ピカルディの薔薇

  • 集英社 (2006年11月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784087748314

作品紹介・あらすじ

猿渡シリーズ、待望の続編! 耽美怪奇短篇集。
探偵役の伯爵とのコンビはすでになく、売れない鬱の作家の猿渡は、一人で難題に巻き込まれる日々。療養所暮らしの青年人形作家と知り合うが、彼の危うさが悲劇を招く。現実と夢の狭間に誘う7篇。

感想・レビュー・書評

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  • 猿渡・伯爵コンビが様々な怪異に遭遇する〈幽明志怪〉シリーズ第二作。こちらも久しぶりの再読。

    コンビと書いたがこの作品では二人がともに行動する話は少ない。というよりも伯爵の登場がぐっと減っている。ちょっと残念。
    その代わり猿渡の視点や語りで紡がれる話はなんとも掴みどころがない。異国だったり時代を遡ったり、現実なのか夢なのか幻想なのかも分からなかったりする。
    怖い話が続くのだが、そうした設定のせいかホラーというよりは怪異譚やファンタジーといった印象。
    好みが分かれる作品集かも知れない。

    「夕化粧」
    最もホラーな話。二人の妻に自死される男からの手紙。二人の愛情が籠ったおしろい花(異名が夕化粧)。植物自身は他の植物たちとの生存競争に打ち勝ち勢力を広げようとしているのだろうが、それがまるでこの二人の妻の愛憎を映しているかのようで恐ろしい。

    「ピカルディの薔薇」
    最もグロテスクな話。なのにどこか耽美というか様式美のようなものも感じてしまう恐ろしい話。
    五感を失い推量だけで生きている青年が作り出す人形や薔薇。読み終えれば何が真実で何が虚構だったのか、何が本物で何が幻想だったのか分からないまま。これは作品全体に言えることだが。
    この話から猿渡が作家になっている。奈々村女史という編集者も付いている。

    「籠中花」
    久しぶりに伯爵と猿渡の道中物。と思ったら猿渡が『定職もないぐうたら』だった『当時』の話らしい。
    伝説がある島をリゾート地にしようと計画している女社長・白鳥が伝説そのままにガジュマル(漢字が出ない)に取り込まれてしまう。
    アフリカマイマイの大群、考えるだけに恐ろしい。伯爵でなくても避難する。

    「フルーツ白玉」
    その白鳥から猿渡が聞いたという食にまつわる様々な話。イヌイット独特の発酵食品、猪の肉、ザリガニ(これもまた漢字が出ない)、そして白鳥の従兄が南米の山里で口にしたソーセージ。
    『エネルギッシュな食への執着』も突き詰めた彼女が最後に行き着いた食べ物が。

    「夢三十夜」
    勿論あの有名作品のオマージュだろうが、そこは〈幽明志怪〉シリーズ風にアレンジ。猿渡の友人・平太郎が見る夢と猿渡の話が交錯していく。これは現実なのか夢なのか、妄想なのか怪異なのか。
    この作品で描かれる女性は怖い。

    「甘い風」
    ウクレレというとどこか陽気だったり穏やかだったりというイメージなのだが、この作品でのウクレレは不穏。ここまで人を虜にしてしまうウクレレの恐ろしいこと。いや恐ろしいのはそこまでしてウクレレを手に入れたいと考えてしまう人間の業の方か。猿渡が『餓えて』いなくて良かった。

    「新京異聞」
    満州時代の新京を舞台にした猿渡の話。ここでは猿渡は瀬戸内の網元の息子であり、伯爵は交響楽団の指揮者になっている。猿渡が滞在することになった和佐家の娘・唯子に連れられてその友人宅に行くと、例によって奇怪な出来事に取り込まれる。何が怖いと言えば、今で言えば小学校高学年ほどの唯子の大人びた様子が一番だった。末恐ろしいが、最後の一文でさてこの話は一体…。

    続けて第三作も読もう。

  • シリーズ第二弾。金子國義氏の装丁装画が内容と合って本当に美しい。グロテスクもエロも狂気も笑いと一緒に存在する不思議。一番好きな表題作は『虚無への供物』オマージュ作なのか?抜け感の『フルーツ白玉』最後の一行効く『新京異聞』もいい。

    • たださん
      111108さん、お返事ありがとうございます♪

      そうそう、軽やかでお洒落なところ、まさにその通りで、共感してくれる方がいて、とても嬉しいで...
      111108さん、お返事ありがとうございます♪

      そうそう、軽やかでお洒落なところ、まさにその通りで、共感してくれる方がいて、とても嬉しいです(^o^)

      そして、乱歩からの繋がりというのも、興味深いですが、中井英夫の直系って、すごい誉め言葉ですよね。やはり読んでみます。狂気度高めというのが、ちょっと気になりますが・・今村夏子さんは苦手でも、狂気的なのは問題無いのですね(^^;)

      それから、学園ものはルピナス探偵団のことです。忘れっぽくて失礼いたしました。
      こちらは、111108さんの登録していなかったものなら、図書館にあるそうなのですが、シリーズものだから、最初から読んだ方がいいのですよね?
      2022/12/29
    • 111108さん
      たださん

      『虚無への供物』共感嬉しいです!そうですね、よく考えてみたら「直系」ってかなり近しい間柄なんでしょうね。

      かなり控えめに言って...
      たださん

      『虚無への供物』共感嬉しいです!そうですね、よく考えてみたら「直系」ってかなり近しい間柄なんでしょうね。

      かなり控えめに言っても狂気度高めです。タブー的な設定・モチーフが何度も出てくるので、もうこれは津原さんが書かずにいられないものかと。そこが絶対ダメだと読むの辛いかもです。
      今村夏子さんの方が何ならまともかもしれません。あれ?なんで読めるんだろう(^^;)

      ルピナス探偵団、まだいろいろあったんですね。私も探してみます♪順番通りがいいですよ!
      2022/12/29
    • たださん
      111108さん

      「直系」と聞くと、まるで子孫のようで、血の繋がりくらいに感じられたので、凄いんだろうなと感じましたが、タブー的な設定、ほ...
      111108さん

      「直系」と聞くと、まるで子孫のようで、血の繋がりくらいに感じられたので、凄いんだろうなと感じましたが、タブー的な設定、ほとんど読んだことないから、どうでしょうね・・でも、読んでみます。読めば、111108さんの謎が解けるかもなんて(^^;)

      ルピナス探偵団、やはり順番通りでしたか。こちらは、時間かかるかもしれませんが、なんとか一作目を探してみます。

      色々、教えて下さり、ありがとうございます(^_^)
      2022/12/29
  • 猿渡をメインに語られる幻想怪奇短編集。
    幽明志怪シリーズ2作目。

    前作は猿渡・伯爵コンビが旅の道中で出会う怪奇という形だったけど、今作コンビの話は少ないのが残念。猿渡の設定というか状況も様変わりしている。
    作品の雰囲気は健在で、新京異聞の最後の1文に置いてけぼりにされる感じといい、この世界観に浸るのは楽しい。
    (新京異聞の猿渡は時代が異なり、猿渡の祖父という体裁らしい。)
    「甘い風」が好み。 「超鼠記」、「枯れ蟷螂」は文庫版のみ収録。

  • 猿渡氏あるいは彼の周辺の人に起こる、どこか不思議な物語。ホラーというより幻想小説。表題作の「日カルディの薔薇」で青薔薇の話から中井英夫を思い出していたら、後書きでも触れられていて、ちょっと嬉しくなった。魅力的な話の中でも特に「籠中花」と「新京異聞」は、見えてくる情景が好き。

  • 猿渡氏と伯爵の二冊目短編集。
    幻想的ホラーな雰囲気は引き続きだか、オチのない話が多かった。どちらかと言うと1冊目の方が好み。

    猿渡さんは美女に縁が多いな。

  • 伯爵と猿渡くんの珍道中2巻目
    前回に引き続きホラーで怪奇な事件あり、でも前回よりも幻想小説色が強かったかな??
    中井英夫氏オマージュの作品が群を抜いてるからかな

  • 金子國義の装丁が素晴らしくて期待して読んでたけれど、
    サラッと斜め読みで終わってしまった。
    装丁と内容が雲泥の差なのではと思ってしまった。すみません。

  • 相変わらずの怪異。これがいかにもな怪異。
    妖しい方じゃなくて怪しい方。
    日常の隙間に居座っているのに、スルーする確率の高い怪異。
    そんなスタンスでしょうか・・・
    いいわぁ~面白かったわぁ~。
    ただ、期待していた伯爵の出番がほとんどなくって
    物凄く寂しい。
    どのお話も読後に何かしらの余韻を残します。
    一番のお気に入りは、表題作ですね。
    カバーイラストが何を意味してるのか
    気になっていたんですけど、読んでわかりました。
    危うい感じの人の話は、別の意味でドキドキします。
    切ないなぁ~・・・

  • 言葉の選び方から小道具から設定から、これはもう純粋に好み。

    唯一、「フルーツ白玉」、このタイトルはないでしょーと思ったけど、この中で出てくる、ボリビアの山里で隣村に出かけてさまようとこが、「エレホン」とか「モンテ・ヴェリタ」 「ゴサインタン」系のノリで良かったあ。

    表題作に「オフランド・オゥ・ネアン」という薔薇が出てくるんですが、これって「虚無への供物」のハズ。
    さりげなく、猿渡の編集者が奈々村女史だったりする。

  • どことなく冷たくてじっとりとした湿りを感じた。重くて冷たくて肌にべったり張り付くよう。そして全編に香る気持ちの悪い独特の甘さ。甘い風を読み終わった時のあぁそうこの空気…。とはいえ特に好みは新京異聞。あと夕化粧。いや甘い風も…。

    読んでいる自分が巻き込まれていく感覚があった。し、なんなら図書館への夜道で猫が鳴きまくっているわ何かの虫が濁音だらけの羽音を左耳にぶつけていくわで熱の引かない七月の夜に新しい話が始まっている。図書館の駐車券精算機は音声案内が十重二十重だし…。

  • 2006-00-00

  • 猿渡シリーズ、待望の続編! 耽美怪奇短篇集。
    探偵役の伯爵とのコンビはすでになく、売れない鬱の作家の猿渡は、一人で難題に巻き込まれる日々。療養所暮らしの青年人形作家と知り合うが、彼の危うさが悲劇を招く。

  • 津原先生の著作を読んだのは、蘆屋家の崩壊と今作だけなのですが、酩酊にも似た幻想的な世界観はどこかノスタルジックで、少し気持ちの悪くなるようなシーンが妙にクセになります。読了後は小説を読むという享楽を知り始めた頃を思い出して愉快な気分になりました。

  • 人形つくってる星くんのはなしが読みたくって、なんてんだろうこの感じ。あの話にハマってるというかとらわれたくてとらわれているというか。。

  • 猿渡と伯爵の豆腐好きコンビが遭遇する怪奇を描く、「幽明志怪」シリーズ第2作。

    ・著者の変幻自在の筆致と幅広い作風にはいつも驚嘆する。
    ・前作『蘆屋家の崩壊』ではあまりの恐ろしさに全身が粟立って眠れなかったので、第2作は恐る恐るページを開いた。が、前作よりホラー色は薄く、あまり印象に残らなかった。
    ・最も印象深かったのは表題作。五感を失い、推量だけを頼りに生きる人形師の物語。彼の見ていた世界の傾きぶりは、きっと当シリーズに登場する誰よりも深刻で哀しい。でも悲しいことに、私の想像力ではその世界がうまくイメージできなかった。目覚めてすぐの意識が混濁した状態が比喩として出てくるが、「五感がない」とまで評するには飛躍がある。痛覚自体が正常ならば、いくら痛みの概念が異なるとしても、ラストの展開は無理ではなかろうか。前作の「水牛群」では、巧みな描写で神経症の症状をリアルに追体験できたが、「ピカルディの薔薇」ではそうは行かず取り残されてしまった。

  • いいですね。津原泰水はこういう話のほうが断然いい。…それにしても、これ前編があるの知らなかった。今度探してみよう。

  • 夕化粧/ピカルディの薔薇/籠中花/フルーツ白玉/夢三十夜/甘い風/新京異聞

  • 金子國義さんの表紙に惹かれて読みました。

    数人の登場人物からなるオムニバス形式。
    基本の主人公「猿渡」はいるもののかなり多角的に切り取られているので、毎回頭の切り替えが必要。。。
    夢の話もとても象徴的でいかようにも取れそう。(作中では編集女史が「他人がみた夢を聞かされるほど退屈な経験はない」というような台詞もあるけれどw)
    私は象徴的な話もあくまで字面のまま捉えて楽しむのが好きですが。(よって訳のわからない話だと感じることも間々あります。)


    全体を通して、少し湿った、ぞっとする話です。

    『夕化粧』おしろいばなのことですが。
    2人目の奥さんのスト的餓死。
    1人目の奥さんの私の貴女への愛は夕化粧に似ている、「(夕化粧は)抜いても抜いてもまた出てくるから」という言葉。

    『籠中花』とある民話に熱狂してしまった女性が、木の洞に入ってしまった。「民話のモチーフの木を傷つけずに助けろ」と無茶を言うが、折りしもその晩は寄居虫の大行進の日で・・・

    『フルーツ白玉』グルメ談義なのだけれど。
    まるでコ(虫3つに皿)毒なザリガニ(漢字が出てこないよ)、蛭詰めの血のソーセージ、キビャック(海豹に海燕を詰めて醗酵させたもの。海燕の肛門から内容物を吸って食べる。もやしもんにも出てきたね。)
    ・・・・・私食わず嫌いはしないほうだけれど、ちょっと遠慮したい。。。

    『夢三十夜』夢十夜ならぬ。
    でも、同じくらい不可思議な話。
    夢の中では時間場所の設定は違えど、名前が同じで。現実と夢の表記の境目がないものだから私の頭はパンクしそうでした。
    最終的に夢が現実に浸食?

    『甘い風』ハワイの風。
    新婚旅行の先で一風変わった外国人の老紳士に出会う。夏目(仮名)が幻のウクレレと交換したのは・・・新妻!?

    『新京異聞』新京を訪ねた猿渡。
    貝勒(ベイレ。爵位)の第7夫人という樟寿が語る自らの物語。幻は不老不死の彼女かそれとも・・・


    そしてなにより素晴らしいのは表題作『ピカルディの薔薇』。
    これだけは耽美です。
    病気の美少年が人形を作ります。薔薇も育てます。

    でも、それだけではありません。
    最後はサイコホラー・・・?

    「自画像のような人形」
    でも人形を入れる木箱は縦1メートル。
    どうすればいい?

    五感のない彼に痛みはあるのか。


    好きな人はたまらなく好きだと思います。

  • 猿渡くんシリーズ第2弾。奇妙で、それでいて匂い立つような甘美な物語たち。ゲテモノ食いの話の「フルーツ白玉」と人形職人の話の「ピカルディの薔薇」が良かった。

  • 再読。幽明志怪シリーズ2作目。
    前作では無職だった猿渡も、この作品では時を経て変化がみられます。
    前作で見られたような伯爵と猿渡のコンビ色は弱まっています。
    とはいえ魅力が落ちたかと言われればそうではない。
    『虚無への供物』のオマージュの表題作と『甘い風』が特に好みです。
    【人形】というキーワードは個人的に最も惹かれる要素なのですが、ここで描かれる物語もとても良かったです。
    食についての云々は違った意味で怖さを感じます(汗)
    こちらもちくま文庫版とは収録作の差異があるので、文庫も是非手にとってみて欲しいです。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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