ダーティ・ワーク

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 376
レビュー : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748536

感想・レビュー・書評

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  • 絲山さん的温かさがたくさん詰まっていて、良い息抜きになった。ほっとした。
    いい人ばっかり出てくる癒し系でもないし流行のイヤミスみたいな人の悪の部分を抉り出す的なものでもないのに、なぜだかすごく本質をついているな、と思える言葉がたくさん詰まっていて、しかも登場人物みんな血が通ってる。

  • 文庫本を読んで、あまりに好きになりすぎて、ハードカバーまで買ってしまった。

    それも、初版を探して。

    それくらいの価値はある。

  • 20代というのは、つくづく難しい。

    仕事に就き、毎日をあくせく過ごす。社会と云う枠組みの中で、自分の存在の小ささを思い知らされる(ついでに、社会の大きさに打ちのめされる)。自由気侭で、責任と云う枷のない生活が一変する。そして、面倒な哲学的命題を突き付けられる。

    「自分の生き方とはどうあるべきなのか」

    「自分はこんな生き方をしていていいのだろうか」

    「自分のやりたいことは本当にこれなんだろうか」

    立場は、人それぞれだが、いっちょ前にそんな悩みを持ってしまう。大なり小なり、考え込んでしまう。

    そうこうしているうちに、僕も31歳になった。偉そうに悩んでいる。大したことじゃないことに悩んでいる。まだ、生意気ながきんちょのままでいる。

    果たして、【器用な生き方】なんてものがあるのか分からないし、そもそも何を以てして、【器用】と呼べるのかも分からない(ま、少なくとも勝間和代を読んでも分からない)。ふふ、がきんちょである。

    社会、仕事、恋愛、結婚…。さまざまな人間関係から見えてくる若者たちの生活。そのもどかしさ、ままならなさ。だけど、希望だけは失わない。生きていれば、見えてくるものがあるだろう。こんがらがった悩みも解けていくだろう。

    願わくば、歳を重ねてから自分や自分のまわりを振り返ったときに、「なんだ、しょーもないことで悩んでいたなぁ」と過去の自分を笑い飛ばせることができるように。

    そんな思いを抱いた、イトヤマ作品。

  • 絲山秋子さん初の連作短編集。

    ストーンズファンならご存知のとおり、本書のタイトルはローリング・ストーンズのアルバムのタイトルだ。ロックな絲山さんらしい。短編のタイトルもみな、ストーンズの曲のタイトルになっていて、この本はいわば、絲山さんの選曲による7曲が聴ける本、ということになるだろう。その曲目は以下。
    1.worried about you
    2.sympathy for the devil
    3.moonlight mile
    4.before they make me run
    5.miss you
    6.back to zero

    女性ギタリスト熊井望を軸に、人間関係が複雑に絡み合う。悪性リンパ腫で入院している大学時代の女友達に会いに高速を飛ばして駆けつける男、一発逆転を夢見てパチンコへ行く日々を送る男、4人の女と同時に付き合う郵便局員、外食チェーンの会社に勤める女、写真が趣味の花屋。とにかくみんな不器用で、優しい。それが妙に切なくて可笑しくて、魅力的なのだ。

    全体的にすごく中性的である。著者が意図的にそうしているのかもしれないが、言葉遣いや行動を読む限りでは、男女どちらなのかすぐにはわからないこともあった。

    また、連作短編なので共通の登場人物が当然出てくるのだが、名前が出てくるわけでもなく、呼び名が前の話とは違っていたりするので、誰のことなのかはっきりとわかるように書かれていないことも特徴的だ。それが本書の魅力でもある。これはあの話のあいつだ、とわかったときには楽しくなる。

    そして、どの話にもローリング・ストーンズがちらほら出てくることも、ここに書いておかなくてはならない。登場人物がストーンズのファンだったり、かかっている曲がストーンズだったり。わたしがストーンズについて詳しかったら、もっともっとこの小説を楽しめたのかもしれない。

    そこでちょっと調べてみた。「ダーティ・ワーク(Dirty Work)」は、1986年にリリースされたアルバムで、CBSと契約後初の作品だそうだ。しかも、ストーンズ最優先だったキース・リチャーズと、個人的キャリアのためにソロアルバムを出したミック・ジャガーとの関係がずいぶんと悪かった時期の作品だそうで、バンド史上において他のアルバムよりも重要な意味を持つらしい。

    といっても、本書の各章に使われているタイトルの中で、「ダーティ・ワーク」というアルバムに収録されているのは「Back to Zero」のみ。他のタイトル曲はこのアルバムとは関係ないが、それぞれの短編のストーリーに合ったものが選ばれているのがわかる。

    ストーンズについては、かつて通っていた予備校の英語の先生が大ファンで、いつもあっかんべーのTシャツを着ていたのを思い出す程度で、わたし自身はストーンズの音楽を聞いたことすらなかった。あのインパクトのあるあっかんべーマークや、熱狂的なファンの様子からして、おそらくめちゃめちゃハードなうるさいロックなのだろうと勝手に思い込んでいたからだ。

    ところが、この本を読んで、試しにとレンタルしてみると、あらずいぶん思ったよりおとなしい、というか、ポップな曲なのね、という感想を抱いたのだった。携帯電話のauのCMで以前使われていた曲がストーンズの曲だったということすら初めて知った。そのときにレンタルしたアルバムは、けっこう気に入って、今iPodに入っている。ベストだけはCDにもコピーしておいた。

    本書はこうしてストーンズとの出会いの斡旋にも一役買っている。

    読了日:2007年5月21日(月)

  • 妊娠を嫌がり恐れていた女性が、自分の意思とは関係なく自分を変えていく「生命」を自然と育てたいと思うように変わっていく。死へ向かっていたとばかり思っていた友人が、少しずつ回復していく。自分の今と未来を分断するような出来事はすぐそこに転がっているけど、本当は途切れてるわけじゃなく、少しずつ絡み合いながら続いている。

  • 短編かと思って読むと・・・関連している〜"worried about you":女ギタリストの熊井望の最近付き合っているのはサラリーマンの塩垣だが,最近は否認しようとする気がないので別れたが妙に中高時代のTTが思い出される。"sympathy for the devil":輸入車の広報ををしている津山は辰也と定期的に寝ているが最近はいらいらさせられるので,兄嫁と温泉に行くと,兄嫁の左脇腹から背中にかけてタトゥーがあった。"moonlight mile":新聞社をやめ金融の中小企業に勤める遠井はメールで大学時代の女友達神原に病院に呼び出されるが,悪性リンパ腫の再々発で苦しみ藻掻いていた。"before they make me run":親が期待していた兄貴は一流企業を辞めて中小企業に移り最近はそれもやめたらしい・・・おれはパチンコにとりつかれている。"miss you":辰也と適当に付き合っている歯医者の助手の私は花屋の辻森に憧れているが,姉の出来ちゃった婚に不安を抱いていた。"back to zero":プーとなった遠井は病院仲間だった辻森の写真展の片づけに行き,ギターを抱えている熊井のヌード写真に驚かされ,最初からやり直す決心をする。"beast of burden":遠井と熊井が再会し,同棲を始め,妊娠もしたが,熊井は遠井に掛かってくる神原の電話に腹を立て,一人住まいの友達に誘われて冬の軽井沢に行き,戻って母となる決心を固める〜思わず,相関図を作っちゃった。背景としてrolling stones のアルバムがあるのだろう。beast of burdenってのを調べたら,荷駄の事らしくて,荷を運ぶ獣ってことは腹に子を抱えた女か。うむ・・・なるほど。一気に読んだ方が良いけど,朦朧とした頭では関係を整理できない。というわけで相関図を拵えたが,まだ不明の部分がある。放っておく

  • 絲山さんの本の中で一番大人だなあと思った

  • 熊井と遠井が軸なのかなあと思いつつ、彼らをめぐる友人、知人、同僚、家族などがそれぞれ語り、また語られていく、縁と時間とが心地よく。読み終えて、この小説好きだなあ、と心から思った一冊。熊井の心臓は固有のリズムを打ち、兄嫁は最近読んだ一番面白い本を「超ひも理論とは何か」であると教えてくれ、頭のいいM男くんが本当はだらだらしたいのに一生懸命いじめてくれる女王様を見抜いてしまいますます好きになる話をしてくれ、見舞いにいった遠井は「安楽死を手伝って欲しい」と気を許した瞬間に横蹴りを食わされ、辰也は自分は泥沼にはまらず、自分というものがない、ゆえに貴子のそばにいなければと思い、遠井と辻森さんは病院で知り合い、辻森さんの趣味の写真展を見に行ったり、そこで熊井と縁がつながったり、辻森は「大事な物には名前を書くな」と学び。そのワンシーン、ワンシーンがいいなあ、と。/以下、備忘録的に、それぞれの章と登場人物。【warried about you】熊井(語り手)/TT(=遠井)(回想)/坂間/塩垣(彼氏)/TTの弟(回想)【sympathy for the divil】貴子(語り手)/辰也(彼氏)/麻子(兄嫁)【moonlight mile】遠井(語り手)/神原美雪(同級生)【before they make me run】遠井弟(語り手)/高田(語り手)/熊井(友人)/辰也(語り手)/M/K/S/貴子【miss you】持田(語り手=M)/辻森(花屋)/持田姉/持田姉の夫/辰也(回想)【back to zero】遠井(語り手)/辻森/熊井【beast of burden】遠井(語り手)/熊井(語り手)/高田/神原美雪

  • なんだか話が断片的すぎて読んでいて気が散った。
    一作一作ブツブツと切れて次の話に進んで行くけれどどの作品もダラダラしているのが苦手。
    同一人物に対して三人称が名前だったり『彼』『彼女』だったりと変わるのがとても気になった。

  • 2017.02.01
    「読み終わって相関図を書きたくなる」というレビューを読んで、どんな人間関係なのか探りながら読んだ。
    俺とかわたしとか、一人称が様々だから、性別を疑ぐりながら読んだけど、そういう本ではなかった。

    一人一人の感情の描写とか、文体には引き込まれたけど、全体的な話は全然面白くなかったような。

    冒頭のぶっきらぼうな熊井が、最終章では敬語になってて違和感。

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著者プロフィール

1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。住宅設備機器メーカーに入社し、営業職として福岡、名古屋、高崎などに赴任。2001年退職。03年に「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞、04年に「袋小路の男」で川端康成文学賞、05年に『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年に「沖で待つ」で芥川賞、16年に『薄情』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書に、小説『逃亡くそたわけ』『エスケイプ/アブセント』『妻の超然』『末裔』『不愉快な本の続編』『離陸』『忘れられたワルツ』『夢も見ずに眠った。』、エッセイ『絲的メイソウ』『絲的サバイバル』『絲的ココロエ 「気持ちの持ちよう」では治せない』などがある。群馬県高崎市在住。

「2020年 『御社のチャラ男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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