錠剤F

著者 :
  • 集英社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087718508

感想・レビュー・書評

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  • 装丁と帯で充分不穏な短編集と想像できる。

    本当に短い短編で、もう終わるのにどんなオチがあるのかと心配?するも、見事に完結するのである。
    そして、完結ではなく読後に違和感や疑問、そして妙な余韻やが残るのである。

  • <扮>
    『錠剤F』という題名に惹かれて手にとった本 (実は本当は『ビタミンF』だと思い違いしていたのだがw)。
    本書は短篇集である。知ったのはいつもの様に 本の雑誌 の 新刊めったくたガイド。選者の誰のおすすめだったかはスッカリ忘れたw。
    読み始めたら予想に反して短編集だった。なんとも不思議な感じの文章だった。作者は僕より2歳だけ若い。そして直木賞作家だった。

    しかしこういう作品を受け入れる 小説の ジャンル はあるのだろうか。男と女の話が主体だが恋愛小説などではない。もちろんハードボイルド探偵小説でもないが,SFっぽいところもほんの少しだけはある。いや やはり一番の特徴は「下ネタ」にあふれる事だなw。つまりはやはり良く分からない小説なのだw。で面白いんかい? と訊かれると「うーん微妙」って感じ。(笑)

    あと何冊かこの作家の作品を読んでみないと分からないのだろう。僕がこういう書き方をしたときにその作家の別の作品を読んだ試しは今まで一度も無いのであった。すまぬ。 でも 今回著者に少し興味が湧いて何気にググってみてビックリ仰天。なんと井上荒野は女性作家だった。男性の様な筆名を使う女流作家はいくらでもいるが なんと 井上荒野 は本名なのだそうだ。こりゃ少し他の作品読んでみよう。

    で,直木賞を獲った作品を読んでみようと思って色々調べていて再度ビックリ。直木賞作品ではないが『あちらにいる鬼』という作品を僕は2019年に読んでいた。井上の父(超有名小説家の井上光晴)の不倫相手であった故 瀬戸内寂聴のことを描いた本。その感想文で井上が女性作家である事にも僕は触れている。全く何も覚えていなかった。僕も便利な歳になったものだ。5年も経つともう何も覚えてなくて同じ本を何度も楽しめる♪

    さて で 手っ取り早く本書の結論を言うと最後の一編「錠剤F」は全くちっとも全然 面白く無かった。只 題名の語呂が良さそうだったので作者か編集者がこの本の書名に選んだだけだったのだ。僕はまんまとそこに騙された人になった。冒頭に( )で書いたが そう言えば『ビタミンF』という本があったなぁ。その作家は昔よく読んだがいつの頃かそれらの小説は全部 臭い芝居 だと気づいて以来全く読まなくなってしまったのだった。確かシゲマツとか言ったな。知らんけどw。やれやれ。

  • ちょっとブラッキーな荒野さんの10作になる短編集。どれも日常のありふれた光景なのにズドーンと落とされる不気味さが凄い。面白かったが私の好きな荒野さんではなかったので☆3

  • 不穏で不気味な日常を描いた短編集。
    現実の人間には一貫性がなく同じ人間の中には様々な顔がある。そういう人間の多面性ってよく考えると怖くて不気味なのだが、普段見ないように生きているそういう部分が表出された物語だった。
    どの話も現実にありそうで怖い。これがミステリだったら、不可思議な出来事の原因が明かされるはずだが、それが放置されてるだけでこんなにも不穏な物語になるんだなぁ。

    好きな話は、『あたらしい日よけ』と『みみず』かな。『みみず』はマッチングアプリをやるアラサー女性の話だが、いたたまれないというか苦しすぎて。みみずの意味が分かって、主人公の切実さやままならなさを思うと震える。幽霊なんかより現実の方がよっぽとホラー。

  • ちょっとゾワッとするお話たち。

  • これは何とも…好きとも嫌いとも言えない短編集だった。荒野さんの小説には必ず「冷たい男」が出てくると勝手に思っているが、この短編には「怖い人間」が沢山出てきた。

    息子がいないから自分たちのところに養子に来ないかと誘い、どんどん勝手に話を進めていく夫婦や、コンビニであなたの子種が欲しいと言ってくる女など、どこか不気味で周囲にいてほしくないタイプの人間たちだ。

    最も楽しめたのは「みみず」という短編。「みみず千匹」を持つ女性が、自分の中にみみずがいなければ良いのに、いや、みみずこそ自分だと葛藤するシーンが強烈。自分のアイデンティティがみみず千匹なのに、本当に愛されているんだったらみみずなんていなくても良いはずと信じた女性が、他の男性と性行為し、みみずの有無を確かめようとするのだ。
    悲しいかな、この女性はもしかしたら凄い名器の持ち主かもしれないのに、自分ではその素晴らしさを味わえないんだよね。
    いっそのこと名器を持っていない方が、自分に自信が持てたのだろうか。

  • 久々の井上荒野さん。全編全部不穏。「何でそうなる?」と思いつつその裏にあるものを想像しながら各短編を最後まで読むと、シンと周りから体からその内側まで冷えてくる感じがします。乾いた冷たさ。いや怖い。
    人間って見た目じゃ何考えてるかわからないし、言ってることやってることがその人の全部を必ずしも現してはいないのだということを改めて突きつけられるような短編集でした。
    真夏に読んだらもっと良かったね。心底涼しくなれそうで。

  • おどろおどろしい表紙のイラストが、「覚悟して読んでください」という感じ。
    特別な、あるいは凶悪な事件が起きるわけではないが、日常に潜む、じわじわ来る恐怖が描かれている。
    刑事事件と違って、「解決」される事がないのも、終わった感がなくて却って恐ろしい。
    人に話しても、へ〜え、とか、よくあるよね、みたいに人ごとにされてしまうかもしれないところが、当事者たちにとっては胸がモヤモヤするのでは?
    作品中、はっきり書かれていない事も多く、はっきり書かれていないけれど、読者が察するべき事項と、この先どうなるか本当にはっきりしない事項、そして、本当に起こったのかどうかも曖昧な事項・・・といろいろある。
    もしかしたら、読み返した方がいいかもしれない。
    隠れている何かが見つかるかも。

    個人的には、目の前に立ちはだかって、自分の言いたいことを、強圧的に、あるいは泣き落とし的に、あるいは下心を持って、ずいずいと主張してくる「老夫婦」たちが怖いです。
    並んだ老夫婦の、止め絵のまま近づいてくるような覇気のない立ち姿にぼんやりとした恐ろしさを感じます。

    『乙事百合子の出身地』
    コロナ禍の中ならではの、飛び込み営業の、騙すか騙されるかの緊張よりも・・・
    『ぴぴぴーず』
    触らずに孕ませる特殊能力?
    『あたらしい日よけ』
    いやらしい想像して言いがかりつけてる自分たちをむしろ恥じなさいよ!
    『みみず』
    地味な女の、ぬるぬるした内面
    『刺繍の本棚』
    夫の隠し事より、個展に乱入してきた女の主張が気になる
    『墓』
    いなくなったテルにそっくりな茶トラの猫が現れる
    『スミエ』
    切ないけれど、いい話かもしれない
    『ケータリング』
    孤立する者は、誰かを取り込もうと必死
    『フリップ猫』
    可愛い物への愛と、興味本位の悪意が同じ場所にあること
    『錠剤F』
    これも、誰かを取り込もうとした孤独・・・の話だったのかな

  • 黒い短編集「乙事百合子の出身地」「ぴぴぴーズ」「あたらしい日よけ」「みみず」「刺繡の本棚」「墓」「スミエ」「ケータリング」「フリップ猫」「錠剤F」
    行間に滲む謎の染み。
    怖いなあ井上荒野。
    「墓」は猫モノ。

  • やっぱり、陽が当たる部分だけって事は無いですよね。

    そんな事を痛烈に伝えて来ます。心して読まなくては負けてしまいそうです。

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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