錠剤F

  • 集英社 (2024年1月10日発売)
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本 ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784087718508

作品紹介・あらすじ

ひとは、「独り」から逃れられない。
著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。

バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされて──「ぴぴぴーズ」
男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女は──「みみず」
刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまい──「刺繍の本棚」
女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうが──「錠剤F」
……ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!

【著者略歴】
井上荒野 (いのうえ・あれの)
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞。2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞を、08年『切羽へ』で第139回直木賞を、11年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞を、16年『赤へ』で第29回柴田錬三郎賞を、18年『その話は今日はやめておきましょう』で第35回織田作之助賞を受賞。その他、『あちらにいる鬼』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』『照子と瑠衣』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な話
    どの話も短くて、さっと読むには
    よかった
    表紙に引かれて取りました

  • <扮>
    『錠剤F』という題名に惹かれて手にとった本 (実は本当は『ビタミンF』だと思い違いしていたのだがw)。
    本書は短篇集である。知ったのはいつもの様に 本の雑誌 の 新刊めったくたガイド。選者の誰のおすすめだったかはスッカリ忘れたw。
    読み始めたら予想に反して短編集だった。なんとも不思議な感じの文章だった。作者は僕より2歳だけ若い。そして直木賞作家だった。

    しかしこういう作品を受け入れる 小説の ジャンル はあるのだろうか。男と女の話が主体だが恋愛小説などではない。もちろんハードボイルド探偵小説でもないが,SFっぽいところもほんの少しだけはある。いや やはり一番の特徴は「下ネタ」にあふれる事だなw。つまりはやはり良く分からない小説なのだw。で面白いんかい? と訊かれると「うーん微妙」って感じ。(笑)

    あと何冊かこの作家の作品を読んでみないと分からないのだろう。僕がこういう書き方をしたときにその作家の別の作品を読んだ試しは今まで一度も無いのであった。すまぬ。 でも 今回著者に少し興味が湧いて何気にググってみてビックリ仰天。なんと井上荒野は女性作家だった。男性の様な筆名を使う女流作家はいくらでもいるが なんと 井上荒野 は本名なのだそうだ。こりゃ少し他の作品読んでみよう。

    で,直木賞を獲った作品を読んでみようと思って色々調べていて再度ビックリ。直木賞作品ではないが『あちらにいる鬼』という作品を僕は2019年に読んでいた。井上の父(超有名小説家の井上光晴)の不倫相手であった故 瀬戸内寂聴のことを描いた本。その感想文で井上が女性作家である事にも僕は触れている。全く何も覚えていなかった。僕も便利な歳になったものだ。5年も経つともう何も覚えてなくて同じ本を何度も楽しめる♪

    さて で 手っ取り早く本書の結論を言うと最後の一編「錠剤F」は全くちっとも全然 面白く無かった。只 題名の語呂が良さそうだったので作者か編集者がこの本の書名に選んだだけだったのだ。僕はまんまとそこに騙された人になった。冒頭に( )で書いたが そう言えば『ビタミンF』という本があったなぁ。その作家は昔よく読んだがいつの頃かそれらの小説は全部 臭い芝居 だと気づいて以来全く読まなくなってしまったのだった。確かシゲマツとか言ったな。知らんけどw。やれやれ。

  • 装丁と帯で充分不穏な短編集と想像できる。

    本当に短い短編で、もう終わるのにどんなオチがあるのかと心配?するも、見事に完結するのである。
    そして、完結ではなく読後に違和感や疑問、そして妙な余韻やが残るのである。

  • 不穏で不気味な日常を描いた短編集。
    現実の人間には一貫性がなく同じ人間の中には様々な顔がある。そういう人間の多面性ってよく考えると怖くて不気味なのだが、普段見ないように生きているそういう部分が表出された物語だった。
    どの話も現実にありそうで怖い。これがミステリだったら、不可思議な出来事の原因が明かされるはずだが、それが放置されてるだけでこんなにも不穏な物語になるんだなぁ。

    好きな話は、『あたらしい日よけ』と『みみず』かな。『みみず』はマッチングアプリをやるアラサー女性の話だが、いたたまれないというか苦しすぎて。みみずの意味が分かって、主人公の切実さやままならなさを思うと震える。幽霊なんかより現実の方がよっぽとホラー。

  • ちょっとブラッキーな荒野さんの10作になる短編集。どれも日常のありふれた光景なのにズドーンと落とされる不気味さが凄い。面白かったが私の好きな荒野さんではなかったので☆3

  • 作者については少し知っていたから手に取って読んでみたが、何というかキミの悪い短編集だったとしか言いようがない。

  • ちょっとゾワッとするお話たち。

  • おどろおどろしい表紙のイラストが、「覚悟して読んでください」という感じ。
    特別な、あるいは凶悪な事件が起きるわけではないが、日常に潜む、じわじわ来る恐怖が描かれている。
    刑事事件と違って、「解決」される事がないのも、終わった感がなくて却って恐ろしい。
    人に話しても、へ〜え、とか、よくあるよね、みたいに人ごとにされてしまうかもしれないところが、当事者たちにとっては胸がモヤモヤするのでは?
    作品中、はっきり書かれていない事も多く、はっきり書かれていないけれど、読者が察するべき事項と、この先どうなるか本当にはっきりしない事項、そして、本当に起こったのかどうかも曖昧な事項・・・といろいろある。
    もしかしたら、読み返した方がいいかもしれない。
    隠れている何かが見つかるかも。

    個人的には、目の前に立ちはだかって、自分の言いたいことを、強圧的に、あるいは泣き落とし的に、あるいは下心を持って、ずいずいと主張してくる「老夫婦」たちが怖いです。
    並んだ老夫婦の、止め絵のまま近づいてくるような覇気のない立ち姿にぼんやりとした恐ろしさを感じます。

    『乙事百合子の出身地』
    コロナ禍の中ならではの、飛び込み営業の、騙すか騙されるかの緊張よりも・・・
    『ぴぴぴーず』
    触らずに孕ませる特殊能力?
    『あたらしい日よけ』
    いやらしい想像して言いがかりつけてる自分たちをむしろ恥じなさいよ!
    『みみず』
    地味な女の、ぬるぬるした内面
    『刺繍の本棚』
    夫の隠し事より、個展に乱入してきた女の主張が気になる
    『墓』
    いなくなったテルにそっくりな茶トラの猫が現れる
    『スミエ』
    切ないけれど、いい話かもしれない
    『ケータリング』
    孤立する者は、誰かを取り込もうと必死
    『フリップ猫』
    可愛い物への愛と、興味本位の悪意が同じ場所にあること
    『錠剤F』
    これも、誰かを取り込もうとした孤独・・・の話だったのかな

  • なんか読んでて不快になった

  • 短編集です。どの話もダークでした。
    たとえば、タイトルになっている最終話の『錠剤F』は、同僚が怪しい男から怪しい薬(苦しまずに楽に死ねる)を買おうとする話です。

    いや、これはないでしょうと思いながらも、もしかしたらひょっとして、と思ってしまうような。
    ぬるい絶望を感じました。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』で直木賞、2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞、2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞。他の作品に『もう切るわ』『ひどい感じ 父・井上光晴』『夜を着る』『リストランテ アモーレ』『あちらにいる鬼』『あたしたち、海へ』『そこにはいない男たちについて』『百合中毒』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』『僕の女を探しているんだ』『照子と瑠衣』『猛獣ども』『しずかなパレード』などがある。

「2025年 『私たちが轢かなかった鹿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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