ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087734799

作品紹介・あらすじ

ビジネスでは、商談、待遇の改善要求、抗議など、「交渉」がすべてといっても過言ではない。一方、私たちの普段の生活もまた交渉の連続だ。配偶者と家事を分担したい、レストランの料理が遅い、交通違反で警官に止められた、といった場面も、実は「交渉しだい」なのである。そして、驚くべきことに、国際紛争を解決に導くのにも、子どもに歯みがきをさせるのにも、まったく同じ交渉術が役に立つ。しかも、その交渉術は誰でも学べるもの、今すぐ実践できるものなのである。世界中の企業や国家のトップが教えを請う「交渉術の権威」が、その極意を伝授。

感想・レビュー・書評

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  • ☆2(付箋8枚/P510→割合1.57%)

    ・わたしの知り合いは、アメリカの一流企業に戦略担当副社長として採用された。彼女は入社するとすぐ12人の上級役員あてにメモを書き、会議をするので会社の目標を考えておいてくださいと呼びかけた。
    メモを受け取ったCEOが電話をかけてきた。「ちょっと待ってくれ。きみは着任したばかりじゃないか。わたしたちはここで何年も働いている。会社の目標などわかっておるわ」
    「それはどうでしょうね」。新任の副社長は言った。「でもわたしは企業戦略を考えるよう、仰せつかっています。会議をやるだけの価値は絶対あります。それに、そう時間はかかりませんから」。
    CEOはわかったと言った。
    12人の上級役員は、会社の目標を考えてきてくれた。戦略担当副社長は一つひとつをボードに書き出した。結局、目標は一つでも、二つでも、三つ、四つでさえもないことがわかった。14の異なる目標があったのだ。しかもその大半が、互いに矛盾していた。

    ・スカンジナビア航空(SAS)の伝説的CEOヤン・カールソンは、かつてこう言ったそうだ。「成功と失敗の差は…2ミリだ」。言いかえれば、ほんの些細なことが、交渉の成否を分けるということだ。

    ・また交渉では、間違ったやり方で始めたことに気づいたら、すぐにやり方を変えることができる。わたしは一度だけ、ウォートンでの授業に遅刻したことがある。ペプシのトラックが、両側通行の道路の片側をふさいでいた。対向車線には、一台の車とタクシーが向き合う形で停まっていた。どちらの車の後ろにも、5台ほどの車がいてクラクションを鳴らしていたが、どちらも譲ろうとはしなかった。わたしは交渉の手伝いをすることにした。車を降り、タクシーの方に歩いていった。明らかに地元の人間と分かる相手の方が、交渉しやすいと思ったからだ。
    「おいおい、そんなにムキになってどうする?」とわたしは言った。失言だ!わたしは彼を侮辱し、見下してしまった。ドライバーはあっちへ行けというふうに手を振って言った。「ふん!」そこで間違いに気づいたわたしは、方針転換して、もっと親身になろうとした。
    「機嫌を直してよ」と試しに言ってみた。おそらく彼は以前、人がよすぎて馬鹿を見たことがあるに違いない。彼は少し考えていた。「何だよ」それでも彼は動かなかった。
    そこでわたしは、彼の頭のなかの絵について考えた。彼は毎日どんなことをしているのだろうと考えた。そしてとうとう、彼を尊重できる方法がひらめいた。「わかるだろう」とわたしは悪事の相談でもするかのように、声をひそめて言った、「ここにいる面々のなかで、プロのドライバーはきみだけなんだ」
    彼は車をバックさせた。

    [ゲットモア・モデル]
    第一象限 問題と目標
    1.目標(短期/長期)
    2.問題(目標達成のための問題点)
    3.当事者(列挙する。意思決定者、相手、第三者)
    4.交渉がまとまらない場合(最悪の場合どうなるか)
    5.準備(時間、相対的な準備度、どちら側がより多くの情報を持っているか?)

    第二象限 状況分析
    6.ニーズと利益(双方の理性的/感情的/共通の/相反する/不等価なニーズと利益)
    7.認識(双方の頭の中の絵。役割交換、文化、意見の不一致、信頼関係)
    8.コミュニケーション(スタイル、関係構築を阻害していないか)
    9.規範(相手の規範、基準)
    10.目標を見直す(双方がイエス/ノーと言う理由)

    第三象限 選択肢/リスク軽減
    11.ブレインストーミング(目標、ニーズをかなえるための選択肢。何を交換するか、何をつなげるか?)
    12.段階的に進める(リスクを軽減するための小さなステップ)
    13.第三者(共通の敵、当事者に影響をおよぼす人たち)
    14.フレーミング(ビジョンを描き出す、問うべき質問を考える)
    15.選択肢(必要に応じて取引の内容を改善/変更する)

    第四象限 状況分析
    16.最善の選択肢/優先事項(交渉の決裂要因、暴露された情報)
    17.だれが提示するか(どのようにして、誰に?)
    18.プロセス(アジェンダ、期限、時間管理)
    19.確約(コミットメント)/インセンティブ(相手に合わせて)
    20.次にやるべきこと(だれが何をするか?)

    [モデルの基盤となる12の戦略]
    ・目標がいちばん大切
    ・相手がすべて
    ・感情のお見舞い
    ・相手の規範を使う
    ・オープンに、倫理的に
    ・コミュニケーションとフレーミング
    ・状況はすべて違う
    ・段階的に進める
    ・不等価交換
    ・本当の問題を探す
    ・違いを受け入れる
    ・リストをつくる

    ・ある建築家の娘は、毎日スクールバスに乗り遅れていた。建築家は片道15分ずつ、一日30分かけて学校に送っていかねばならず、一週間では二時間半もの時間が無駄になった。何をどうやっても、娘を時間に間に合うように起こし、着替えさせ、支度をさせることができなかった。
    授業でこの問題を扱ったとき、父が小学生の娘の役をやった。娘はなぜ毎日毎日バスに乗り遅れるのだろう?彼は気がついた。「パパともっと一緒にいたいから」だ。

    ・ラウル・ソンディの三歳の甥は、両親の寝室でごはんを食べると言い張った。ラウルはだめだときめつけずに、甥に尋ねた。「どこで食べたいのか、その場所を見せてくれるかい?」甥は叔父を寝室の隅っこのスツールに連れて行き、そこにちょこんと座った。
    「甥っ子が幼児用いすに座ってではなく、大人と同じようにして食事をしたがっているのだとわかった」とラウルは言う。「彼にとって大事なのは、部屋じゃなかった。だからぼくはスツールをダイニングルームに運んで、甥っ子を座らせ、ここで食べなさいと言ったんだ。喜んで食べていたよ」。

    ・子どもに約束を守らせるのは難しいと、多くの親が思っている。でも実は子どもも親について、同じことを思っている。

  • プロが教える、交渉のコツ。なるほど、と納得しながら読んだ。
    やり方は一貫している。もちろん状況に合わせて臨機応変に対応するが、基本的なプロセスは常に同じだ。規範とフレーミング。相手が原則としている理念を思い出させることと、自分が求めていることがいかに相手の規範に合っているか示してあげる。ビジネスに限ったことだけではなく、日常のちょっとした便宜を図ってもらいたいとき、人間関係を損ねずにうまく実現するにはどうすれば良いのか。相手をよく理解し、誰かに損をさせることなく、お互いに納得が行く合意に至るには、相手の立場に立って考えること。そして決して感情的にならないこと、欺かないこと。慣れれば難しくないのだろう。
    今、一件交渉中のことがあり、それをどうやって解決に導くか、考えてみようと思う。

  • 「あなたはもっと図々しくても良いよ」と勧められた1冊。漠然と「図々しく」ではなく、具体的に交渉で有利に持っていくためにこういう方法を、という形で勧めて下さったことに感謝。余計な手数を取らせるまい、相手はこちらに興味がない、最小限の接触で、妥協点を早期に見出すことが一番、等と思ってきたが、相手は「極力接触しないでさっさと終わらせる」を最優先にしているわけではないこともあるので、バックグラウンドを共有することから始めて、もう少し聞いてみる、立ち入ってみる、押してみることがあっても良いのかも、と思う。
    成功事例の羅列過ぎて、途中で飽きてくるので、方法と、成功事例・失敗事例を整理して書かれていると分かりやすいかとは思った。

  • ・利益
    ・規範
    ・感情のお見舞い

  • 有用な交渉術に関する本。何かで見てとうとう手に取った一冊。
    なかなか良い感じ。
    交渉に必要な本質が述べられている。

    メモ
    ☆12の主要戦略
    目標が一番大切
    相手が全て。相手の中の絵をみる
    感情のお見舞いをする
    乗客は毎回異なる
    段階的に進める
    不等価な価値のものを交換する
    相手の規範を調べる
    相手を操作せず、率直で建設的な態度をとる
    コミュニケーションを絶やさず目に映るままを言葉にし、ビジョンを描き出す
    本当の問題をつきとめ、それをチャンスに変える
    違いをありのままに受けとめる
    準備する、リストをつくりそれを使って練習する
    ・交渉は中身が全てでなく、半分は人で決まる。それゆえ心を通わせ個人に接することが重要
    ・相手が信頼できない場合、段階的に物事を進める
    ☆効果的なコミュニケーションの基本要素
    コミュニケーションを欠かさない
    耳を傾け質問する
    相手を責めずに質問する
    頻繁に要約する
    役割交換をする
    冷静を保つ
    目標を繰り返し確認する
    関係を損なわない程度に断固とした態度をとる
    小さなシグナルを見逃さない
    相手が確約を行う方法を調べる
    決定する前に相談する
    自分の力でコントロールできることに集中する
    誰が正しいかという議論はさける
    ・メールには気をつける。相手の気分で解釈されてしまう。
    ☆非協力的な相手と交渉するとき
    相手の規範を活用する
    共通の敵を呼びおこす
    長期関係のビジョンを描く
    相手側の意思決定者を活用する
    ・不等価交換の主要な原動力は無形物。相手にとって価値のある金銭以外のもの
    ・ゲットモアモデル
    1問題と目標を、明らかにする。当事者は?最悪どうなる?
    2状況分析。ニーズ、利益、認識、規範はそれぞれ何か
    3選択肢とリスク軽減。ブレスト、段階的に進める、第三者を考える、フレーミングを考える。
    4状況分析。最善選択肢は?優先事項は?つぎにやるべきは?

  • 必ずうまくいく、というようなものではなく、10回の交渉のうち、1回でもよりよくなればというもの。奇をてらうものでもないが、大事なこと。自分の得たいものを得ようとするならば、相手のことをよく考えること。

  • 交渉、苦手だなぁ。私はめんどくさいからすぐ妥協しちゃうほうだが、本書を読むと交渉とは思わないでやってたことがあると気づく。
    「感情のお見舞い」は大事だよな。

  • vol.182 ウォートン流!15年間、人気No.1を誇る伝説的講義の交渉スキルとは?
    http://www.shirayu.com/letter/2012/000366.html

  • 図書館
    予約中

  • 完璧なツールはない
    少しでも成功率が上がれば十分。
    十回に一回成功するだけでも、一生なら大きい。

    冷静になる
    準備する
    意思決定者をつきとめる
    自分の目標に集中する
    心を通わせる

    12の主要戦略
    目標を明確にする
    相手の立場を理解する
    相手の感情を理解し、与える
    状況を把握し、臨機応変に
    段階的に進める
    不等価なものを交換する
    相手の規範を調べる
    欺かず率直に建設的に
    交渉を終わらせない
    本当の問題を突き止めて前向きに
    多様性を尊重する
    準備する、リストを作り練習


    目標を決めてどのような態度で交渉に臨むかが結果に大きく影響する。
    意識的に交渉することで改善点も分かる

    段階的的に進めることで受け入れられやすくなる。
    小さな改善も積み重ねると大きい。
    実践してこそ上達する

    力の無い者でも交渉により力の有る者から手に入れられる

    粘り強く交渉する、理由も聞く、人も変える



    段階的の例
    お互いにとって良い交渉にしましょう 、賛成、からスタート

    2
    まずすべきことは、交渉相手の理解
    特に感情的、状況的なものの把握。

    交渉の成立要素の五割が人、一割が内容

    相手を個人として扱うと 6倍の確立で助けてもらえる
    世間話をして相手に関心を持つ

    その場にいない重要な第三者のことを調べておく

    適切に助けを求め、相手に問題を委ね、力を与える

    信頼を構築する
    打ち合わせの際には必ず相手にお土産を残す

    相手の方法で確約をとる
    段階的に交渉することで信頼を見極める


    3
    自分の発言を質問形式に変える。
    片付いてないけど、どうして?
    それはフェアだと思いますか
    お知恵を拝借できますか。
    間違ってたら教えてください。

    コミュニケーションを欠かさない。人と話せるのは強さの現れ。
    話が先、提案は後

    耳を傾けて質問する

    相手を責めずに尊重する

    頻繁に要約する、目標を、繰り返し確認する
    役割交換する

    メールの場合
    感情に任せない、書いてから寝かせて送信
    相手が最悪の気分で読んだ時を想像する
    冒頭に相手に関係のあることを書く

    相手にとっての確約の方法を知る

    自分にコントロールできることに集中する
    誰が正しいかの議論は避ける

    聞く用意ができていない相手には何も伝えられない

    4
    非協力的な相手と交渉

    相手の規範を理解して利用する
    会社の方針、上司の判断

    規範のメリットは透明性

    段階的に進める
    一つづつで承認を得ていく
    いきなりの判断ではなく、少しづつ積み重ねる
    合意に達したいですか?から

    規範がわからないときは直接尋ねる。質問に答えてくれなかったら、質問に何か不都合があったかと尋ねる。
    相手に決定させる。

    交渉の前にルールを決める。
    アジェンダを作る、
    10分で決定できない議題は後に回す、など

    交渉は簡単なものから始め、達成感を味わう。
    片付けていくことで協力的になる。

    書記を引き受けると会議をコントロールできる

    非暴力主義
    相手の問題行動を利用する。怒るのではなく、もうけものと考える。
    直接非難しなくても効果がある。

    6
    感情は敵
    感じの良い振る舞いは有効

    7
    問題解決のモデル
    問題の明確化、目標設定
    準備は非常に大事

    状況分析




    世間話は重要、相手が話したがっている個人的な話を聞くだけで効果的


    8
    文化の違う人との交渉

    共通の目標、共通の敵を探す
    最悪の状況、極端を想定する
    相手の夢、恐れを明らかにする
    相手の言葉によらないシグナルに注意する
    類似性を消すノイズを突き止める
    違いを言葉で説明して尊重する
    相手の偏見を裏付ける証拠を要求する
    段階的に進め、自分がコントロールできることに集中する
    第三者に相談し、仲間に引き入れる
    自分の提案が有効だった実例を示す

    12
    子供と交渉

    子供との交渉も練習し、振り返ることで上達する。

    子供は自分に力が無いことを理解している。自己決定感と安心を与えればよい。

    役割交換遊びでお互いの立場を理解する。
    子供のニーズを感じ取り、ストレスを減らす。

    段階的に納得を積み上げ、子供にどうすれば良いか相談する。

    子供は感情的になれば聞く耳をもたない。まず落ち着かせ、共感をし、恐怖を取り除く。交渉はそのあと。

    問題解決のリストを作る。秩序の感覚が得られ、子供も好む。

    子供にとっても泣くのは次善の策

    わがままやかんしゃくには質問することで対処

    14

    日常生活
    苦情を言うより、まず個人的な関係になり、意見する。
    相手の言い訳を用意してあげる。

    状況をリアルに描きださないと理解できない人が多い。
    相手が理解できる形に言いかえたり、現物や資料を準備する。




    警官と警備員
    大事なのは誰か正しいかではなく目的。
    官僚主義に思えても、交渉相手は生身の人間。相手の方が自分達の官僚主義にうんざりしている可能性もあるので、相手を大目に見て、意見を聞き、思いやりを示そう。

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