リアルワールド

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087746198

作品紹介・あらすじ

ねえ、取り返しのつかないことってあるんだよ。高校3年生の夏休み、世界の終わりが始まった。

感想・レビュー・書評

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  • 山中十四子…通称トシ。
    クールなテラウチとエキセントリックなユウザン。
    育ちのよいキラリンとしい3人の友人とともに、
    残り少なくなった高校生活を送っている。
    夏休みのある日、隣家の同い年の少年が母親を撲殺した。
    彼がトシの携帯電話と自転車を盗んで逃亡したことから、
    4人の女子高生は事件で巻き込まれてしまう。
    個々に抱える悩みを逃亡少年に照らす彼女達。
    「ヒトから見られる自分」と「本当の自分」のはざまで揺れ動く思春期の心…。

    ここに登場するのは女子高生4人組。
    各章で語り手が次々と変わり、それぞれの胸の内に抱える悩みが明らかになる。
    友達には理解されない、バレていないと必死て隠していたりする。
    しかし、他の章で違う子が語り手になると案外それぞれの友達が
    必死で隠している事やバレていないと思っていることを知っている。
    仲良しグループの様に見せかけながら、それぞれの独白は重く複雑だった。

    自分の高校時代を振り返っても些細な事が恥ずかしくて打ち明けられなかったり、
    素直に悩みを相談できなかったりした。
    今になって思うと、あんな些細な事が何故言えなかったんだろう。
    素直になれなかったんだろうって思えるのに…。
    その頃の友達の関係って、自分の心の脆さもあって、
    本当にガラス細工の様に脆く、危ういものだったんだなぁ。

    誰もが私とも違っているけど、何となく共感できる感じがある。

    大人の様に一人で歩む事はできず、子供のように無邪気になれるわけでもない。
    油断すると足元をすくわれそうな世知辛い世の中から
    懸命に自分を守りながら生きている。
    若さゆえの無謀さ…でも払った代償は大きかったなぁ。

    表紙のイラストが一瞬可愛いんだけど、良く見ると気持ち悪い。

  • 隣の家の母親殺しの高校生殺人犯を噓みたいにあっさりと受け入れる女子高生とその仲間達。現実感がないけど、逆に一周回ってこんな感じがリアルなのかも。
    そもそもリアルな生って一体何なのか?

  • 女子高生達の心の葛藤。

    ある日、隣の家の少年が母親を殺した。
    とっさに嘘を付いてしまった少女、そして巻き込まれ、自ら飛び込んでいく友人たち。

    親を殺したい、いなかったらいいのに、そんな誰もが抱く思いを、実行に移してしまったら。
    非日常に憧れ、実際に日常から外れてしまったら、待っているのは未来のない闇。

    心の奥の闇と、闘う少女たち。
    出口はどこに。

  • 表紙絵がヘンリー・ダーガー。
    なぜ?と思いつつ読んでみたが、関係はなさそう。

    母親殺しの少年と、誘蛾灯のようにそれに惹き付けられる少女たち。
    章ごとに視点が変わり、登場人物たちの思念や哲学が解明される。

    読みづらい。
    口語体なので読みづらい。だけど読みづらいなりに、重要なところが解るという謎仕様。
    ひと夏の思い出。内容があるようであまりない。

  • 桐野夏生さんを読むのは4作目。高校生の女の子たちの後先考えず行動してしまうところに、感情移入はできなかった。特にテラウチの哲学的な考え方は難しくてよくわからなかった。
    良かった!とは思えないが、大人でも子どもでもない多感な年頃の危うさを感じた。我が子がこんなことになったらどうしようと不安になる作品だった。

  • くらくらした。 この怒りと悲しみは高校生特有なのかもしれない。わたしはこのタイプではなかったけど、大学生になってからそんな感じだった人たちの思い出話をぽつりぽつりと聞かされたから、こういう感じだったのかなって。
    物語はリアルじゃないけど気持ち悪いエネルギーはリアルっぽいんだ。テラウチが学んだばかりの熟語を使いまくったり、ミミズがほんとうにダサい男だったり、キラリンが男レベルを判定してそれに元カレのあの感じとか。
    テラウチが著者に1番近い気がするな。文学好きの女の子の共通点をたっぷり備えているから。

    人が死ぬと自分のせいだと思う現象は名前あるんでしょうかね。

  • リアルから程遠いリアルと思ってしまったのは、読んだのが年取ってからなのか。
    高校時代とかに読んでいたら、少しは理解でき…ないような…。
    ひとりの少年の犯罪を通じて、少女たちの本質が晒されていく。にしても代償はでかいなぁ。

  • 「リアル」に帳尻合わせることのできない未熟なガキの話

  • 隣家で起きた男子高校生による母親殺し。
    隣に住む女子高生が、小さなキッカケで巻き込まれ、そのキッカケから女子高生の友人3人も巻き込まれていく。

    コギャルとか一昔前の設定の話だけど、違和感なく読めた。若い世代の友人関係は今も、そのまた昔も大差がなさそう。
    広い視点で見ると人間の成長過程とはそういうものかと納得しそうになるが、どちらも平和な場所を生きている証左なのかもしれない。

  • ドロドロしてるわけでもないが、若気の至りとはこんな感じなのか。。。
    4人の女子高生もミミズも単略的すぎる。。。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

桐野夏生の作品

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