- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087753967
作品紹介・あらすじ
自作原稿を焼却したゴーゴリの数奇な生涯。漢語の輸入から日本文学の成熟へ、神話から始まって聖書へ-物語の歴史を考察する。短篇小説の跳躍について。近代の三大小説『ドン・キホーテ』『ボヴァリー夫人』『白痴』を細部まで読み解く要約の妙技。言霊信仰から『悪魔の詩』までの物騒なフィクションの話。小説の誕生から、その構造や手法をめっぽう面白く解説する。小説を通して見ると、人生と世界がつながる。目からうろこの文学講義。
感想・レビュー・書評
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本がたくさん読みたくなる、とても楽しい文学講義だった。
私達が今ごく普通に読んでいる「小説」は、最初からその形ではなくて、時代とともにその時を生きた小説家たちの手で作られていったこと。
「私」の発見。その「私」の「リアル」とは何なのかということ。現代小説の冒険とは、つまり個人が「私とは何で、誰なのか」ということと向き合うことなのではないか……
様々な世界の本がその時代背景とともに紹介されており、体系的に「文学」を読むことの楽しさをたくさん教わったように思う。
実は、この本の最終章の「ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をどう読み、どうパスティーシュするか」を読んで、私は実際に『ねじの回転』を読み、そしてパスティーシュをしてしまった(出来上がったものはとてもパスティーシュと言えるものではなかったけれど……)。これまでそんなことしたことなかったのに。
とにかく、それくらい刺激的で世界が広がる本だったのだ。文学を学ぶのは、楽しい!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なぜ小説があるのだろう。何が小説なのだろう。
近代小説を語る講義。紹介された作品が読みたくなる。近代という時代について。小説というものについて。単に楽しむだけでなく、主人公と自分を重ねて読むことで、その人生を生き、死ぬ。そこから得られる、自分の生き方に対する考え方。小説を読むことの喜びを語る講義だった。 -
高校時代の文学史の授業で習ったら、さぞ楽しかっただろう。近代文学が成し遂げたのは、個人の内面を徹底的に掘り起こして、情緒豊かな自然の風景と融和させること、そして、ストーリーとプロットを複雑に絡ませて読者に謎解きをさせること。ロシアや西洋の近代文学を目の当たりにした明治の日本人たちは、これまで日本語の概念になかった感覚を、どのように日本語の文脈で表現するかに苦しみながら自らの文芸作品を生み出したのだった、と知るとなると、明治以降の文学も、違って見えてくるから楽しいものである。
著者が選ぶ海外長編小説にベスト10入りした「戦争と平和」は、私自身、10代の頃に好きだった文学の一つであった。あの頃は、軟弱に見えたピョートルよりも、有能な青年士官アンドレイの肩を持っていたものだが、大人になって読んでみたら印象が変わるのではないか、と思い、戦争と平和の第1巻を手に取ったのはつい先日のことである。ところが、読もうと思っても、少し読み進めると、トルストイの世界は固く私を弾いてしまって読むことができない。悲しいことながら、近代文学の額縁に入りこむには、自分自身の頭の使い方が変わってきてしまっていた。文学を素直に感じながら読むのもいいけれど(できればそうしたいけれど)、ちょっと頭が固くなりすぎたようなので、辻原登の解説を携えて、文学史として読んでみるのもいいかもしれない、と、思えた一冊だった。 -
文学から世界を見つめる面白さ。
古典文学を読みたくなる内容 -
今年、本がもっともっと読みたくなった
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著者の小説のほうはまったく読んだことがない。けど、この講義は面白かった。
ゴーゴリの『死せる魂』の冒頭が引用されていて、引き込まれて早速注文。
『ドン・キホーテ』と『ボヴァリー夫人』と『白痴』が、キリストのパロディという一点で繋がってなるほどと納得。近代小説はもはや、小説そのものを疑うことでしか成立しなくなった、ということがわかりやすく説明してある。 -
世界の文学の歴史を語っている。ちょっと難しいけれど面白い。でも難しい。
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「文学」を系統立てて学んだことがないのが残念でならない。どこかで学びなおしたいと思っている。そこへこの本だ。まったく無知の私には、面白い、気づきに満ちた内容だった。『ボヴァリー夫人』のどこがそんなに偉いんだ!?と思っていましたが、なるほど・・・。あれもこれも読みたくなります。
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おもしろかった。
文学はまさに社会と寄り添うものであるということを痛に感じた。
「文学に何ら煩わされない眼が世間を眺めてこそ文学というものが出来る」
「近代的であるということとロマンチズムは同じ意味である。近代人というのはつまり個人です。個人が何かになる、これがまさにロマンチズムです。」
「日本には言霊信仰がある。言葉には霊力が宿る」