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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784087741605
作品紹介・あらすじ
文学。この貴重な文化遺産が失われてもいいのか。鴎外、漱石から荷風、潤一郎、龍之介を経て戦後文学までを平易な語り口で紹介。文学の未来への明るいヒントをちりばめた本格的文学批評書。
感想・レビュー・書評
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戦後40年代後半から,二十世紀小説のあるべき姿を問い続け、小説作品として「死の影の下に」「四季」などの長編を提示して来た著者。
また「戦後文学の回想」「この百年の小説」「大正作家論」「明治作家論」「小説構想への試み」(正,続)などなど、近代文学批評を続けて来た著者が90年代半ばに、「再読」とふって雑誌に一年ほど連載した、日本近代作家論。
内容は次のとおり。
第一章 序説風の感想
第二章 森鴎外の場合
第三章 夏目漱石の場合
第四章 永井荷風の場合
第五章 谷崎潤一郎の場合
第六章 芥川龍之介の場合
第七章 佐藤春夫の場合
第八章 里見,宇野,室生の場合
第九章 新感覚派の場合
第十章 堀辰雄の場合
第十一章 戦後文学の場合
第十二章 小休止としての感想
それらのなかで著者は、「近年の日本を含めてての先進諸国における文学の衰弱は著しい」とし、作家・評論家・読者の衰えを嘆く。
そして、では近代の作家たちの文学的姿勢の何処を,今後の文学的発展に生かすことが出来るか,として上記の一連の作家たちを選び、「再読」したのが本書。
例えば鴎外の史伝は、「彼は人生の晩年において、<史伝>という<仮面>を借りることで,はじめて正直におのれの内なるデモンとの取引が可能になった」と評される。
鴎外は,あらゆる形式の作品を書いたが,「灰燼」という未完の長編で挫折する。それはやはり明治天皇絶対主義政府の壁だった。まして鴎外はその政府の内側にいる存在。
その壁を迂回して<史伝>というスタイルで、己を吐露できるものを掴んだ鴎外。
著者は,更に須賀敦子の<史伝>評をひく。
「これらの<史伝>のテーマは<西洋的>な<人間の不条理>であり、それをホメロス以来の<西洋の技法>を骨格に据えて<日本的な題材をあつかい><漢文に依存した文体を練り上げるという比類無い統合を意識した作業>」だと述べている、と。
以下各作家に付いて,著者は新たに文学史をものしようとすることではなく、次の世代に送るべき良質な文学の姿をどう捉えるか,としてしばしばヨーロッパ作家の作品に対比しつつ語り続ける。
世界文学のなかでの、日本文学のこれから未来に向かってのありようを問い続け,再読三読を促す貴重な批評。
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