チグリスとユーフラテス

著者 :
  • 集英社
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感想 : 123
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087743777

作品紹介・あらすじ

遠い未来。地球の人々は他の惑星への移民を始めた。その九番目の惑星「ナイン」に向かう移民船に搭乗したのは、船長キャプテン・リュウイチ、その妻レイディ・アカリを含む30余名の選りすぐりのクルーたち。人々は無事ナインに定着し、人工子宮・凍結受精卵の使用により最盛期には人口120万人を擁するナイン社会を作り上げる。だが、やがて何らかの要因で生殖能力を欠く者が増加しだし、人口が減少しはじめ、ついに恐れられていた「最後の子供ルナ」が生まれてしまう。たった一人、取り残されたルナは、怪我や病気のために「コールドスリープ」についていた人間を、順番に起こし始める。最後の子供になると知りながら、母親は何故自分を生んだのかを知るために。また、ナインの創始者でもあるアカリに惑星の末路を知らしめるために。ルナと四人の女たちで語られる、惑星ナインの逆さ年代記。

感想・レビュー・書評

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  • satoさんの本棚を見て、図書館で、再読しようと思いました。

  • 移民星で最後の子供になったルナの生きざま
    生を受け 死へと向かう
    その意味とはなんなのか
    を考えさせられ 
    登場人物が導き出した答えそれぞれが
    胸にぐっと迫ってきます

  • うぉー!久しぶりにすごい物読んじゃった、没頭しちゃいました。
    重たい問題をがっしり抱えた内容なのに、
    ラストには何も意味のない豊かな物を預かる作品でした。
    長編ですが、読み進む甲斐がある!

  • 私が中高生時代の時に読んだ本なのですが、鮮烈なまでに印象に残った作品です。私のパーソナリティに影響を与えたと言っても過言ではないかもしれません。せひ、若い女性に読んでもらいたい作品です。

    いつもだと読んですぐにレビューを書くか、時間が立っている場合は実際に本をめくりながらレビューを書くのですが、今回は本が手元にないので下記レビューに誤りがあったらごめんなさい。
    でもものすごく印象に残った作品なのでぜひレビューしたいと思って書きました。

    SFはあまり好みではないのですがこれは別格。(逆にSFファンには受け入れられないかもしれない)
    口語調の文体がまた、登場人物一人一人の心情をリアルに伝えるので感受性の強い方はとにかく感情移入をしてしまうでしょう。

    惑星ナインでただ一人の人間になってしまったルナが主人公。
    話し言葉も子供っぽいフリフリ系ロリコンスタイルな老婆です。
    そんな彼女はコールドスリープの状態にある女性達を次々と目覚めさせます。
    抱えた過去もコールドスリープに入る経緯も性格もバラバラな3人の女性について書かれた章はとにかく一つ一つが重いですが、読むたびに“女としての自分”を考えさせられました。

    マリア・D
    生殖機能検査に合格した特権階級でありながら妊娠できずにいた女性。『繁殖』に生きた女性。
    愛と出産について濃く書かれた章です。とにかく彼女の悲痛なまでの心の叫びにはやられました。

    ダイアナ・B・ナイン
    惑星管理局員として、感情を抑え、理性で行動してきた女性。
    文体も論文調というかきっちりした性格が現れています。
    いわゆるワーキングウーマン。『仕事』に生きた女性。

    関口朋美
    両親の家系が全員苗字を持つという特権階級。彼女はその中でも純粋でプライドも人一倍高い。
    そして芸術的センスに恵まれた画家。『芸術』に生きた女性。

    レイディ・アカリ(穂高灯)
    惑星ナインの女神。90歳。
    惑星ナインの発展という『生きがい』に生きた女性。

    コールドスリープから目覚めた女性達それぞれに対して「あなたが生きて、やってきたものの結果が自分だ」と彼女たちに告げます。
    そう、ルナは人間への復讐のためにコールドスリープから彼女たちを目覚めさせたんです。

    ある意味、残酷でぞっとする展開だけどルナを目の当たりにした時の彼女たちが導き出す答えにそれぞれ心を打たれました。
    人間はどんな時でも『生きる意味』を求めてしまう生き物なんだという事を実感しました。

    とにかく鳥肌が立つほど感動しました。

    この本、ぜひ再読したいです。
    子供の頃に読んだ本ですが、大人になった今ならまた違う思いを抱くかもしれません。

  • 地球での生活に適応出来なくなった人達が、惑星ナインに移住して作った社会のお話。
    もぉ、ルナって言う奇妙なオバァチャンが主人公なんやけど、、、。
    色々と考えさせられちゃう。
    ホンマに地球がこんな風になったら怖いし、こんな風にならん様にしな、、、。的な。
    でも、そんなに重たい感じの話の流れじゃないので読みやすいかな?

    何回、読んでも泣けるのは最後の方に『よかったね、灯ちゃん。勝ちの人生だ。』って言いながらルナがにへらーって笑う所。

    この場面は一番好きで、この部分だけ読んでも泣けちゃう、、、(照)

  • レイデイはそーゆー人だったのね

    このままだと怖い終わり方しかないのでは…と思っていたけれど、意外やなんだか爽やかに、人生讃歌にも思える終盤
    人類は滅んじゃうけどね

  • 移住した惑星での最後の子供ルナが冷凍睡眠する祖先を起こし、自分を生んだ理由を問う物語。
    祖先の人生とルナの今が畳みかけてくるSFです。

    崩壊を前にした舞台、そして個々の背景と問いかけ。
    しんどいけど、継承とタイトルの美しさ。

  • 惑星ナインへの移民後430年、人類に子供が生まれなくなり、残った最後の子供、ルナ。未来の医療を待ってコールドスリープしている人たちを、無理やり目覚めさせていく。起こされた彼女たちが綴る文書、各時代の特権階級、生殖能力者・管理局員・地球直系の画家・建国の女神。

    ひとが生きる意味は、生きがい・繁殖・生存。しかし人間は死ぬ。想像力を手に入れたゆえに死ぬことを知る…
    ってことが、壮大なものがたりになってます。

  • 中学生の夏休み、地元の図書館で見つけて一気読みした本。今までたくさん本を読んできたけど、その中でも飛び抜けて特別な本。

    人生の中で、このタイミングでこの本を読んだ方がいいっていうものがあると私は普段から考えている。生と死、そして1人取り残される恐怖を感じ、子どものままでいることを要求されたルナに思いを馳せることができたことはとっても大切なことだったと思う。そういう意味でチグリスとユーフラテスは中学生の私にはドンピシャだった。


  • 読み進めるごとに変わる印象。
    最後の子は何故生まれたのか。人は人を選ぶことができるのか。人生に意味があるのか。
    様々な問題が行き着く先にあるものが「これ」なのか。

    絶望と希望が混じり合った物語。未来の物語、でもいつ読んでも「今」の物語だろう。これがSFの持つ力なのかもしれない。

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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