令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718218

作品紹介・あらすじ

通称:令和反逆六法――
六つのレイワ、六つの架空法律で、現行法と現実世界にサイドキック!

「命権擁護」の時代を揺さぶる被告・ボノボの性行動、「自家醸造」の強要が助長する家父長制と女たちの秘密、「労働コンプライアンス」の眩しい正義に潜む闇……。
痛烈で愉快で洗練された、仕掛けだらけのリーガルSF短篇集。

【収録短篇および各話の架空法律】
◇第一話 動物裁判
礼和四年「動物福祉法」及び「動物虐待の防止等に関する法律」
◇第二話 自家醸造の女
麗和六年「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達(通称:どぶろく通達)」
◇第三話 シレーナの大冒険
冷和二十五年「南極条約の取扱いに関する議定書(通称:南極議定書)」
◇第四話 健康なまま死んでくれ
隷和五年「労働者保護法」あるいは「アンバーシップ・コード」
◇第五話 最後のYUKICHI
零和十年「通貨の単位及び電子決済等に関する法律(通称:電子通貨法)」
◇第六話 接待麻雀士
例和三年「健全な麻雀賭博に関する法律(通称:健雀法)」

【著者略歴】
新川帆立(しんかわ・ほたて)
1991年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年に『元彼の遺言状』でデビュー。他の著書に『剣持麗子のワンナイト推理』『競争の番人』『先祖探偵』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • ひとつの法律が成立するだけで、いつのまにか社会は「健全に」いっぺんする。90年代の終わりに派遣法が成立して格差拡大が「当たり前」になった。10年代に秘密保護法・共謀法が成立して、社会の奥で何が行われているか見えなくなった(例えば宇宙軍拡)。本書とは関係ないけど、私はそう思っている。

    閑話休題
    礼和四年「動物福祉法」及び「動物虐待の防止等に関する法律」成立
    麗和六年「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈(通称どぶろく通達)」成立
    冷和二十五年「南極条約の取り扱いに関する議定書(通称・南極議定書)」成立
    隷和五年「労働者保護法」あるいは「アンバーシップ・コード」成立
    零和十年「通貨の単位及び電子決済等に関する法律(通称・電子通貨法)」成立
    例和三年「健全な麻雀賭博に関する法律(通称・健雀法)」成立
    という法律が成立したパラレルワールドの日本を描いた短編集である。

    作者は元弁護士なので、1話目での猫の山本ココアを「原告」とする訴状なんてリアルそのもの。仮定の世界なので、どちらかというとSF的なお話が多いし、それがとても面白いのだから、作者のフィールドはミステリだけではないことを示したという意味では大きな曲がり角の作品になったのかもしれない。(ただ、最後のプロ雀士が出てくる話だけは、作者が元雀士だった経歴を活かしているのだろうけど、専門用語が多すぎてついていけなかった)

    その中で殺人事件も起きて1番ミステリな話になっているのは、4話目の「健康なままで死んでくれ」。労働法をテーマにした話は、ほとんど聞かないので珍しかった。私はボランティアで労働相談をしている。なんか聞いたような話がたくさん出てきて、(嫌になった)興味深かった。

    はっきり言って、この隷和五年「労働者保護法」は労働者保護に全然なっていない。そういえば、現状の平成27年改正労働者派遣法も、派遣労働者は3年以上働いたら正社員待遇にする事になったはず。これによって派遣社員に正社員の道が開かれたわけではなく、3年ごとに契約を打ち切る方向に企業は舵を切った。法改正にはたいてい建前の裏に本音が隠されている。隷和の過労死を防止するための法律は、労働者にリストバンドを強要し、日常の全てを管理させる。結果、労働者は以前よりも疲れるようになるけど、「会社の外で」「突然死」するのならば会社に責任はないからスルーされる。あ、そうそう某国でも「働き方改革」というやり方で残業削減したけど「成果」は同等のものが求められるから、社員は「工夫して」成果を出している人たちがたくさんいるということも聞いた。どの国とは言いませんが。

    あ、読み直すと、現実と本書の感想をごちゃ混ぜにして書いてますよね。ごめんなさい。
    でも、それこそが、この本の感想なのです。

  • これは楽しい!鋭角に切り込む社会風刺が最高 #令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法

    ■きっと読みたくなるレビュー
    おもろい!
    新川先生のユーモラスなセンスと破天荒な発想力が爆発した作品。

    昨今、社会問題になった事案への皮肉がたっぷり仕込まれていて、読んでいてニヤニヤが止まりません。さすがは弁護士先生だけあって、法律や裁判についても書き込みが深く、リアルな表現が最高。

    どの短編もそのまま「世にも奇妙な物語」あたりでドラマ化されてもおかしくないほど完成度が高い。

    最後まで★4か5のどちらにするか悩んだんですが、若干ごちゃついている感もあったので、少し厳しめにさせてもらいました。しかし作品全体のアイデアやエンタメ要素としては★5満点です。

    ○動物裁判【おすすめ!】
    動物が文字でコミュニケーションがとれる世界で行われる動物裁判。

    多様性や差別の問題を切り口に、トンデモな舞台設定が面白すぎる。
    こんなに馬鹿馬鹿しくも真剣に社会問題に切り込む社会派小説はないですね。そういえば『ゴリラ裁判の日』を読まなきゃ。

    ○自家醸造の女
    かつて禁酒法時代があった世界における、自家製日本酒にまつわる物語。
    姻族との人間関係を風刺しつつも、自分都合でしか考えない主人公の愚痴や不満が共感できる。

    ○シレーナの大冒険
    南極大陸の条約にまつわる物語。
    あまりにも斬新な発想力で禿げそう。たぶん長編にしたらもっと面白くなったと思うんだけどな~

    ○健康なまま死んでくれ 【おすすめ!】
    労働環境について過剰に管理しなければならない労働法が制定された世界での物語。
    社会問題性や登場キャラの設定や関係性が素晴らしく完成度が高い。

    数年後あたりに、こんな社会が現実化するんじゃね?と思えるほどリアルで怖い。ぜひ映像化で見たくなる作品ですね。

    ○最後のYUKICHI
    電子決済が主流になり、現金の使用が禁じられた世界での物語。
    筒井康隆先生の『最後の喫煙者』のオマージュですね。世にも奇妙な物語でもドラマ化されてました。

    本作の魅力は、圧倒的な滅茶苦茶ぶりですね。最後までやりすぎ感が最高でした。

    ○接待麻雀士 【おすすめ!】
    賭け麻雀が合法化された世界で、接待麻雀が繰り広げられる物語。

    新川先生は元プロ雀士でもありますよね。
    作家、東大卒、弁護士、海外生まれで海外在住、元プロ雀士って、人間何回目でしょうか。まだ30代前半でしかも美人ですよ。はー凄すぎて、なんも言えねぇ

    本作は例の政治家賭け麻雀問題をフックに、こんな鋭角な角度で物語をしたためるなんざ、やり過ぎで最高です。
    アイデア一発と思いきや、展開もミステリーとしても凝っていて出来もよく、主人公が生き抜いていく上での葛藤も良く描けていて素晴らしい作品です。

    ■ぜっさん推しポイント
    読んでいて楽しい!これに尽きる。

    ミステリーは大好きなんですが、重厚感たっぷりの本格や社会派を読み続けていると疲れちゃうこともあるんです。しかしながら、この作品は突飛な発想力と強烈なエンタメ力で、私のもやもやを吹き飛ばしてくれました。

    先生のこれからの作品にも期待しちゃいます!

  • リーガルSF?!

    あいかわらず目の付け所がいいな〜
    なんか楽しくなっちゃうかんね
    よくある法律のなにこれ?って間の抜けた部分をめちゃくちゃに膨らましたような架空の法律がある世界での短編が六法

    どれもなんか不思議な感じで話が進み
    最後ちょっぴりブラックでなにか教訓めいている
    まさに星新一先生を彷彿とさせ星新一先生大好きな私としては面白くないわけがない!

    ってかあれ?もしかして帆立さんも星新一先生好きなのかな?
    だとしたらもうこれは同志じゃん!
    帆立ちゃんひまちゃんの仲じゃん!(怖い)

    それにしても帆立ちゃんの成長曲線が凄い
    着眼点も凄いが、文章自体もすごく洗練されてきたように感じます
    どこがどうって聞かれちゃうとうまく説明できないんだが、なんていうか無駄がなくなってきたな〜なんて思うんですよね

    次は何?リーガル時代小説とか書いちゃう?
    帆立ちゃんの今後がますます楽しみです

    • 1Q84O1さん
      師匠、ひまちゃんって…







      …。


      かわいいじゃないですか(。・・。)
      師匠、ひまちゃんって…







      …。


      かわいいじゃないですか(。・・。)
      2023/05/13
    • ひまわりめろんさん
      多方面の魅力が売りです
      多方面の魅力が売りです
      2023/05/13
    • 1Q84O1さん
      さすがひまちゃん♡
      さすがひまちゃん♡
      2023/05/13
  • 元弁護士で元プロ雀士という経歴の新川帆立さんの初のリーガルSF短編集である。
    SF系はあまり読まないのだが、令和反逆六法とは如何なるものかと気になった。

    テンポよくて、発想力が凄い。
    未来はどうなるのかわからないのだが、いやいやこんなことあるかも〜なんて考えると痛快さを感じる。

    一.動物裁判〜多様化の時代が進み普通に動物連れての裁判があるなんて、「ゴリラ裁判」を思い出してしまった。(内容はまったく違うけど)

    二.自家醸造の女〜いつの時代も女性がするの⁇って思ってしまった。それもお酒を家で造るなんて、いや買いましょうよ。

    三.シレーナの大冒険〜歩行型人魚の世界観はちょっとぶっ飛び好きて、理解に苦しむ。いや、理解しなくていいの?冒険って考えるべきなん?

    四.健康なまま死んでくれ〜これがダントツで気になった。労働者保護法といえばそうだろうが、序盤から以前読んだ潜入アマゾンの本を思い出した。
    社会的問題…どこかでありそうでもやもやとしてしまう。うーん、これは重め。でも好きかも。

    五.最後のYUKICHI〜今も信じられないくらいの速さで電子決済が進んでいると思う。
    住民税の支払いもPayPayで済ませるんだから、小銭はどこへ?って今でも思うから。

    六.接待麻雀士〜賭け麻雀に政治家が絡む、いや事件にはならないんですねー。心理戦といったほうがいいのか…。

    常識って何だ〜。って思わせてくれる。
    反逆だもの
    架空六法だもの、ありでいいのかも?






  • 七冊目の新川帆立さん。
    今回は完全な短編集。でも・・・・なんだ!
    なんという、長い題名の本だ!
    まったく・・・・

    架空六法なので、六話ある。
    先ずは“動物裁判” 原告の猫と、被告の
    チンパンジー。でも、動物愛護法は
    その他のレイワ時代では、動物福祉法に変わる。


    とにかく酒税法も変わり、家庭では
    主婦もお酒を作ることができるのを
    良しとするなんて。・・・・私は作りません!!と宣言したい。

    麻雀賭博が健全な法に改正されること
    もまったく・・・・・だ。

    架空六法、とは帆立さんも変わった
    題材を思いついたと思う。


    今までの帆立さんの本の中で、私は
    「競争の番人」が一番いいと思う。
    続編があり、二冊とも楽しく読めた。
    あの本は三冊目を期待したい。

    2023、4、21 読了

    • アールグレイさん
      ポプラさん
      そうですね、読友さんの中で票は割れると思います。だって七冊目ですもの。エッセイもあるらしいです。読む気はありませんが。
      競争の番...
      ポプラさん
      そうですね、読友さんの中で票は割れると思います。だって七冊目ですもの。エッセイもあるらしいです。読む気はありませんが。
      競争の番人、読むのでしたら、続編の内偵の王子もお薦めします。しっかり繫がりを楽しんで頂けたらと思います。☆4、3、2 ではあまりにも・・・・
      今回のレイワ、あまり楽しくなかったんです。(゜゜;)次は本屋大賞の上位作品なので。
      >^_^<
      2023/04/22
    • ポプラ並木さん
      競争の番人、読むのでしたら、続編の内偵の王子もお薦めします。

      アールグレイさん、お薦めありがとう(^^♪
      これでも合わなかったらいっ...
      競争の番人、読むのでしたら、続編の内偵の王子もお薦めします。

      アールグレイさん、お薦めありがとう(^^♪
      これでも合わなかったらいったん終了かな。
      ゆっくり楽しみますね。
      お知らせありがとうございます。
      2023/04/23
    • ポプラ並木さん
      競争の番人、読むのでしたら、続編の内偵の王子もお薦めします。

      アールグレイさん、お薦めありがとう(^^♪
      これでも合わなかったらいっ...
      競争の番人、読むのでしたら、続編の内偵の王子もお薦めします。

      アールグレイさん、お薦めありがとう(^^♪
      これでも合わなかったらいったん終了かな。
      ゆっくり楽しみますね。
      お知らせありがとうございます。
      2023/04/23
  • やっぱり新川帆立、タダモノじゃない。

    パラレルレイワストーリー集とでも言おうか、様々な次元のレイワを描きつつも核心はしっかりと「今」にロックオンされている。

    元弁護士、プロ雀士という肩書もいかんなく発揮。
    次のレイワはどんな世界?とページをめくる手が止まらない。
    2023.2

  • いつもとは違うパターンだ。いつものパターンが好きです。
    最初の動物裁判が、あまりにも衝撃的で、後の物語が入ってこない。トホホ。
    そして接待麻雀士。そうこういう話しは、本当に怖い。背筋が寒くなる。
    ここまでなくても、人をはめる人っていると思って背筋が寒くなる。人として、やっちゃあいけないことっていうのが、緩くなっていくのが怖い

  • 架空の日本で架空の法律が絡んで起きる騒動が語られる短編集。猫から訴えられた猿の裁判に人間の弁護士が乗り出したり、どぶろくが合法になって嫁の嗜みになっていたり、電子決済と感染症が手を取り合った結果現金が悪になっていたりと現行の法律を捻った世界で起こる騒動自体は面白いのだがどうもオチがいまいち。オチの種類も一辺倒ではないんだけどな。社員の健康管理が度を越している中で起きる事件「健康なままで死んでくれ」と接待麻雀が合法化された世界で、相手を勝たせるはずの接待麻雀士が勝たされた理由「接待麻雀士」がまだ好みかなー。ちょっと残念。

  • 新時代の新しい法律と、それに振り回される人々の、ナンセンスストーリー。
    とりあえずこれらの法律が現実にならないことを切に願う。

  • 架空の「レイワ」の時代に、架空の法律が存在したら?

    発想が面白いし、ブクログでの評価も良かったので、読んでみた。
    が・・・
    発想は面白いのだけれど、イヤミスっぽいところが苦手で、私には合わなかった。
    元々苦手な作家さん。
    違う手法であれば、面白いかもしれないと思ったけど、6編中どの作品も心に残るものはなく。
    ただただ残念・・・

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著者プロフィール

一九九一年生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業後、弁護士として勤務。第十九回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、二〇二一年に『元彼の遺言状』でデビュー。他の著書に『剣持麗子のワンナイト推理』『競争の番人』『先祖探偵』『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』などがある。

「2023年 『帆立の詫び状 てんやわんや編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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