カット・イン/カット・アウト

  • 集英社 (2025年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784087718911

作品紹介・あらすじ

【松井玲奈が4年ぶりに贈る待望の新作小説】

あの日、フィクションのような人生が始まった。

著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。
晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、
野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。
どうにか端役を手にしたとある中年の女優は、中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
そして、やってきた公演初日。
幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!

俳優としても活躍する著者が3作目の舞台に選んだのは、「演劇」の世界。
ふたりの女性が織り成す関係は、ゆっくりと、繊細に、絡み合う。
現実にうちひしがれる絶望、強運を手にして舞い上がる歓び、突然やってくる予想外の衝撃。
幾つもの感情を抱えた先の終着点で、それぞれが決断した選択とは――。

「演じる」とは何かを問う、唯一無二の物語。


【著者略歴】
松井玲奈(まつい・れな)
1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。俳優・作家。
2019年『カモフラージュ』で作家デビュー。その他の小説に『累々』、エッセイに『ひみつのたべもの』『私だけの水槽』がある。本作『カット・イン/カット・アウト』が、3作目の小説となる。

感想・レビュー・書評

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  • 脇役の舞台女優と、主役のアイドル。どんどん成功していく舞台女優が羨ましかった。努力を続けてチャンスを掴めということかな。なかなか面白かった。

  • 役者さんの裏側を知ることができて面白かった。
    登場人物は皆、相手を思いやる優しい人が多くてこれは作者の願望なのか、それとも芸能界には本当にこういう人が多いのかと、ふと疑問に思った。

    日々さまざまな芸能ニュースが流れてくるけれど、芸能人も私たちと同じ“人”なんだよなとあらためて感じた。
    仕事の悩み、人間関係の葛藤、そういうものから逃れられないのは芸能人でも一般人でも誰でも同じ。
    キャパオーバーになると、心も身体も壊れてしまうことがあるし、自分ではなかなか気づけない。

    役者という仕事についての知識はなくても、感情の機微が繊細に描かれていたおかげで、すっと物語に入り込めた。

  • 松井さんの作品は初めて読みましたが、繊細できれいな文章を書かれる方だなと感じました。癖がなくとても読みやすかったです!

    元子役のアイドルと舞台俳優の中年女性の運命が、ある舞台をきっかけに大きく変わっていくストーリー。
    元アイドルの松井さんだからこそ、リアルに書けたのかなと思ったりしました。

  • 装丁が素敵で思わず手に取った。
    カバーを外したハードカバーの部分もかっこいい。

    いわゆる中年の域に入った一人の女優。
    目立たない役でも、自分の役割を考えて。全体が良くなることを考えるマル子。
    突然倒れた主役の代役。マル子はどう考えて演じていたのか。
    1人の人間のかっこいい生き様を見せてもらった気分。

  • 【第315回】間室道子の本棚 『カット・イン/カット・アウト』松井玲奈/集英社 | 特集・記事 | 代官山T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
    https://store.tsite.jp/daikanyama/blog/humanities/46525-1648160330.html

    カット・イン/カット・アウト 松井玲奈氏 2人の人生 複数の目で物語に - 日本経済新聞 2025年4月12日 会員限定記事
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO87973000R10C25A4MY5000/

    松井玲奈『カット・イン/カット・アウト』インタビュー 漠然とした不安を抱えている人が、一歩前へ踏み出せる物語を | インタビュー | Book Bang 青春と読書 2025年4月号 掲載
    https://www.bookbang.jp/review/article/795629

    <著者は語る>視点を変え描く多面性 『カット・イン/カット・アウト』 俳優・作家 松井玲奈さん(33):東京新聞デジタル 2025年4月13日 有料会員限定記事
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/398049?rct=book

    松井玲奈(@renamatui27) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/renamatui27/

    カット・イン/カット・アウト | 集英社 文芸ステーション
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/cutincutout/

    カット・イン/カット・アウト/松井 玲奈 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771891-1

  • 元アイドル、現在は俳優で作家として活躍する松井玲奈さんの最新作。

    「私は誰のために」
    「僕は何のために」
    「みんなのために」
    「あなたのために」
    「オーバーラン」
    「カット・イン/カット・アウト」
    六話で構成された作品。

    メインとして描かれるのは元国民的子役のアイドル・中野ももと、売れない中年女優・マル子(坂田まち子)

    自分の居場所を模索し葛藤する二人の女性の心情が丁寧な筆致で綴られる。
    一話のラストで衝撃を受けこの物語から目が離せなくなった。

    演劇界を舞台に繊細な描写が光るエンタメ小説。

    対照的な二人の行く末を見届けて欲しい。


  • 元子役のアイドルと長く下積みを重ねてきた
    50を過ぎた舞台俳優

    正反対の二人が一つの舞台で出会った
    束の間の関わりから、互いの立ち位置が
    ガラリと変わっていく。

    若さ、年齢、実績、経験、伸びしろ、
    あるものと無いものがライトの光を受けて
    交錯する。

    演じることに魅入られた人たちの物語。

  • 書評記事から、冒頭のあらすじ。
    『人気劇団の新作公演に女中(2)役で起用された52歳の売れない実力派舞台女優、通称マル子さんが主人公。劇中劇のヒロイン役は子役出身の人気アイドルだが、厳しい稽古の過程でどんどん追いつめられてゆく。初日の幕が開いた時、対照的な二人の運命が一転する。』

    体調不良のヒロイン役の人気アイドル・中野もも、他の人の台詞と動きを覚えているマル子さんが稽古の代役を務める。そして初日を迎える直前、ももは倒れてしまい、舞台監督はマル子を主役に公演を行うと宣言、歳も見た目の姿も違いすぎる二人だが、マル子は演技が絶賛され、テレビドラマや映画に出演する人気俳優になっていく。

    50歳を過ぎて環境、仕事、生活も一変したが、自分を見失わず、周りに感謝しながら、演じることに一所懸命なマル子の姿がいい。

  • 想像以上に重くて暗い。けど読みやすかった。

    売れない50代の劇団女優と、子役出身で演技が怖くなったアイドルが、もっと絡むかと思ったらそこまで絡みがなくて、でもその2人を色んな視点で見守る…みたいな感じだった。
    アゲハくんがすごい好きになった。気遣いの人や。かっこいいなぁ。
    みきちゃんの株も私の中であがった。

    松井玲奈のインタビュー記事を読んだら、
    「マル子さんにはモデルになった俳優がいる」そうで、
    誰なんだろうなぁ。めっちゃ気になる。

    『立ち止まっても、そこから一歩進めばそれが新しいスタートになる』

    終わり方は結構すきだった。
    カメちゃんの正体も面白かった。

    『推しの子』とか『推し燃ゆ』とか、視点が変わるのは『人魚が逃げた』とか好きな人は、これも好きかも。

    《勝手にキャスティング》
    マル子さん しゅはまはるみ、池谷のぶえ
    スピンズ フルーツジッパー

  • 『カムフラージュ』『累々』と人間の本質、特に女性の内側にある暗さ、醜さ、エグさを描き出してきた松井玲奈が、「表現」という人間の外部へと目を移してきた感じ。
    自らの経験を最大限に生かした一冊、松井玲奈にしか描けない世界。
    子役からアイドルになり、舞台女優としてのチャンスをつかんだももと、実力はありながらもその力を主演という形では求められてこなかったマル子。
    ふたりの女優がとある舞台で共演することになりその稽古から、物語は始まる。日なたと日かげ。人気アイドルと無名女優。すべてが違う2人のそれぞれの語りのパート。演じることへの二人の思い。同じ舞台を目指しているのに、重ならない思い。
    舞台初日を境に、二人の運命が動き始める。
    舞台と映像の違いに、マル子と一緒に、なるほど、そうなのか、頷きながら読む。
    演じることが日常の二人。いま、ここにいるのは自分なのか、自分を演じている誰かなのか、あるいは誰かを演じている自分なのか。
    それぞれが探し続ける「自分」という形。
    この小説を読みながら、ももの中に、マル子の中に、自分と同じカケラを見つけてしまう。全然立場が違うのに、わかるわかると思ってしまう不思議。
    願わくば、わたしがわたしでありますように。
    希望がひかるラストの気持ちよさよ。

  • 松井玲奈さんの小説3冊目。今回は長編小説。章ごとにそれぞれの主要な登場人物の目線で描かれます。最初は短編なのかなと、何気なく読んでいましたが、クライマックスに向けて全てが1つに集約する見事なまとめ方です。すっかり作家さんになりました。最後に、ももちゃんが報われて良かったです。

  • 文中に出てくる物の例え方であったり、心情の表現の仕方が繊細で上手だなと思いました。
    読んでいて綺麗な文章を書くんだなと思いましたし、これまで芸能人が書かれた本はリアリティに欠けてリタイアすることも多かったのですが、こちらの本は読み進めていくことができましたし、読みやすい本でした。

  •  ある舞台。

     ヒロイン役に抜擢されていた元人気子役で今はアイドルの中野もも。その彼女が舞台の開幕2日前に降板。代役に抜擢されたのは50を越えたいつも端役の無名の女優。

     まさか、この交代劇が、それぞれの道を変えてしまうことになるとは。

     演劇、芸能界を通じて各登場人物本当の自分探しが開幕する。

     舞台で演劇で無名の50代の女優のシンデレラストーリーかと思いきや、本当の自分ってなんなのだろかを作品を通じて問われているように思う作品。

     読んでいて、相手から「忙しいから仕方ないよな」と言われることって嫌味もあるかもしれないけど、言われるとしんどいよなぁと率直に思ったし、演劇に限らず、仕事と呼ばれるものは基本的に楽しいものじゃないなどなど、演劇の世界に触れたわけでもないのに、妙に共感できることが多いなと思いました。

     代役に抜擢された無名の女優も、ただラッキーだけで代役になったわけじゃなくて、誰もみていないところで日々努力していたからこそというのがよく、ご都合主義ではないというところも好きです。

     私の生活では、テレビの中や舞台の上の世界の話で全く縁のない世界を舞台にした作品でしたが、気づきが多い作品だなと思いました。

     ただのシンデレラストーリーでは収まらない本作品。

     なかなか濃い読書体験をさせていただいたなと思いました。

  • 全然売れなかった舞台女優が代役を演じて有名になり、子役から活躍していたアイドルが挫折から這い上がる様などリアルで感情移入しやすく途中で止めたくなくてどっぷり浸かった。
    有名になっても余裕ある時間がなければ心が病んでしまうのだなぁ。そしておいしく食べる事が生きる力になると教えてくれた一冊。

  • 子役出身アイドルと舞台女優の交錯する人生
    面白く読めた

  • Amazonの紹介より
    あの日、演劇(フィクション)のような、人生が始まった。
    著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。長年売れず、端役を手にすることしかできなかったとある中年の女優は、中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
    そして、やってきた公演初日。幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!俳優としても活躍する著者が3作目の舞台に選んだのは、「演劇」の世界。二人の女性が織り成す関係は、ゆっくりと、繊細に、絡み合う。現実にうちひしがれる絶望、強運を手にして舞い上がる歓び、突然やってくる予想外の衝撃。幾つもの感情を抱えた先の終着点で、それぞれが決断した選択とは――。
    「演じる」とは何かを問う、唯一無二の物語。



    俳優として、アイドルとして、様々な経験をしたからこそ、それぞれの苦悩が丁寧に描かれていて、知らない裏側を垣間見ました。
    個人的に松井さんの作品として、特徴的なのが、一人になった時の淡々と語っている雰囲気が独特だなと思いました。文章がというわけではありませんが、まるで松井さんが言葉を発しているかのような語りだったので、それが独特だなと思いました。

    一つの舞台に情熱を注ごうとする2人。一人はアイドル、一人は舞台女優の脇役。
    アイドルはヒロインで初舞台なのですが、あまりのプレッシャーに押しつぶされ、しまいには・・・となります。
    そこでキーパーソンとなるのが、もう一人の主人公となる脇役の舞台女優です。

    これを機に、2人の人生は大きく変わっていきます。人生どうなっていくのかわからないものだなと思ってしまいました。夢だったものが現実となり、そして体験することで、見えなかった苦労も垣間見えていきます。

    章を追うごとに、それぞれの立場での苦労がわかっていくのですが、文章から感じ取れる苦労の何倍もの苦悩を実際にしているのかなと思いました。
    その辺りは、松井さん自身が今迄体験したからこそ、文章から滲み出ているものがあり、それも特徴的かなと思いました。

    決して、大きく盛り上げることなく、淡々と語っているのですが、その分、松井さんならではの世界観もありましたし、芸能界での表現することの大変さを感じました。

    大きく飛躍しながらも、心は舞い上がることなく、初心に立ち返っている姿は好印象でしたし、今でも感謝を忘れることなく活躍している姿に自分も分野は違いますが、参考になりました。

    人生どう転ぶかわかりませんが、常に感謝の心を忘れないようにしたいと思います。

  • 坂田まち子、52歳の舞台俳優。仲間たちからはマル子と呼ばれている。舞台では脇役ばかりだったがあるときヒロインの代役をすることに。その演技が素晴らしいと話題になる。
    中野ももはアイドルグループスピンズに属している元子役。舞台のヒロインに抜擢されるが体調不良で降板する。
    話に引き込まれた。よくある表現だが、つづきが読みたくてページをめくる手が止まらないとはこれの事だ。
    アイドルから俳優となった松井玲奈さんだから書ける作品ではないか。
    今作も食べ物の描写にこだわっているように思えた。出てくる食べ物みんな美味しそう。

    全6話構成。1話は坂田まち子、2話は中野ももファンの大学生、3話は中野もも、4話は坂田まち子のマネージャー、5話は舞台降板から2年後の中野もも、最終話はその後の坂田まち子の視点で描かれている。

    みきちゃんがまち子さんと呼びたいと言ったシーンがよかった。かめちゃんは亀の子たわしなのか。
    人の悩みの解像度が高い。

    p.212、まち子に対するアゲハのことば
    「大丈夫ってなんとなく迷惑をかけたくなくて口にするじゃないですか。でも言われた方はそこから手の施しようがなくなってしまう。力になりたくても、大丈夫って言葉が自分に無力さを突きつけてくるんです。俺、頼りないですか?」
    刺さった。

    最後はよかったーとウルっときた。
    映像化してほしい。

  • SKEトップアイドルで、誰よりも結果を重視した松井玲奈氏が、こういう本を書いた心境の変化が気になる。亀ちゃんの結末は。

  • これ好きだわ。
    中年脇役舞台女優、若手アイドル、ファン、マネージャー。
    他視点から語られる「演劇」の世界、それぞれの感情が、すごく良かった。
    ほんタメ文学賞にノミネートされてなかったら、
    松井作品を読まなかっただろうし、良いきっかけをありがとう

  •  最後の最後まで展開が見えなくて、最後はビックリしました。
     代役を演じるとはどういうことかを改めて考えさせられました。
     この本を読み進めていくと、アイドル女子と中年世代の女性との人間模様がわかりやすく描かれていました。アイドルがヒロイン役を務めることが難しいことだと、改めて思いました。
    この本を読み終えて、アイドルと女優についていろいろと考えることが増えて、面白い作品でした。

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著者プロフィール

役者。1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。著書に小説『カモフラージュ』『累々』(ともに集英社)がある。


「2021年 『ひみつのたべもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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