恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より―

  • 集英社 (2011年9月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784087806168

作品紹介・あらすじ

上遠野浩平vs“ジョジョ"!!
JUMP j BOOKSが『JOJO』25周年を祝しておくる小説企画、第1弾がいよいよ登場!! 舞台は第5部、描くのは鬼才・上遠野浩平!! そして鍵を握るのは『裏切者』パンナコッタ・フーゴだッ!!

みんなの感想まとめ

物語は、ジョジョの奇妙な冒険の第5部の後を舞台に、フーゴの苦悩や葛藤を描いています。著者の独自の解釈によって、ファンが期待する展開が巧みに表現されており、特にフーゴのその後に関する描写は、多くの読者に...

感想・レビュー・書評

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  • ストーリーの流れはとても『ジョジョの奇妙な冒険』らしく、本筋とは別のところで
    出てくる設定も、著者がジョジョという作品を、5部以外の全編を通して大事に考えて
    おられるのが伝わってくる内容でした。
    新しく出てきたキャラクターのスタンド能力もいかにもジョジョ!

    ただ、ジョルノに関しては理解の落としどころを見つけられません。
    ラストであの口調と態度になるのは将来的にそりゃアリとして、でもこの本の中で
    起こっている物語は5部本編から半年そこら。
    そこでああ成ったのは彼にどんな心境の移ろいがあったのか?
    それとも実は5部本編から本質はああだったのか?
    読んでいる自分にとっては、点から点に飛んだ感じ。
    まだ自分の中でジョルノが線になりません。

    詰まるところ、この本に出てくるジョルノはDIOの息子なのです。
    5部うんぬんは関係なく、DIOの息子なのです。
    この本に出てくるジョルノはあくまでも、「DIOの息子」がギャングのボスになったとしたら、というイメージの塊であり、それは5部本編のジョルノとは一線を画しているように思えます。
    口調も態度も5部のそれとは大きく違い、それが好ましく感じられる人もいれば、
    到底受け入れがたい人もいることでしょう。
    個人的にですが、私は後者です。

    これが公式として出されたからこれが正解、不正解、ではありません。
    長年ジョジョを読んできた、いわゆる『ジョジョラー』にとって大事なのは
    『公式の続編なのかどうか』じゃあないのです。
    この一つの物語を書き上げた人の内側では、登場キャラクターにどんな時間の
    流れや経験があったと考えているのか?
    その人物にどんな心境が起こり、それがどんなふうに言動に変化を与えたのか?
    追求したいのはそんな部分なのです。

    この物語はジョジョとしては素晴らしいです。
    いかにもジョジョな人物、スタンド、展開です。
    ただ、キャラクターの内面性についていうなら、5部からはスッとストレートに
    繋がらない部分もある物語だと覚悟して読むことが求められると思います。

  • 原作ファンならきっとみんな気にかけたことがあると思う、第5部/黄金の風でチームを裏切ったパンナコッタ・フーゴのその後。私も原作で彼が離脱したときは、「いや、ジョジョなんだからきっとその後またチームにカムバックしてくれるはず!」「もしかして、実はボスのスパイで、今後目の前に立ちはだかるかも?」「いずれにしても、いつかまた出てくるよね☆」と想像力豊かに好き勝手思っていたけど、何と驚くべきことに、最後まで再登場せずじまい。
    なので、そのフーゴのスピンオフとあって、同じくジョジョファンの彼氏と一緒に発売早々に本屋さんで入手した作品。本体はパープル一色!表紙はシルバー!と体裁もステキ。

    やっぱりあの絵がない分、このキャラはこんな感じなんだっけ?と違和感を覚える瞬間はあるものの、基本的には全く問題なく楽しめました!
    今回フーゴの敵となるのは、彼が離脱した組織の麻薬チーム!しかも、その中心人物はフーゴに因縁のある人間だった、というお話。戦闘の挿絵等はないけれど、オリジナルキャラとスタンドの挿絵があるから、それをベースに各々自由に妄想できます。
    ※個人的には、アンジェリカはもう少し幼いものかと思っていた。。。
    一個だけ気になったのは、この方、ダッシュ(―)多くないか?と。まぁでも、読書そのものに支障をきたすほどではないのでいいけど。

    あの活字嫌いの彼があっと言う間に読了したんだから、ジョジョの魅力ってすごい。けれど、本当にすごいのは、活字嫌いの原作ファンが抵抗なく読めるこの作品―ジョジョの世界の空気を文章だけで創り出し、5部のキャラたちとオリジナルキャラたちがちゃんと息づいている小説に仕上げた著者の面目躍如といったところでしょう。

    何かで読んだ荒木先生のインタビューで、本当はフーゴは裏切る予定だったけど、結局そうしなかったというお話がありました。フーゴの失踪(?)がこんな形でハッピーエンドを迎えてくれたのも、5部好きとしては嬉しい限りです。
    本当は★4かなと思ったけど、バカみたいな原作ファンなので結局★5にしちゃいました。

    他のVSシリーズも読まなきゃ!

    --
    JUMP j BOOKSがおくる、荒木飛呂彦画業30周年&ジョジョ25thアニバーサリィ企画“VS JOJO”シリーズがいよいよ始まる!!
    第1弾は上遠野浩平が挑む“VS GIO GIO”!!
    舞台は第5部完結後の半年後・イタリア、主役はパンナコッタ・フーゴ!!
    “裏切者”フーゴのその後どうなったのか。

  • 続きが読めてよかった。フーゴが救われてよかった。

  • 本編に関わる設定が垣間見えるのが良い。一方で戦闘シーンが酷い。
    フーゴがどう考えどう成長するのかがメインだから仕方ないのかなとは思いつつも、やっぱり酷い。相手のスタンドが強いだけに薄さが目立つ。そうなるなら敵数減らして内容を濃く欲しいところ。

    ジョルノがあまり関わってこないのは良い。かつての仲間から組織のトップになったんだなと思わされる。

    暗殺チーム、本編だとそれなりに優秀そうな雰囲気だったのに、これからはマヌケ集団に見えちゃう。特にリゾット。「オレハオマエニチカヅカナイ」ドヤァ

  • 本作は第5部が完結したのち、半年後の設定です。
    タイトルの『パープルヘイズ』が表す通り、『彼』が主人公の物語です。
    苦悩、葛藤、後悔…色々な感情に絡め取られた様な姿は想像通りだったが、期待通りだとも言える。
    こうであって欲しかった。良かった。

  • フーゴが主人公という事で、華々しい活躍があるのかな、と、読む前に期待したのですが、いい意味で裏切られました。

    この作品は、フーゴの心の戦いの物語だった。
    彼がかつての仲間の事を思い出し、あの時どんな気持ちだったのだろう、と考える姿には、胸に来るものがありました。
    死んだ人というのは、残された人間にとてつもない楔を打っていくものです。

    もうあの時どんな事を思っていたのかなんて、絶対に聞く事は出来ない。
    でも、もし生きていたとしても、フーゴがナランチャやブチャラティたちに、あの時どんな気持ちだったかと、聞く事は絶対にありません。

    彼が心の中で人の気持ちをすくい、向き合っていく姿に非常に心打たれました。
    相手を理解したい、知りたいという気持ちは、世界に対して無関心なんかじゃ絶対にない。

    ジョルノが半歩を埋めたように、そうしてフーゴも半歩、相手を理解しようと進み寄る。
    バトル的には敵が多すぎて、さらりとしたもののように感じましたが、フーゴの心情が描かれたこの作品で、このキャラクターが昔よりも理解でき、好きになれました。


    あと、気になったのがジョルノの役割。
    五部の主人公でありながら、この作品ではあまり姿を見せません。
    ですが、最後のシーンは台詞と共に強烈な印象を残す。
    開店前のレストランや閉館された図書館。どちらもはっきりと姿を見せない場所。
    それが、かつての三部の闇の中に潜むDIOのようなミステリアスさがあり、繋がりを感じました。

  • 「ジョジョ」でありながら「ブギーポップ」、「ブギーポップ」でありながら「ジョジョ」。
    上遠野浩平の「ブギーポップ」が、ジョジョの影響を受けているというのは、よく聞いてはいたものの、この本を読むまでピンと来ていなかった。「能力」を持つ者達の背景と狂気と激突、謎めいた(何を考えているか分からない)登場人物の言い回し。あまりにもハマり過ぎたこのタッグ、ノベライズとしては最高の出来ではないだろうか。

  • フーゴにとってどれだけナランチャが大きな存在だったかを考えた。
    ブチャラティ以上に。

    改めて自分のブチャラティLOVEを確認した。
    彼は愛すべき天然系カリスマですね。。。

  • 自分の娘さえも、保身のために殺そうとしたボス。己の信じる正義によって、組織へ反旗を翻したブチャラティについて行けず、ひとり離脱したフーゴ。あれから半年…IQ152、13歳で大学入学を認められたほどのエリートは、堕ちに堕ち、ギャングからピアノ弾きになっていた。

    ボスを倒しトップとなり、組織を再興したジョルノの指令を受け、フーゴの前に現れたミスタ。
    「裏切り者」フーゴは釈明のため、麻薬チームの壊滅を命ぜらるが…

    本人すら傷つける殺人ウイルスを撒き散らすパープルヘイズを持て余すフーゴ、ジョルノを盲信するシーラE、胡散臭いムーロロは任務遂行をはたせるのか。

    敵チームにフーゴの級友がいたり、サーレーやズッケェロが登場したり、エピソード的にイルーゾォやトリッシュも出てくるし、ちょうど5部を読み終えたばかりなのですごく楽しい!ジョルノはさらに神々しいし。そもそもフーゴ好みなんです。イチゴのピアスなんてきゃわわ。
    ブチャラティやアバッキオ、ナランチャとの思い出がせつなく、さびしい。

    ちょっぴりだけどトニオ・トラサルディーさんまで関係してくる辺り、上遠野氏のジョジョ愛を感じました。

  • 読んでいて確かに聞こえてきたんです。上遠野さんの『僕は敬意を表するッ!』という叫び声。

  • 面白い。一言につきる。

    是非、漫画化して欲しい。
    視覚的に見てみたい、登場した敵スタンドも含めて。

    第5部と話と完全リンクしている。
    ディアブロ倒した後のストーリ。

  • かどちんの魅力と、ジョジョの魅力がマッチした傑作。しかし一つ言わせてもらうと、また身体強化系の能力ですか、と

  • 一歩を踏み出せないフーゴの、行き場のない気持ちの話。何が正しくて何が間違ってるのかわからない。考える軸も心の拠り所もない。だいたい世の中が選択の連続であることに対して理不尽な怒りを感じる。フーゴはわたしだ。フーゴの怒りはわたしの怒りだ。ブチャラティチームのドライな会話に浪漫を感じた。ギャング映画が観たくなる。

  • フーゴはジョジョの中でとても好きなキャラのひとりです。なので原作のあのシーンの後、彼はどうなったのかがずっと気になっていました。
    フーゴのその後が書かれてると聞いたので、買って読んでみたのですが、この小説はまさにファンなら皆「こうあって欲しい」と思う展開が、形になったものだと思います。
    特にラストは泣きそうになりました。

    簡潔な文でも難しい表現を使った文でも、場景をはっきりと書き表してる上遠野さんの文章表現も良くて、ひとつひとつの場面の想像がしやすかったのでさくさく読めました。
    荒木作品独特の台詞回しらしい台詞も、ところどころ使われているのも面白いなと思います。
    戦闘シーンはみんな、原作と比べると淡々と終えてしまってる感じがしましたが…。

    またこの小説では、原作と繋がりがある部分が多々あります。(というより、下遠野先生なりのジョジョの解釈…?みたいな感じ?)
    舞台でもある五部はもちろんですが、他の部とも何らかの繋がりがいくつもあるので、本作を読む前に、原作一部~五部まで一度読んでおくと一層楽しんで読めると思います。

  • こう言ってはなんだけれど、基本的に身内に対して信用するとか疑うとかいう意識が埒外だったシリーズで唯一"離反"を描写した5部を、ほとんど外から要素を持ち込まずに補完してみせたこの1冊は、なるほどとても価値があるものだと思う。

  • 第5部の途中でリタイアしてしまってそのまんま出番なしのフーゴのスピンオフ作品。

    いやぁーおもしろかったです!!

    こういった原作の後日談ストーリーってどうしても蛇足になってしまったり、原作のイメージを崩してしまう作品が多いと思うけどこの『恥知らずのパープルヘイズ』は全然そんなことなくむしろこの作品を読み終わった後もう一度原作をまとめ読みしたくなるような気持ちになりました。

    5部登場のキャラの背景がわかりやすく補完されてるのはもちろん、小説オリジナルキャラと4部のあの人が血縁関係だったり、ジョジョファンなら名前見ただけでニヤニヤするような小ネタもたくさんで満足できる内容なのは間違いないです。
    著者の上遠野浩平さんのジョジョ愛を感じました。

    本の装丁もシルバーとパープルで正にパープルヘイズって感じで好きです。ページの端がパープルなのも気合い入ってる!!

    ジョジョ5部まで読んだ方には絶対お勧めな一冊です♪
    エリエリエリエリエリエリエリーッ

  • ジョジョのノベライズ、作者は「ブギーポップは笑わない」でラノベの一時代を築いた上遠野こうへい。
    このノベライズシリーズは、西尾維新と舞城王太郎も出してますが、これが一番ジョジョらしい作品です。
    ジョジョファンなら、これが一番ダントツにおススメ。
    他の二冊は、同人誌でやってろ的な内容でした。

    原作レイプすることなく、丁寧に、ジョジョ第五部の後日譚を書ききってます。連載当初、影の薄かったパンナコッタフーゴを見事に復活させた金字塔的な、ジョジョ小説でしょう。
    内容も、ちょうどよい長さで、お手本のようなバトルマンガ小説になってます。

  • 上遠野浩平さん、荒木飛呂彦先生作。1期の最後にブチャラティに着いていかなかったフーゴの物語。ジョルノがボスになってからの話で、麻薬チームの解体の為全員を殺すという任務にフーゴが任命されるところから始まる。船に乗らなかったフーゴはその後何も未来が見えなくなって、組織にも貢献せず虚無な日々を過ごしていたところにミスタから声がかかる。そこで麻薬チームの殺害の任務をうけて、なんで僕が、という気持ちのまま新たにシーラEとムーロロとともに麻薬チームを追うこととなる。汚名返上的な。その麻薬チームを追う中でずっとフーゴの胸に引っかかっていたあの時踏み出せなかった自分に対しての気持ち、かつての仲間との出会い、思い出、後悔を思い出しながら進んでいく。敵はヴォルペっていう麻薬を生み出すやばい奴なんだけど、フーゴのかつての同級生で、イタリア料理のトニオの弟。その戦いを通してパープルヘイズがディストネーションとして進化しウイルスが更に成長する。そしてナランチャがいってた、トリッシュは俺に似ているてどういうことだったのかを気付くことになる。最後ジョルノと対峙し、ああ、この人に忠誠を誓いたい、ブチャラティがここにいないことが今更ながらに悲しく虚しいものだと涙を流し、その想いをつぎ、ジョルノに忠誠を誓う。いや、フーゴの解像度上がるわ。けっこう自身で考え込むところがあって、常識が嫌いだけど無意識にその常識にがんじがらめになっていて、自分がずっと裏切ってしまった、自分に期待できない心情がすごい伝わった。そして仲間を慕っていた、想っていたことも。どうすればよかったのかをずっと考えてブチャラティたちのことを回顧するんだけど、一番感情移入しやすい人物だった。本当に大好きだったんだね。最後、ジョルノがフーゴの心に刺さった棘を抜いてくれて、また踏み出すことを助けてくれてよかった。あとブチャラティがジョルノに会うまで、人に着いていきたい、頼りにしたいと思ったことがなかった、一番気付くのが遅い幼い人物だったという一文があって、確かになあてなった。ブチャラティにはジョルノという存在が必要だった。彼も導かれる存在だったんだなあって、儚い存在だと感じた。死んでほしくなかったよ、、、。

  • 観たかったものがすべてここにあった。素晴らしいノベライズでした

  • 【感想】〈恥知らずのすすめ〉
     「恥知らず」という言葉に接するとき、どこかポケットの中に突っ込んで、気づけば弄っているような風合いを感じさせる。なんでだろう?
     「恥」という言の意味を引くとこうなる。
     1・世の人に対し面目・名誉を失うこと。
     2・恥ずべき事柄を恥ずかしいと思う人間らし   
        い心。「―を知れ」(Oxford Languages)
     こんな抽象的な説明しかできないほど「恥」もまた抽象概念だ。ここで足りない説明を補うとすれば
    「帰属集団ごとに異なる共同幻想の一種に対する反応」だろうと思う。動物は恥ずかしがったりしないだろう。とすると、動物は皆「恥知らず」で、人間は「恥じを知ることができる」ことになる。固定された観念から外れたときに起動しやすい。
     自分が恥ずかしいと感じることに、自分を理解する契機が潜んでいる。

     主人公フーゴは裏切り者だ。が、他方を裏切らないことが、他方を裏切ることになり、また信じたものもまた変容する。ブチャラティたち(仲間)を裏切って、組織に操を立てた彼は、その後、裏切った仲間たちによって再編された組織から裏切り者として扱われることになる。
     人間社会における立場というものがどれほど不安定なものなのだろう。
     見捨てた方と見捨てられた方、裏切った方と裏切られた方。これら(これ以外も)の対立概念が一人の個人のなかで絶えず行き交う。個人が立場を選んでるように見えて、実は立場の方が個人を定義していると考える方が適切だろう。

     組織や集団に対して、根深い所にある恐怖と敵愾心は、自分が勝手に定義され、その言動までもが役割として求められる要請されるからだ。そこで生きる個人に芽生える独特な感情が「恥じ」だ。

     フーゴが最初にブチャラティたちを裏切ったとき、彼の動機を考えると、生存確率の高い方を選び取る当然の選択だと感じた。アバッキオ、ナランチャ、ブチャラティ(既に死んではいたが)は、現に死亡している。ジョルノという得体の知れない暴走エンジンへ熱狂するブチャラティとそんな彼に生死を依存する他のメンバーという構図だった。個人の目的が他の個人の目的によって決定される気持ち悪さがそこにあって、ひたすら付き従うメンバーのなかで、意思を発揮したフーゴはたしかに異彩を放っていたと感じる。

     組織の体制が変わって一気に立場の逆転した〈麻薬チーム〉のメンバーとその動向が胸に残った。麻薬という分かりやすい絶対悪に縋っている彼らチームの内情の描き方。そこに、私利私欲の在り方とその捉え方の矛盾があって面白い。メンバーの誰もが、その悪によって命や存在が担保されている状態だったのだから尚更だ。

     倒されるものが悪で、倒すものが善という構図に縋りたくなる弱い頭で考えてみる。善悪は生を渇望する強さによって左右されるのかもしれない。麻薬チームを追うフーゴはこの善悪の狭間にいるような微妙な立ち位置で描かれていく。彼自身が組織にとっては裏切り者で、その裏切り者である彼が追っているのが組織内部の悪という。

     自分なりの信念とルールを持ち、その中で行動する人間の強さと、自分では持ちえない信念と守るべきルールを持たない人間の弱さ。それらが、ジョジョの奇妙な冒険に通底する魅力的な概念だろうと感じた。

     フーゴは「裏切ることのできた」人間のひとりだ。この世の中には、自分では裏切ることも裏切られることもできない人間で五万と溢れている。多くの人が、気づくと自分の意思ではないのに、裏切りものと罵られ、頭を垂れ、誰それが自分を裏切ったと漏らす。

     違う。裏切られる者は、裏切ることのできない者だけだ。裏切る者は、裏切られることはない。裏切ることのできる者は、少なくとも自分に裏切られることはないだろう。

     自分も「恥知らずな」裏切り物で居続けたいと、そう願っている。

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著者プロフィール

第4回電撃ゲーム小説大賞〈大賞〉受賞。『ブギーポップは笑わない』ほかシリーズ著作多数。

「2019年 『ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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