鉄道員

  • 集英社 (1997年4月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784087742626

作品紹介・あらすじ

廃線が決まったローカル線の終着駅で春には定年を迎える乙松。幼い娘が死んだ時も、妻が危篤の時も、ホームで旗を振っていた。仕事一筋の男の胸中を丹念に描く表題作他。第117回直木賞受賞作。

みんなの感想まとめ

日常の中での別れや再会の思いを描いた物語が心に響く作品です。廃線が決まったローカル線の終着駅で、定年を迎える男の姿を通じて、愚直で不器用な生き方の美しさが表現されています。切なさと共に、温かい感情が湧...

感想・レビュー・書評

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  • 「鉄道員」が映画化された頃、映画、書籍共に当時、話題となっていたのは知っていたが、何とも悲しくて、切ない物語は当時、避けていたけれど、あれから30年近くなって今、古本屋で本を手にとり読んでみると、悲しくて切ないけれども、とても胸の奥が温まった。読み終わってすぐに映画「鉄道員」も観た。高倉健の愚直で不器用な生き方が小説としっくり合っていた。「ラブ・レター」はそのまま歌にでもなりそうな、浅田次郎だからこそ描ける、リアルでは何とも冷たい世界も、そこには小さな幸せが見えてくる。自分が更に老いた時に再び読んでみたい。

  • 総じて好きな作品たちでした。

    ちょっといい話が詰まってました

  •  一九八七(昭和62)年4月1日、日本国有鉄道は、分割民営化され北海道旅客鉃道㈱(JR北海道)となった。
    北海道だけが、鉄道とは書かない。「鉄道」が「鉃道」なのです。何とも奇妙な名前です。

     終着駅・幌舞は、日に三本しか走りません。
    明治以来北海道でも有数の炭鉱の町として栄えた。全長二十一・六キロの沿線に六つの駅を持ち、本線に乗り入れるデゴイチが石炭を満載してひっきりなしに往還したものだった。それが今では、朝晩に高校生専用の単行気動車が往復するだけで途中駅はすべて無人になった。

     物語は、主人公の佐藤乙松が今年で定年を迎え、過去の回想シーンの投影と現在の出来事が描かれているのです。家族はいない、いや、いなくなった。女房静枝が死んだとき、美寄の病院の霊安室でじっと俯いていた。仙次(乙松の一年後輩)の妻は、乙松は薄情者だという。危篤の報せは何回もしたのに最終の上りでやってきたのだった。結局最期を看取ってしまったのは仙次の妻だ。

    (乙さんなして泣かんのね!)

    (俺ァ、ポッポヤだから、身内のことで泣くわけいかんしょ)

     乙松には子がいなかった。
     幌舞駅の事務室の奥、六畳二間に台所のついたところが乙松の住まいだった。小さな仏壇には父親の写真とずいぶん若い時分の女房の写真が並んでいる。「乙さんの子、写真はないのかい」「ああふた月で死んじまったでなあ」「俺ァ、ユッコ(雪子)の齢をいまだ算えてるんだわ、生きてりゃ十七だべさ」

     医者さえいないこの村に生まれて、すきま風の吹く事務室つづきの部屋に寝かせていたからだ。仕事が子どもを殺してしまったのだと思うと、乙松はやり切れない気持ちになった。十七年前の吹雪の朝に、女房の腕に抱かれたユッコをあのホームから送り出した。

     そしてその晩の気動車で、ユッコは同じ毛布にくるまれ、ひゃっこくなって帰ってきたのだった。(あんた、死んだ子どもまで旗振って迎えるんかい)中略(ユッコが雪みたいにひゃっこくなって帰ってきたんだべさ)
     妻が乙松に向かって声を荒げたのは、後にも先にもその一度きりだった。

     ポッポヤはどんなときだって涙のかわりに笛を吹き、げんこのかわりに旗を振り、大声でわめくかわりに、喚呼の裏声をしぼらなければならないのだ。ポッポヤの苦労とはそういうものだった。

     仙次は淋しい正月をともに過ごすため、酒とおせち料理を持ってやってきた。昔話に花が咲いた。仙次と乙松は、厳しい時代を生き抜いた戦友である。しこたま酒をかっ食らった仙次は寝てしまった。
     その夜、不思議な出来事が起こったのだ。乙松は、おもわず天井を見上げたまま涙を流した。娘が亡くなった時も泣かなかった乙松が泣いた。
     そのわけは何だったのか?

     「出発、進行ォー」声をしぼって、仙次は喚呼した。

     お薦め作品です。
     読書は楽しい。

  • 本屋の入り口に置いてあったのを見つけ購読。
    鉄道員といえば高倉健が雪の中で旗を振るうシーンが思い浮かぶ。
    話は覚えてないし、最後までちゃんと見た記憶も怪しいが、あの寒そうな中の高倉健の眼差しがとても印象的。
    この本を読むまで知らなかったが「鉄道員」って短篇なんですよね。知らなかった。
    長編小説の映画は原作からかなり内容をカットしてるものがほとんどだが、短篇の映画ってむしろ、本の中で描かれなかった描写が書かれていたりするのかな?と単純に興味を持った。

    全8篇からなるこの本。どれも日常の中の別れや、
    もう一度会いたいという思いから動かされる人間の話が描かれている気がして、寂しさもあるが、どこか温かさも感じたかな。
    良い本でした。

  • 日本が誇る45ページの芸術である。
    この短い文章の中に有名な物語が込められている。
    この良さが分かるかどうかが、日本人の基準と言えるのかもしれない。
    否。もう昭和の彼方に置いてきた古き善き日本人なのかもしれない。
    「日本人の美意識」というものを昭和の時代に翻訳し、仕事を通して現した「男の美学」というものだ。
    またこれを読み、同タイトルの映画を見ると、もう、それ以外に描けなくなる。
    もちろん、映画のために脇道にそれたストーリーの膨らませはあるが、大きくは変わらない。
    幸薄き、健気な妻を演じ、夫のやることを理解し耐えた後、一度だけ感情爆発させる大竹しのぶ。
    この時期には、これほどの透明度を演じることのできた広末涼子。まさか後ほど、機関車を超えるスピードで爆速ガールとなり、世間を騒がせるとは思えない。
    北の国からでは小学生だった吉岡秀隆も、 北海道の寒さと青春と苦労を経た青年として現れている。
    そして何より高倉健さんが、全てを完成させている。
    この映画は彼以外に、もはや考えられないほどの渋みのある昭和の日本人の男性であった。渋い。渋すぎる。 彼の演技がこの映画を全て完成させている。
    いや、この小説そのものが、彼の演技のために存在していたのではないか?と思わせるほどの完成ぶりだ。
    そして、映画を見た後、またこの小説を読むとその場面がありありと描かれてくる。
    「本当にたった45ページなのだろうか?」と、思わせてしまうほど別世界へと誘う。
    小説家を目指す者が、全ての基本とすべき教科書としていいほど、あらゆる技術と構成が込められているような気がする。
    しかもそこには、わざとらしい技巧や大袈裟、努力感が一切ない。
    この完成された文章は、推敲に推敲を重ねたものではなく、むしろモーツァルトの作曲のように「すでに完成されたものを文字として書き下ろしただけなのではないか」というほどの「完璧さ」がそこにある。
    この良さがわかるうちは日本人であると言える。
    また日本人として、この良さがわかることを誇りに思いたい。

    ちなみに他のストーリーも、この本の中には込められているが、この本のタイトルと同じ『鉄道員』の物語だけでも、 値打ちがあると感じている。
    もちろん他のストーリーも素晴らしいのではあるが、圧倒的に『鉄道員』が優れ、完成した作品となっている。

    「死ぬまでには読んでおきたい」最高の一冊の一つである。

  • 8作品全部良かったなー。「ぽっぽや」も良かったけど「うらぼんえ」も泣けた。そこでおじいちゃんが登場!ってビックリだったけど孫を想う人情のあるおじいちゃんだったな。
    でも「ラブ・レター」が読後に一番心に残ったかな。留置場から釈放された吾郎は妻が亡くなったと聞かさせるが、実は偽装結婚であったため顔も知らない相手だった。しかし亡くなった妻、白蘭と言う女性からの手紙を吾郎が読み心が揺れ動いていく。

    浅田次郎さんはまだ2作目だけど、登場人物がみんな粋だねぇ。読んでて気分がいい。

  • 知ってはいたが、何となく読みたくなくて、手に取らずにいた作品。
    期待値が高すぎたからか、それほどでもなかった。

  • 個人的に映画のイメージが強い「鉄道員」。
    まさか短編だったとは。そして泣いた。
    更に「ラブ・レター」で馬鹿みたいに泣いてしまった。「角筈にて」も切ない…

    どのお話も面白かった。
    もっと浅田次郎先生の本を読みたいと思った。

  • 浅田次郎といえば、鉄道員、と言える作品ということで手にとってみた。短編集ということで個人的にあまり乗り切れないのであるけど、そこは著者の作家としての実力が伺える。鉄道員の他におもしろい作品も入っており、読み応えは十分。ただ短編集はどうしても好きになれない。乗ってきたところで終わりを迎える悲しさ。時間がない人にはオススメなのかもしれない。

  • 「鉄道員」は読んでから映画化されたことを母に聞き映画を観た。とても泣けた。他のものも素晴らしいのだけど 自分の歳ではまだ分からないことも多いのだろうと思った。歳を重ねてまた読んでみたい

  • 表題作は高倉健主演で映画化もされたあれですね。廃線のきまった北海道の幌舞線、幌舞の駅で自らも引退の決まった駅長の乙松の前にあらわれたのは、ひとりの奇妙な少女だった……。物悲しい、すてきなファンタジーでした。
    実際に起こったことに取材したという「ラブ・レター」もなんだか泣ける作品、これもファンタジーといってよいのかもしれません。ファンタジーは人の心の中にこそ芽生えるものですからね。
    他に気に入ったのは閉館の決まった昔なじみの映画館から招待状が届き、そこに別居中の妻と出かけるという「オリヲン座からの招待状」。これ、ラストシーン、どういうことになるのかなあ。このあとどうなるのだろう?それが気になって気になって仕方ないラストシーンって本を読んでいるとしばしば出くわすのだけれど、これもそのひとつですね。

  • どんな時でも、自身のことより"鉄道員"としての使命を最期まで貫いた乙松さん。
    他の鉄道員や昔お見送りした子供たち、幌舞に住む人々に感謝、尊敬されつつ、自分の大切な人を守れなかったというやり切れない気持ちがあった。
    しかし、雪子ちゃんが会いに来てくれたことで、すべてが報われたのだろうな、
    雪子ちゃんが迎えにきてくれて、大勢の人がお見送りしてくれて、キハで運んでもらえて、鉄道員として最幸な終わりを迎えられたんだろうな、と心が温かくなった。
    ネタバレした上で再読すると、途中から涙が止まらなくなった。何度でも読み返したくなる小説。

  • あまりにも有名な鉄道員を初めとした8作品を集録
    人の世を生きていると必ず直面する出会い、別れ。どの作品も読み終わったあと心が温まる。特に女性の色気の描写が美しい。
    個人的に「ろくでなしのサンタ」がお気に入り
    映像で見たいのは「オリヲン座からの招待状」かも

  • 短篇8作。鉄道員、ラブ・レター、悪魔、角筈にて、
    伽羅、うらぼんえ、ろくでなしのサンタ、オリオン座からの招待状。
    鉄道員は直木賞受賞作品。
    ラブ・レターは良かったけど、他はイマイチかな。

  • 人の温かみを感じる作品でした

  • 短編集。
    どのお話も穏やかなストーリーで、激しい起承転結はありませんが、余韻に浸れます。私の日常もこんなふうなのだろうか、と。

  • ずいぶん前に読みました。とても切なくしんみりする話でした

  • 浅田次郎さんの作品は、雑誌に掲載されたエッセイを読んだことはありましたが、小説を読むのはこれが初めてでした。
    映画がヒットした「鉄道員」が短編小説であることも、読むまで知りませんでした。
    8つの短編が収録されていますが、職人芸のような名短編ばかりでした。
    話の落ちのつけ方が抜群に上手いことに、とても驚かされました。
    個人的には「ラブ・レター」、「角筈にて」、「うらぼんえ」、「オリヲン座からの招待状」が特に良かったです。
    第117回直木賞受賞作。

  • 意外と泣けない
    あまり共感が生まれないかも
    まだ若いから?

  • 直木賞受賞作品。8つの短篇はどれも切なく、人の優しさを感じさせる作品でした。映画化もされた表題作よりも「ラブ・レター」「角筈にて」「オリヲン座からの招待状」が非常に良かった。浅田さん初読ですが他の作品も読んでみよう。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

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