政と源

著者 :
  • 集英社
3.63
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本棚登録 : 2807
レビュー : 489
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087806854

作品紹介・あらすじ

簪職人の源二郎と元銀行員の政国は、ふたり合わせて146歳の幼なじみ。ふたりを中心にまき起こる、人情味豊かで心温まる事件の数々。下町を舞台に繰り広げられる人情物語。三浦しをん、新境地!

感想・レビュー・書評

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  • 幼馴染の老人二人を描く、しをん流男の友情と人生もの?
    面白かったです。

    政こと有田国政は、73歳。
    元銀行員だが退職した今はやることもなく、妻は娘のところに行ったきり戻らずに3年。
    源こと堀源二郎とは幼馴染で、生まれ育った墨田区に住んでいるので、何かと行き来しながら暮らしている。
    源はつまみ簪(かんざし)職人で、早くに妻をなくしてやはり独り身だが仕事は現役、若い弟子もいて、にぎやかな生活。

    堅物な政は、見た目は端正で白髪がふさふさしているが、気ままな性格でも明るい源に呆れたり、うらやんだり。
    政の視点から描かれるため、内心のひがみっぽさが何とも情けない。
    妻の清子がなぜ出て行ったのか理解できず、自分はちゃんと働いて一家を支えてきたと自負している。とはいえ、仕事仕事で家にはあまりおらず、妻に何もかもまかせっきりだったということ。

    源の弟子徹平は元ヤンで、昔の仲間に絡まれていると知り、政と源は解決に乗り出す。
    そういう事件が続く話というわけではないのですが、そういったことがありながら、政が人生を省み、少し心がほぐれていくという展開。
    ついに思い立って娘夫婦の元にいる妻を訪ねると、気まずい会話になってしまうのでしたが‥
    妻の立場から言われてみると、そりゃ~‥

    徹平の彼女で美容師のマミちゃんも感じがよく、親に反対されている二人の結婚の世話をしようと、だんだん熱くなる政と源。
    政は徹平に自信を持たせなければと、オリジナルの簪を作ってみろと提案する。
    内心はグダグダ、とっつきは良くないようでも、政にも良い所があるじゃありませんか。
    妻にはがきを書き続けるとは、彼なりの努力が微笑ましい。

    政のような古いタイプの昭和の男は、若い女性には理解しにくい存在ですよね。
    ある意味、不器用だけどかわいげのある人間として描いてあるのは、しをんさんの優しさかな。
    挿絵が二人とも妙にハンサムなので、う~ん、お似合いの名コンビってことなのか?!

  •  ああーさすが、しをんさん!!面白かったですー。笑ってはいけない場面の究極場所、病院でこの作品を読んでしまったものだから、笑いをこらえるのに、本当に本当に苦労しました。ある意味、そっちの方が地獄でした・・・

     政こと、国政のツッコミの見事なこと。しをんさんのエッセイそのものの、スタイリッシュなツッコミっぷり。見事見事。
     馬鹿キャラの徹平が自分の父親のことを紹介するに当たって、「自分の父親はイチブジョージョー企業に勤めてるんっす」と言った際に、徹平がいうと、どこかから水漏れしている企業に勤めているような感じがする・・・と政が心でつぶやくところ。もう、笑えて笑えて・・・今思い出しても笑えてきます。病院で読むんじゃなかった・・・

     老いても、国政と源二郎のようでありたい、と切実に思いました。老いて、そして、自分が終わっても、それでも続いていくものがあるんだなあ、と、その尊さを、政のかっこいいツッコミと、源のハチャメチャに教えられました。

     円陣闇丸さんのイラストも綺麗だし、おススメの作品です。

    • puccinさん
      はじめまして。
      とてもあたたかい感想に読みたい本にまた出会えそうです。フォローいただきました♪よろしくお願いします。
      はじめまして。
      とてもあたたかい感想に読みたい本にまた出会えそうです。フォローいただきました♪よろしくお願いします。
      2013/10/24
  • 元銀行マンの有田国政とつまみ職人の堀源二郎は共に73歳で、墨田区に住む幼なじみ。日常の出来事が政の目線で語られている。

    政の妻は数年前に長女の家に行ったきり帰って来ず、一人暮らしを強いられている。源はずいぶん前に妻を失くしたが、未だ現役の職人で元ヤンの弟子・徹平もいて、なかなかにぎやかに暮らしている。

    源はがさつで言葉も荒くいい加減なところもあるが、弟子や友人に対する思いやりにあふれ、自分らしく生きているように見えて、政にはうらやましく若干の嫉妬も感じてしまう。

    政は親の期待に応えるべく、大学を出て銀行に就職し、見合い結婚をして定年まで勤めた。家族のためにと働いてきたのに、妻には理由もわからないまま愛想を尽かされ、2人の娘たちも妻の方に加勢しており、いいところなしだ。
    会話のたび、周りの言葉に対して心の中でいちいち毒づく。ひがみっぽくて、欲しいものを欲しいと素直になれず、いつまでもいじいじしてしまう。


    第2話では、本当は孫の七五三の祝いに源のつまみ簪を送ってやりたいと思いながらも、なんだか源を頼りにするのが癪であたりさわりのない商品券を贈ったり、

    第5話では、源の一言からいよいよ重い腰をあげ妻を迎えに行くが、妻や長女の態度が自分に対してあまりに思いやりがなさすぎると憤慨した上に爆発し、却って総攻撃を受けて撃沈しヤケ酒を飲んだり。

    やるせないなあ・・・。

    政の独白には、こう言われたらこう思ってしまうなあと苦笑しながら読むんだけれど、第5話の家族のやり取りは笑えなくなってくる。相手の心がまっすぐに離れていくのにも気づかずに、相手の悪いところを責めてしまう。心の中でつい呟く言葉も、活字にするとかなりきつい。耳にする人はうんざりすることでしょうね。

    相手にしてもらうことばかりを考えているうちは気づかなかないことも多い。見返りを求めずはがきに日常や心境をつづり送る行為を通して、「こうあるべき」と縛られ不自由になっていた気持ちが穏やかになっていく様子にほっとする。

    心が弱っているとき、ひとりぼっちだと思い込んでしまうと辛く、嫉妬や僻みといった気持ちに振り回されて、ますます自分らしさを保つのが辛くなっていくもの。
    元気なとき、うまくいっているときには気にならないことも、ささくれた心にいちいち入り込んで、傷にしみるような痛みを伴う。

    それでも、「がまくんとかえるくん」のように政には源がいて、やっぱり幸せなのがいい。
    しおんさんは人を見捨てることは決してせずに、気づくことで人が変わっていく姿をちゃんと描いてくれる。

    気づかないと決め込んで諦めたくなるようなことがあっても、
    うまくいかない自分に嫌気がさしても、
    なんだかうまくいっている人を妬んでしまって却って苦しさが増すようなことがあっても

    「大丈夫。みんな同じ。支えられ支えているんだよ」

    と言ってくれているような気がして、少しばかり指先が温まったのを感じて、本を閉じた。

  • 東京下町。元銀行員の堅物で、家庭を顧みず仕事一辺倒に生きてきた国政と、幼い頃からつまみ簪職人として生きるも、かなり破天荒な源二郎。合わせて146歳の幼なじみの二人のお話。
    国政のイジイジした性格にはイライラさせられたが、昭和のお父さんって案外こういうのかもなぁと途中から少し可哀想に思えた。方や、べらんめえ的な源二郎の方も近くにいたら頼りになりそうだが、身内としてはどうなんだろう?両極端な生き方なのに、お互いに少し足りない物を補いつつ生きてきた。もう腐れ縁で離れられそうもない。そんな二人の関係が羨ましくも思う。
    戦後再開した二人のシーンが心に残った。

  • 東京都墨田区Y町。
    この町で生まれ育って73年、幼馴染みの2人はいまでもにお互いを「政」「源」と呼びあい、憎まれ口を叩き合っています。
    堅物で生真面目、若いころは銀行員として勤めあげたものの、妻にも娘にも愛想をつかされて今では独り暮らしの身となっている国政。
    幼い頃から型にはまらずやんちゃで豪快、しかし一流つまみ簪職人として繊細な作品を創りだす一面ももつ源二郎。
    性格も生き方も正反対、だけれども切っても切れない縁で結ばれた2人なのです。

    物語は国政の視点から進んでいくのですが、彼の堅物さにハラハラしてしまいます。
    娘夫婦のところに家出してしまった妻に、素直に帰って来いと言えなかったり、孫娘にトンチンカンなお土産を用意してしまったり。
    「ああもう、そうじゃないよっ」とやきもきしてしまいます。
    相手に伝えたい気持ちをすんなり伝えられない、喜んでもらいたいと思ってしていることが空回り…。
    昭和の男性の頑固さや不器用さが、愛らしくもあり、切なくもあり。

    主人公が素敵なじいさん2人組なので、随所に彼らが身体の衰えを感じている場面が出てくるのですが、これが何とも自然でびっくりします。
    じいさんの目から若者がどんな風に見えているか、という描写も。
    しをんちゃん、じいさん体験でもしたんじゃ…と思ってしまいましたw

  • 東京都墨田区Y町。つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが―。弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居しひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!
    「BOOKデータベース」より

    紹介文のようにものすごいハチャメチャな出来事があったわけではないように思う.それよりも政さんの感情の描写がああ、年とったらこうなるのかなぁ、世のおぢさま(おぢいさま?)方はこんなことを思っているのかなぁという感想をもった.
    頑なだった政さんが丸くなって・・・最後でほろりときた.人と人のつながりっていろいろあるなぁと思ったし、分かり合う努力はするべきなんだなぁと思った.心が温かくなる話だった.

  • ラストが爽やか。
    それまでの国政さんのうじうじが、すーっと薄れていった。
    良かった。

    国政さんは人に拒絶されるのが怖くてなかなか一歩が踏み出せない。
    別居中の奥さんにも、結婚して一児の母になった娘にも、可愛い孫娘にも、どんな風に話せばいいか分からない。
    会いに行っていいのかと足踏みしてしまう。
    国政さんのそんな逡巡が嫌になるくらい分かってしまう。
    もう本当に嫌だ。
    こんなうじうじが何のプラスにもなっていないことなんて知ってるよ。知ってるけどどうしようも出来ないんだよ。
    読みながら同族嫌悪でイライラ…。

    国政さんの幼馴染の源二郎さんは国政さんとは対照的。
    若い弟子に慕われ、町内でも顔が広い。
    でもこの軽やかさは天性のものですよ…と私などは(きっと国政さんも同じでしょう)思ってしまうのです。
    そんな自分にまたイライラ…。

    この小説はそんな国政さんと源二郎さんの友情の日々を描いている。
    大事件が起こるわけではない。(途中ちょっとバトルがありますが)
    地味に喧嘩したり、仲直りしたり、(主に国政さんが)嫉妬したり、ご飯を食べたり、昔のことを思い出したり、なんてことない日常。
    でもそんななんてことない時間を積み重ねることでしが、人は人と繋がれない。
    相手への気遣いを伝えること。
    相手から差し出された手を握り返すこと。
    その一つ一つを疎かにしちゃいけないんですね。

    照れくさくても、嫌がられないかなって不安になっても、最初はおどおどとでも近付いて行く。
    どうしても無理なら潔く諦める。
    でも、自分は嫌いにはならない。
    そんな強い人間になりたいなと思った。

  • 堅物で融通も気も利かない政と、豪放磊落がそのまま歩いているような源。
    真面目に丁寧に生きているようでいて、不器用すぎる政。
    ガサツなようでいて、しっかりと踏ん張って生きている源。
    対照的なじいさん二人の周りで起きる色んな出来事。
    なんだかんだ言っても、源に救われっぱなしの政。
    じいさん同士の友情にこんなに清々しい気持ちになるとは。
    年季の入った友情に憧れる。
    気持ちのいい小説だ。
    自分はかなりの政タイプ。老後、そばに源はいてくれるだろうか。

  • 下町のハートウォーミングストーリー。
    主人公は70歳代の幼馴染2人なんですよ。
    片方は40代で妻を亡くしたつまみ簪職人、もう片方は70歳になった頃に妻に出て行かれた元銀行マン。
    死がわりと身近にあって、体に痛みも出てくるお年頃。

    老後の生き方についてふいに考えさせられる物語でもありましたね。
    今の団塊世代の男性もきっと、家庭を顧みずに我武者羅に働いてきた人が多いんじゃないでしょうかね。
    終着点が熟年離婚だとすれば、なんだか寂しい。

    ところで主人公のこのお二人、案外子どもか!ってくらいに拗ねたり意地を張ったりする場面もあるんですが、こんな風に長く付き合いのある関係を持てるって、本当に素晴らしいことですよね。
    それも、こんなに違う二人が。
    違うといえば、作中で登場する徹平&マミちゃんもまた素晴らしい。ちょいちょい登場する二人の幸せな姿と、困難を乗り越えようとする漢気溢れる姿にぐっときました。

    この本は素晴らしいところがいくつもあるんですが、その1つがまず装丁。和風で美しい装丁な上、中には格好良いイラストまで描かれています。
    それからところどころで登場する国政の心の声やツッコミが面白くて。
    「あそこを船で通ってるとき、俺の頭にカモメがとまったんすよ」
    「本当かい」
    (略 ※徹平のお馬鹿発言)
    "徹平くんは、カモメに脳みそを持ち去られたのかもしれないな、と国政はちらと思ったが、むろん黙っておいた。"とか、いちいち面白い。

    三浦しをんさんの紡ぐ言葉は本当に丁寧で心に届くから、物語ももちろんいいのだけど、読んでいてとても心地よかったです。
    ああ、いい物語を読んだなあという気持ちでいっぱい。

    大事な人が亡くなった時の描写で、
    「長く親しんだ景色をまたひとつ失ったさびしさは、これから少しずつ胸の底に降り積もることだろう。」とか、どうしてこんな的確な言葉が選べるんだろう。
    とにもかくにも、いろんな方面から最高の1冊でした。

    • yocoさん
      杜のうさこさん、初めまして。
      嬉しいコメントありがとうございます^^

      この本、ほんとよかったですよ~♪
      三浦しをんさん好きだなぁと...
      杜のうさこさん、初めまして。
      嬉しいコメントありがとうございます^^

      この本、ほんとよかったですよ~♪
      三浦しをんさん好きだなぁと改めて感じ入っていたところです。いいですよね、しをんさん。
      >個人的に、幼なじみとか、おじいちゃん、おばあちゃんものが好きというのもあるんですが、
      くすっと笑ったり、おいおい!って突っ込みをいれたくなったり、
      かと思えば、ほろりとさせられたり…。
      すごくわかります・・・!
      登場人物のキャラもよくて、でもちょっと哀愁があったりして。
      つまみ簪、私も読み終えた後に検索してみたんですが、ものすごく美しくて、感動してしまいました…頭に思い描いていたものと全然違って、普段目にすることないものでしたが、徹平が作ったようにピアスもあるみたいで、思わず欲しくなりました。

      しをんさんは、「船を編む」でも感じましたが、ほんとに言葉を大事にされてますよね。言葉選びも表現も胸にすとんと落ちるものが多くて。

      こちらこそいつも杜のうさこさんのレビュー、楽しみに読ませていただいてます^^
      どうぞこれからもよろしくお願いします(_ _*)
      2016/04/28
    • aida0723さん
      「政と源」ときっかけにyocoさんのレビューを読みました。作品のいいところを引き出していて、ニュートラルな視点のコメントが気持ちいいです!
      「政と源」ときっかけにyocoさんのレビューを読みました。作品のいいところを引き出していて、ニュートラルな視点のコメントが気持ちいいです!
      2016/06/04
    • yocoさん
      初めまして。
      コメントありがとうございます^^
      そんな風に言ってもらえると、すごく嬉しいです。
      読み終わった後の感想を素直に残してるも...
      初めまして。
      コメントありがとうございます^^
      そんな風に言ってもらえると、すごく嬉しいです。
      読み終わった後の感想を素直に残してるものばかりですが、また読んでもらえたら幸いです。フォローもありがとうございました^^
      2016/06/05
  • 大好きだったまほろの便利屋コンビが
    まるで
    そのまま老いたかの様な
    国政と源二郎。

    説教じみた台詞や設定なんか一切無かったはずだし、
    最後の最後までこの二人に
    泣き笑いさせられていた、と言うのに
    何故か
    政は良寛さん、
    源は一休さんに重なり、
    2人の僧侶が生き死にについて、
    誰もが納得する
    そんな深い話をしていた様な…
    気がしたのだが。

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著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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