ジャムの真昼

  • 集英社 (2000年10月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784087744934

みんなの感想まとめ

幻想と退廃が交錯する短編集は、東欧を舞台にした物語が織り成す美しさと残酷さが特徴です。各作品は、魅惑的な写真とともに、深い感情を呼び起こし、読者を酩酊感に誘います。特に表題作は、戦争の影に隠された家族...

感想・レビュー・書評

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  • 退廃と背徳の香り漂う幻想譚。どこか健全から外れた美しさに溺れる。

    「ジャムの真昼」と「おまえの部屋」が好きだ。
    酩酊感が心地よくて、ただただ作品に身を委ねるばかり。余韻から抜け出せない。

    「少女戴冠」は意外に輪郭がくっきりしていると感じていたけど、やはり戦争が影を落としていて、失われたものへの愛しさや寂しさが静かに胸に広がった。

  • 皆川博子様の幻想を堪能しました。金色の光が常に降り注いでいるけど決して煌めいてはいない世界。セピアよりは光が多いんだけども…わたしの表現力が足りなくて言い表せない。。
    各話の扉になってる写真や絵はお話と合ってるのかちょっとわからないな…皆川さんのお話の濃さが強い、と感じましたが「光る輪」と「少女戴冠」の2つは好き。”That Pretty Girl I Loved“はこんなに皆川さんの世界観に合う写真あるんだとびっくりです。元々皆川さんが書かれてきた世界観にぴったり。。
    お話も「森の娘」「水の女」「光る輪」「少女戴冠」が特に好きです。
    4、6、7話と「T4計画」が影を落としている。その他のお話も、ほとんど先の大戦中のドイツが濃い影を落としています。
    「少女戴冠」は皆川さんを形作ってきた物語や思想の数々が書き込まれているので、シオランは存じていましたが他の方も読もう。
    今は書評集も出ているのでありがたいけれど、こうやって物語の中で出会えるのも良いなぁ。

  • 東欧を舞台に紡がれる、幻想と残酷の短編集。
    表紙のジェラール・ディ・マッチョの装丁画がもう筆者の幻視を体現し、語り掛ける。その目に見えるものなど、何も信用してはならない。この手に触れたと思うものだけが全てなのだ、と。
    各短編の表紙を飾る退廃とエロス漂う写真にも瞠目。ヘルムート・ニュートン、ラルフ・ギブソン、野波浩…世界観も統一された完璧主義に、舞台装置の美学に読者はただ溺れる。
    淫靡に幻想、狂気入り混じる表題作「ジャムの真昼」も怖くて好きだけど、モロにヒトラー関連の「おまえの部屋」もめちゃ怖くて好き…THE・皆川博子って感じで…。

  • 2018.01.31 図書館

  • おもにドイツ、東欧などを舞台にした7つの幻想耽美な短編集。それぞれの扉に写真(絵)があり、おそらくはその写真からおのおのイマジネーションを広げて書かれた作品集・・・という感じなのかな?

    表題作は、両親と祖母と叔母と暮らす少年の回想と、戦争がはじまり逃げる途中で母が兄と妹だけ助け自分は置き去りにされた現在が交互に描かれているかと思いきや、まさかの回想と現在の反転に鳥肌。

    「光る輪」も似た構造で最後に姉妹がくるりと反転するのがうまい。「おまえの部屋」は『総統の子ら』にも繋がるヒトラーユーゲントの兄弟とその父の話。「少女戴冠」はすでにないはずの劇場で繰り広げられる一夜だけのフリークスショー。全体的にとても好きな感じの短編集だった。

    ※収録作品( )内は写真家
    森の娘(ヘルムート・ニュートン)/夜のポーター(ロベール・ドアノー)/ジャムの真昼(ジェラール・ディマシオ)/おまえの部屋(ラルフ・ギブソン)/水の女(野波浩)/光る輪(ウジェーヌ・アジェ)/少女戴冠(ヤン・ソーデック)

  • 耽美で退廃的な作風で一部に熱狂的ファンをもつ皆川博子の欧州(最後の一編はニューヨークですが)を舞台にした短編集。

    どの作品も戦争が暗い影を落としています。登場人物は大戦を経て生き残った、あるいは生き延びた人々なのですが、今でも戦時中に負った深い心の傷に苦しんでいたり、自ら犯した罪の呵責に怯えていたり、狂気の淵に近いところを危なっかしく歩いている。
    たとえるなら、甘美で美しい狂気の瓶詰めだ。
    悪夢のように毒々しく鮮やかな色彩の瓶に詰まっているのは、蕩けるように甘く、退廃の香りがするジャム。子供が決して舐めてはいけないもの、一度舐めたら戻ってこれなくなる禁断の味だ。
    特に表題作と「おまえの部屋」の不気味な余韻が気に入った。
    両者とも血族の呪縛が軸となる悲劇を描き、妄想と現実が迷宮のように入り組んだ陰惨な美しさで読者を幻惑する。「光る輪」のミステリ的仕掛けにも吃驚。有栖川有栖や綾辻行人がファンなのもわかります。
    「死の泉」がぴんときた方、長野まゆみをもっと濃くしたような作風がお好きな方は手に取ってください。

  • 短編集。

  • 大戦後の欧州、がキーになっている短編小説の数々。
    皆川さんの描く世界は蠱惑的で美しくて切なくて悲しい…
    毒があるのに触れずにはいられない何か。

  • こういうエロス。好きだ。
    女性が描くエロスの方が やっぱり好きだ。

  • 第二次大戦時のドイツを舞台にした短編が収録されている作品。
    これまで読んだ他の作品と比べて、もう少しファンタジーかも。

    p173
    「私のアメリカ嫌いの一因は、親密な人間関係こそが幸福の鍵であり、それをもたないものは反社会的であり異常だとみなす彼らの考え方にある。」

    ここにものすごく共感しました。いや、アメリカが嫌いなわけではないけど。でも、そういう虚構というか、危うさをはらんだものの上に成り立っている幸福って怖いし、それを押し付けてくる人たちはもっと怖いなと思う。

    なんとなくすらっと読み終わってしまったのは、舞台が日本じゃなかったからかも。日本のことを書く時は湿度がにじみだすこの作家さんはやはりすごいと思います。

  • じっとりとした梅雨の時期にゆらゆらとたなびく紫煙の如き短篇集だった。登場人物について読んでいくと、どことなく物憂げでありながら、まるで尖った羨望の眼をこの世でない遠くに向けているかのような気配を感じることがある。この作者の描くものは、何冊も連続して読むとかえってぼやけてしまいそうだが、1冊1冊は絶妙な幅におさまっているので、たまに手にとりたくなる。

  • 幻想的で官能的な短編集。

  • 皆川先生のオハコ幻想短編集。
    お話は言わずもがな各短編の扉ごとの写真や絵がもう妖しく美しくて……たまらん(>人<;)
    欲しいけど絶版…

  • 決してハッピーエンドを書かない方。
    登場人物が幸せになれるかどうかなど、もはやどうでも良いくらい、何もかも超越している。溜息が出るほどの美文です。とても官能的。

  • 「少女戴冠」は作者本人を思わせる一人称で書かれている。「博子先生についていくしかない…」と思わされる。

  • 少女戴冠が好き

  • 絵の具が怖くなった。

  • 表題作をはじめ、著者のこころみのもと一枚の絵、一葉の写真から紡ぎ出された物語の数々。ひとたびページを繰れば、そこにはジャムのように濃密な官能と幻想の世界が広がる。初めて読んだときこのまま永遠に終わらないでと思った。至福の出逢いでした。

  • 7/13 読了

  • 大戦時のヨーロッパが舞台の短編集ですが、詩的で痛々しく、幻想的な中にも生々しさがあっていちいち感嘆させられます。

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著者プロフィール

皆川 博子(みながわ・ひろこ):1930年旧朝鮮京城生まれ。72年『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞受賞。86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。著書に『聖餐城』『海賊女王』『風配図 WIND ROSE』『天涯図書館』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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