- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087732924
作品紹介・あらすじ
これは、孤立する日本の未来を予測する衝撃の書なのか。21世紀の国際情勢を大胆に予測する衝撃の書。世界的な国際政治学者、戦略家S・ハンチントン教授が発表した挑戦的ベストセラー、待望の刊行。
感想・レビュー・書評
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20年くらい前、マツダがフォードの傘下に入る前のことだが、フォードとある販売チャネルのプロジェクトに関して折衝することがあった。その相手側交渉団の中の好敵手がデトロイトから来た女性弁護士。何度が会食をした中で、その彼女、スーザン・ガスパリアンが云うには、彼女の父親はアルメニア人だと。そして自分のミドルネームはアレキサンドラだといい、アルメニアに多い名前なのだとも。そのときは、ふ~ん、と思ったくらいで、なんとも感じることはなかった。アルメニアが中央アジアの国だというくらいはかろうじて知っていたくらいで・・・。
ところが、塩野七生さんの「ローマ人の物語」では、アルメニアはローマとパルティァ或いはペルシア(今のイラン)の両勢力に挟まれて、いつも翻弄され従属させられる国として登場した。そして今日読み終えた「文明の衝突」によって知ったのだが、アルメニア(ギリシャ正教)はトルコ(イスラム教)と長い間敵対関係にあり、特に20世紀初頭には、オスマントルコによって数百万人とも云われる大虐殺が行われたのだという。
それで初めて理解できたことなのだが、古代から存在していたアルメニア人はユダヤ人と同じようにディアスポラ(離散者)が世界各国に存在しているということ、特に米国には100万人ものアルメニア人が移住しているのだという。要は弁護士の彼女の父親もディアスポラということなのだ。彼女が何ゆえに父親の祖国の話をしたのかは知らないが、今にして思えば、アルメニアへの理解を求めたかったのか、それとも出自に対する自虐的な意味があったのだろうか。こういう民族・宗教をベースとした文明の違いからくる紛争は、かつては旧ユーゴスラビアで、そして今なお中央アジアやアフリカでは多くの地域で続いているわけで、民族浄化を目指すような激しい戦闘が起きるたびに世界にディアスポラが散ってゆくということなのだろう。知れば知るほどに、現代の紛争のほとんどすべてが文明の違いから起きているということが判ってくる。塩野さんの「十字軍物語」を読んでいると、聖地奪還とはいいながら、キリスト教世界の西欧がイスラムを徹底的に否定しイスラムの撲滅を意図していたかが判る。
高校時代に世界史は随分勉強したつもりだったが、そんなことは正直知らない話だった。我々の学ぶ世界史は欧米の歴史に重点が置かれていて、イスラム世界や中央アジアの歴史など、どれほど取り上げてきただろう。考えてみれば、こういう歴史教育からして欧米志向であり、西欧化がすべてという偏りがベースにあるように思える。かつて一緒に仕事をしたイギリス人の弁護士と話したときも、知っているイギリスのことを話すと、なぜそんなに知っているのだ、と云わんばかりに驚かれたこともあった。勿論、彼は日本のことは歴史も文化もほとんど知らなかったのだが・・・・。
現代においても、我々は欧米から発信される情報を中心に世界を見ているわけで、そこには明らかに偏りがあるということになる。イスラムにはイスラムの大儀、正義がある筈で、それを我々は知ることができないのが現実と云っていいのだろう。我々は所詮、西欧文明の中に生きているわけではない。日本が躍進を続けた時期に欧米から日本異質論が噴出したことは記憶に新しい。日本の文化・文明とは何なのか、日本人とは何なのか、特に中国の力が強くなりつつあるこの時代、改めてよく考えてみる必要がありそうに思われるのだが・・・・。S.ハンチンソンの「文明の衝突」、色々と考えさせられる。 -
・近代化=西欧化だった国が、近代化を進めて西欧と同水準に達すると、今度は発展の理由を自らの固有の文化に求めるのだそう。例示されるのが日本やシンガポール。では今度は凋落が始まると、何を見つめてどう考えるのだろうか?
・日本は他の国と共有されない、孤立した文明を持つ。冷戦終了後、イデオロギーでなく文明を共有する国同士のつながりが強まっているので、孤立した文明に属していることは今後経済や政治でもマイナスに働くかもしれない。…と90年代に書かれている。予言だ、と思う。後半で論じられるフォルト・ライン戦争において、同文明に属する他国からの介入やディアスポラの援助が果たす役割の大きさが指摘されることとも呼応。
・トルコがEU加盟をなかなか認められない背景に宗教の違いがあるのはなんとなく理解していたが、EU内で浮きがちなギリシャにも正教会系という背景があるというのは新しく認識。イギリスがEU脱退となった現在の状況(と経過)を加えて考えるとさらに複雑そう。
・第10章ほか、イスラムの脅威にかなりの紙幅を割く。911より前の本だが、暴力に関わる率の高さ、テロの危険等に言及。偏見では?という部分もあるが、特定の中核国がなく信仰という共同体への帰属意識が強いため、政治によるコントロールが及びにくいという指摘はなるほど。
・バランシングとバンドワゴニング。それぞれの戦略を選ぶ文化の違い。
・異なる文明が接する地点で発生するフォルト・ライン戦争が、残虐で長引きがちになる理由。ボスニア紛争の経緯を文明の違いに着目して分析。
・全体として西欧の視点なので、違和感をおぼえる部分もある。そもそも日本の文明ってそこまで特殊?とも感じるし、中国一強状態への防波堤としてゲームの駒のように日本の役割を論じられるのも抵抗。イスラムについても、偏見に思える箇所もある。そもそも宗教自体のインパクトについては全体を通じて強調されているので、イスラムの特殊性は多少割り引いて読んだ。 -
合衆国国務省United States Department of StateのPR版みたいな本。
WASPの保守的な政治学者が書いたグダグダした文章。
くだらねえ。 -
文明区分がしっくりこないけど、今でも十分楽しめる内容
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だいぶ積読になっているが、2024/1/24㈬から少しずつ読みだす。
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内容が難しい。
冷戦後の世界で起こっている紛争を「文明の衝突」と言っている。
日本を一国で「日本文明」ととらえているところに興味を惹かれたが、難しかった。日本の中間的な立ち位置というのはうまい捉え方だと思う。 -
世界を9つ?の文明にわけていて
その一つとして日本が一つの文明に
定義されてる
というところだけみて読みたくなった、
それはなぜなのか?
アジアとしてじゃなくて日本を一つの文明とするのは?
なんか日本って他の国とは違う気がする
何がどうかわからないけど。
読めば謎がとけるのかな。 -
1998年に日本訳が出てると思えない内容の濃さと未来予測。
主題は紛争は文明のアイデンティティにより統合や分裂する。
またイスラムによる世界の争いやアメリカでのヒスパニックの増加による分断も述べており20年先の未来を見通している。
商業や文化、軍事面の衝突は文明内。
西洋が世界の覇者となったのは理念や価値観や宗教でなく、組織的な暴力の行使。
言語と宗教が文明の中心要素
改宗と人口増加で人を増やすイスラム
アイデンティティは他社との関係によりのみ規定される
引き裂かれた国家の最後の条件は西欧が認めること
ヨーロッパはどこまでか?
A.西欧のキリスト教国家が終わり、イスラム教と東方正教会系の国家が始まるところ
中国人=民族、血筋、文化
インドネシアのイスラムはデカいが辺境部にある
合理的な行動を取る前に自身を定義付ける。
アイデンティティの追求が文明間の紛争に。
西欧、中国、日本、イスラム、ヒンドゥー、スラブ、ラテンアメリカ、アフリカ。
8つの文明。 -
怒涛の5冊買いの4冊目は、ハンチントンの文明の衝突です。
我らが日本は独自の文明を持っているのでしょうか。
持っているとしたら、日本国と日本文明が合致するユニークさ、孤立さは、文化的な紐帯を持たず文化的なパートナーシップは結べないが、他国にない行動の自由を欲しいままにできるのです。
とても勉強になりました。ありがとうございます。十字軍もこちらの本も読んでみようとおもいました。
とても勉強になりました。ありがとうございます。十字軍もこちらの本も読んでみようとおもいました。