- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087734355
作品紹介・あらすじ
ミラン・クンデラ最新評論集。『ドン・キホーテ』を中心に、カフカ、フロベール、トルストイ、大江健三郎らの作品を読み解き、「小説」という芸術の魅力を語る「クンデラ版世界の小説史」。
感想・レビュー・書評
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クンデラの小説がなんでああなのかその前提にある気持ちととの源泉が何なのか書いてあるように思うんだけどむしろ作品を読んだ時に感じたものの方がずっといい感じだった気がする。それはこの小説論が悪いってんじゃなくて実作、小説の形でその論に輪郭を持たせてある方がずっといいという感じ。
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評論集ではあるが後書きにもある通り7部構成・主題の反復というその形式は小説的でもある。読者家としてのクンデラはラブレーやセルバンテの様な古典作家がいかにカーテン=紋切型の表象を切り裂き、喜劇によって世界がそうであるものと思われていた意味を剥ぎ取っていったのかを示していく。語りの通底として諦観が透けて見えるのは、いつになく直接的に示される亡命者としての悲しみに、滅びやすいものである芸術の歴史が重ね合わされているからだろうか。美しいものは決して不滅ではない、だからこそそれは語らなければならないものなのだ。
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「小説の精神」よりは面白くなかった。
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雑誌・文藝(2009年冬)のアンケートの答え:千野帽子
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現在もフランスに亡命中のチェコ人作家ミラン・クンデラによる文芸批評書。
何回も読み返したが、今また一年ぶりに読み返しています。
ミラン・クンデラ氏は筋金入りの小説家。
小説というものに人生をかけた人ゆえに書ける、現代において生きることの意味が詰め込まれています。また、「小説」というものが生きる上でのツールである事、つまり「小説」はめまぐるしく変化し、巨大な世の中を可視的にするために唯一無二のツールである事が、本書で実感できます。
見えていないものを見るには、まず言語による認識を構築し、メンテナンスする事が大切で、それは生きる上でのリスク管理であると思います。クンデラ氏の筆致は、読む人の五感を研ぎ澄まし啓発する力があります。そして、認識する為には「無駄なものを一切剥ぎ取り、事物に魂に向かっていく」事が肝要である。心にメモしておきたい言葉が本書のページをめくるごとに溢れ出してきます。
よって本書は、文芸批評という形式を取っていますが、応用度は深いです。
チェコという社会体制がそっくり入れ替わる歴史がある国で、共産主義と資本主義ふたつを経験してる人というのは、そうざらにはいません。「現代では、それまで動いていないと思っていた足元の地面が実は動いていた」といった言葉は特にハッとさせられました。
不景気な世の中で心を強くできる本です。 -
ヨーロッパとは最小の空間の中の最大の多様性であることになぞらえて、人生=散文を、欺瞞的に美化聖化し覆い隠している宗教/イデオロギー/歴史/社会・文化的伝統・教育/世界解釈・認識という人為的「カーテン」を引き裂き、人間の本質と不可分の喜劇性(卑俗/喜悲劇)実存の未知や謎を明るみに出すのが小説とする文化文学論。
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ミランクンデラはわりと好きな作家。最近久しぶりに買いなおして読みました。何回でも読める本。