語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト 獄中シェイクスピア劇団 (語りなおしシェイクスピア テンペスト)

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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087735079

作品紹介・あらすじ

世界のベストセラー作家が、シェイクスピアの名作を語りなおすシリーズ第一弾。
M・アトウッドによって、傑作『テンペスト』が現代に蘇る!

『テンペスト』の演出に心血を注いでいた舞台芸術監督フェリックスは、ある日突然、部下トニーの裏切りにより職を奪われた。失意のどん底で復讐を誓った彼は、刑務所の更生プログラムの講師となり、服役中の個性的なメンバーに、シェイクスピア劇を指導することに。
12年後、ついに好機が到来する。大臣にまで出世したトニーら一行が、視察に来るというのだ。披露する演目はもちろん『テンペスト』。フェリックスの復讐劇の行方は!? ――天才シェイクスピアと現代文学界の魔女アトウッドの才気が迸る、奇跡のような物語の誕生!

【著者略歴】
マーガレット・アトウッド
カナダを代表する作家・詩人。その著作は小説、詩集、評論、児童書、ノンフィクションなど多岐にわたって60点以上にのぼり、世界35か国以上で翻訳されている。1939年カナダのオタワ生まれ。トロント大学、ハーバード大学大学院で英文学を学んだ後、カナダ各地の大学で教鞭を執る。1966年に詩集「The Circle Game」でデビューし、カナダ総督文学賞を受賞。1985年に発表した『侍女の物語』は世界的ベストセラーとなり、アーサー・C・クラーク賞と二度目のカナダ総督文学賞を受賞。1996年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年には『昏き目の暗殺者』でブッカー賞、ハメット賞を受賞。2016年に詩人としてストルガ詩の夕べ金冠賞を受賞。そして2019年、「The Testaments」で2度目のブッカー賞を受賞した。トロント在住。

【訳者略歴】
鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ)
翻訳家・文芸評論家。1963年東京生まれ。訳書『恥辱』『イエスの幼子時代』『イエスの学校時代』J・M・クッツェー、『昏き目の暗殺者』M・アトウッド(すべて早川書房)、『嵐が丘』E・ブロンテ、『風と共に去りぬ』M・ミッチェル(ともに新潮文庫)、「灯台へ」V・ウルフ(河出書房新社 世界文学全集2-1収録)など多数。編書に『E・A・ポー ポケットマスターピース』(共編、集英社文庫ヘリテージシリーズ)など。『全身翻訳家』(ちくま文庫)、『翻訳ってなんだろう?』(ちくまプリマー新書)、『謎とき「風と共に去りぬ」』(新潮選書)ほか、翻訳に関する著作も多数。

【原書】HAG-SEED

感想・レビュー・書評

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  • ものすごーーくおもしろかった! 
    ユーモアがあって楽しくて後味もよくて、あのディストピアなアトウッドとは思えないー。こういうのもっと読みたい。

    陰謀によって演出家の立場を追われ、隠遁生活を送っていた主人公フェリックスが、矯正施設の更生プログラムの講師として、受刑者たちにシェイクスピア劇の上演を指導するようになる、って話で。
    あまり教育を受けていない受刑者たちもいるなかで、フェリックスが巧みに「テンペスト」の解釈をして、彼らからユニークな意見を引き出しながら、巧みにみんなをまとめてすごく斬新な舞台をつくりあげていく、っていう過程が読んでいて最高に楽しかった。演劇ってこういう感じでつくっていくんだなあーとわかるみたいで。受刑者たちもみんな根はいい人間で魅力的で、舞台をつくっていくにつれて成長していくところもなんだか感動する。
    シェイクスピアの「テンペスト」のストーリーと、演出家の立場を追われたフェリックスが復讐しようとするっていう小説のストーリーと、受刑者たちが上演する「テンペスト」とが重なっているっていう構成もみごと。
    ちゃんと読まなくてはーといつも思っていてなかなか読めないシェイクスピア戯曲をこんなふうに理解できるのはお得、って感じもある。
    それに、フェリックスのすごく孤独な心情もすごく胸に迫るところがあるし、フェリックスに亡霊のように見えている亡くなった娘ミランダが芝居に興味を持ってプロンプターをはじめるところとかすごくよかったし、ただよくできてるなーとかで終わらずに、なかなか感動したのもまたよかった。

    「語り直しシェイクスピア」っていうシリーズなので、今後ほかの作家の作品も刊行予定だそうですごく楽しみー。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      niwatokoさん
      続巻が「パトリック・メルローズ」のエドワード・セント・オービンに、「ここがホームシック・レストラン」のアン・タイラー。...
      niwatokoさん
      続巻が「パトリック・メルローズ」のエドワード・セント・オービンに、「ここがホームシック・レストラン」のアン・タイラー。とても気になります!
      2020/09/22
    • niwatokoさん
      いつごろ刊行なのでしょうね。楽しみですよねー。
      いつごろ刊行なのでしょうね。楽しみですよねー。
      2020/09/22
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      niwatokoさん
      確か来春以降でした。
      niwatokoさん
      確か来春以降でした。
      2020/09/23
  • 最初に思ったのは、主人公への同情。妻と娘を亡くして、仕事も部下に取られる。これ以上ないほどの絶望。その後精神を病んで、復讐に燃えるのも、仮想の娘と暮らすのも仕方ないと思う。だけど、主人公がちょっと変わってて、評判が落ちてたことも事実だったのかもしれない。ただ部下がやり手だっただけ。そう思うと復讐の仕方は間違ってるかなと思わなくもない。でも、それによって矯正所でシェイクスピアを作ることになるから、良かったのかなとも思う。矯正所で指導するときは、相手の意見もしっかり聞いて主人公自身も自制できるようになってたのを見て、彼自身も矯正されてるんだろうなって思った。あとはラストのチームごとで解釈を言い合うのが本当に面白い。芸術作品に答えなんてないし、本だって映画だって人それぞれの解釈がある。それを聞けるのが本当に楽しかった。大学の授業でもやりたい。

  • シェイクスピアの『テンペスト』の公演を前にして、自分が目をかけていた部下に裏切られ、突然解任された舞台監督のフェリックス。
    失意の中で妻や娘も失い、彼は名前も変えて刑務所の更正プログラムで囚人たちによるシェイクスピア劇公演の講師となる。
    解任事件から12年後、部下だったトニーが大臣に出世し、刑務所の公演を見学に来ることになった。彼らに復讐をするチャンスだ!勿論、演目は裏切りへの復讐に燃える王の物語『テンペスト』。フェリックスのまさに復讐劇は成功するのか?

    面白い!
    複数の作家がそれぞれシェイクスピアの作品を取り上げて「語り直し」をする企画の一つとして生まれた作品で、『テンペスト』の語り直しを試みたのがこの作品。
    「語り直し」なので、ベースは裏切られた男が、裏切った相手を罠にかけて復讐を試みようとするというテンペストの筋が踏襲されている。
    しかし、演じる役者たちが素人の囚人であり、更生のためのプログラムという設定なので、「テンペスト』という作品を知らなくても楽しめると思う。しかも、囚人たちが自分の役を理解しようとする過程や、講演後に演じた役のその後を考えるという講義が更生プログラムの一つという設定なので、その中で「テンペスト」という物語に隠されたテーマ、構造などの話も出てくる。
    読み終えた後で、「テンペスト」をもう一度読み直したくなった。

  • アトウッド先生が主人公を使って「いいこと古典をじっくり読むっていうのはこうやってやるのよ」と教えてくれるすてきな小説。フェリックスの授業がおもしろかった! 受講生もばんばん発言するから気持ちいい。フェリックスの復讐とは何か、そもそもフェリックスのメンタルは大丈夫なのかを気にしながら劇の仕上がりを見守るのはとてもスリリングだった。IT系の小道具の使い方とかだれとだれがくっつくとかは「んんー?」という点があったのだけど、まあそこは許容範囲で。

    シェイクスピアの「テンペスト」、矯正所版「テンペスト」のバージョンA、A´、メインストーリーに重なる「テンペスト」、いくつもの「テンペスト」が響き合って、まさにめくるめく体験ができる。シェイクスピアの「テンペスト」のあらすじは巻末に収録されているけれど、先に読んで自分なりのイメージを作っておいた方が、ギャップを楽しめてよいかも。「語りなおしシェイクスピア」シリーズはこれからも追いかけていきたい。

  • シリーズ化されるんだ、、、

    マーガレット・アトウッド『獄中シェイクスピア劇団』のウェブ+チラシ用解説を書きました - Commentarius Saevus
    https://saebou.hatenablog.com/entry/2020/09/11/003044

    集英社
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-773507-9

  • 世界のベストセラー作家がシェイクスピアの名作をテーマとして語り直しシリーズの第1作。

    『侍女の物語』、『請願』で生殖機能が国家によって管理されるディストピア世界を描いたマーガレット・アトウッドが選んだのは『テンペスト』である。しかし、この語り直しの世界が凄い。新たな『テンペスト』は刑務所、つまり獄中の中で囚人たちによって演じられるのである。

    政治闘争に負けて落ちぶれたベテランの演劇演出家を主人公、彼がある刑務所で行われている矯正プログラムの一貫としての演劇をプロデュースし、その演目として『テンペスト』を選ぶところから物語はスタートする。この矯正プログラムが注目を浴び、自身を陥れた政敵が刑務所を訪れて観劇することを知った主人公は、『テンペスト』の上演を通じて彼らに決死の復讐を挑む・・・という筋書きである。

    演劇に参加するメンバーは窃盗、詐欺、会計不正など極めて多岐に渡っており、一癖も二癖もある人間ばかり。彼らをうまくリードしながら次第に『テンペスト』という演劇が完成していく過程は非常に楽しい。セリフもラップ風に韻を踏んだものになるなど、随所に面白おかしさが溢れている。

    かつ、教育効果を高める一貫として、終演後のメンバーに対して、彼らが演じた登場人物の事後談を考えさせてレポートを出させるなど、『テンペスト』という古典を考え直すヒントもふんだんに描かれている。古典作品をテーマとした創作のお手本とも言えるような傑作。

  • テンペストを知らなくても、この物語は痛快で素敵だ。

  • もっと「アトウッドらしさ」を期待していたので、ちょっと肩すかしで物足りなかった。囚人達の演劇プログラムの監督として呼ばれた主人公。妻娘を亡くして病んでる、と言われている。病まない方がおかしいんだって。
    まあ、読みやすく楽しい。普通の人が書いたらもっと退屈な題材になっていたと思う。が、特に思い入れは起きなかった。

  • 2020.11.29市立図書館
    このところなにかと話題のマーガレット・アトウッド、私にとっての出会いの一冊はシェイクスピア語りなおしシリーズのこれになった。
    刑務所の更生プログラムの一環としてシェイクスピアを上演するという物語の中に「テンペスト」がまるごと何重にも織り込まれた快作。主人公の人生を経糸に、演劇界や刑務所の裏話などを横糸、スパイスとして現代を写すアトウッド版「テンペスト」は演出家と役者・スタッフによる台本分析・研究から配役を決め稽古して上演に至るまで伴走し、さらに上演後の「登場人物その後」レポート発表会で参加者たちの得たものを共有できる趣向なので、演劇オタクでもそうじゃなくても、この芝居ひいてはシェイクスピアがよくわかるようになっておもしろい。さらに、この芝居が作られた当時も多分そうであったはずの現実世界への批評もしっかりもりこまれていて、シェイクスピア劇を見ながら両極化し分断が深まる「いま」をかんがえることができる。この入れ子のような牢獄から解放される日はくるのだろうか。このままシェイクスピア沼そしてアドウッド沼に引きずりこまれそう。

    脳内上演が最善なのだろうけれど、いつか「天保十二年のシェイクスピア」(井上ひさし)のように実際に上演される日が来てほしいと期待している。今年であった双璧のシェイクスピアへのオマージュとして記憶に残ると思う。

  • 妻と幼い娘を亡くし深い悲しみの中にいた劇場の舞台監督フェリックス。その隙に、信頼していた部下トニーに監督の座を奪われ劇場を追われてしまう。復讐を胸に、刑務所の囚人へのプログラムの一環としてのシェイクスピア劇団で監督を務めて約10年が経った時、大臣となっていたトニーが刑務所の視察に来ることに。フェリックスの復讐が始まった。囚人と共に立派に「テンペスト」を上演し、トニーの鼻を明かすのかと思ったら違って、フェリックスの策略により、もう1つのテンペストが繰り広げられる。でも、これって犯罪なんじゃ…?

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著者プロフィール

Margaret Atwood.
1939年、カナダ、オタワ生まれ。
1966年に本作『サークル・ゲーム』でデビューし、
カナダ総督文学賞を受賞。『侍女の物語』(1985)で
カナダ総督文学賞とアーサー・C・クラーク賞、
『寝盗る女』(1994)でコモンウェルス作家賞、
『昏き目の暗殺者』(2000)でブッカー賞とダシール・ハメット賞を
受賞。また『侍女の物語』の続編であるThe Testamentsは
2019年にアトウッドにとって2度目となるブッカー賞を受賞。
邦訳書に
『獄中シェイクスピア劇団 
 (語りなおしシェイクスピア 1 テンペスト)』
(鴻巣友季子 訳、集英社、2020年)、
『洪水の年 上・下』(佐藤アヤ子訳、岩波書店、2018年)、
『テント』(中島恵子・池村彰子 訳、英光社、2017年)、
『キャッツ・アイ』(松田雅子、松田寿一、柴田千秋訳、
 開文社出版、2016年)、
『負債と報い――豊かさの影』(佐藤アヤ子訳、岩波書店、2012年)、
『死者との交渉―作家と著作』(中島恵子訳、英光社、2011年)、
『オリクスとクレイク』(畔柳和代訳、早川書房、2010年)、
『またの名をグレイス 上・下』(佐藤アヤ子訳、岩波書店、2008年、
 岩波現代文庫、2018年)、
『ペネロピアド(THE MYTHS)』(鴻巣友季子訳、角川書店、2005年)、
『良い骨たち+簡單な殺人』(中島恵子訳、北星堂書店、2005年)、
『カンバセーション アトウッドの文学作法』
(加藤裕佳子訳、松籟社、2005年)、
『ほんとうの物語』(内田能嗣 訳、多湖正紀・山本紀美子 共著、
 大阪教育図書、2005年)、
『昏き目の暗殺者』(鴻巣友季子訳、早川書房、2002年、
 ハヤカワepi文庫:上・下巻、早川書房、2019年)、
『闇の殺人ゲーム』(中島恵子訳、北星堂書店、2002年)、
『寝盗る女 上・下』(佐藤アヤ子・中島裕美 共訳、彩流社、
 2001年)、
『マーガレット・アトウッド短編集』
(Alan Turney編、久慈美貴 注釈、ロングマン・ジャパン、
 1998年)、
『食べられる女』(大浦暁生訳、新潮社、1996年)、
『サバィバル』(加藤裕佳子訳、御茶の水書房、1995年)、
『Sudden fiction (2)』(「ハッピー・エンド」 Happy Endings 収録。
 ロバート・シャパード 著、ジェームズ・トーマス 訳、柴田元幸 著、
 文芸春秋(文春文庫)、1994年)、
『ファミリー・ポートレイト—記憶の扉をひらく一枚の写真』
(「偉大なる叔母たち」 Great Aunts収録。キャロリン アンソニー編、
 松岡和子・前沢浩子訳、早川書房、1994年)、
『浮かびあがる』(大島かおり訳、新水社、1993年)、
『青ひげの卵』(小川芳範訳、筑摩書房、1993年)、
『スザナ・ムーディーの日記』(平林美都子 他訳、国文社、1992年)、
『侍女の物語』(斎藤英治訳、新潮社、1990年→ハヤカワepi文庫
(早川書房)2001年)、
『ダンシング・ガールズ マーガレット・アトウッド短編集』
(岸本佐知子訳、白水社、1989年)、
『描かれた女性たち 現代女性作家の短篇小説集(SWITCH LIBRARY)』
(「急流を下る」 The Whirlpool Rapids収録。
 マーガレット・アトウッド・アリス マンロー・アン ビーティ 他著、
 岸本佐知子 他訳、Switch編集部編、スイッチ・コーポレーション、
 1989年)などがある。



「2020年 『サークル・ゲーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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