、道路を作り、街をつくっていく。
住んでいる人々を率いる先導者がいて街はひとつになり、さらに大きく国家として繫栄していく。そこには未来が創造され、人々は将来への明るい見通しが開けていくのでしょう。
至極当たり前のことなんですが、それがどんなにも難しいことか。
目先の利益を追いかけているようではもちろん無理で、一見正しい理屈や計算であっても決して実らない。みんなの願いと想いがひとつになってこそ、はじめて動き出すのでしょう。
緊張が高まっている現代の世界情勢を見ると、胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。
■きっと共感できる書評
私はかつて地図を作る仕事に従事していることがありました。
新しい道路や建物を調べたり、現地の行政機関に取材したり、実際に現場を見に行ったりしてたんですよ。でも当時の私は、地図は単なる移動手段の情報としか考えていませんでしたね。
時には同僚たちと、ここに島を作ったら面白いねーとか、ここに俺の家つくっちゃおうかな、などと冗談を言っていたこともあります。
しかし本作を読んでみて、私はなんて幸せな時代に生きていてるんだろうと感慨深くなりました。
過去のたくさんの人々のおかげで、今私は幸せに生きている。自分も未来の人々に貢献できる何かを残してあげたい。そんな大切なことを思わせてくれる、素晴らしい作品でした。 -
第168回直木賞受賞作。
今年一番最初に読み終わった本。
感想を書くまでに一月たってしまった…
633ページ。
分厚くて読み応えがある。
「ゲームの王国」を途中で挫折しつつ、オーディブルの力を借りて読み終え流ことができたからこその読破、と思った。
するーっと読める感じではないので、噛み締めるように読んだ。
文章が難しいわけではないが、ところどころ心に引っかかる。
世界からなぜ拳はなくならないか?
その理由は世界地図にある。
世界は狭すぎる。
人間が生活できるのは地球の3〜5%ほどなのだ。
日露戦争前夜から第 2 次大戦まで。
満州を巡る、地図のための拳の、拳のための地図の話。
♫シェエラザード(リムスキー=コルサコフ)-
たけさん
レビューに時間かかるのわかります…笑
なかなかの大作でしたね!
おつかれさまでした!
どんどん受賞作出てきてついてけません…たけさん
レビューに時間かかるのわかります…笑
なかなかの大作でしたね!
おつかれさまでした!
どんどん受賞作出てきてついてけません…2024/02/07 -
naonaoさん、お久しぶりです
最近、読書の波が大きくて…
大作をばりばりに読んじゃいたくなったり、活字は一字たりとも読むかーって気分に...naonaoさん、お久しぶりです
最近、読書の波が大きくて…
大作をばりばりに読んじゃいたくなったり、活字は一字たりとも読むかーって気分になったり
今は紙の本全く受け付けません。
オーディブルのみOKです2024/02/07
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物語について常々思っていることが「良い物語は必ず最後に最初に戻る」ということだ
一番大きな伏線は必ず冒頭で述べられ、必ず最後に解き明かされる
そういう意味でこの物語は、自分の定義する「良い物語」の条件に合致していると言えそうだ
いやー、凄い!何が凄いってこの参考文献の量ですよ!もう断じちゃいます!クマさんのベストレビュー初のレギュラーメンバーになったのを祝して(え?)断じちゃいます
この参考文献のとんでもない量に触れずにレビュー終えちゃダメですよ
(数えたら151冊でした、うわわ)
そして大事なことはそこから何を感じたかということです
内容は人それぞれでいいんです
人それぞれが感じることに正解なんてありません
感じることが大事なんです
で、ワタクシかを何を感じたか
小川哲さん、「歴史」を作ろうとしてるやん!
(え?最初から分かってた?)
残念ながら小川哲さんの書いた「歴史」はリアルとは全く違うので、ちょっと嫌な言い方になりますが「偽歴史」なんですよ
でもそこに圧倒的な重厚感があるんですよね
覆いかぶさってくるような迫力と重みがあるんですよ
なぜか?
思想があるからなんです
太い柱があるからなんです
その柱こそが『地図と拳』なんです
では『地図と拳』とはどういった思想かというと…うん、読めばいいじゃん!(投げた!)-
サリンジャー先生は相性が悪いよのな~。
「バナナフィッシュ日和」が読みたくて「ナイン・ストーリーズ」を読んでみたこともあったけど、もう、さ...サリンジャー先生は相性が悪いよのな~。
「バナナフィッシュ日和」が読みたくて「ナイン・ストーリーズ」を読んでみたこともあったけど、もう、さっぱりで。
\(◎o◎)/お手上げ―でーす2023/07/14 -
あ、ついでに言うと、わたしの本棚評価の☆0って意味は、つまらないっていうことじゃなくて、「意味不明なので評価のしようがありません」ってことで...あ、ついでに言うと、わたしの本棚評価の☆0って意味は、つまらないっていうことじゃなくて、「意味不明なので評価のしようがありません」ってことです。
はやいはなしが「ギブアップ」。2023/07/14 -
わいもギブアップ本には★1付けようと思ってるんだが、今のところないのよね
感性が豊かだからかな〜?わいもギブアップ本には★1付けようと思ってるんだが、今のところないのよね
感性が豊かだからかな〜?2023/07/15
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600頁以上もある大著である。特定の主人公はいない(と思う)。日露戦争前夜から第二次大戦後まで「地図」の中心となるのが、満州の架空の町「李家鎮」。ここは後に「仙桃城」となるのだ。そして「拳」が、日本とロシア後にソ連、そして中国(国民党と共産党)か。
「地図と拳」という題名の意味は、作中を通して登場する細川によって語られるのだが、内容が濃く感想をうまくまとめることができない。以前読んだ同じ著者の史実を基にしたフィクション『ゲームの王国』を彷彿させるものがある。
https://booklog.jp/users/xaborgar/archives/1/4152096799#comment
また、満州国については、三浦英之著『五色の虹』を思い出させられた。
https://booklog.jp/users/xaborgar/archives/1/4087456676#comment
直木賞および山田風太郎賞を受賞 -
非常に壮大な小説です。
中では、日露戦争から第二次世界大戦終戦後までが描かれていますが、縦軸(時間軸)での壮大さというより、横軸(人物)での壮大さが目立ちます。
横に広がることで読みにくさもありますが、複数の視点が描かれることで、それぞれの思想や正義感に偏見を持つことなく触れることができました。
史実を参考にしたフィクションということもあり、淡々とした印象もありますが、そこにリアリティがあり、考えさせられることがたくさんあります。
終わり方もとても綺麗で、読了後には、読んで良かったと思える作品だと思います。
オススメです!
個人的には、仕事柄もあり、地図と建築の話がとても印象的でした。
全ての建物には、それを建てようと思った人がいて、建てた人がいます。
そしてそこには必ず意図や意味があります。
現代の日本人にとって、戦争は現実から遠いものですが、戦争を経験している建物は意外にもたくさん残っています。
そういった建物から戦争という過去へ思いを巡らせるのも何か得るものがあるように思えました。
また、建物に限らず、全てのものについても同じことが言えると思います。
例えば、故人が遺した物を大切に保管しているという行動も同じ原理な気がします。
そのように思う中で、最後のシーン。
これは冒頭と対照になっていて、痺れました。
前に反するようですが、物のように媒介するものがなくても、本当に大切なことは継がれていくのだと思います。
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「建築とは時間です。建築は人間の過去を担保します」
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読む日を考えるほどの久々の長編。
あまりの分厚さに躊躇したが、読み始めると飽きさせない。
日露戦争前夜から満州国の消滅、日本の敗戦までを描いている。
戦争色よりも地図に夢を託す方が強かったように思えたのだが、時代を堪能できるという面もある。
中盤から孫悟空が現れたり…とこちらも一風変わった見どころかもしれない。
不毛な土地で繰り広げられる殺戮。
戦争ほど全てを奪うものはないのだが、繰り返されるのは我がものにしようとするからなのか…。
国家とは、形のないもので地図が記されたとき、形となって現れる。
地図も建築も時間を保存する。時間を繋ぎとめる。
建築の価値は、存在することに意味がある。
このことばに集約されるのかと感じた。
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直木賞ノミネート作品が発表されたとき、図書館に予約を入れたので早く順番がまわってきました
借りてみてビックリΣ(゚Д゚)
分厚い!!
600ページ超え!w
さぁ、気合を入れて読んでいこうー(^o^)/
ひとつの都市が現れ、そして消えた・・・
日露戦争前夜から第二次大戦まで、満州・奉天の東にある名もない都市で繰り広げられる知識と殺戮
圧倒的スケールで描かれた架空の都市と男たちの運命の物語
何だか凄そうー((o(´∀`)o))ワクワク
なのに、何かおかしい…(・・?
あまりワクワクしないぞ…
あれ、ページをめくる手がとまってしまったぞ…w
こんなときは気分転換に他の本を読んでみよー(^^)
みなさんと語ってみたり、ちょっと宇宙へ言ってみたり、巨人に会ってみたり…
よし!気分転換完了!
続きへε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
ん〜、何故だがやっぱり引き込まれない(;´д`)トホホ…
けど、直木賞受賞作だし最後まで読みました!
私の評価は気にしないで興味がある方はぜひ読んでみてくださいね!-
土瓶師匠、敢闘賞ありがとうございます!
オラ、頑張って読んだよ〜
しかし、ほんとーに長かったです…(;^ω^)
土瓶師匠、敢闘賞ありがとうございます!
オラ、頑張って読んだよ〜
しかし、ほんとーに長かったです…(;^ω^)
2023/02/28 -
2023/03/07
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2023/03/07
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本の分厚さに怯んだものの、読み始めれば続きが読みたくなる有様。SF要素もあり、現実離れしていたら…と不安に思いつつも、割と現実にそっておりそれほどまでに空想話でなかったと思う。
話は第二次世界大戦の始まりあたり、満州が舞台で中国読みと日本読みの両方のふりがながある書き方。
中国読みに馴染みがなく、過ぎて仕舞えばまた読み方がわからないが、程よい感覚でちゃんとふりがながあり、集英社の心遣いも感じる。
戦時中のノンフィクションが好きでいくつも読んだが、一番気になるのは戦後各地に残した資産がパーになっていること。国家はもちろん、法人も個人も命以外のものは全て残した。
本書はこれがテーマだと感じる。
当時の価値にして建築物やそのシステムはかなりの価値になっただろう。
満州に置いてきたその資産は、中国から奪った資産に中国の労働力を奪ったもので作ったもの。それは日本の資産とは言えないとの考えもある。
細川と小明の建築計画の続きは一人で妄想する楽しみを残した。 -
実に壮大な作品でした。
日露戦争から第二次世界大戦までの満州の小さな地域を舞台に繰り広げられる存在しない島が描かれた地図を巡る物語で、当時の歴史を史実とフィクションで掛け合わせていって、とても面白かったです。
戦争モノはあまり嫌いなのですが、本作は、確かに戦争モノ特有の戦地の描写とか、グロさもあったの
ですが、実際に現実で起きたことを包み隠さず上手く作品に表現することで、よりリアルに当時のことを勉強しないとなと考えさせられましたし、満州というかつてあった国をもう一度インスパイアさせることもできました。「同志少女よ、敵を撃て」を読んだときに感じた歴史の壮大さをあらためて感じました。第168回直木賞の候補にもなっている本作は、著者の歴史に対する強い思いを感じれる作品だと感じました。 -
これほど分厚い小説は久しぶりだけど、しかも参考文献が150点超にも及んでいるではありませんか!
1899年から1955年に至る大河小説ですが冒頭から引き込まれて3日がかりで読了しました笑
舞台は満州のとある街、何も無かった田舎の地区が中国と日本それにロシアにとっての要の場所となってそれぞれの思惑で時代とともに変遷浮沈していく。
不穏な動きが懸念されるロシアの動静を探るべく軍から密偵として派遣された高木と彼の通訳として雇われた大学生の細川がやっとなんとか辿り着くハルビン、ここから物語は緊迫のうちに始まる。
ドラマを追いつつも戦前戦中の模様が分かる気がする展開がなかなかいい。日本だけに偏ること無くけっこう各国が等距離で語られていていい。
まだ若い著者が戦時中モノを書くのは大変だったでしょうし、だからこそ大量の文献にあたりながら書き進めたのでしょう。しかし距離を置いて俯瞰出来るのは利点にもなりましたね!
そして冒頭の二人がつまりは大きな意味では最後の最後までずっとずっと舞台を回しているというのが心憎い設定の力作でした♪ -
第168回直木三十五賞
第13回山田風太郎賞
第3回みんなのつぶやき文学賞第3位
満州国設立から終戦までの壮大な物語。
満州とは何だったのか?
満州で生きる様々な立場の登場人物が、交互に入れ替わりながら語り手となり、多面的に理解を深めていく。
少しずつ少しずつ時間が推移して、噛み締めるように楽しむ読書体験だった。
登場人物が多く、中国の人名や場所の表記は難しく、なかなか手強いけど内容が難しいわけではない。
印象的だったのは、建築を時間と捉える明男の考え。建築物は人の生きた事実を時間軸を超えて未来へつなげるものだと意識すると、街中で目にする全ての建築物にロマンを感じられそう。
私が感心したのは、戦争に負けると確信した細川が満州を「巨大な不要物」とし、いずれ日本の復興に必要となる資材を節約するべきという合理的な考え。
しかしそれに対して反論した明男の、「建築の価値は誰が所有するかによって決まるのではなく、そこにただ存在することに意味がある」という建築家としての主張にも感動した。
巻末の参考文献の数が凄まじく、猛烈な勉強量と物語の構成力に畏敬の念を抱く。
直木賞受賞に納得。 -
何とか読み終えました。
のんびりペースで読み進めていましたが、ひとまず読了できて良かったです。こんなに分厚い本を読んだのはもしかしたら初めてかもしれないです。
非常に大きな達成感を感じています(笑)
日露戦争から第二次世界大戦へー。
人類史上最大の戦争が勃発し、交戦地域が全世界に拡大していった時代。
本書は満州を舞台にしています。李家鎮〈リージヤジエン〉という街は架空の都市のようですが、まるで本当に実在したかのように、物語においてこの都市の変遷が細やかに描かれていました。
そして本書の特徴として、登場人物がめちゃくちゃ多かったです。
軍人、通訳、建築家、神父、抗日ゲリラ、左翼、戦争構造研究者などなど…。日本や中国の様々な思惑が渦巻き、ぶつかり合いながら、複雑な歴史は刻まれていきます。
大きな視点で見ると、事実としての歴史は一つだけですが、あらゆる立場の人たちにとって、心に刻まれる歴史というのは人それぞれなのだと改めて感じました。
建築とは…歴史とは…世界とは…。
戦争の時代を生き抜いた人々の熱量が伝わってくるような物語でした。 -
重厚、重層、の一冊。
満州を舞台に1899年から1955年までの壮大な時の流れ、戦争に翻弄された国と人生を描いた作品。
歴史と架空が、幾人もの人生と信念が重なり合い、層をなし練り上げられたストーリーは見掛け倒しではない重厚さ。
そして正直、難解。
でもなぜか魅せられてしまう不思議な読み心地を感じた。
中でも主要な立ち位置の細川の言葉、信念には何度も心を動かされた。
白紙の地図に結局は拳の跡しかない虚しさ。
平和という手の握り合いが離れた途端、征服という握り拳に変わる。
それが戦争。
世界地図の未来を想像せずにいられない。 -
満洲は奉天の東にある架空の村・李家鎮(リージャジェン)――炭鉱開発が進み後に近代都市・仙桃城に発展した――を舞台に、日露戦争から第二次世界大戦までの激動の半世紀(日露戦争、義和団事件、満洲事変~日中戦争~第二次世界大戦、日本敗戦~引き揚げまで)を描いた歴史空想小説。
タイトルの「地図と拳」は、国家とは地図に表された領土(と領土に染み付いた歴史)であり、その領土を巡る争い(拳)が絶えない、ということを意味しているらしい。
個性溢れる人物たちのエピソード盛り沢山で、主人公と呼べるほどのメインキャラはいない。現実にはあり得ないファンタジー要素もチラホラ。特筆すべき登場人物は、元測量士/李家鎮の住人をあまねく救済しようとするロシア人神父 クラスニコフ、千里眼で弾丸も跳ね返す李家鎮の有力者 孫悟空(楊日綱)、元通訳/満鉄で戦争構造研究所を主催する合理主義の切れ者 細川、時間感覚に優れ気温や湿度も測ることができる建築・都市開発担当技術将校 須野明夫、孫悟空を憎む末娘/抗日ゲリラの有力者 孫丞琳など。
雑多なエピソードをちりばめながらも、全体として大きな歴史の流れを感じることができるよう構成されている。日本が日中戦争の泥沼にはまり、敗戦にまで至る経緯が抗えない必然として描かれている。大河ドラマを見終わったような読後感だった。
測量や地図、土木建築へのこだわりが強かった。「国家とはすなわち地図である」、「建築とは時間です。建築は人間の過去を担保します」などなど。著者は、満洲という土地に宿る魂や土地に刻まれた記憶を描き出したかったのかな?
ファンタジー要素が途半端だったな。入れるならもっと大胆に入れて欲しかった。-
こんばんは。
初めてコメントさせていただきます。
本の厚みに怯んで、読むのを悩んでいましたが、感想を読ませていただいて、俄然読んでみたくなり...こんばんは。
初めてコメントさせていただきます。
本の厚みに怯んで、読むのを悩んでいましたが、感想を読ませていただいて、俄然読んでみたくなりました。
いつも素敵なレビュー、楽しみに読ませていただいております。2023/02/25 -
コメントありがとございます。また、いつも拙いレビューにいいねしていただき、感謝です。
本作、確かに長いですね。買っていたら、なかなか読み始...コメントありがとございます。また、いつも拙いレビューにいいねしていただき、感謝です。
本作、確かに長いですね。買っていたら、なかなか読み始められなかったかもしれません。大分前に図書館に予約してやっと順番が回ってきたので、しかも直木賞を受賞したこともあって、期限内に読んでキチンと返却しなきゃ、と頑張りました(笑)。2023/02/25 -
確かに!図書館ならば、頑張って読むかもしれません。
いいアドバイスをありがとうございました♪確かに!図書館ならば、頑張って読むかもしれません。
いいアドバイスをありがとうございました♪2023/02/25
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一八九九年の夏、南下を続ける帝政ロシア軍の狙いと開戦の可能性を調査せよ、という参謀本部の命を受け、高木少尉は松花江を船でハルビンに向かっていた。茶商人に化けて船に乗ったはいいが、貨物船の船室は荷物で塞がれ、乗客で溢れた甲板では何もかもが腐った。腐った物は船から松花江に捨てるのが元時代からの習慣だった。一人の男が死体を投げ捨て、「こいつは燃えない土だ」と呟いた。高木は「どういうことだ?」と尋ねた。
男は「土には三種類ある。一番偉いのが『作物が育つ土』で、二番目が『燃える土』。どうにも使い道のないのが『燃えない土』だ。『燃える土』は作物を腐らせるが、凍えたときに暖をとれる。だが、『燃えない土』はどんな用途にも使えない。死体も同じことだ」と言った。通訳の細川が男の出身地を問うと「奉天の東にある李家鎮(リージャジェン)」と答えた。土が燃えるのは石炭が混じっているからだ。これは使える、と細川は思った。
李家鎮は何もない寒村だったが、その地に居を構える李大綱という男が、冬は暖かく夏は涼しく、アカシアの並木がある美しい土地だ、という噂を流した。相次ぐ戦乱で家を失くし、職を奪われた人々が桃源郷の夢を追い、はるばる来てみると、夏は暑く冬は寒く、アカシアなどどこにもない。怒る人々に、李大綱は、誰がそんな嘘を流したと憤って見せ、住む気があるなら、空いている家に住めばいい、土地ならある、と応じた。帰る家のない人々は李大綱から金を借りて家を修繕し、それぞれ仕事をはじめ、李家鎮は体裁を整えていった。
満州東北部にある架空の村を舞台にした歴史小説である。史実を押さえながらも、正史には登場することのない人物を何人も創り出し、日本が中国、ロシア、そして米英との戦争に非可逆的に引きずり込まれていく時代を描いている。人によって読み方は色々だろうが、こういう読みはどうだろうか。当時の日本は、戦争に駆り立てられていたように見えるが、果たしてそうか? 日本の戦争遂行能力を正確に把握していた者は一人もいなかったのか。もしいたとしたら、その結果はどうなっていただろうか、というものだ。
大陸のはずれで清朝の支配の及び難い満州という土地は、ロシアと戦うことになった場合、日本にとって是非とも押さえておきたい土地であった。また、日露戦争で多くの戦死者を出した手前、放棄もできない。リットン調査団が何と言おうが、むざむざ利権を諦めることは不可能だ。そこで、満州族が自ら支配する独立国という建前を作り、五族協和、王道楽土の美辞麗句で飾り立てた。満州国建国は列強を意識した苦肉の策だった。
「五族協和」がどこまで本気だったかは知る由もない。ただ、歴史年表を追うだけで、その当時の日本の軍国主義化にはすさまじいものがあることがわかる。満州国建国に携わった人々の胸にどれほど美しい夢があったのかは知らないが、軍部の力によってそれはどんどんねじまげられていく。その有様を一つのモデルとして描いて見せるのが、李家鎮という街の興亡である。
魯迅の言葉に「思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ(『故郷』)」というものがある。「地上に道がない」というのは、冒頭のエピソードでも分かるように、当時の中国では水運が中心だったからだ。
もともとはただの平原であったものを、一人の説話人がかたった話が人々の頭に理想郷を作り上げた。絵空事を信じてやってきた者は無理にでも芝居を続けるよりほかはない。そうして幾人もの人の思いを寄せ集めて出来上がったのが李家鎮。後の仙桃城(シェンタオチェン)である。ロシアにとっては不凍港、旅順に至る要衝、日本にとっては戦争を続けるための石炭という資源の宝庫。仙桃城は、人々の欲望によって築き上げられた架空の都邑だ。
細川は彼の目的にかなう人材を各方面からスカウトしてくる。彼の言い分が通るのは、 参謀本部が後ろで動いているからだろう。満鉄からの依頼で、存在が不確かな「青龍島」の存否を明らかにする仕事についていた須野も細川にスカウトされた一人。須野は細川の紹介で満州で戦死した高木大尉の妻と結婚し、明男という子を授かる。高木の遺児である正男と共に、この親子は日本の勝利の可能性を探ろうと悪戦苦闘する細川の手駒となって働く。
表題の「地図」とは国家を、「拳」は戦争を意味する。この物語は現実には存在しない「青龍島」が、なぜ地図に書き込まれることになったかという謎を追うミステリ風の副主題を持っている。「画家の妻の島」の挿話をはじめとする、地図に関する蘊蓄も愉しい。細川の徹底したリアリズムに対し、須野のロマンティシズムがともすれば暗くなりがちな話に救いを与えている。幼少時より数字にばかり固執する明男が、母の心配をよそに順調に成長し、建築家になるという教養小説的側面も併せ持つ。
登場人物の大半が男性であり、恋愛もなければ房事もない、近頃めずらしいさばさばした小説だ。戦争に材をとりながらも、威張り散らす軍人は脇に追いやられ、主流は知的かつ怜悧な人物で占められているのが読んでいて気持ちがいい。しかし、議論を重ね、言葉を尽くして、日本に戦争遂行能力がないことを解き明かしても、戦争は阻止できない。「問答無用」は日本の病理なのか、と暗澹とした思いに襲われる。それどころか、よくよく見れば、この国は以前より愚昧さを増しているようにさえ見える。せめて、虚構の中だけでも論理的整合性を味わいたい、そんな人にお勧めする。 -
日露戦争から第二次大戦まで、満洲を舞台にした日本人の戦略、侵略、殺戮等々を描く戦争もの、いくつかの小説や映画でも描く出されている時代だが、知らないことも多く次へ次へとページを繰って行った。
その地に夢を描く人、その地に都市計画を作る人、過去、現在、将来を見据えてその土地の世界を描く人など様々な人達がこの地を巡り考え企み行動したという歴史ストーリーが面白かった。次々と入れ替わる主要登場人物について、果たして自分がきちんと理解して追えて行ったのか自信はないが、その時代の雰囲気は十分に感じることができた。
単なる侵略ではない、その土地を将来を描くこと、そこに都市を作ること、日本人だけのためでない街を築くこと、そうした思いで満州という土地に立った人たちの心持ちは尊い。
著者プロフィール
小川哲の作品

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