はるがいったら

著者 :
  • 集英社
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感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087747928

作品紹介・あらすじ

気が付けば他人のファッションチェックまでしている、完璧主義者の姉。何事も、そつなくこなすが熱くなれない「いい子」な弟。二人の間に横たわるのは、介護され何とか生きる老いぼれ犬。どこかが行き過ぎで、何かが足りない姉弟の物語。第18回小説すばる新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 『本屋さんのアンソロジー』を読んで以来、気になっていた飛鳥井千砂さん。
    まずは、小説すばる新人賞を受賞したデビュー作を手に取ってみました。

    寝たきりの老犬ハルを、ペットシーツを敷き詰めた部屋で介護する行(ゆき)。
    近所のコンビニに行くにも鉄壁のコーディネートをする着道楽の姉、園。
    行は、目標を決めてストイックに自分を追い詰める姉の完璧さを尊敬しつつも心配し
    園は、めったなことでは怒らず、何事も鷹揚に受け入れる弟が眩しい。

    こうありたい自分。 この人からは、こう見られたい自分。
    この人には、見せたくない自分。 本当の自分。
    自分でも気づかない自分。 思いがけない受け取り方をされている自分。

    ひとりひとりが纏う、そんな微妙なニュアンスが
    デビュー作とは思えないさりげなさで、丁寧に掬い上げられています。

    特に、勉強も運動も人付き合いも、そつなくこなせるが故に
    付き合う相手にも格を求める「ちょっと冷たいヒーロー」と捉えていた人の本音や
    憧れていた人の行動を勝手な思い込みから誤解し、「許せない!」と断罪する人の
    身勝手さの描き方には、はっとさせられて。

    園のアパートの隣室に住んでいたばかりに
    園と行の姉弟やハル、その他大勢を愛車に乗せて真夜中の公園だの
    それぞれの家だのを行ったり来たりする破目になる小川くんの
    「じゃあ今日はみんなお隣さんですね」という言葉の温かさが胸にしみて

    わかってるようでわからなくても、わからないようでわかっていても
    家族にしろ、友人にしろ、ずっと一緒にいたいと思う人たちとの縁を大切に
    手を差し伸べ、差し伸べられながら生きていくのだなぁ、と
    静かに思う1冊でした。

    • vilureefさん
      いやー、グッときましたまろんさんのレビュー。
      びんびん迫ってくるものがあります。

      この作家さん、全くのノーマークでした(^_^;)
      さっそ...
      いやー、グッときましたまろんさんのレビュー。
      びんびん迫ってくるものがあります。

      この作家さん、全くのノーマークでした(^_^;)
      さっそく読んでみたいと思います。
      ほんと、ブクログ見てると読みたい本ばっかり増えて困っちゃいますよね~。
      2013/03/16
    • まろんさん
      macamiさん☆

      おお、macamiさんの「読む気満々の本」の山、魅力的ですね♪
      登場人物のディテールを描くのがとても上手な作家さんだな...
      macamiさん☆

      おお、macamiさんの「読む気満々の本」の山、魅力的ですね♪
      登場人物のディテールを描くのがとても上手な作家さんだなぁ、と感心しながら読みました。
      時間ができて読むことができたら、ぜひレビューで感想を教えてくださいね♪

      同じときに同じ本、私もとてもうれしいです!
      ブクログで、趣味の合うお仲間と出会えた喜びをかみしめる一瞬ですよね(*'-')フフ♪
      2013/03/18
    • まろんさん
      vilureefさん☆

      私も、『本屋さんのアンソロジー』を読むまではお名前も知らない作家さんでした!
      とてもすっきりした文体で、読後感のよ...
      vilureefさん☆

      私も、『本屋さんのアンソロジー』を読むまではお名前も知らない作家さんでした!
      とてもすっきりした文体で、読後感のよい作品だったので、
      これはちゃんと長編を読んでみないと!と思って。

      お隣さんの小川くんが、とにかく人が良いというか、可愛くて、救われた気分になりました。
      まだまだ人生途中、じたばたもがいている真っ最中!という
      登場人物たちがいとおしくなるお話でした(*'-')フフ♪
      2013/03/18
  • いろんな人がいた。
    どんな人も葛藤しながらもがきながら
    毎日を生きてる。
    結局自分の行動は自分にしか選択できないし
    その時々に覚悟を持っていれば
    どんな選択をしても間違いじゃないのかもしれない。
    ハル、幸せな犬生だったかな。
    必ずくる別れは避けられないから
    私も今のうちに覚悟を決めとこう。
    園のバイバイ、かっこよかった。

  • 子供の頃、両親が離婚して離れて暮らしている園と行。
    気が付けば、他人のファッションチェックまでしている。
    完璧主義で自分にも他人にも厳しい姉・園
    何でも、そんなもんかって受け入れちゃう
    凄く悩んだりとか、逆に熱くなれない「良い子」な弟・行
    どこかが行き過ぎて、何かが足りない姉弟の物語…。


    姉・園と弟・行の視点で交互に展開し物語は進んでいく。
    自分が欠点だと思ってても相手からは長所として映ってたりする。
    全く違う様な姉と弟だけど、しっかり認め合ってる。
    園は何事にも完璧であろうとしていて、
    デパートの受付嬢で幼馴染の恭司と不毛の恋をしてる。
    行は父の再婚相手とその連れ子と暮らしながら
    子供の頃拾った老犬ハルの介護をしている。
    行が入院し、園がハルの介護を引き受けてから
    少しずつ二人に変化が訪れた…。

    真逆のキャラの義兄・忍と行の病院の屋上での会話良かったなぁ。
    屋上と言えば、同室で先生の宮本さんとの会話も良かった。
    「皆高い所に昇ると馬鹿になるんじゃないの
    そんで、人生とか愛とか語ってみちゃう
    下界では恥ずかしいって思ってるのに上に上がると思わなくなる」
    そ~なのかなぁ(笑)

    ハルの介護の様子や、ハルが逝った時やはり涙が溢れました。
    ハルとのお別れの時、園が行に言った言葉…。
    やっぱり、お姉ちゃんだなぁ。

    大きな出来事や特別劇的な事などないけれど、
    登場人物も何処かにいそうな人達ばかり
    そして、淡々と描いているかの様なのに、
    それなのに、こんなに気持ちが入り込むのはどうしてだろう?
    穏やかに、繊細に訴えてくるものがあります。
    この本に流れる空気感!?雰囲気がとっても良い
    大好きです。
    ほんわり心が温かくなりました。

  • 完璧主義な姉、園、冷めた目線を持つクールな弟、行。ふたりが子供の時に拾ってきた、14歳になる老犬はる。両親が離婚し、離れて暮らす姉弟は、今でも仲がいい。寝たきりになったはるを看ていた行が入院してしまい、園が預かることになる。

    『チョコレートの町』がすごく良くて、気になっていた作家さんでした。
    こちらもものすごく良かった。
    静かに、でも、案外ドロドロと話が進むことに、まんまとハマってしまいました。
    園の気持ち、行の気持ちが、手に取るようにわかり、世代も違うのに、かなり感情移入して読んでいたかも知れません。

    当初は、もっとはるの話があるのかなと思っていましたが、はるの脇役っぷりにびっくり。
    でも、さらっと書かれていたはるとの思い出のシーンには、やっぱり泣かされました。
    我が家の犬は7歳。いつか来る日を思い、ぎゅっと抱きしめてしまいましたね。

  • この人は、イヤな女を描くのが上手い。
    しかも、イヤなだけじゃない。
    共感できる、イヤな女。
    実際、そんな女は山ほどいる。
    見方によって、変わるだけだ。
    誰からも嫌われてても、友達は必ずいて、その人からは好かれている。
    わたしは、多分見た目は園っぽい。
    考え方は、行っぽい。
    スタイル良くて可愛くて、仕事もできて完璧に見えても、幸せな恋愛には恵まれない。
    登場人物どれも、共感できる。

  • 両親の離婚により母と暮らす4つ年上の姉 園と、父と新しい母、さらに兄と暮らす高校3年の弟 行。姉弟が子供の頃公園で拾った犬ハルは14歳の老犬になり、行が自室で介護していたが行が入院するため園が預かることにする。。離婚して離れても仲良しな、美人の姉にクールな弟なんて素敵な滑り出し♪と思ったら、んまぁドロドロ…。園の完璧はちょっとストイックだし恭司の完璧はねぇ?美人な奥さん裏切って美人な浮気相手までいる「完璧」ってなんだ?でもお隣さんもものすごい勇気出してくれて最後も協力してくれて良かった。

  • 飛鳥井さんの作品に興味がでて来て、読んだ2作品目。

    完璧主義の園と事なかれ主義な行の2人の目線が変わりながら話が進んでいく。
    なんでも完璧にしたいところ、熱くなりきれず受け入れてしまうところ。自分と似通っていて、“分かるわかる”と共感しながら読んだ。

    色々盛り込まれていたので、その先を知りたい感じだが、きっとみんな明るい方へ向かって行くのだと分かるので、読後は物足りないながらも爽やかな作品だと思う。

  • 文体も展開も馴染みやすく、個人的に好みの部類でした。

    登場人物の考え方も、全人物に関して共感できるものが多く、自分というものをを考えるうえでのいい参考にもなりました。
    淡々としたストーリー展開(一応事件とかいざこざとかあるけれど、なんだか微妙に盛り上がりに欠ける)が物足りないと思う方もいるかもしれませんが、「でもまぁ、人生ってそんなもんだよなぁ」と、弟・行のような感性を持っている人なら難なく読めると思います…。
    お涙頂戴にはしってないのもよかったです。そうされることで逆に泣ける。

    たくさんの登場人物が出てきますが、あっけなくもう登場してこなかったり、とくになんの関係も発展せずに…という感じの扱いばかりです(笑)
    でもそれこそ人生。
    たくさんの人と関わっても、たまたま同じ時間や空間を少しの間共有しただけの関係。だから、たぶんこのお別れのあとはもう会うこともないだろうな…みたいな出会いの繰り返し。
    そういうもんだよなぁ。

  • 自分を分かってもらうって難しい。
    そして、人を理解することは難しい。
    つい、人のある一部分を見て、全て分かったつもりになりがちだが、誰かを真に理解することも、真に理解してもらうこともとても難しいと思う。
    それでも、人は分かり合えない部分を抱えて、誰かを愛していくのだろう。
    わかってもらえないことを嘆くのではなく、わかってもらえなくても、自分らしく生きる道を選択し続けたい。

    • kuroayameさん
      わかってもらえなくても自分らしくと書かれているレビューに勇気をいただきました。
      わかってもらえなくても自分らしくと書かれているレビューに勇気をいただきました。
      2012/10/11
    • sorairokujiraさん
      kuroayameさんありがとうございます。
      わかってもらいたい気持ちって、結構重たくて持て余すこともありますが、そんなところを突き抜けて...
      kuroayameさんありがとうございます。
      わかってもらいたい気持ちって、結構重たくて持て余すこともありますが、そんなところを突き抜けて、自分らしくいたいなって思いました。
      2012/10/14
  • 姉弟と老犬ハルの日常が語られる。
    姉・園ちゃんの言動に共感して、自分を省みた。
    そして、行くんみたいな弟 いいなぁ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「老犬ハルの日常」
      老犬と聞いただけでウルウルしちゃう。何でやろ?
      「老犬ハルの日常」
      老犬と聞いただけでウルウルしちゃう。何でやろ?
      2012/12/18
    • mumeさん
      ウルウル→ズルズルして下さいませ。
      読むと泣けます、です。
      ウルウル→ズルズルして下さいませ。
      読むと泣けます、です。
      2012/12/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ウルウル→ズルズルして」
      文庫になってるようなので、春になったら読もうかな(春は花粉症で、と誤魔化せるんです)。。。
      「ウルウル→ズルズルして」
      文庫になってるようなので、春になったら読もうかな(春は花粉症で、と誤魔化せるんです)。。。
      2013/01/07
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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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