- 本 ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087735291
作品紹介・あらすじ
「本を読みたいけど、読めない!」
現代の忙しい私たちは、いったいどんな本を読めばいいのだろうか?
または、どうやったら本が読めるだろうか?
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者が、具体的な方法と作品タイトルをもって贈る、やさしい読書エッセイ。
焦燥感と罪悪感にかられるあなたの背中を、そっと押してくれる全53章。
【著者プロフィール】
ファン・ボルム
小説家、エッセイスト。大学でコンピューター工学を専攻し、LG電子にソフトウェア開発者として勤務した。転職を繰り返しながらも、「毎日読み、書く人間」としてのアイデンティティーを保っている。
著書として、エッセイは本書のほか、『生まれて初めてのキックボクシング』、『このくらいの距離がちょうどいい』(いずれも未邦訳)がある。
また、初の長篇小説『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(牧野美加訳、集英社)が日本で2024年本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞した。
【訳者プロフィール】
牧野美加(まきの・みか)
1968年、大阪生まれ。釜慶大学言語教育院で韓国語を学んだ後、新聞記事や広報誌の翻訳に携わる。
第1回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞受賞。
ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)のほか、チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(クオン)、ジェヨン『書籍修繕という仕事:刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(原書房)、キム・ウォニョンほか『日常の言葉たち:似ているようで違うわたしたちの物語の幕を開ける16の単語』(葉々社)、イ・ジュヘ『その猫の名前は長い』(里山社)など訳書多数。
感想・レビュー・書評
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本の紹介というより、読書との付き合い方がメインのエッセイ。共感できるところもあれば、ええ?それはちょっと…な点もあり、楽しく読了。
著者は同時に数冊の本を読むが、そのことを「自由恋愛」と名付けていて面白い。逆に1冊の本を読み終えるまで他の本を読まないことを「一途な恋愛」と言っている。私は後者であるが、別にどちらの読み方が良いと言っている訳ではなく、本との付き合い方も人それぞれのやり方があるんだなとしみじみ思う。
黙読と音読も異なる本へのアプローチの仕方だが、音読の方が内容が頭に入ってくるとか、いやいや黙読の方が集中力が増す…とかの不毛な争いはするべきではないのだな。電子書籍と紙書籍の争いも然り。
「華氏451度」の世界のように本がなくなったらやっていけないと著者は言うが、全く同じ気持ちである。どんな本にも存在価値はあると思うし、何より一番の娯楽である読書という楽しみがなくなった世界なんて想像もつかない。まだまだ、本の文化は続いていってほしいと切に願う。 -
読書の楽しさや深みを再確認できる本。
文中に、「読書の楽しさは霧雨に服が濡れていくようにじわじわと染みていくようなもの」とあったけど、読書は一気に「楽しい!」って思えるものではなく、じっくり続けるほど深みが増していく。
熟成されたワインとか、コーヒーを飲み慣れていく感覚と近いのかも。
この考え方を知ってると、読書の楽しさはエンタメとはまた違った深い楽しみなんだと感じられる✨
付箋だらけになるほどいい本でした。 -
私のようなここ数年で読書にハマり始めた人には特に指南書のように面白く読めるかとおもう。
文中で紹介される本が欲しくなり、ぽこぽこ買ってしまった。文中に出てくる本には日本未訳のものも多く、その中で紹介される文に心打たれたりしたので、この本を読まなかったら出会えていなかった文章もある。あと「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」でも思ったが、優しく寄り添うような文章がほっとする。
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今週は、くどうれいんさんの『湯気を食べる』に食べることを大いに肯定され、この『毎日読みます』に読むことを大いに肯定されてとても気分がよくなった。本を選ぶ時に目次と序文をチェックするなどある種の読書テクニックから、読書中に感じること・読後のぼんやりとした時間に対する考え方などの読書哲学まで幅広く書かれていて、『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の時と同様にとても強い読書愛を感じる。手元に置いてパラパラと何度も見返したくなる類の本だった。
・読書においては、「記憶」ではなく「変化」がもっとも重要」
・たった一つの文章があなたの人生に語りかけてくるかもしれない
・読書中に自分の中で起こることを受け止めるための時間が必要。
・本を一冊読み終えて、次は何を読めばいいかわからないときは、「なぜこの本を良いと思ったんだろう?」と一度考えてみるのだ。そして、その「なぜ」をたどっていき、目には見えない本のつながりを頭の中に描いてみる。
・休暇のときくらいは、つまり、ゆっくり本を読んでいるときくらいは、心配するのをやめることにした。「していたことを中断し、しばし休む」という、休息の本来の意味を尊重し、心も身体も精神も休ませた。
「なぜこの本を良いと思ったんだろう?」という問いへの答えは、やはり常に欲している読書愛と読書への肯定感が1冊の中に満たされていたからな気がしている。
他にもドラッカーが「時にはAという問題から離れてこそAを解決することができる」と、自分と距離を置いて、何も関係ないことに関心を持つ重要性について語っていることを初めて知ったり、著者の「幸福とはこうである」と軸(夕方の薄闇の中の散歩、いい人たちとの関係、穏やかで意味のある対話…など)を持っている点に惹かれたりと、読むたびに気づきが得られそうだなと思えてくる。
自分の選択をする際に、自分の気持ちを蔑ろにしないために本を読まねばならないとの表現が胸に刺さる。
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自分を守る、自分を保護する読書が必要な理由がここにある。商品を積み上げるのではなく、世の中を理解する知識を積み上げるために。メディアの提案してくる幸せではなく、自分の望お幸せを追求するために。孤独なとき、マートではなく友人の家へと向かうために。安定感に飢えているとき、豪華な家を夢見るのではなく、今ここでシンプルな生活を営むために。自分の不安の根源をみずからたどっていくために。自分の選択をする際に自分の気持ちを蔑ろにしないために。自分の中の欲望を理解し、それを解消する方法を自分で見つけるために。そのために、わたしたちは本を読まねばならないのだ。(p.218) -
留学中にヨーロッパで販売されていた彼女の『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』を読み、彼女が織りなす世界観が好きでこの作品を買ってみました。
文章中に引用がたくさんあるので、彼女のエッセイを読む中で哲学や歴史の知識がつき、読みたい本のジャンルを広げるのにも良かったです。
特に印象深かったのが、ネット記事に関するパート。私自身もnoteなどで大学生が発信されている記事をよく読むのですが、文字の読み方が本とネット記事で異なるという有名な実験があるということを知らなかった。なのでとても有効な知識をエッセイから身につけられた気がして、とてもお得な気分です。笑
また、本を好きな理由や書斎に置く本の基準、人生の本のカテゴリー化の方法など、参考にしたい有益な情報が盛りだくさんで楽しく読了しました!!
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