誰も知らない「赤毛のアン」 背景を探る

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087744682

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  • 「赤毛のアン」の翻訳者、松本侑子さんが、翻訳にあたって調べたカナダ、プリンスエドワード島の歴史や、そこをめぐる旅、モンゴメリ自身のことなどをまとめたもの。それまで少女小説だと思っていたが、翻訳するのに初めて原文を読むと、知性とユーモアのある大人の観察者の視点で描かれていることに驚いたという。

    翻訳するのには背景を知り、実際にその地に足を運ぶと訳出がしっかりするという。確かにそうだ。背景を本にしてくれたので、改めて「赤毛のアン」の世界が、なるほど、と現実感を持ってきた。またモンゴメリの実人生も紹介し、その地に行った旅行記もあるので、アンの世界に託したモンゴメリの心情なども垣間見られた。


    プリンスエドワード島の歴史がなかなかにおもしろく、モンゴメリの先祖の入植や、アンでの描写もそれを背景にしているのがわかる。
    第1章:「赤毛のアン」の時代背景
     ・・アンに描かれている島の政治大会や女性参政権運動、パフスリーブの流行、カナダの銀行倒産などから、時代設定は1880年代すぎから90年代だろうという。1880年が明治13年なので、日本だと近代黎明期なのだ。またモンゴメリは1874年生まれなので、アンと自分の少女期を重ねているのがわかる。

    またプリンスエドワード島には1663年頃フランス人が毛皮貿易などをしていたが1710年ころ対岸のノヴァスコシア州から農民が入植したが、フランスにとってのカナダは毛皮や貿易による富の供給地なので、アメリカの西部のような先住民殺戮は起きなかった。

    だが、七年戦争でフランスがイギリス、プロイセンに負けると、1763年のパリ講和条約でカナダとアメリカはイギリスのものになった。するとプリンスエドワード島のフランス人はカナダ本土やアメリカ(ルイジアナ州)に渡った。残ったフランス人はイギリス人入植者の雇人になった。・・本だとアンの家に雇い人の少年がいてそれはフランス人で信用できない人物として描かれている。ドラマではそういう背景は分からなかった。

    第2章:「赤毛のアン」の植物園~出てくる植物紹介
    第3章:モンゴメリ、知られざる人生~アンとかぶる人生。かなわぬ願いをアンに託した部分もあるような気がする。
    第4章:モンゴメリの生涯をたずねるカナダ紀行


    新完訳「赤毛のアン」集英社 (単行本1993年4月20日発売)


    2000.6.30第1刷 図書館

  • 知られざる赤毛のアン。時代背景に即した鋭いデータが見られて面白い!アンがステイシー先生の授業で読んでいた『ベン・ハー』は発売したばかりだった、とか、マリラが講演を聴きに言ったカナダの大統領はだれそれだとか、それはアンが当時アメリカで発売されたことに作者が気を遣ったんだとか。

  • 赤毛のアン好きには中々興味深い本です。何気ないシェークスピアの引用の中にも深い意味があったり
    アンの時代を深く読み解いています。

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著者プロフィール

島根県出雲市生まれ、筑波大学卒。『巨食症の明けない夜明け』(集英社)ですばる文学賞、評伝小説『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(光文社文庫)で新田次郎文学賞。著作はイタリア、中国、韓国で翻訳出版される。『赤毛のアン』シリーズ(文春文庫)の日本初の全文訳を手がけ、作中の英米詩、シェイクスピア劇、聖書など数百項目を訳註で解説。金子みすゞの弟で脚本家の上山雅輔の日記と回想録を読解して小説『みすゞと雅輔』(新潮文庫)を発表。著書に幕末小説『島燃ゆ 隠岐騒動』(光文社文庫)、『英語で楽しむ赤毛のアン』(ジャパンタイムズ)など。趣味は編み物、洋裁、「すてきにハンドメイド」鑑賞。

「2021年 『金子みすゞ詩集 2022年1月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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