夏のバスプール

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 347
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087754117

作品紹介・あらすじ

2012年、世界は12月で滅亡するとの噂だが、高校1年生の涼太は、仙台から来た同級生に恋をする。一風変わった彼女には複雑な事情が…?
第23回小説すばる新人賞受賞の畑野智美さん最新作。カバーイラストは「放浪息子」などで人気の漫画家、志村貴子さん描き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 些細な言葉で傷つき
    些細な仕草で悩み
    些細な行動で苦しむ。
    ただ単に──深い意味もなく、そうしただけなのに。
    僅かなすれ違い、ちょっとしたボタンの掛け違いで歯車は狂い始める。
    そんな不安定な、まだ熟しきっていない青いりんごのような時期。
    青の時代──少年少女は、悩み、苛立ち、苦しむ。
    そういう時期を経て、みんな大人になっていくのだ。

    畑からもぎたてのトマトを齧ったとき、じゅわっとあふれ出る果汁のような新鮮な感覚の青春小説。
    この作家の作品は初めてだ。
    今をときめく直木賞作家、朝井リョウ君の翌年の「小説すばる新人賞」受賞者である。
    私は「小説すばる新人賞」受賞作家と相性が良いのかもしれないと、ふと思う。
    年甲斐もなく、この手のみずみずしい胸キュン青春ものが好きだからだな、きっと。
    そして、高校が男子校だった私にとって、共学高校生活というのは今でも憧れなのだ。
    高校時代、クラスに女子のいない学園生活の何と味気なかったことか。
    だから私の中では、共学だった中学と男子校の高校時代の想い出が複雑に入り混じった形で脳内再生して読むことになる。
    甘酸っぱくてほろ苦いあの頃の想い出は今でも宝物だ、いや、たぶん死ぬ間際まで胸の奥に燻り続けるだろう。

    作品全体として軽い感じはするが、随所にきらきらと光り輝く表現が見受けられる。
    特にテンポのある会話が小気味いい。
    作者の会話文のセンスはなかなかのものだと思う。才能を感じさせる。
    主人公『涼太』と思いを寄せる『久野ちゃん』の関わり方も何とも言えず微笑ましい。
    私としては、胸キュンキュンしまくりです。
    朝井リョウ君の「少女は卒業しない」が好きな方は、この作品もお気に召されるのではないでしょうか。
    あの作品と同様の瑞々しさと爽やかさがあります。
    彼に比べれば、心理描写の物足りなさと比喩の表現の独創性にやや不満が残るが、そのあたりをもう少し深く描写し、比喩に工夫を凝らせれば、ここ数年のうちに直木賞候補ぐらいには行けそうな気がします。
    あともう一点、男性の会話文が若干女性的に聞こえてくるのが個人的には気になったところかな。
    それも直せば、潜在能力はかなりあると思う。
    オススメです。
    今後の作品にも大いに期待したい。
    特に現在図書館予約中の最新作「海の見える街」が早く読みたい。
    楽しみな作家がまた一人増えました。

    註:作中にあるように、本当にわが故郷仙台では『バスターミナル』ではなく『バスプール』と言います。
    何故なんだろう? あらためて指摘されると不思議だな。

    話は全く変わるが、昨年末に突然、四十肩? 五十肩? になってしまった。
    右肩を変な方向に捻ると激痛が走る。
    夜中でも、肩から二の腕にかけて痛みがひどくて目を覚ます。
    パソコンのキーボードを打つときでも、少し痛みが……。
    そんなわけで、レビューを書くのさえ、億劫である。
    なんとこの病気、完治するのに一年近くかかるらしいのだ。
    困ったものだな全く。加齢というものには逆らえません。

  • 畑野智美さんの言葉のセンスはやっぱり好きだ。
    作品に出てくる男子はいつもちょっと頼りなくって、でもなんだかんだ芯があって。
    見守りたくなる。
    自分としては、女子が主人公で何を考えてるかわからない男子の話のほうが好み。
    でも二度と戻れない高校時代が愛しいと思わされる。

  • 高校時代は少し狂っている時間だと思う。まっすぐで、くるしくて、自分がなんだかわからなくて、まぶしくて、面倒くさくて、言葉ではあらわせないことばかりだ。でも、あらわしきれないはずの高校生というものが、この本のなかにはたしかに表現されている。もう二度と戻りたくないと思っていた高校時代をもう一度生きてもいいなと思った。

  • 高校生のもやもやした気持ちやドキドキした気持ちなどたくさんの想いや心の揺れをキレのある文章と会話で綴って、内容は重いものを結構扱っているのに暗くはならず、読後感も良かった。魅力的な登場人物に快哉を叫びたい。トマトを投げるシーンは色彩も鮮やかで、最初から引きこまれた。

  • この人の作品初めて読んだけど、序盤~中盤までは「何かウダウダした文章だな~・・・」と少し退屈したけど、後半の主人公の世界が開けてくる(←この表現で適切かどうかわかりませんが。)辺りから、そのテイストが逆に生きてきて、効果として面白く感じられた。

    季節的にいまが旬の作品。読む方はお早めに。

  •  私の求めてたのは、こういうティーンズ小説!!
     って拍手したくなりました(ぇ)

     高校生の涼太は遅刻ギリギリの道を歩いていたら、突然、顔を合わせた同級生(女)にトマトをぶつけられる……という奇妙な体験をする。
     それも1回だけではなく、2回も……。
     彼女は誰なのか? 調べたところ、どうやら中学の同級生と知り合いで、彼女自身、わけありの転校で……

     という話でした。
     高校生が、高校生らしい恋愛をして、うまくいったかいかなかったかわからないキュンキュンしたところで終わる!!

     これがティーンズラブストーリーだよ!(大人が考える)

     という気分になりました。
     いやあ、いいもの見た。
     たまには、こういう小説を読むのもいいと思っているので、とてもよかったです。
     読みたいときに読みたい本に出会える幸せってなかなかないですよねー。

  • 平成28年8月の特集「夏の本」

  • <the bus pool in summer>
      
    カバーイラスト/志村貴子
    ブックデザイン/鈴木成一デザイン室

  • 学校の近くの畑でトマトを食べていた女子高生。

    トマトを投げつけてきた久野ちゃんを見て、涼太は恋に落ちた。

    涼太の幼馴染の望月と付き合いながらも
    図書館の先生に猛アタックしていた青野。

    久野ちゃんを周りの噂から守っていた野球部の西澤。
    中学時代に少しだけき合ったことのある粘着質の河村さん。
    不登校の富くん。

    仙台で野球部の暴力の被害にあった久野ちゃんの弟。
    弟のことを引きずりながらも、明るく生活していこうと思っている久野ちゃんの思い。

    青春、だね。
    前半なかなか話が始まらなくてつらかった。

    久野ちゃんみたいなモテる女子はつらいな。
    若いっていいね。遠い目。

  • なんか、引っ張り過ぎ。
    読んでてイライラしてきました。
    面白い話だっただけに、ちょっと残念!

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。13年に『海の見える街』が、14年に『南部芸能事務所』がそれぞれ吉川英治文学新人賞候補となる。ほかの著書に『夏のバスプール』『感情8号線』『罪のあとさき』『タイムマシンでは、行けない明日』『家と庭』『消えない月』『シネマコンプレックス』『大人になったら、』などがある。

「2018年 『水槽の中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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