- Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087731439
作品紹介・あらすじ
パリのプールサイド。見知らぬ女性、たわむれの手の仕草、多彩な色どりの風船を恋人めがけて投げたかのような。それを目にした「私」の心に、「アニェス」という名前が浮かんだ…。詩、小説論、文明批判、哲学的省察、伝記的記述、異質のテクストが混交する中を、軽やかに駆け抜けていくポリフォニックな物語。存在の不滅、魂の永遠性を巡る、愛の変奏曲。
感想・レビュー・書評
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「不滅」のたった二文字からここまでの長編を書き上げられる著者の力量にまず感激します。
この本はただの物語と一言でいうわけにはいかない、複雑な構造になっています。
年配の女性の一つの魅力的な仕草から著者と思われる語り手がアニェスという女性を想像し彼女が主人公の物語が始まります。
かと思ったらゲーテと、ゲーテを追いかけ続けた女性ベッティーナの話が語られ、歴史上の著名な人物たちを上手く使い「不滅」について掘り下げ、そのテーマに浸っていたらいつのまにか現代(アニェス)に戻っています。
そしてここからが謎ポイント。物語の主人公アニェスを頭の中で生み出したはずの語り手が、いつのまにか現実にアニェスを知っているという設定になっており、語り手の友人アヴェナリウス教授という人物もアニェスの家族と繋がっています。現実世界と架空の世界が同一の世界線上にあって不思議な感覚。語り手とアヴェナリウスとの間の友情も謎めいた関係です。
アニェスとローラ(アニェスの妹)というこの二人の女性は、ヨーロッパにはよくいるタイプの普通の女性ではないかと思うのですが、文章から浮かび上がってきた彼女たちは女性らしくセクシーで知的でかっこよくて少し悲しい顔をしていて、魅力的でした。憧れ、とはまた違いますが心惹かれて仕方ありません。
私は前半を読んでいる時「これはすごい!すごい本だ!」と大興奮しながら読んでいました。しかし第五部くらいからでしょうか。難しくてわかりづらかったです。本書の説明に「変奏曲」と書いてあるせいでしょうか。それともテーマが不滅から愛に変わったからでしょうか。とにかく後半は頭が破裂しそうになりました。
この本はこれから生涯で何回か読んでいくうちに、次回は第五部、その次は第六部…のように少しずつ好きな部分が増えていくと嬉しいです。
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批評と小説が入り混じった本。自分向きではなかった。理由を考えてみる。
登場人物たちが語り手の創造物だということを強く意識させるため、話の中に入り込もうとすると水を差される。語り手(ほぼクンデラ)が言いたいことは批評の形でも頭に入ってくるのだが、登場人物は語り手の意見を本当らしく感じさせるための操り人形のよう。少なくともこの本では、クンデラは「人は変わりようがない、リセットはできない」という考え方のひとだと思うのだけれど、宿縁にがんじがらめになっている登場人物たちが、クンデラに操作されて死んだり喧嘩したりしているようで、しらけてしまった。
自分はアニェスがどうなるのかばかり気になっていたので、その他の(脂ぎった)おじさんたちがどうであろうと興味がないのである。もやもやしながら読み続けての第六部はほんとうにどうでもよかった。お前の性欲がどうなろうと知らん。批評なら批評で整理して書いてほしいし小説なら語り手にニヤニヤしてほしくない。クンデラのユーモアの感覚が合わなかったのかもしれない。
もうひとつ。語り手も登場人物も、平気で人の服装や体形や老いについて口を出すのが、とても前世紀だった。自分のことだったらいいよ、でも他者の外見をどうこう言うのはもはや下卑たふるまいでありとてもダサいのだ。表現の仕方によっては許容できたかもしれないけれど、本書の登場人物たちの物言いは素朴に過ぎた。
ということでわたしはすっかり心を閉ざして読んでしまった。不滅というテーマに関心があるひとや女のひとの身体をどうこう言うのに抵抗がないひとは楽しめるのかもしれないしむしろ刺激的な本かもしれないので、面白かった人は面白さを教えてください、という気持ち。 -
小説というものは、とりわけ優れた小説というものは、普段の日常生活でなんとなく感じていたり、はっきりと口には出せないけれどもたぶんこういうことなのだろうというような思いを読者に想起させる。この小説は、そんな類の小説のである。
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ストーリーはもちろんですが、複層的な構成にどんどん引き込まれて、夢中で読みました。これぞ小説!
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https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
まるで不思議なオムニバス映画のように広がる世界。私はまだまだこの深さに入れてないな。
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未読。