- 本 ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718645
作品紹介・あらすじ
前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
■プロフィール
寺地はるな (てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ、大阪府在住。2014年『ビオレタ』でポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2021年『水を縫う』で河合隼雄物語賞受賞。2023年『川のほとりに立つ者は』で本屋大賞9位入賞。『大人は泣かないと思っていた』『カレーの時間』『白ゆき紅ばら』『わたしたちに翼はいらない』など著書多数。
感想・レビュー・書評
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今はやりの「働き方改革」がテーマの作品でした。
小さな会社に長年勤めているとそれが当たり前だと思って都合のいいように使われていたのですが、もう令和の時代ですもんね。サービス残業にセクハラ、パワハラどんとこい。マニュアルないから見て覚えろとか、ほんとは言葉で伝えるのが苦手なだけで、自分もそうやって覚えたのだから仕方ないのかも・・
特定の人がいなくても会社が回っていく環境を作ることがよいことだと思うけど、存在理由があるから頑張れるというのも否定できない。
言いたいことがはっきり言える主人公がバサバサなぎ倒してゆくところが気持ちいい。同じ経理で働く年輩の亀田さんは社員以上に仕事をこなしているのにパート扱いで給料少なく有休もないのに不満を押し殺してマシンのように働いている。
こんな不条理が幅を利かせてよいものなのだろうか。
私も声の大きい人とか苦手で委縮してしまうのですが、正論よりも根性論がまかり通って風通しがなかなか良くならない。もう一人、千葉さんも理路整然と物申しすることができてカッコよかったな。
ズバッと物申したいけどその時は会社を辞める覚悟で言わないといけない雰囲気とか暗黙のルールが労働基準法よりも重視されるなんて雇用関係とゆうより主従関係に近い形態なんですよね。働いてるとゆうよりも生活してるて意識なんだと思うから、うやむやに済ませてしまう感じも強いのかな。
はとこが3代目の社長を務める和菓子会社も魑魅魍魎が支配する村社会の様子でした。
茉子もコネの子と呼ばれながらもその関係を大いに利用し改善していこうと振舞う姿がよかったですけど懐柔されてるような感じも受けたりですが、大きな会社がいいってわけでもないし、茉子自身、人間関係や職場環境に疲れて転職したのだからそこそこに折り合うてんはあるわけだと頭を悩ましますが、甘いもの食べて糖分補って頑張らないとね。
四季折々の和菓子が彩を添えてくれました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブラックほどではない会社でも、当たり前のようにある好ましくない暗黙の了解事項。なくならないパワハラ・セクハラ。おかしいと声を上げても無視されたり報復されたりするダークな空気漂う職場。
それでも声を上げようと決めて臨んだ転職先の小さな製菓会社を舞台に、孤軍奮闘する1人の女性を描くヒューマンドラマ。
◇
小松茉子は、目の前に座る男を見た。
男は名を吉成伸吾といい、茉子のはとこに当たる。現在27歳の茉子より5つか6つ年上だが、幼い頃からよく知る相手だけに、今日から「社長」と呼ぶことに違和感がある。
ついそんなことを考えつつぼんやりしていると、「話聞いてる?」と伸吾から声がかかった。ハッと我に返った茉子に「会社では小松さんと呼ぶから」と伸吾は言って、社内を案内するため立ち上がった。
茉子は今日から、伸吾が社長を務める吉成製菓という、社員35名の小さな会社で働くのである。
事務所内には机が5つあって、事務員用と営業員用が2つずつ、向かい合わせに並んでいる。入口にもっとも近いいわゆる下座が茉子の席だ。そして上座に当たるいちばん奥の入口に向いた机が伸吾の席のようだ。
茉子の向かいがベテラン事務員の亀田の席だと言ったあと伸吾は、「亀田さんはパートさんやから、話題は慎重に選ばなあかんで」と心配そうに付け加えたのだった。
( 第1章「春の風」) ※全6章。
* * * * *
作品の魅力は主人公の茉子です。
前の職場での劣悪な人間関係に嫌気が差して退職した茉子は、はとこの伸吾が社長を務める製菓会社「吉成製菓」に就職しました。
茉子がこの会社に勤める気になった理由は2つあります。
1つ目は、伸吾に懇願されたことです。
急な心臓の病で引退した父親に替わり、いきなり社長に就任した伸吾は、ベテラン揃いの社員たちに言いたいことも言えません。折よく事務に1人欠員ができたので、気心の知れた茉子に来てもらうことにしたのでした。
2つ目は、「吉成製菓」に対する思い入れです。
茉子の保育園時代のこと。祖父の葬儀に参列した茉子は、焼かれて出てきたお骨を見て泣き出してしまいます。「死」というものを認識したからなのですが、祖父の死を悲しんでいると勘違いした1人のおじさんが、持っていた小鳥の形をしたお饅頭をくれました。
その美味しさに思わず泣き止んだ茉子にとって、おじさんがつぶやいた「涙はしょっぱい、お菓子は甘い」ということばと、そのとき食べた「こまどりのうた」は特別な存在になったのでした。
でも本作は、若社長の期待と和菓子への熱い想いに支えられて奮闘する若い女性を描いた爽やか系の物語ではありません。
社会や世間に根強く残っている理不尽な慣行や、パワハラ・セクハラ・モラハラ等の人権無視の言動に、いちいち異を唱えては跳ね返されイライラモヤモヤしつつも挫けずに行動する女性の姿を描く物語です。
そして、茉子が鉄の女のような闘士タイプでないところが物語のミソになっています。
小鳥にすぎないこまどりですが、その鳴き声はとても大きく、まるで自分の存在や主張をアピールするかのようです。
茉子の主張や抗議もこまどりのさえずりに似ています。これが設定としておもしろい。
社会に影響を及ぼすだけの力は若い茉子にはありませんが、言わなければ何も始まらない。
そんな茉子のさえずりもなかなか功を奏さず、中盤まではイライラモヤモヤし通しで少し疲れます。
でも、寺地はるなさんらしいカラッとした文章と展開のテンポのよさで気づけば終盤を迎えていました。
勧善懲悪・万事解決とならずに、少しずつ事態が好転していくところが却って心地よかった。
前途はまだまだ多難ではあるのですが、それでも現状を改善していこうとする茉子のしぶとさに希望を感じる、とてもいいエンディングでした。 -
2021年に「水を縫う」で河合隼雄賞 ー人の心を支えるような物語を作り出した文芸作品ー を受賞した寺地さん。なるほどと思う。
どこにでもありそうな街の どこにでもありそうな製菓会社。そこで生活する人達のお仕事と家庭の悩み。
主人公の女性は、人間関係で勤めていた会社を辞めて、親戚の製菓会社の事務へ転職。経験ない老舗で小規模な会社での働き方と人間関係に納得できない。
お仕事小説の側面はあるけれど、社内の人間関係や性格を幅広く描いて 全体を少しずつ良い方向へ向かわせていく。
数々の和菓子は、どれも美味しそうです。
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2024/04/06
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2024/04/06
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2024/04/06
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好きなことしかしない日かぁ。
何だかとっても素敵╰(*´︶`*)╯
私はひたすら飲んで食べるかな( ̄▽ ̄)
だから太るんだってば(...好きなことしかしない日かぁ。
何だかとっても素敵╰(*´︶`*)╯
私はひたすら飲んで食べるかな( ̄▽ ̄)
だから太るんだってば(⌒-⌒; )
どんぐりさんは何します??2024/05/29 -
わかりますー(*^ω^*)
まずは美味しいもの食べるって浮かびました笑
好きなもの好きなだけ食べたいですー!
それものんびり食事をしたい...わかりますー(*^ω^*)
まずは美味しいもの食べるって浮かびました笑
好きなもの好きなだけ食べたいですー!
それものんびり食事をしたい…
そして好きなだけ寝たい…
本当にしたいことだけするには
子守担当が我が家には必要です_(:3 」∠)_2024/05/30
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寺地はるなさんは大好きな作家さんのひとり。
今回の作品は11作品目。
表紙の美味しそうな和菓子は、主人公小松茉子の転職先、吉成製菓を連想させる。
茉子が親戚が社長をしている会社の古い体制に疑問をいだきながら奮闘していく小説。
茉子 「大丈夫?」
伸吾 「頼りないと言ってるのと同じだ」
茉子 「大丈夫?」
虎谷 「大丈夫です」と答えつづける。でも大丈夫ではなかった。
私も職場でよく「大丈夫?」と声をかけるが、ダメなのかな!と考えこんでしまう。
他にも「考えること」を投げかけてくれる深い小説だった。
茉子の職場の感じが悪い人も……それだけでは終わらない寺地さんの優しさを感じた作品でもあった。 -
「水を縫う」、「川のほとりに立つものは」の著者、寺地はるなさんの最新作ということで、本作を手に取りましたが、すごく温かみのある作品であるとともに、昨今の働き方について考えさせられる作品で面白かったです。
本作のストーリーとしては、主人公がハトコである中小企業の社長からスカウトを受け、製菓会社に就職するところから始まります。その製菓会社は一族経営の影響もあって、今だにサービス残業やパワハラまがいの教育など古い会社体質が残っていた。果たして、主人公はこのあとどうなってしまうのか…というストーリー。
本作を読んで真っ先に頭に浮かんだのは、「働き方改革」ですね。私の勤める会社も割と古い体質で、サービス残業や体育会系的な指導がチラホラ見え隠れするような環境でしたので、すごく感情移入しやすいシチュエーションでした。だからこそ、本作を通して学ぶことが多かったのかなとも思います。
特に印象的だったのは第3章と第4章です。この3章と4章でピックアップされるのは自分と年齢が近いアルバイトさん、もしくは社員さんだったこともあって物語に入り込みやすかったというのもありますが、2人が辛く苦しい経験をした中で、自分の好きなこと、やりたいことを選択する姿にすごく励まされた気がしました。
無理に働き方を変えるというよりも、人に合った働き方を見つけ、時には人と助け合ったりすることが上手く生きていくコツなのかなとも思いました。 -
あれ?こんな感じだったっけ?
お久しぶりの寺地はるなさんは寺地はるなさん最新刊の『こまどりたちが歌うなら』です
連載時は『こまどり製菓』だったそう
『こまどりたちが歌うなら』のが二万倍くらいいい
で、まず冒頭の感想
あれこんな感じの文体だったっけ?と思ったんよね
そしたら頭の中でひまわりめろんBが「いや、寺地はるなって書いてあるやん!なに君疑ってるの?寺地はるなって書いてあるんやから、寺地はるなの文体なんやろ!」
いや別にそこを疑ってるわけじゃないんだが、ひまわりめろんBと揉めるとあとあと色々面倒なので「えへへ」とやり過ごしてしまった
あと「さん」を付けろ!とも思ったが、それも言わずにおいた
会社でよくある色々面倒なので「えへへ」問題についてのお話であったわけです
まぁ、自分はどうかとまず思うわな
で考えたんだが、どう考えても「えへへ」タイプではない
譲らない人である
そして譲らない根拠がいわゆる正論でなかったりする
つまりまぁ困った人に分類されるかもしれない
いや誰が困った人やねん
「正論」という刀をやたら振り回す人っているやん?まぁ、うちの奥さんがそうなんだが、めんどくさいな〜と思うのみである
良くない、とても良くない
ちゃんと正論に向き合おう
そして寺地はるなさん文体についてであるが、読み終わってみればはちゃめちゃに寺地はるなさんであった
要するに読み進める間にそうそう寺地はるなさんてこんな感じだった!と思い出しただけである
和菓子食べたい-
うちの奥様は一瞬で私を黙らせるオーラを放つことができます…
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルうちの奥様は一瞬で私を黙らせるオーラを放つことができます…
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル2024/04/20 -
2024/04/20
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2024/04/20
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「働き方改革」と向き合った小説。
和菓子製造販売の零細企業に縁故で中途採用された主人公が昭和的企業体質に疑問をいだき「雇用される側」の権利として「声」をあげます。
その「声」は周囲の人達をハラハラさせる程度で残念ながら多勢に無勢ではあるものの「雇用される側」の人達にも微かではありますが燻りし出します。
私自身もその昔、同族経営の零細企業にいた経験もあるので思わず昭和的企業体質を懐かしんでしまいました。
「雇用される側」として境界線を越えてないとわからない微妙な「雇用する側」への弱さ、遠慮、忖度、諦めや、低賃金での生活環境等の微妙なニュアンスがリアルに描かれています。微妙なニュアンスを汲み取れる寺地先生はこうした職場の経験があるのでしょうか?とWikipediaで調べた所、30歳まで色々な職種をご経験なさってるとの事で納得。
昭和的な企業風土は6〜8年くらい前は当たり前の慣習としてよくみかけましたが、改めて活字にして主人公の立場からみるとそれは明らかに異質な物として映えました。
それだけ働き方改革が浸透してきているのだと実感。
小さな声をあげる事がどれだけ勇気のいる事でそれがどれだけ凄い事か、「声」をあげた勇者達が礎となって現在の社会に至る事に感謝。
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美味しそうな表紙に思わず目が釘付けになってしまいました!
物語の舞台は、和菓子を製造する製菓会社「吉成製菓」。主人公は小松茉子(27歳)、前の職場は人間関係や職場環境に悩まされ退職した経験がある。そんな茉子に、うちの会社に来てほしいとアプローチしたのが親戚の伸吾だった。茉子は「吉成製菓」に勤務することになったが、サービス残業やあからさまなパワハラなど悪しき状況が常態化しているにも関わらず、社長である伸吾は頼りなくパートの亀田さんも我関せず状態…。何とか、現状打破を図りたい茉子が周囲の人々を巻き込みつつ、奮闘する内容です。
今まで読んできた寺地はるなさんの作品とちょっと違う感じかな。でも寺地はるなさんの作品って、結構心に響く言葉が綴られてるんですよね。
「…相手の全部が好きではなくとも、『好き』は成立する…」
「だいじょうぶって訊く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答えるときは、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかんらしいです」
茉子が入ることによって、少しずつですがいい感じになってきたという希望を感じられたエンディングでした。「こまどりのうた」をはじめ、和菓子の描写はとっても美味しそうで、ちょっと幸せを感じちゃいました。-
1Q84O1さんも読む本で影響受けます??
あ、でも私も、甘くておいしければ
和菓子でも洋菓子でも、なんでもOKでした(^-^;1Q84O1さんも読む本で影響受けます??
あ、でも私も、甘くておいしければ
和菓子でも洋菓子でも、なんでもOKでした(^-^;2024/12/11 -
2024/12/11
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1Q84O1さん、おはようございます。
そうですねぇ~おいしければ、なんでもっ(*´▽`*)
単純だけど、それが一番ですよねっ♪1Q84O1さん、おはようございます。
そうですねぇ~おいしければ、なんでもっ(*´▽`*)
単純だけど、それが一番ですよねっ♪2024/12/12
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会社の〝おかしい〟と感じる規則、慣わし、それに声をあげられる人って意外と少ないですよね。
でも、そういう人がいるから会社は変わっていく。
主人公の茉子は 不器用な部分もあったけど、自分に正直に、立ち向かっていくのはたくましいなって思います。
和菓子が食べたくなりますね⭐︎
著者プロフィール
寺地はるなの作品





