- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087732580
作品紹介・あらすじ
リオで暮す妹ルシのもとへブエノスアイレスからやってきた姉ニディア。片やロマンチスト、片やリアリストの二人は隣りの女性やハンサムなガードマンをめぐって噂話に花を咲かせる。だが、妹は息子の転勤にともないスイスへ移住、南国を偲びつつその地で病死する。周囲のはからいで妹の死を知らされない姉は、リオで待ち続け、妹に宛てて手紙を送り続ける。ところが、彼女は信頼していたガードマンに裏切られ、傷心のままブエノスアイレスに戻るのだが…。
感想・レビュー・書評
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アルゼンチン中流階級出身の姉妹。今では年を取り大切な人も亡くしてきた。ブレノスアイレスに住む姉のニディアが、リオデジャネイロに住む妹のルシを訪ね、二人でひたすらおしゃべりをするという形式。隣に住む女医と新しい恋人、マンションの警備員とその恋人の話。そこに見え隠れする姉妹の歴史。
二人は多くのものを失い、高齢に体の自由も利かなくなってきているのにとにかく前向き。
「だってあの頃は75歳、ほんの小娘だったのよ。でも今は81歳。もう分別を持たなくちゃね」
「失ったものは省みたりしないこと」
というような言葉が出てきます。
私は一人っ子ですが、このようななんでも共有できていつまでも元気な姉妹関係は憧れる。
また、終盤では良いことと思った行為が裏切られたり、またしても大事な相手を失ったり、人生の厳しさがも示されますが、それでも懲りずに前向きな主人公には脱帽。
女の私が読むと実に痛快な作品で、男性の感想も聞いてみたいなと思います。 -
須賀敦子さんの『塩一トンの読書』で紹介されていて読みたくなり、古書を取り寄せた。帯には「人生の黄昏を迎えた二人の姉妹の会話と手紙で綴られる、女達の愛の歓び、喪失の悲しみ、冒険と挫折、そして再生。」とある。あらすじは大体このとおり。
私はとても面白く読んだし、なんというか、元気さえもらった。特に後半の、手紙のやり取りになってから。主人公姉妹は隣のシルビアの起伏に富んだ日々についておしゃべりしているのだが、実はこの姉妹もそれぞれひとしなみに、人々との関わりの中にある生や死を通り過ぎてきたのだということが、会話や手紙の中で明かされる。姉のニディアにいたっては、この小説の中での出来事によってうちひしがれるけれども、またぐいぐいと進んでいく。80歳を超えたおばあちゃんだからできることともいえる。それを、いかにもヒューマンドラマな感じの描き方ではなく、おばあちゃん同士の他愛ないおしゃべりから紡ぎ出していることがすごい。
私たち読者にも、というか生きていれば誰にだって、生や死にまつわることは起きるものだ。だからニディアの、老境の愚痴も含めたこの生きる力は、読み手にも明るさをくれる。
その一方で、老姉妹に対する家族の態度にも、はっとさせられる。自分たちの不安感を回避するために、姉妹の自立心や判断力に信頼をおかず(実際問題難しいことだとは思うが、少なくともこの老姉妹はかなりしっかりしているにもかかわらず)、目の届くところに居させようとする子どもたち。そして老姉妹も、人生を通過してきた今だからこそ自立して暮らしたいものの、適当な距離感のおしゃべり相手や散歩の連れはいないとやっていけない。家庭のために生きてきた女性が高齢になって、社会のどこでどうやって、そういう新たな友人を見つけるのか。
日本語版は1996年発刊で既に絶版のようだが、社会を先取りしたかのような内容にも感じられた。 -
会話と手紙と、そして警察の調書で構成される。自分はこういう変形形式の小説に苦手意識があったけど、リオとブエノスに思いをはせながら、人とは信仰とは、そして老いることとは、と考えながら読める本だった。
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プイグの遺作。プイグの小説は実験的だから素晴らしいんじゃなくて、実験的且つ面白いからこそ素晴らしいのだと思う。それから優しくて。人生を生きる元気が出る小説。
女から読んで喝采送りたくなる作品はいくつかありますが、男性からはどうなんだろう?とか思...
女から読んで喝采送りたくなる作品はいくつかありますが、男性からはどうなんだろう?とか思ってました。
ラテンアメリカ文学の高齢者はパワフルですよね。