リバー

  • 集英社 (2022年9月26日発売)
3.89
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Amazon.co.jp ・本 (656ページ) / ISBN・EAN: 9784087718058

作品紹介・あらすじ

同一犯か? 模倣犯か?
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見!
十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。
かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。
娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。
若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか――
人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!

【著者プロフィール】
奥田英朗(おくだ・ひでお)
1959年岐阜県生まれ。雑誌編集者、プランナー、コピーライターを経て、
1997年『ウランバーナの森』で作家デビュー。
2002年『邪魔』で大藪春彦賞、2004年『空中ブランコ』で直木賞、
2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、
2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。
『ナオミとカナコ』『向田理髪店』『ヴァラエティ』『罪の轍』『コロナと潜水服』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 600ページを超える長編小説であったが、事件解決に向かう物語の展開と登場人物の個性が細かく伝わってきて、あっという間に読み終えた。最後のシーンでは、読み終えた安心感と日常のありがたみが感じられ、胸が熱くなった。

    作品タイトルの「リバー」とは渡良瀬川のことであった。その河川敷で通行人が死体を発見することから物語がはじまる。河川敷での死体遺棄は連続して起こる。5月8日群馬県桐生市、5月13日栃木県足利市、この2人の死体が、未解決である10年前の渡良瀬川連続殺人事件とつながっていく。警察、マスコミ、地元住民などに一挙に恐怖、不安、憤り、怒りといった感情が充満していく。被害者の特徴、場所、手口が10年前の事件と類似であることが、関係者に重くのしかかる。同一犯なのか、模倣犯なのか、それすらも混沌としてはっきりしてこない。警察の焦り、遺族のやるせなさや怒りが伝わってくる。

    警察の専門用語が臨場感を掻き立てる。帳場にいるかのような焦燥感と緊張感、高揚感が繰り返される。私にとっては未知の世界であり想像の世界ではあるが、物語の推移とともに、警察官の気持ちの浮き沈みを味わっていた。県を跨いだ連続殺人だという想定に合わせて、それぞれの県警や所轄の刑事のやりとりの難しさや一体感が丁寧に描かれていた。それに加えて、被害者家族、容疑者家族、10年前の未解決事件に関わった警察OB、スナックの従業員、容疑者の地元の知り合いが個性的で、3人の容疑者の素性を明らかにしていく。その容疑者の中から、犯人が次第に狭まっていく。

    話の展開は事件解決に向かっていると感じながらも、確固たる決め手がなく、一進一退のキリキリとするような展開が続き、胸がザワザワしている感じが続いた。少しずつ明らかになっていく事件の顛末から推察して、私なりに犯人と思われる人物を疑いながら、その人物の背景やつながりを想像したが、なかなか明確な推察とまではならなかった。その展開の妙が、余計に作品に引き寄せられたのだろうかな。

    事件は残酷だったため、被害者家族や警察の無念と解決に向けた執念はどれほどなのだろうと想像していた。被害者家族や関係者、被疑者や関係者、警察とそれぞれのやりとりも私にとっては新鮮で、それゆえにずっと緊張感が続いた。犯人は絞り込まれていくが、犯人逮捕は簡単にはいかない。

    こうした中、粘り強い捜査によって新たな事実が判明し、各殺人事件と3人の被疑者との関係が徐々に明らかになっていく。ページを捲る手が速くなる。明らかになっていく事件の背景だが、それで浮かばれる思いにはならないな。ただ、ラストに向かって不安な日常が安心へと変わり、穏やかな日々へと状況が変わり、あたりまえの日常の尊さを感じた。

    初めての奥田英朗さんの作品を読了した。ブクログでのみなさんのレビューを参考にしながら、他の奥田英朗さんの作品を読んでみたくなる作品であった。

    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      ヤンジュさん、こんにちは♪
      略称「本とコ」です!
      「いいね」の炸裂&フォローありがとうございます。
      ヤンジュさんの、作品への深い洞察と緻密な...
      ヤンジュさん、こんにちは♪
      略称「本とコ」です!
      「いいね」の炸裂&フォローありがとうございます。
      ヤンジュさんの、作品への深い洞察と緻密なレビューに
      感心しますし、フォロワーさんが多いのも頷けます。
      今後ともよろしくお願いします(^^)
      2023/09/03
    • ヤンジュさん
      本とコさん、コメントありがとうございます!うれしいです
      本とコさんの本棚やレビュー、楽しみにしています♪こちらこそ、よろしくお願いします
      本とコさん、コメントありがとうございます!うれしいです
      本とコさんの本棚やレビュー、楽しみにしています♪こちらこそ、よろしくお願いします
      2023/09/03
  • 鬼の完成度★5 警察小説の傑作!二県にまたがる川辺で発生した連続殺人に関わる人々の群像劇 #リバー

    ■レビュー
    まさにド真ん中の警察小説!
    綿密な捜査を積み重ねることによって少しずつ犯人に迫っていく物語、マジで読む手が止まりません。終始、警察官たちの鬼気迫る描写がすごくて、自分も特捜本部で捜査に参加しているかのようでした。

    魅力的なのは警察官だけではなく、関係者たちも秀逸なんです。
    容疑者、新聞記者、警察OB、被害者家族、暴力団、その他関係者。

    たくさんの人々が出てきますが、ドラマをみているようにキャラクターが手に取るようにわかる。表現豊かで、関係性のバランスもいい。まさに群集劇の名作です。

    圧倒的推しなのは、とある女性。
    常に不幸に引き寄せられてしまい、夢も希望も無くなりつつある、諦めを背負っている彼女。自身の環境から抜け出たい、変えたいという願いが、読者の胸を突き刺さします。

    後半に少しだけ見えた希望を粉々にした吐き出たセリフ…「やっぱりだめか」
    彼女のこれからを思うと、めっちゃしんどかったです。

    また本作はミステリーとしての組み立ても上手で、序盤中盤での展開がしっかり最後に効いてきます。とにかく総合力が抜群で、今年のミステリーランキングにも入るであろう傑作でした。

    なお本作は鈍器レベルの分厚い単行本でなかり重いのですが、私としては上下巻に分けられて価格が増すよりはありがたかったかな。

    ■推しポイント
    最近は経済合理性や潔白性が常に求められる世の中。
    すべての事象には説明や理屈が求められ、少しでも穴があると、正義感たっぷりに袋叩きにされる。自己弁護が上手な人が生き残り、情熱を持ち過ぎたはみ出た人は排除される。

    本書に登場している被害者家族の松岡、刑事OBの滝本を見ていると、昭和の偏屈者といわれる老害は世間から排除されつつあるなと感じます。

    しかしすべてが合理的、清廉潔白である必要があるのでしょうか。

    多少世間とズレていていたとしても、自身の中に信じる光り輝く魂や信条があれば、熱意をもって突き進むのも決して間違った選択ではないのでしょう。自身の「小綺麗な生き方」の適正さを見つめなおす、良いきっかけになる一冊でした。

    • shukawabestさん
      最後、autumn522akiさんがレビューで書かれている通りだと僕も思います。全く同感。同じ気持ちです。
      最後、autumn522akiさんがレビューで書かれている通りだと僕も思います。全く同感。同じ気持ちです。
      2022/11/17
    • autumn522akiさん
      shukawabestさん、こんばんわー
      コメントありがとうございます。

      気持ちが共有できてうれしいです~
      せまっ苦しい世の中です...
      shukawabestさん、こんばんわー
      コメントありがとうございます。

      気持ちが共有できてうれしいです~
      せまっ苦しい世の中ですよね、ほんとに。
      2022/11/17
  • 群馬県、栃木県、両県の渡良瀬川の河川敷で若い女性の同じ手口の全裸死体がみつかります。
    この二つの県では、やはり10年前に渡良瀬川で同様の事件が2件あがっていますが、犯人とされた人物は不起訴で捕まっていません。

    群馬、栃木の警察が捜査を始めますが、浮かんだ容疑者は3名。

    10年前怪しいとされ容疑者となった暴力団系の、池田清。
    10年前から追っている退職した刑事の滝本が後を追います。

    二人目は、引きこもりの大人しい青年、平塚健太郎31歳は夜中に車で街を徘徊していました。
    調べていくと、平塚は解離性同一障害で別の人格になることがあるとわかります。

    三人目は期間工で10年前と今回、長野県から働きにきていたトラックドライバーの刈谷文彦32歳。
    スナックのママ明菜と付き合っています。
    刈谷には目撃情報の人物像に一番近く、どうみても一番怪しい。本ボシ、黒だと誰でも読んで思うと思います。
    刈谷は一回別件逮捕されて、とり調べられますが、黙秘を続け釈放されます。


    648ページありました。
    重くて手にタコができるんじゃないかと思いました。
    最初これだけの長さに一体何が描いてあるのかと思いました。
    読み終えて、648ページの価値はあったと思います。
    退職した刑事の執念。
    多重人格者の設定などもいかされていて、その他、刑事、マスコミ、被害者家族、明菜などの心情もよくわかりました。
    読み応えのある重厚感のあるミステリーだったと思います。






    ※それにしても、北朝鮮、怖いです。
    今朝、スマホのエリアメールが鳴り続けて、ウクライナの人々の心情がわかる気がしました。

    • まことさん
      アールグレイさん♪

      奥田英朗さんは、私は「コロナと潜水服」、「ナオミとカナコ」しか読んでいません。
      我が家シリーズも、面白そうですね(*^...
      アールグレイさん♪

      奥田英朗さんは、私は「コロナと潜水服」、「ナオミとカナコ」しか読んでいません。
      我が家シリーズも、面白そうですね(*^^*)
      冬になって、雪で図書館に行けなくなったら、文庫を買って読んでみようかな。
      2022/11/03
    • アールグレイさん
      あ~っ、そうかぁ。
      雪か。家の方の図書館は20冊まで、予約も借りることもできるけど、図書館に行かれないと・・・・
      でも、私は2冊位しか借りな...
      あ~っ、そうかぁ。
      雪か。家の方の図書館は20冊まで、予約も借りることもできるけど、図書館に行かれないと・・・・
      でも、私は2冊位しか借りないけど。
      大変だねぇ、しか言えない。ごめんね
      ヽ(;▽;)ノ
      2022/11/03
    • まことさん
      アールグレイさん♪

      予約20冊、いいなあ!
      こちらは、10冊までです。
      借りるのは20冊までですが、そんなに借りたことは、私もありません。...
      アールグレイさん♪

      予約20冊、いいなあ!
      こちらは、10冊までです。
      借りるのは20冊までですが、そんなに借りたことは、私もありません。持ちきれないし。
      雪が、降ったら、図書館は結構遠いので、歩けません。
      Amazonマーケットプライス(ネット古書店)で、文庫を買って読みます。(新刊も、買ってるけど)
      2022/11/03
  • 分厚い本を読みたくなって手にしてみました
    奥田さんの小説が好きで読んでいたのはいつのことか。今回は久しぶりの奥田さんです。
    長編の犯罪小説
    警察、元刑事、被害者の家族、新聞記者
    そして、容疑者たち
    犯罪心理学者も現れて
    あーだこーだともう読むことをやめられない
    あー!目が痛い!

  • 河川敷で女性の全裸遺体が見つかる。
    10年前にも同じ手口の犯行が河川敷で起こっていた。
    同一犯なのか模倣犯なのか。
    警察、新聞記者、10年前の遺族、それぞれが事件に挑む。

    650ページ。とにかく長かった。

    みなさん高評価の本書『リバー』
    正統派小説!!!という感じ。
    私は東野圭吾さんのような一転二転するような
    捻りのある物語が好きなようで。。
    とはいえ、テンポが良いので読みやすかったです◎


    若干ネタバレ含むかもです、ご注意を。

    犯人が判明するんだけど自供がとれるのか、
    起訴できるのかまでは書かれておらず。
    だから動機もハッキリしていない。
    あれ、犯人の口から何も聞けてないぞ。。???
    このページ数だから人間関係なども緻密に書かれているかなと思われたんだが、そこもイマイチ。
    とにかく、犯人と警察の追いかけっこがメインという感じ。

    おいおいおい、650ページも読んだんだぞ!!
    最後にスッキリさせてくださいよ〜。。と、泣く泣く本を閉じるのでした。
    オチに納得いかず。もう眼精疲労です。

    でもきっと、
    こんな凶悪犯罪は早々に片付く問題でもなく、
    世の中そんな事案だらけなのでしょう。

    オチを読みに行くというよりは、
    警察や新聞記者、遺族の思いや悩みを感じる本なのでしょうか。

    最近は性被害のニュースも多くて、
    特に女の子のお子さんを持たれている方は不安だろうなと思います。
    やっとメディアが本格的に性犯罪について取り上げ出してくれたかという感じです。

    『罪の轍』を買おうと思っていたんだけど、
    これまた600ページ弱(°_°)
    よーーーく検討します。


  • 安心して下さい!上下段じゃありませんよ!
    (それでも600ページ超あってそれを半日で読み終えているつまりは面白かったということで)

    『オリンピックの身代金』『罪の轍』に続く、奥田英朗さんの警察が組織捜査で地道に犯人を追い詰めるやーつシリーズ第三弾『リバー』でございますよ!
    勝手に名付けて勝手にシリーズにしちゃいました(*ノω・*)テヘ
    (時代設定も、登場人物も前二作とはぜんぜん違うのでシリーズというには無理があり過ぎ)

    いやぁ、みんみん
    これ読むやつだわ
    読まねばならんやつだわ

    今回はオチにかなり捻りを入れてきてますが、物語の進み方はいつもの通りです
    登場人物も多いし、捜査もあっちゃこっちゃに行って、視点も頻繁に切り替わるので多少追いづらいかもしれないですが、もうじれったいほどにゆっくり進むし、捜査会議でちゃんと整理してくれるので安心です

    そしてもう刑事たちの執念の捜査ですよ
    いいね〜いいよ〜
    もう大好きなやーつです

    で、吉川英梨さんときと同じ悩みがw
    奥田英朗さん3冊読んで全部★5なんだが、この先進んで大丈夫?がっかりしない?
    直木賞作品とか残ってるから大丈夫か?

    • ひまわりめろんさん
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/08/25
    • みんみんさん
      ごじゃっぺ新人?Wikipediaにもない謎の人
      そんで図書館にもないってどんな発掘⁈
      カリスマレーダー探知機ヤバくない(꒪⌓︎꒪)
      ごじゃっぺ新人?Wikipediaにもない謎の人
      そんで図書館にもないってどんな発掘⁈
      カリスマレーダー探知機ヤバくない(꒪⌓︎꒪)
      2023/08/25
    • ひまわりめろんさん
      詳細は近日公開の発掘王のレビューを待て!(ババーン)
      詳細は近日公開の発掘王のレビューを待て!(ババーン)
      2023/08/25
  • 群馬県と栃木県の県境の河川敷で連続発生した殺人事件の真相を追う。

    図書館で予約して、順番待っていたらやたら時間がかかりました。
    でも、期待を裏切らず、めちゃくちゃスリリングで濃厚で読み応えがある。でも読みやすい。
    656ページを一気読みしてしまう。

    刑事、新聞記者、警察OB、犯罪被害者の家族、犯罪心理学者、引きこもり、工場労働者、飲み屋のママ…そして犯罪者
    様々な視点から事件が描かれて、誰に感情移入するかで事件の見え方が変わってくる。
    ハンニバル的おっさんも出てくるし。

    僕は新聞記者・千野今日子の頑張る姿がとても好きでした。

    ♫リバーサイドホテル/井上陽水(1982)
    からの、
    This River Is Wild/The Killers(2006)

  • 10年前の未解決事件その事件が動いた時遺族の父親は暴走しながらも捜査を手助け?していく。最後は犯人は分かったが動機なども深く描かれておらず読者の余韻に浸れる作品、かなり長いが良かった

  • いや〜大作でした。
    内容も重いけど本も重かった笑

    河川敷で連続する裸の女性死体…
    10年前の未解決事件と全てが似通っている…
    同一犯が10年ぶりに犯行に及んだか…

    10年前に逮捕寸前までに追い詰めた容疑者、当時の刑事達、定年後の刑事、10年前被害にあった女性の父、初めての大事件に緊張する女性記者。

    捜査がなかなか進展しない。
    そりゃ650ページありますから笑
    全ての登場人物がそれぞれの思惑を胸に四方八方からジリジリと犯人に近づいていきます。
    地味で地道。警察の執念と遺族の父親の執念。
    もうこういう話大好き‹‹\(´ω` )/››

    100%スッキリした終わり方ではないのでモヤモヤする人もいるかもしれないですが。


    犯人の恋人だった女性のセリフ…切ないなぁ…

    • みんみんさん
      動機やなんか最後まで⁇だしね
      腱鞘炎にならないように座って読みました〜
      だから読むのに時間かかっちゃった( ̄、 ̄)
      動機やなんか最後まで⁇だしね
      腱鞘炎にならないように座って読みました〜
      だから読むのに時間かかっちゃった( ̄、 ̄)
      2023/11/29
    • ひまわりめろんさん
      やはり大好きなやーつだったか( ̄ー ̄)ニヤリ
      やはり大好きなやーつだったか( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/11/30
    • みんみんさん
      じれったくて好き笑
      最近読むの遅くて…
      じれったくて好き笑
      最近読むの遅くて…
      2023/11/30
  • autumn522akiさんの「鬼の完成度★5」が気になって気になって
    ついに手に取ってしまった。
    そして、まことさんの「重くて手にタコができるんじゃないか」
    の表現には思わず笑っちゃいながらも、うん、うん と大いに納得。
    702グラム! そりゃ、重いです。 測りました!
    そして重いのは外側だけでなく、重厚な内容でした。

    連続殺人事件の容疑者を追う警察官たちの執念と
    徐々に明かされる犯人の心の闇。
    果敢に事件の取材に取り組む若き女性記者と
    人生が何もかもうまくいかないある女性。
    夜な夜なBMWの快音を鳴らす多重人格の若者と
    研究のためとはいえ、彼に真摯に向かい合う学者。
    退職してもなお警官魂が抜けない元刑事と
    かつて殺人の罪を免れた自己顕示欲の強い異常者。
    そして、犯人逮捕に執念を燃やす被害者の父親。

    この長い物語には、それはもう様々な人物が登場します。
    そしてその描かれ方がとても立体的。
    すれすれの行動で事件を追う元刑事の滝本さんと
    十年間証拠写真を撮り続ける一途な被害者の松岡さん。
    お二人には、きゅーんと胸を打たれました。
    上手くいかないことばかりの明菜さん。
    旅行に行かせてあげたかったなぁ。
    そして文化部志望だった記者の今日子さん。
    社会部の記者として、これから大きく成長するでしょう。

    ミステリーとしてのワクワク感はもちろんのこと
    色々な人に心を寄せながら読んだこの作品。
    満足度の高い一冊でした。

    • yyさん
      aki さん

      コメントありがとうございます。

      奥田英朗さんの作品、初めて読みました。
      akiさんのお陰で、また新しい世界が開け...
      aki さん

      コメントありがとうございます。

      奥田英朗さんの作品、初めて読みました。
      akiさんのお陰で、また新しい世界が開けました。
      ありがとうございます~ ☆彡♪
      2022/12/12
    • しずくさん
      えっ、もうNYでテッドと謎解きの最中だなんて早すぎますよ!(笑)

      奥田英朗さんは『罪の轍』『オリンピックの身代金』『無理』『コロナと潜...
      えっ、もうNYでテッドと謎解きの最中だなんて早すぎますよ!(笑)

      奥田英朗さんは『罪の轍』『オリンピックの身代金』『無理』『コロナと潜水服』など楽しんで読んでいます。本作は時間切れで図書館へ返却しなければならなくなり、再度読み出すのは新年明けになりそう。
      2022/12/17
    • yyさん
      しずくさん

      こちらにもコメントありがとうございます。
      時間切れ…、よ~くわかります。

      しずくさんは奥田英朗さんの作品を何冊も読...
      しずくさん

      こちらにもコメントありがとうございます。
      時間切れ…、よ~くわかります。

      しずくさんは奥田英朗さんの作品を何冊も読んでらっしゃるのですね。
      私はこれから挑戦です。
      図書館のマイページ、読みたい本の欄に『罪の轍』を入れたのですが
      貸し出し中のため、しばらく待つことになりそう。
      予約枠がないので、タイミング勝負!です。

      しずくさんのレビュー、楽しみにしています☆彡
      2022/12/17
  •  渡良瀬川の河川敷、群馬・栃木両県において女性の変死体が相次いで発見された…。十年前のも同様の事件が発生していたが、両県の警察の捜査は暗礁に乗り上げ、被疑者不起訴で未解決となっていた…。当時捜査線上に上がっていた容疑者の再犯か?それとも新たに浮上した容疑者の犯行か…。

     渡良瀬川っていうと、森川千里さんの「渡良瀬川」を思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか(^-^;。読まれた方皆さんおっしゃっているように、かなり分厚い本で重くって…読了に時間がかかりました。お昼休みに本を読みたい派なので数日持ち歩くのも大変、帰ってからリラックスタイムにゴロゴロしながら読むのにも重いっ!!でも内容の濃い作品です!警察(元を含んで)と被害者遺族の「必ずホシを挙げる!」という執念と(いやドラマみたい…)、新聞記者さんも職務に対する熱量もガンガン読みとれます。一見、心証真っ黒な容疑者…地道な捜査の積み重ねで真実にたどり着いたとき、ため息がもれました。読み応え満点!読了後の満足感も充分すぎるほど、得ることができました。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      森高千里さん……
      凄いですねー☆彡
      知らなかったんです〜
      〈渡良瀬橋〉の作詞されてたんですねー!!
      他にもたくさんの曲の作詞もですよね〜!!...
      森高千里さん……
      凄いですねー☆彡
      知らなかったんです〜
      〈渡良瀬橋〉の作詞されてたんですねー!!
      他にもたくさんの曲の作詞もですよね〜!!
      〈気分爽快〉の歌詞もですよね!?
      好きな男性が友達と付き合うのを祝う歌ですよね。凄〜い☆彡
      歌詞は切ないのに明るい歌。
      他の曲もそうだけど歌詞がとても良いんですよね…✧

      凄いアーティストなんだと改めて思いました !!
      (✪▽✪)森高千里さんー.:*♡
      2023/07/08
    • かなさん
      チーニャさん、こんにちは!
      すっかり私も間違えてしまって(^-^;
      でも、こっとんさんが教えてくださって
      あ~んなに歌ってたのに
      違...
      チーニャさん、こんにちは!
      すっかり私も間違えてしまって(^-^;
      でも、こっとんさんが教えてくださって
      あ~んなに歌ってたのに
      違和感全く感じないで…恥ずかしいです(*_*;

      森高千里さんって、
      本当にどこから見ても、どう見ても
      以前でも今でもステキなんです(*´▽`*)

      しかも、名曲は色褪せないっ!
      だから、時々テレビやネットでみかけると
      すっごく嬉しくなりますっ♪
      2023/07/08
    • かなさん
      こっとんさん、こんにちは!
      いいですねぇ(*´▽`*)
      私も森高千里さんの曲の歌詞を
      誰か物語に起こしてくれないかなぁ~って思います!...
      こっとんさん、こんにちは!
      いいですねぇ(*´▽`*)
      私も森高千里さんの曲の歌詞を
      誰か物語に起こしてくれないかなぁ~って思います!!

      本当に、いつみてもキレイだし、可愛いっ♪
      ちょっと見かけるだけで、元気になります(*^^)v
      森高千里さんのようにステキなまま
      年を重ねることは叶わないけれど、
      森高千里さんの曲を歌うことはできますもんねっ!
      (上手く歌えるかどうかは別問題だけど(^-^;)
      なりきって…も、無理かなぁ…
      (でもそこも置いておいて(^-^;)
      2023/07/08
  • 奥田英朗さんの刑事ものは、初読みのような気がするなぁと思いながらのめり込むように読破。
    かなりの長編ではあるが、しっかりと犯罪小説の重みを感じた。

    群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡瀬川の河川敷で相次いで、女性の死体が発見される。
    驚きなのは、十年前も両県で同じ河川敷で死体が発見され、未解決のままだったことである。

    酷使した手口であることから、十年前に証拠不十分で不起訴処分となった男にも容疑がかかる。
    十年前に娘を殺害された被害者の父が、ずっと現場で写真を撮り続けたことから、怪しい車輌や人物の写真から容疑者となる男。
    そして、引きこもりで夜中になると車で徘徊する男。

    この三人の容疑者に群馬と栃木の刑事たち、そして新聞記者の千野。
    十年前に捜査にあたり、悔しい思いをした元刑事の滝本。
    風変わりな犯罪心理学者。
    それに被害者の父までもが犯人を捕まえるべく動く。

    久しぶりに読み応えがある刑事もの。
    十年前の苦悩や屈辱をパワフルにして、元刑事や新聞記者、そして執念深く犯人を追う被害者の父がとにかく凄い。
    犯人を捕まえるという執念が、ヒシヒシと伝わる。

    刈谷、彼だけは無口なだけに性格が掴めなかった。
    ずっと行動を追っているのに気づかなかったのか、知っていても捕まらないと思っていたのか…
    そのあたりを想像しながら読んでいくのだが、謎のまま心に残った。

    追う、そのことだけに重きをおいているのだろう。



  • ガッツリネタバレ感想です


    奥田英朗さんの新作ということで
    図書館で予約した今作。


    届いたらものすごい分厚くて
    ビックリしました笑


    買ってたら積み本になってそう…笑


    すごいボリュームでしたが
    飽きることなく楽しませてもらいました(^^)


    河川敷で若い女性の死体が
    全裸で発見されるところから始まる物語

    その後も同じように死体が発見され
    連続殺人を視野に捜査が進みます

    また、この土地では10年前にも
    同じような事件が起きていて
    未解決のままで
    警察は今度こそ犯人を捕まえなければと必死です


    この作品は
    警察、記者、元刑事、10年前の被害者の親、
    容疑者の恋人それぞれの目線で
    物語が進んでいきます。


    そのせいで誰かに感情移入しにくいですが
    事件を客観的に見ることができました
    事件がどのように進展していくのかわかり
    面白かったです
    終盤は読む手が止まりませんでした
    本当にこうやって事件が進むんだろうなと思わせる
    リアルさがありました



    なので余計に
    刈谷の供述が欲しかった!!


    逮捕されただけでは
    事件は解決しないのは
    リアルなんだろうなとは思いますが
    これだけ読んだのだから
    もう少しスッキリしたかった


    刈谷がどういう心理で事件を起こしたのか
    事件を起こしたきっかけも知りたいし
    母親の影響というが、
    どういう気持ちだったのかも知りたいし
    10年前の2件目は誰の仕業なのかもハッキリしないし


    もっと知りたいことたくさんあるよー!!!
    という読了感でした笑


    でも読み応え充分の作品でした

    • yyさん
      どんぐりさん

      全く同感です。
      犯人の動機が明かされていないのにはモヤモヤしますね。
      ぶ厚くて内容も濃かっただけに、
      読後の満足感...
      どんぐりさん

      全く同感です。
      犯人の動機が明かされていないのにはモヤモヤしますね。
      ぶ厚くて内容も濃かっただけに、
      読後の満足感は大きかったけれど…。

      どんぐりさんのご指摘の通り、
      色々な人の視点で事件が語られているので
      犯人側からみたスピンオフストーリーが出たら
      読みたいですね。
      2022/12/21
    • どんぐりさん
      yyさん

      コメントありがとうございます(^^)

      共感していただき嬉しいです!
      そうなんですよ、
      解決したようでしてない感じに
      モヤモヤし...
      yyさん

      コメントありがとうございます(^^)

      共感していただき嬉しいです!
      そうなんですよ、
      解決したようでしてない感じに
      モヤモヤしてしまいました

      スピンオフストーリーぜひ読みたいですね!!

      yyさんが本書の重さを測っていたのを読んで
      笑ってしまいました笑
      2022/12/21
  • 面白かったです。

    解決できなかった殺人事件がある。10年後、同一犯と思われる殺人事件がまた起きた。刑事たちが今度こそは犯人を逮捕すると決意し、東奔西走する。一歩進んで二歩下がるを繰り返し、思い通りに操作は進まない。それでも確実に犯人に近づいていく…。
    とにかく刑事たちの執念が凄かった。刑事たちの熱い想いが私の心に響いてしまった。
    この物語を読んでいて、最近のニュースが頭に浮かんだ。冤罪事件や西の方で起きた女児殺害事件だ。関係ないとは分かってるんだけど、私は重なる気がした。捜査は慎重にしないといけないし、事情聴取も慎重にだ。どう聴くかは取調官のテクニックなんだろうな。

    話の展開として、若手の刑事たち、元刑事、被害者の家族、若手の新聞記者、スナックのママ、彼らの視点が変わりながら話が進んでいく。その中に犯人の視点というのがなかったので、犯人がどういう人間なのか人物像が最後まで分からなくて、余計に犯人が不気味に思えた。

    緊迫してる状況でも微笑ましい箇所もあった。捜査会議の時に指揮官が「誰かすぐに検索しろ‼︎」と言われると、若手刑事たちが一斉にスマホで検索。ベテラン刑事はそれを隣で見てる、というのに笑えた。私は絶対に隣で見てる側だなと思った。こういう所々に出てくる刑事たちの会話、行動が親近感を感じる。
    もう一つ親近感を感じことがある。事件の舞台が群馬県のスバルの工場がある地区だったので、よくスバルという名詞が出てきた。警察車両はスバルの車なので、スバルに乗り込んだ、スバルで追った、という件がいっぱい出てくる。なかでも笑えたのが刑事たちの会話。「県議なのにスバルじゃなくていいのか。大票田だろう」「そんなこと、ぼくに聞かないでください」だ。被疑者を追っている時にそんな冗談?言うんだ、と笑ってしまった。最近、私はスバル車に買い替えました。スバル歴は浅いけど親近感を感じました。

    650ページのハードカバーの単行本。重かったです。面白さがある重みでした。

  • 最初に手に取ったときの感想は他の読者さんと同じ『何この厚さ…すごい文量…』という感じ。辞書のような厚さと648ページという文量に怖じ気づいたけど、読み始めてしまえばスイスイとあまり苦労もなく読み進められた。
    渡良瀬川の流域で起こった2件の連続殺人事件。群馬栃木に跨がって発生したその事件は未解決のまま10年の月日が経っていた。そしてまた同じ手口で殺された被害者が発見される。
    容疑者となったのは10年前にも被疑者として挙げられていた犯罪常習者、池田。引きこもりの県議の息子、多重人格者の健太郎。10年前にも群馬に出稼ぎに来ていた期間工、刈谷。

    犯人逮捕に向けて、群馬県側栃木県側の刑事たちだけではなく、元刑事や被害者遺族、新米の新聞記者が奔走する、それぞれの目線でのストーリーが面白い。途中話がなかなか進まなくて、ちょっとダレたところはあったけど概ね楽しめた。
    ただ他の皆さんも仰っているように、ラストが……
    結局誰がどの事件の真犯人だったの??真犯人はどうやって1件目の犯行を模倣できたの?
    そもそも真犯人を凶行に向かわせたのはなんだったの??
    こんな、600ページ以上も引っ張っておいて最後が全然すっきりしなくて消化不良。あーモヤモヤする。

  • 大作です。

    河川敷で若い女性の死体が十年前に二件、
    現在二件、発見された。
    容疑者は三人。
    一人は犯罪常習者で十年前にも疑われた人物。
    一人は引きこもりの多重人格者。
    そして一人は母親のせいで女性嫌いになった男。
    そこに十年前の被害者の父親で十年間、犯人を追い続ける男。
    十年前、事件を追っていた定年した刑事。
    現職の刑事たち。若い女性記者。

    正直、一作にまとめず個々で作品にしてもいいと思う位の個性的な人ばかりです。

    その登場人物が絡み合い、中盤迄は読み応え充分でした。
    ただ、最後が個人的にはあっさりしすぎてもう少し深掘りして欲しいという物足りなさが残ります。

    しかしながら、この作家さんは今回初読みで他にも高評価作品があるようなのでそちらに期待してみます。

  • 辞典の様な分厚さに怯みながらも3日で読了♪
    長かったけど中弛みもなく面白かった〜!

    栃木県と群馬県の境を流れる渡良瀬川の河川敷で起こった連続殺人。
    10年前にもこの河川敷で同じ手口の未解決事件が起きていた。
    同一犯か?もしくは模倣犯なのか?
    刑事、元刑事、記者、被害者遺族、スナックのママ、いろんな人の視点で話が進んでいく。

    登場人物も多く視点もころころ変わるけど、意外にも読みやすくて、こんがらがる事もなかった。
    読み終わってから思ったけど、犯人は誰かという事よりどちらかと言うと捜査の仕方や過程とかに重きをおいた警察小説って感じだった。
    そのせいかページ数多かったわりに犯人が分かってしまえば後はあっさり。
    もう少し犯人側の事も知りたかったな〜。
    動機やら、不透明なとこが多すぎた。
    めっちゃ面白かったのに、最後の最後に不完全燃焼って感じだったのが残念でした。


    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      mihiroさ〜ん♡こんばんは(*^^*)

      知らなかったですよね〜!
      実際の事件の遺族の方たちの心情を想像すると、もう…辛過ぎるなと感じま...
      mihiroさ〜ん♡こんばんは(*^^*)

      知らなかったですよね〜!
      実際の事件の遺族の方たちの心情を想像すると、もう…辛過ぎるなと感じましたよ…。
      世の中には未解決事件も多いし…、河原で他殺体という事件もいろんなところで起こってる感じもするし、リアルさのある小説だなと、思いましたよね〜: ( ºωº ;):
      いろいろと、どんよりする気持ちになりましたね、ホント。
      2023/10/25
    • mihiroさん
      チーニャさ〜ん、ほんと未解決事件も多いんでしょうね。実際の事件がペースになってると思うと、少し考えさせられるとこもありますよね〜。
      奥田さん...
      チーニャさ〜ん、ほんと未解決事件も多いんでしょうね。実際の事件がペースになってると思うと、少し考えさせられるとこもありますよね〜。
      奥田さんあまり読んだ事ないんですが、読み応えあるいい作品でしたね✩︎⡱

      2023/10/25
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      mihiroさん、私なんて…奥田さん、はじめて読んだんですよ!
      人気ある作家さんみたいですね〜
      読み応えあっていい作品で良かったです…ね〜 ...
      mihiroさん、私なんて…奥田さん、はじめて読んだんですよ!
      人気ある作家さんみたいですね〜
      読み応えあっていい作品で良かったです…ね〜 (*^^*)♡
      2023/10/25
  • 群馬県桐生市の渡良瀬川河川敷で、若い女性の遺体が発見された。間を空けずに、今度は栃木県足利市の渡良瀬川河川敷で、若い女性の遺体か見つかった。これらは、10年前に起きた未解決事件と犯行手口が似通っていた。

    この連続殺人事件を巡って、群馬県警の刑事、栃木県警の刑事、10年前の事件で犯人を取り逃すことになった警察OB、新聞記者、10年前の事件の被害者遺族、容疑者、容疑者の周辺人物など、様々な目線から語られる群像劇になっている。

    約650ページの長編だが、長さは感じなかった。

    登場人物の後日譚も気になる。

  • どきどき感は、すごい。誰が五人の女性を殺したのか?
    三人の容疑者が浮上、いったい犯人はどの人なのか・・・被害者の父親追う容疑者、もと刑事が追う容疑者、新聞記者が追う容疑者C。
    いかんせん長い、長すぎる。結末にワープ。
    あら、そう来ますか。
    犯人は誰なの?
    皆さんはどう結論を出されますか?

  • 図書館の返却期限、取り置き期限、貸出冊数枠に日々追われて大変なことになっている。
    遅延なきよう、また、長期間待ってやっと回ってきた本を手にすることなく流してしまわないよう、必死に読んでいる。

    そんな中、本書を貸出カウンターで手に取って思わず「分厚いですね〜」とため息を漏らしたところ、司書さんが「読み応えありそうですね〜」とおっしゃった。
    さすが司書さん、前向きな言葉だなと思った。

    一瞬、自分が今までに読んできた本の中で1冊のページ数の記録更新じゃないか?と思ったほどだ。
    (実際には全然そうではなかったのだが)

    司書さんのおっしゃる通り、本当に読み応えのある作品だった。
    くどいとか冗長な部分も無く、読み飛ばしたくなることもなく読めた。
    時系列通りに進んでいくので、とても読みやすかった。

    ただし登場人物が非常に多く、序章の40ページまでで22人。
    群馬県桐生市、群馬県太田市、栃木県足利市が舞台なのだが、県名無しで桐生市・太田市・足利市と書かれると、申し訳ないが頭の中で一々「どっちの県だっけ?」となってしまう上に、刑事達が「この人どっちの県警?どこの所轄?」と、頭の中がぐるぐる状態。

    そこで章毎に全て登場人物をメモして読んだ。
    登場人物の数え方は読者それぞれだと思うが、私なりの数え方ではトータル70名前後であった。(延べ人数ではない)

    本書には「この人が主人公」と言える人物はいないと私は捉えている。
    逆に言うと、全員が主人公だと思う。
    それは現実社会においてそうなのだから、そういうことを正しく著した作品だと感じた。

    ひとつの県内の話にしてくれよ〜と泣きたくなったが、警察庁マターであること、その状況下での2つの県の刑事達による捜査・交流・信頼関係も物語のキモなのだから仕方ない。

    そうは言っても、ある程度の「登場人物表」は欲しかったところ。
    自分でメモして大変だった。

    上下巻に分けた方が著者も出版社も実入りが多かっただろうに、分厚い1冊にしてしまい、もったいなかったのでは?

    全く本書の感想になっていないが、本書に関しては頑張って貸出期限内に読み切った自分を褒めて終わりにしたい。

    「3巻目の取り置きが明後日までの、まだ全く開いていない2巻目の返却期限も明後日だ」という状態の本(他の作家さん)があるから。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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