五稜郭から脱走した旧幕府軍が道東まで逃げ延びたかもしれない。
そこにはこんなドラマがあったかもしれない。
史実を元にして膨らませたこうした小説というのはとても好きです。
他の方のレビューにもありましたが、『逃亡者』や『ダンス・ウイズ・ウルブズ』を連想しました。
正直もっと『ダンス~』のようなアイヌの人との交流や自分たち種族が犯した罪について考えるような展開を期待していたので
その点は少し肩透かしの内容でした。
箱館戦争についてや、そのときどんな思いで戦っていたのかなどの描写もなく
悔しいので投降するのではなくて逃げてみよう、というのみにとどまっています。
全体的に心理描写が少なく感じられ、共感や人物の魅力に惹き込まれるといったことがなかった為に
淡々と無計画な逃亡をし急激に行き詰まる感じが自分としては残念でした。
戊辰戦争は一方的に新政府軍の戦力にやられていたばかりではありませんが、其の辺りのことや
だからこそ敗戦が悔しいといった描写もありません。
個人的には『数と火力で勝る新政府軍の前に土方隊は敵では無かった』というところはちょっと疑問に思うところがあります。
主人公のふたりは投降するのは癪だからというセリフのみで脱走しますが
裏にある心理があまりになく、逃げている割には偽名を名乗ることもしません。
補充しなければならない弾を使って鹿を捕り、
その皮を売って生計を立てようとするのはあまり逃亡者らしくないです。
罠ではなく銃を使ってしまうのは、その後のアイヌとの関わりで教えてもらうという前振りかな
というのはありましたが、結局アイヌ人の交流というのはあまり描かれませんでした。
考えなしに町へ出て揉め事を起こし、ばれると相手を殺し、
相手が非道だと言って策略もなしにまた殺し、
という感じで、巻き込まれた人たちがあまりに気の毒ですし
お涙頂戴で淡々と書かれてあるのが読みやすい部分ではありますが
やはり自分としては物足りなかったです。