天の川幻想 ラフカディオ・ハーン珠玉の絶唱

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087731965

感想・レビュー・書評

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  • 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の遺稿集。1905年ボストンで出版された。
    当然英文、それを1994年 船木裕が訳した。
    本書には八雲の7作品と妻せつの思い出での記が収められている。

    本書のメインは天の川縁起
    日本の美しき風習として七夕をとりあげた。彼の時代(19世紀後半から20世紀初頭)ではすでに都市部では
    「忘られかけている」祭りになっていたが、地方では青竹に五色の色紙、それには短歌が書き付けられていた。
    八雲は七夕祭りの由来を古代中国の説話に求め。平安時代の宮中、江戸時代の市井の七夕祭りを調べ
    そして織姫と彦星のかわらぬ恋情を「万葉集」に見た。
    その数は四十一首におよぶ、この一夜の逢瀬に込められた思いを彼は丹念に訳した
    その中から三首ほど抜き出してみよう。

    秋風の吹き漂はす白雲は織姫(たなばたつめ)の天つ領巾かも
    Oh! white cloud driven by the autumn-wind - can it be the heavenly hire of Tnabata-tsume ?

    この夕(ゆうべ)降り来る雨ははや漕ぐ船の櫂の散りかも
    Perhaps this evening shower is but the spray(flung down)from the oar of Hikoboshi,
    rowing his boat in haste.

    明日よりは我が玉床を打ち払ひ君と寝ねずて一人かも寝む
    From to-morrow,alas ! after having put my jewel-bed in order,
    no longer reposing with my load,I must sleep alone!

    ギリシャで生まれイギリスで育ちアメリカで記者として活躍したハーン。
    日清・日露戦争で騒然とした日本にきて、彼はすたれゆく日本の風習を愛し
    守るべきはその相聞・その情感だと示してくれた。

    ほかにも妻せつの「思い出の記」も秀逸。
    この一国もの(一刻もの)の愛すべき日常を伝えてくれている。

  • 2012年8月16日

    装画・装丁/木幡朋介

  • つい先だってまであった行事のことや、失われつつある風習のことをここまで書いているとはおもわなんだ。和歌など詩歌も改めてまとめて読む機会を得たので、非常にためになりました。

    「蚊」についての随筆も、本当に感心します。墓地の水は仰るとおり蚊培養地であるが、微少生物の薬殺による生態系への影響までをこの時代に言及しているところが面白い。

    他にももっと読みたくなりました。そして八雲立つ国も訪れてみたい。

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著者プロフィール

(1850年-1904年)ギリシア生まれ。作家。ラフカディオ=ハーン。1869年アメリカへ渡り、新聞記者に。ハーパー社の通信員として、1890年4月4日来日。島根県松江尋常中学校へ英語教師として赴任。1890年12月、小泉節子と結婚、日本に帰化し、小泉八雲と名をあらためた。節子夫人から聞く日本につたわる話を集め、工夫をこらして物語にし、『Kotto(骨董)』『kwaidan(怪談)』などの本にまとめた。

「2008年 『耳なし芳一・雪女 新装版-八雲 怪談傑作集-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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