青少年のための小説入門 (単行本)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087754421

感想・レビュー・書評

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  • どこかで作家になることを夢見ている青少年のための小説入門としてこの小説は未来永劫存在していくのだろう。
    この「入門書」は一筋縄ではいかない、というか誰にも真似のできない唯一無二のこの二人にだけ許された方法だったのだろうけど、いくつもいくつもヒントはある。
    図書館で司書さんにおすすめされた本を片っ端から朗読する、そしてそこからエッセンスだけを抜き取り別の物語を作る、あるいは今まで読んだ本を別の物語に置き換えてそれを当てあう。そういうあれこれはきっとものすごく役に立つだろう。もちろん作家を目指すところまでいかなくても本好きなら誰かとこういうやり取りができればとても楽しいだろうし。
    だけど、この物語が唯一無二の二人の物語としてのみ存在するのはそれが登と一真という全然共通点のない二人のそれぞれの個性がぶつかり合い補い合い尊重しあいそして高めあってきたからであって、それはもう他の誰にも真似なんてできるはずもない。
    登の生い立ちも一真の現状も、決して恵まれたものではないし、二人が全く別の、もっとなんというか人として間違った方向へと進んでいっていた可能性はとても高かったはず。そうならなかったのは、やはり物語の、言葉の力に他ならないと思う。
    そう、言葉は、物語は無限の力を持っている。
    誰かの救いになり、誰かの力になり、誰かの夢になる。
    登がばあちゃんと過ごした最後の日々。そこに確かにあった切なさと優しさの温度を私も感じた。一真が登のいない毎日の中で感じた風の冷たさも私は感じた。そして、流れる涙の温かさを私は忘れない。
    小説が、物語が、文字が、私を包み込んでいった。この記憶はきっと消えない。
    そして、この小説を読んだ人は、きっと、ずっと、もっと、物語を好きになる、そう思う。

  • 小説の中で小説が分析されて、小説が
    産み出されていく不思議な構造の物語。

    読むべき小説のガイドとしても使えるが
    セレクションもかなり個性的。

    物語を作るという行為、
    本を読む楽しみ、
    いろいろ考えさせられる。

  • おとなしい男子中学生が強要された万引きで捕まり
    見逃す代わりにと求められたのは朗読だった。
    二人は徐々に小説の魅力に気付き
    ディスレクシアの男が案を出し、中学生が文章を作ることに。
    ブランチで紹介されていて興味を持って借りてみた。
    設定は面白いが、盛り上がりそうで盛り上がらないまま終わってしまった感あり。

    [図書館・初読・10月12日読了]

  • 面白かった。
    分量多目な感じで読みごたえがあった。
    初読みの作家さんでしたが、他も読んでみたいです。

    物語中では作家になるにあたっていろいろな本が紹介?参考にされています。
    読んだことのあるものもないものもありました。
    いくつか読んでみたくなりました。

    コンビが真面目な学生とヤンキーみたいなヤクザみたいな人の二人っていうのも
    でこぼこが合うようで違いにハラハラするようでした。

    小説ってすごいな、作るのほんとに大変だな、って感じました。

  • 主人公のぼくは、私立を受けたが落ちて、区立のマンモス中学校に通っている2年生。成績はトップクラス。始業式早々、ぼくは、不良に強要されて駄菓子屋のたぐちで万引きをする。それを、店番をしていた20歳の登さんに見つかったしまう。
    登さんは、本の朗読をぼくがすれば、万引きを見逃してくれると言う。登さんはディスレクシアなのに作家を目指していた。
    ぼくが朗読して、登さんが聞く。二人で名作、時には駄作を研究しながら、登さんがアイデアを出し、ぼくが書いて、コンビで作家を目指していく。

    朗読という形での名作の引用、公立図書館の司書や登さんやぼくの書評が、読んでいて楽しい。登さんの祖母とぼくの母、それからデビュー時の編集者のキャラが良い。私は、読み進めていくうちにー後半は特にーどこでコンビに破綻が訪れるのかとドキドキした。現実を見せつけるエンディングも良いと思う。
    うちの中2男子の文芸部員におススメした。

  • 最近は昔の名作を探すことが多く、若手作家の、ましてや単行本を買うことが滅多になくなった。この本は、「本の雑誌」で激賞されているのを読み、手にすることにした。

    ヤンキーの登はディスレクシアで、読み書きができない。中2坊主の一真が沢山の小説を朗読して、登がそこから換骨奪胎した小説の筋を考え、一真が物語を紡いでいく。この凸凹コンビの奮闘ぶりと読んでいく小説の様々が面白い。
    物語の中盤で早々とデビューを果たすのが予想外だったけど、話が面白くなってくるのは此処から。2作目の長編のプロット造り、これが本当に面白い。何度もの改稿で悩みまくる登と一真のやり取りが臨場感タップリ。ある筋を強調すると、肝心の本筋が弱くなったり、という過程は本当に小説家の苦労が見えるよう。

    ところで、登の換骨奪胎ぶりから、ふと、この小説自体に元ネタがあるんじゃないかと考えた。実は、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」がそれじゃないかと思っている。

    この小説で紹介された「アルジャーノンに花束を」など、自分が読んでいた時のことを想い起ことも多かった。
    ゴーゴリ「外套」は辻原登さんの本でも取り上げていたし、マーク・トウエィン「ハックルベリー・フィンの冒険」は内田樹さんが必読としていて、読まなきゃと思っているが。
    あと、やっぱり横光利一「機械」、ドストエフスキー「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」も読まなきゃなあ

  • 時間があるとき、ゆっくり読みたい

  • 中学2年の一真と20歳のディスレクシアの登が小説家をめざす!?

    一真の中学校に転入してきた神原が目をつけたのが一真。
    近所の駄菓子屋たぐちで、万引きするように強要する。
    駄菓子屋はいるもはおばあちゃんが店番をしていたが、おばあちゃんが体調を崩してからは、短めの髪をオールバックになでつけた若い兄ちゃん登が店番を変わることもあった。
    万引きをした一真を登は自分の朗読係にする。
    登はディスレクシアで、文字の読み書きができないのであった。

    二人は朗読を通して、小説を分析し、アイディアを出し合い、一真が文章にすることで作品化して文学新人賞に応募する。ペンネームは倉田健人
    協力してくれた図書館司書
    白髪混じりの挑発で黒ぶち眼鏡の50代くらいの男性 柳沢
    おかっぱ頭でべっ甲柄眼鏡の40代くらい女性 本条

    小説の面白さ、どうやって成り立っているのか、などもわかり、いろいろな文学作品のガイドもあり、読み応えあり。

    P123
    「やられたな。こんな小説、読んだことねえ」

    P356
    「ぼくは、小説は可能性の束だと思ってます。ポール・オースターが作品の中で、小説の中心はいたるところにあって、結末を迎えるまで円周は描けない、という意味のことを言ってます。編集者はもちろん、作家さんも、書き終わるまで作品の全体像はつかめない。本当にすぐれた小説とは、そういうものじゃないでしょうか」
    そのとき、電撃的な悟りが訪れた。久間さんの話を媒介に、世界の果ての話と、道順問題の話とが、一挙に結びついたのだ。悟りというものの性質上、言語化するのは難しい。いま、あえてそれをすれば、こういうことになると思う。
    かすみの言う世界の果ては、中心が定まらず円周を描けない、未完の小説と同じカオスにある。一方登さんは、物語る行為を道順問題になぞらえたけれど、物語は道順問題としてはきわめて特殊で、事前に定まった始まりや終わりを持たない。完結した瞬間、真っ白な地に図が浮かび上がるように道筋が決まり、それによって事後的に始まりと終わりも決まるのだ。
    きょうつしているのは、可変性と不確定性。どんな風にも変われるかわり、なにも確かに定まっていない。あの、見渡す限り広がる砂漠が、世界でいちばん高い山や、世界でいちばん深い海や、超過密な未来都市や、無限の宇宙空間に一瞬で変わり、さらに変わり続ける光景が、ぼくの脳内に広がった。

    P368
    「マラルメは、人間の必要は二つの道にわかれると言っている。一方が美学。もう一方が政治経済。~」

    入江一真が朗読した本
    『坊ちゃん』冒頭 夏目漱石 
    辞書 大僧(おおぞう)

    作家になりたいので、おすすめの本
    芥川龍之介の短編集~柳沢
    オーヘンリー短編集~本条
    文学賞について書いてある本

    『バブリング創世記』筒井康隆~柳沢

    島崎藤村
    マンスフィールド
    井上ひさし
    志賀直哉
    サン=テグジュペリ
    フレドリック・ブラウン

    『道化の華』太宰治 心中未遂から

    『蒲団』田山花袋~パクる

    『ベトナム観光公社』筒井~再現クイズのきっかけ

    『チョコレート戦争』夏休みの宿題
    『桃太郎』

    『老人と海』二人ともしびれる

    『外套』ゴーゴリー

    『ライ麦畑でつかまえて』 インチキじゃない小説を書こうという目標に

    『機械』横光利一
    『歯車』芥川

    『虚人たち』筒井

    『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン

    『ロクタル管の話』柴田翔 一文が長い

    国木田独歩

    『アンナ・カレーニナ』トルストイ

    『なんとなくクリスタル』

    『ポロポロ』田中小実昌

    『蔵の中』宇野浩二

    『ハックルベリー・フィンの冒険』ブラックユーモアの宝庫

    『さらば愛しき女よ』フィリップ・マーロウシリーズチャンドラー
    『マルタの鷹』ダシール・ハメット

    『河童』芥川
    『トカトントン』
    『アルジャーノンに花束を』
    『鍵』谷崎

    『トーマの心臓』

    『それから』
    『アメリカの鱒釣り』ブローディガン
    『城の崎にて』

    『カラマーゾフの兄弟』

    『スローターハウス5』ヴォネガットジュニア 本条さんによる「奇跡的な傑作」

    『罪と罰』

    『宮本武蔵』

    大学で読んだもの
    フロイト
    ユング
    河合隼雄
    カント
    ニーチェ
    西田幾多郎
    大島弓子
    竹宮恵子
    山岸涼子
    手塚治虫
    つげ義春
    山上たつひこ
    フェリーニ
    ゴダール 
    ウディアレン
    黒沢明
    成瀬巳喜男
    小津安二郎

    『冷血』カポーティ
    『偉大なるギャツビー』
    『細雪』
    アーヴィング

  • 小説で食べていくには、まず本をかなり読まないとダメなようだ。この小説家の成り立ちはかなり変わった部類かな。

  • ディスレクシアのヤクザといじめられっ子の中学生が出会い、ベストセラー作家を目指す。
    突拍子も無い目標に向かって、見たことない凸凹コンビが突き進む。
    キャラ立ち抜群の人物たち。
    一筋縄ではいかないストーリー。
    グイグイ読ませる筆致で、気づけば感動のラスト。
    面白い。

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著者プロフィール

久保寺健彦(くぼでら たけひこ)
1969年東京都生まれ。早稲田大学大学院日本文学研究科修士課程中退。2007年「すべての若き野郎ども」で第1回ドラマ原作大賞選考委員特別賞を受賞。『みなさん、さようなら』で第1回パピルス新人賞を受賞。『ブラック・ジャック・キッド』で第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。その他の作品に、『中学んとき』『GF(ガールズファイト)』『ハロワ!』など。

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