- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087744675
作品紹介・あらすじ
少年は慟哭の叫びを封印し、あふれる想いを胸に沈める。高らかに謳う、誇りと希望の叙事詩。新世紀の冒険小説の指標、ここに完成。
感想・レビュー・書評
-
直木賞受賞作品。三章からなる壮大な冒険巨編です。
うーむ、一言ではとても言い表せない読後感。汗と、血と、硝煙と。生々しいまでの
『生』のエネルギッシュさを感じさせる。舞台が外国なので取っ付きにくさはあるものの
キモとなる男の動向、少年の成長、臨場感溢れる闘鶏シーンなどなど、ガツンと来ました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フィリピン、セブ島の辺境の村を舞台に、日比混血の少年を中心に描かれた物語。直木賞受賞作。これまで読んだ船戸作品とは違い、少年を主人公に据えたことで幾分爽やかで救いがある。しかし、現代史の矛盾を切り裂く力強いストーリーには変わりなし。イッキに読んだ。辺境の地で生きる少年の力強さを魅せる。船戸作品を読むにつれ、世界史をしっかり勉強したいと改めて思う。そしていつか、かの地を訪れてみたいものだ。
-
これは熱いよ、熱すぎるよ。
最初はね、おいら、ドジッちまったよ。とか言ってるわけですよ。でもって、またおいらやっちまったよ、とか言って、またやってるんかーい、てな具合でもう大丈夫おいどん、って心配してたんだけど、最終的にはすっかりタフガイになってメグちゃんとも結ばれてもうめでたしめでたし、てなわけで、おしまい。この成長っぷりがね。分かりやすいし好きよ。
しかしフィリピンも最近でもけっこう危ういんですな。侮りがたし。 -
▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/80725 -
21年前に刊行の本だが、全く古色臭なし・・どころか溢れかえるエネルギー・・ラストがいい。標題の虹の谷にかかる日輪・・まん丸い虹が煌めく中で性行を終えた若い男女が見上げる空・・南風が流れる。ジッチャン、ホセ、Dr・・どれだけ死骸が重なったろう・・まさに死屍累々。
読みはじめから汗、体液、セブ島の空気感、ラム酒、ヌルヌリベチャベチャ。まさに南国の島のハードバイオレンスだった。
背景に爺ちゃんが闘ってきた抗日人民軍ゲリラの歴史が有った。そして日本と生きる為に成功するために行き来するオンナ達の歴史。
首長といえども警察署長といえども、クソの権化。
直木賞が輝いた理由が明瞭。
いい作品だった・・読めて幸せ。 -
昔読んだ本
-
やはり船戸与一は良い、最高だ!!! ある人がこの小説は語彙が不足していると言っておられました。その時、私は夏目漱石の『吾輩は猫である』という小説を思い浮かべました。「吾輩」が小説のはじめあたりで、「言語道断」を「言語同断」と言っているのです。
最初、誤植かと思いました。漱石ともあろう人が何故?
やがて、ある時、腑に落ちました。
これは猫が語っているのですよね、だから、これでいいのですね。
これと同じで、この小説の語り手は13~15歳の少年です。そのボキャブラリーの少なさを補って余りある誠実さ、人として真摯に生きてゆく姿、これが素晴らしいのではないでしょうか? とかく難しい言葉、モノをよく知っている人が偉い人だと思われがちですが、本当に偉大な人は多くを語らず、行動によって人のために働くひとではないでしょうか? -
直木賞(2000上/123回)
-
おいらには分かっていたんだよ。この作者にかかったら、たくさんの悲しい血が流れるんだ。幸福を期待しちゃいけないってことさ。それでも、物語の語り手が死ぬことはないんだから、おいらは最後まで生き続けるんだろうなと思ってはいたんだ。おいらはホセのようには戦えないけれど、ホセにはなかった仲間がいる。アサム(希望)とダカン(誇り)をほのめかして締め括ってくれたんだから、仲間とともにきっと虹色に輝く未来を築こうと思うんだ。