蘆屋家の崩壊

  • 集英社 (1999年6月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784087744125

感想・レビュー・書評

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  • 先日〈たまさか人形堂〉シリーズを読んだら別のシリーズも読みたくなって再読。
    久しぶりの〈幽明志怪〉シリーズだが、やはり面白い。そして怖い。

    『三十路を越えて未だ定職につけずにいるようなぐうたら』猿渡と、『怪奇小説を書くことで』『その筋では有名らしい』「伯爵」(本名は出てこない)のコンビが様々な怪異に遭遇する連作集。

    カテゴリはホラーにしたが、ミステリーのようでもあり伝奇のようでもあり、猿渡と伯爵との友情物のようでもある。二人の共通項が『無類の豆腐好き』というのが新鮮。また猿渡の飄々とした語り口にも救われる。


    「反曲隧道」
    『嘘のように安い』車には裏があるということか。車にまつわる怪異が続くと運転が怖くなりそうなものだが、猿渡は気にしないらしい。

    「蘆屋家の崩壊」
    勿論かの有名な作品のもじりなのだが、中身は蘆屋道満と安倍晴明を巡る義太夫節に絡めてある。なまめかしい部分とサスペンス要素があり、最後は元ネタと同じように着地する。

    「猫背の女」
    作中一番怖い話。猿渡って案外モテるのか? だがこんなモテ方は嫌だ。この話に出てくる伊与田にも後にこんな運命が待っているとは。

    「カルキノス」
    これは結局のところどういう話なのか。迷信というものを馬鹿にしてはいけないという教訓か。癌=cancer=かに座というのを初めて知った。

    「ケルベロス」
    こちらは古事記とギリシア神話とが絡む。こういう閉鎖的なコミュニティだとどうしても金田一シリーズのような事件を期待してしまうのだが、こちらは話が違う。その後が気になる。

    「埋葬虫」
    こちらも『黄金虫』のもじりらしい。個人的にはコミック「悪魔の花嫁」の『シデムシ』の話を思い出してしまう。古くてすみません。先に書いた猿渡の友人・伊与田が再登場。彼のその後も気になる。

    「水牛群」
    これまでどんな恐ろしい目に遭ってもどこか呑気に見えた猿渡が苦しんでいる。その根源は怪異ではなく、実にリアルな世界でのリアルな理不尽だった。あとがきによるとこの時期津原さんもまた苦しんでいたらしい。
    そんな猿渡を救うのはもちろん伯爵だが、もう一人いた。身体的にはひどい目に遭っているが、精神的には持ち直したと言えるのだろうか。

    先に書いたように猿渡は定職に就いていないが、度々車を買い替えているし、度々伯爵と豆腐を食べに遠方までドライブしているし、むしろ生活に余裕があるのではとうらやましく思ったりする。
    ちなみに猿渡の車の変遷は、「反曲隧道」サニー→シトロエン「蘆屋家の崩壊」フィアットのパンダ「カルキノス」ビートル「埋葬虫」三菱デボネア。
    だがこれらの愛車たちも猿渡同様大変な目に遭っているので、この変遷も仕方ないのかと思うところもある。
    最終話、伯爵の言葉で猿渡の人生も変わるのだっただろうか。続きも読んでみよう。

    ※シリーズ作品一覧
    ①「蘆屋家の崩壊」本作 レビュー登録はこちらのみ
    ②「ピカルディの薔薇」
    ③「猫ノ眼時計」

    • 111108さん
      fukuさん、こんにちは。

      fukuさんのお名前勝手にレビューにあげてしまいました。すみません。
      『蘆屋家の崩壊』タイトルから読みたかった...
      fukuさん、こんにちは。

      fukuさんのお名前勝手にレビューにあげてしまいました。すみません。
      『蘆屋家の崩壊』タイトルから読みたかったのですが、表題作以外も全て楽しかったです。
      今まで読んだ津原作品、そんなに数多くないのですが漂う雰囲気がとても好きです。今後も追っていきたいので、fukuさんの本棚参考にさせていただきますね!よろしくお願いします♪
      2022/12/18
    • fuku ※たまにレビューします さん
      111108さん
      コメントありがとうございます。
      私の拙いレビューを参考にしていただき、気恥ずかしいような、ありがたいような感じです。
      ...
      111108さん
      コメントありがとうございます。
      私の拙いレビューを参考にしていただき、気恥ずかしいような、ありがたいような感じです。
      名前のことはお気になさらずに。
      津原さんの作品は様々なタイプがあるので、読むたびにいろんな楽しみがあります。
      このところ忙がしくて、なかなかレビューをあげられませんが、111108さんのレビューも楽しませて貰ってます。こちらこそ、今後とも宜しくお願いします。
      2022/12/18
    • 111108さん
      fukuさん、お返事ありがとうございます。

      いつも一つ一つの作品を丁寧にレビューされているので、内容思い出せないような私の短くてつたないレ...
      fukuさん、お返事ありがとうございます。

      いつも一つ一つの作品を丁寧にレビューされているので、内容思い出せないような私の短くてつたないレビューよりも頼りになりますよ!
      津原さんいろんなタイプ書かれてたのですね。ゆっくり味わいたいと思います。
      私も近頃寝落ち多いです。年末あわただしいですよね。
      これからもよろしくお願いします♪
      2022/12/18
  • どうもホラーや幻想系は、おもしろく読めるのと、そうでないのが極端に分かれるので、本作は何となく敬遠してきた。先日読んだ三浦しをんさんの「本屋さんで待ちあわせ」にあった「ピカルディの薔薇」のレビューにひかれて、シリーズ一作目から読んでみることにした。(とはいっても、なぜか最近出たシリーズ最終作は読んでるんですが)

    いやー、おもしろいなあ。それぞれかなりコワーいお話なんだけど、独特の雰囲気があってとても良かった。どういうわけか怪異を引き寄せる主人公猿渡が、脱力系のとぼけたキャラクターなのがいい感じのゆるさを醸し出していて、読みやすいように思う。

    しかし、繰り返すけど、怖いよ。特に「猫背の女」にはゾーッとしました。

  • 短編だったので読みやすく読了。不思議な世界観に入っていけたので最初は読みにくそうと躊躇していたのがウソのようにどんな世界が広がっているのだろうとワクワクしながら読了。
    猿渡さんの冒険談読んでみたいなぁ。と不思議な世界のトリコとなる。
    ホラーよりの恩田陸氏に似た感じ。

  • 何から何まで好みで、おもしろかった。HOLICとか洒落怖の師匠シリーズとか好きな人によさそう

  • 大枠を説明すると、民俗学をネタにした謎解きミステリになってしまう。
    しかし、実際は謎の一旦の解決を上回る、ホラーな結末が待っている。
    この崩し方は見事で、小野不由美のやり方に似ているが、こちらはあくまで最初の謎が恐怖に結びつくようになっていて、ミステリ的な謎解きは人間の賢しらに過ぎない。
    モチーフも表題作はポーの『アッシャー家の崩壊』で、他にもケルベロスと狛犬が関連づけられたり、古今東西の不思議が盛り込まれていて魅力的。

  • 猿渡さんの物語です(p.229)[内容]猿渡と伯爵が出遭う怪異/そのトンネルでは中古車に乗っていると不思議な目に遭うらしい/猿渡が学生の頃に半ば恋人だった女、遊離子の実家は…/猫背の女が怖い/おぞましい姿だが美味い紅蟹/女優の実家がある村はこの二十年間しじゅうどこかの家で事故が起こりだんだん退廃している/虫を食って死にかけている男/恐怖という感情の蓋が外れた[感想]怪奇もの、というより、こわいはなし集。

  • 面白かった。怪奇短編集で、読みやすく、どの話も怪しい輝きを帯びていて楽しく読めた。独特のキャラクター、語り口調、雰囲気に引き込まれた。難読漢字が多かったがそれも雰囲気を形成する一助になっており良し。

  • 幻想ホラーの短編集。
    古事記などの日本古代神話が少し絡む。(といってもほんの少し)

    少しグロさがあるが、程よいバランスで雰囲気があり面白かった。一気に読んだ。

    猿渡氏と伯爵の二人の間の空気感が良い。
    最後の話だけ猿渡さんのキャラが違う気がして少し残念だった。飄々としていて欲しい。

  • ア・・・ッ、これ好きなやつだ・・・と「反曲隧道」で確信。
    それにしても井上雅彦氏はミステリ小説のどこにでも現れるな・・・。
    だいたい伯爵と猿渡くんの珍道中ときどきホラー。
    「蘆屋家の崩壊」は、タイトルああ~~~ってなった。オチの付け方に納得のち余韻。
    「猫背の女」日常系ホラーと見せかけて・・・怖ッ。
    「カルキノス」これから蟹食べるの一瞬躊躇いそうだな・・・。
    「ケルベロス」猿渡くん、実はもてるのか・・・。
    「埋葬虫」食虫怖・・・怖・・・怖・・・(震)収録作で一二を争うホラー。
    「水牛群」某異形コレクション収録と聞いて納得。

  • 怪奇小説。じわじわと怖いけど、気になって先を読んでしまう…そんな感じ。

  • 1999-00-00

  • 86:00:00

  • 20170122

  • 食べものの表現がタマラナイ。。怖い話なのに!キャラクターが良いんだなぁまた。

  • 読むと止まらなくなるね。
    結構ハードな世界観と展開に巻き込まれながら飄々としているところが凄くいい。
    怪奇短編として最高。

  • (収録作品)反曲隧道/蘆屋家の崩壊/猫背の女/カルキノス/ケルベロス/埋葬虫/水牛群

  • 「五色の舟」のような、淡々としみじみとした筆致がドストライクでした。
    しかしきちんと勉強してくる作家さんで、安心して読めます。
    怪奇小説です。でも、すっごい怖い!という感じが無い、
    飄々とした処がなんとなく都筑道夫さんを連想させます。
    個人的には「カルキノス」「埋葬虫」がお気に入りです。
    「水牛群」はご自分でも書かれてらっしゃいますが、神経症に罹って
    家賃のために書いた一作だそうですが、
    一度でも似たような症状を体験した人なら涙無しでは読めないと思いました。
    でもって、豆腐が美味しく食べられるようになるという、
    素晴らしい一冊。ごちそうさまでした。

  • もう少しで面白くなりそうなのに

  • 再読。幽明志怪シリーズ1作目。
    無類の豆腐好きという縁で繋がった怪奇小説家の伯爵(あだ名)と無職の猿渡が遭遇する幻想怪奇譚。
    ポーのあの作品のもじりの表題作と、土着信仰や伝記を描いた『ケルベロス』、現実的な怖さを纏う『猫背の女』が好みです。
    『水牛群』がなんとも秀逸。
    独特の語り口で紡がれるこの奇妙な物語の数々に、所々ににやにやしてしまう小ネタがバランス良く配置されていて、とても充実した短編集です。
    いい頃合いで放り出される感の結びもとても好みです。
    やっぱりこの作品好きだ。

    収録作の差異の関係で、同作品の集英社文庫とちくま文庫も所有していますが、この単行本の装丁が一番好みです。

  • この続編の「ピカルディの薔薇」を三浦しをんがオススメしてたので、前作のこちらから。連作短編集。面白かった。ただちょっと読みにくいというか。一気に集中して読まないと頭に入ってこない感じ。幻想小説というんでしょうか。恐ろしいような気持ち悪いような話。思えばルピナス探偵団にあんなに感動したのに、なんでこの人を読まなかったんだろう。。。「猫背の女」の恐ろしさ、「カルキノス」の気持ち悪さ、「ケルベロス」の衝撃、「埋葬虫」も良かったなー。何か筒井康隆を思いだす。やっぱ筒井康隆って面白かったよなー。

    2015.12.6 再読。面白かった。読みだすとあぁこういう感じだった、とうっすら思い出す。こういうの大好きだ。やっぱ今回も「猫背の女」が最高に怖い。「埋葬虫」も。↑の読んだきっかけなんて、全然覚えてなかった。で、津原泰水を読み返すことにした。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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