闇の中から来た女

  • 集英社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087731309

作品紹介・あらすじ

D・ハメットのいびつで危険なロマンス。

感想・レビュー・書評

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  • 金持ちの男から女・ルイーズと彼女を助けた男・ブラジルが逃げるお話。ロバートパーカーの序文に始まり、訳者・船戸さんの解説で終わる。その二つがあって深く読めた気がする。短いし深い心理描写はないけれど、それが返ってよかったか。ハメットのハードボイルドさとその時代を感じる。ハメットは別の作品でももう少し読み進めたい。

  • ダシール・ハメットの5作目。

    今までの中ではかなり短めなお話。
    その分まとまっている感じ。

    闇の中から現れた女が助けを求めて、
    一軒の家に駆け込む。
    家には男と若い女がいて、転んだ怪我を手当てをしてくれ、
    女を追いかけてきた男たちを追い払ってくれる。
    そして、もめごとになり、女は家にいた男の二人は逃げだすことになるが…。

    一応ハッピーエンドなのかな。
    今までの中で、最もラブストーリーらしいお話。

    ロバート・B・パーカーが書いた序文の最後は衝撃的だった。
    「危険とロマンスというふたつの結合はハメットにとってはじめての試みだった。
    その結合はこの作品のなかではみごとに成功を収めてる。
    だが、それは二度と成功しなかったし、
    作家としてのハメットはこの作品以降、
    ほかのどんな試みもうまくいかなかったのである。」
    全く褒めてない。

    そして、訳者の解説に読みやすさのために視点を統一した、
    とあったのにも驚いた。
    そんな翻訳が許されるんだ。

  •  ダシール・ハメットの描く「愛」に戸惑う。ぶっきら棒で不器用なロマンスを描いていたとは、知らなかったからかもしれない。本書の序文で、ロバート・B・パーカーは語っている。「この作品で、≪危険とロマンス≫という相反する衝動を融合させようとした試みは、成功を収めた。感傷的な自分としては喜んでいた。しかし、以降、二度と成功しなかった」レイモンド・チャンドラーはかつてこう書いたそうだ。「ハメットの文体は、悪く言えば、型にはまったもの。よく言えば、およそどんなことでも表現できるといったものだ。こうした文体はハメットに限らず誰か個人のものというより、米語そのものの特質だと私は信じている。もちろん、最近は米語に限らなくなったが、とにかく、こういう文体だからこそ様々なことが表現できたのだ。ハメットがどう述べたらいいのかわからなかったものや、言う必要を感じなかったものまで。それだけだ。ハメットの手によって書かれた文体は何の含みもなく、余韻も残さない。はるか彼方の丘の向こうに何があるかといったイメージを喚起することは断じてないのだ」チャンドラーの意見はどうだろう。否定的にもとれる。しかし、そうだろうか。ハメットの描いた男たちは、どんな苦境にも動じない。死を恐れず、金や女の誘惑にも靡かない。己の痛みを無視して、やらなければならないことをやる。本書のブラジルも一見厭世的な男で、諦めに似た心証を持った。ところが、事件によって、その熱い胸のうちを覗かせ、己の弱さをも見せる。彼(と彼女)の将来に拡がりそうな暗雲も想像される。結局、ハメットはくどくどとした押し付けがましい文章を、単に良しとしない信念の人だったということなのではないのか。訳者の船戸与一さんが述べている。「ストーリィの表面には出てこない地下水系の豊かさはハードボイルド作家のなかでも飛びぬけている」私はこの意見に賛成だ。削れるだけ削りこみ、研ぎ澄まされた文章。その行間、船戸さんの言うところの地下水系の豊かさ、そこを感じ取らなければいけないのだと思う。極端に言えば、表面を読んだだけで、薄っぺらの人物、心理描写も書けていないと断じてしまうような浅薄な読者を拒絶する。それが、ハメット作品なのだと思う。チャンドラー作品は好きだが、ハメット作品はさらにいい。

  • 2008/10/13購入
    2014/6/25読了

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著者プロフィール

1894 年アメリカ生まれ。1961 年没。親はポーランド系の移民で農家。フィラデルフィアとボルチモアで育つ。貧しかったので13 歳ぐらいから職を転々としたあと、とくに有名なピンカートン探偵社につとめ後年の推理作家の基盤を作った。両大戦への軍役、1920 年代の「ブラックマスク」への寄稿から始まる人気作家への道、共産主義に共鳴したことによる服役、後年は過度の飲酒や病気等で創作活動が途絶える。推理小説の世界にハードボイルドスタイルを確立した先駆者にして代表的な作家。『血の収穫』『マルタの鷹』他多数。

「2015年 『チューリップ ダシール・ハメット中短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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