雪炎

  • 集英社 (2015年1月5日発売)
3.61
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Amazon.co.jp ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784087807462

作品紹介・あらすじ

3基の原発が立地し、原発マネーに依存する北海道・道南市。元公安警察官の和泉は、「廃炉」を訴えて立候補した旧友の市長選挙のスタッフになるが──。3・11前から原発を取材してきた著者の長編。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

原発を巡る市長選挙を舞台にしたこの物語は、主人公が反原発の候補者を支援する姿を描いています。著者の経験を背景に、3.11以降も変わらない社会への苛立ちが作品に色濃く反映されており、深いメッセージを感じ...

感想・レビュー・書評

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  • 原発を巡る市長選の話し

    殺しの部分が、あまりフィーチャーされない。

    良くも悪くも彼らしくない作品だと思った。

    面白いことは、面白い。

  •  馳星周こと坂東齢人とはほんの短い時期のことだが、よく遊び歩いた仲であった。ネット(と言ってもまだインターネット前の時代なのでパソコン通信というやつである)を介して知り合い、新宿を中心としたあちこちで飲み明かしたり、海水浴に出かけたりしたつきあいがあり、彼が執筆をするために山間の隠れ家的温泉を紹介してあげたり、そこにジンギスカンセットを持ち込んで仕事の邪魔をしたりしたことがある。

     そんな時期には毎日チャット(当時はパソコン通信ではリアルタイム会議と称していた)にふけり、創作のことやら彼が『本の雑誌』で手がけている書評のこと、出版界の裏話や、ゴールデン街のこと、音楽のこと等々、垂れ流し的なおしゃべりに講じて片手にお互い酒を傾け、酔っぱらうとそのうちどちらともなく、おやすみを言い交し眠りについた。毎夜のように。

     その頃、彼とアンドリュー・ヴァクスのアウトロー探偵バークの話をよくしたのだが、坂東によれば、バークはへなちょこなのでその部分は自分はよくわかるんだ、自分もへなちょこだからね、というようなことを言っていた。へなちょこだからいろいろなもので武装しなければいけないし、慎重に行動しなければならない。そう言われてみればハードボイルドのヒーローというのはやせ我慢をして、減らず口を叩いては、身の丈以上のことをしようと頑張るのだよな、とぼくは思った。無理をして、気位を大事にする騎士道精神である。

     そんな会話が十分に蘇るようだった。本書の主人公に出くわして。あの頃の等身大の坂東が蘇るかのような。そう。今までになく、ノワールと縁切りを果たして、ついに馳星周がディック・フランシスみたいな作品を書いてくれたのである。

     ぼくは嬉しい。ラストシーンには涙が出るほどじんと来たし、あの頃の(まだ馳星周ではなかった)坂東の、俺はへなちょこだからと、言いながら自虐的な笑みと照れとを同居させたナイーブな
    表情を思い出して心が熱くなった。坂東は、頭はつんつんに尖らせ、耳ピアスで、へなちょこを隠し通し、毎夜新宿界隈の闇をうろついていた。女に恋し、女に振られ、酒を飲み、たった独りで発熱していた。

     二十代のあの頃の若き才能はもうきっと中年男になったはずだ。彼の出生の地・日高、青春の地・苫小牧といったところを舞台にして、3・11後の原発問題を大テーマに、魅力的な人物をいっぱい配して、大きな物語を構築してみせた。

     本当に魅力的な人物がいっぱいだ。堅気よりもよほど人間臭く正直で信頼に足るやくざ、真っ直ぐに熱く生きる弁護士、日々に夫の死を感じとりながら自立を見据える老妻、娘の命を失いながら悲しみを隠し慈しみばかりを見せる老母などなど。そして最高のヒーローは、主人公の飼い馬であるガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザーのフルネーム)である。

     冬の北海道を舞台にして、原発問題と殺人事件、選挙運動などを題材に物語をひねりながら、あくまで痩せ我慢を貫き、男の矜持にすべてを賭ける捨て身の主人公は、へなちょこで意地汚い面も見せながら、一線を越えぬ判断をここという時に見せてくれる。馬に乗ってウインチェスターを構える西部の主人公みたいないいシーンを日本の小説で読めるなんてとても予想していなかった。

     乾坤一擲の快作、と言えよう。

  • 最高!

  • ★★☆☆☆

  • 改めて馳星周氏の本は言いと思う。いまいちカッコ悪いが、気骨がある格好良さ、ハードボイルド。
    北海道で農家をやっている元公安の主人公、反原発を掲げる元同級生の候補者を裏から援護する話、暗闇の中雪原で馬で掛ける主人公の像が頭に浮かぶ。
    反原発の私としても、主人公を応援したく思い、また反原発の作品だと思う。

  • なんかこれいらないだろう…とか思うところもあったけれど面白かった!
    最後その道選ぶのかという若干不満はあった(笑)

  • ◆きっかけ
    2016/8/18

  • 日本の原発をとりまく縮図を北海道の田舎に設定した話。だけど、ここまで露骨かなと思う。主人公はいろいろ傷を負って活躍したが現実は何も変わらなかった。

  • 馳星周は3.11後に良く原発絡みの本が多いな〜と思うが、ヤクザ&武骨漢&原発を絡めた内容は、北海道の泊原発にも縁があったので面白く読めた。同級生、元公安で昔牧場で残った馬(ガリウス.ユリウス.カサエル)と暮らす和泉、弁護士で反原発を掲げ市長選挙に立候補する小島、小さな建設関係の社長武田とタッグを組んで選挙戦を戦う、相手は、現市長で原発推進派の萩原、原発の利権を得ている佐久間建設社長(ヤクザ組)の佐久間、その舎弟の古沢。選挙戦と並行して昔恋心を通じ合った薫の殺人事件を追う和泉、その過程でヤクザの古沢との間で心髄で通じ合いながら敵対する。生活に苦しみながらも、お金に吊られず自分の信念で生きる和泉の生き方がカッコ良すぎ。

  • 一気に読了。同世代で同じ道産子の馳星周。新宿の闇を描いた頃の小説は手に取らなかったが、最近は気になる好きな作家のひとりだ。
    僕自身、 若い頃は使うことを忌み嫌っていたが、作中の北海道弁がいい味を醸し出し、登場人物たちを活き活きとさせることに成功している。
    反原発で市長選挙に出馬する高校の同級生だったやり手弁護士と、元公安の主人公。脇役ながら、魅力的なヤクザまで、そのひとり一人の人物達が皆、いい。
    やはり秀逸なのは引退した主人公の父の形見でもあるサラブレッド、ガイウス・ユリウス・カサエルがいちばん美味しい脇役なんだろうな。

  • 今回は主人公死ななかった。

  • 和泉の不器用な生き方に思わず応援したくなる。やくざの古沢との関係も微妙な信頼関係の上に成り立っていて面白い。

  • 2015/06/02
    移動中

  • 舞台は北海道の小さな街で雪かきが生活の一部になっている。原発で経済が成り立っていた町は原発が停まると金が回らなくなる。そこでの市長選挙。原発による利権がらみの馳ワールド。ガイウス・ユリウス・カエサル実に良かった。

  • 原発利権絡みの選挙のお話でした。
    選挙戦真っ只中でたいへんタイムリーに(笑)
    長編好きで京極夏彦作品どんとこいな私ですが、もうちょっと端折ってもいいんじゃないかなあと思ってしまいました。
    友香と碧のエピソードや古沢親子エピソードは特に要らないよなあ。
    おまけに馬の長い名前連呼もいただけない。。。。

  • テンポがあって面白かった。俺は極道だから、普段は泣かない。泣けない。だから、泣きたくなると、この映画を見るんだ。こんな国民など、こんな国など、滅びてしまえばよいのだ。逃走時のガイウス・ユリウス・カエサルかっこいい。

  • #読了。北海道 道南市。反原発を掲げ、元公安警察の和泉の同級生が市長選に立候補する。利権を手放したくない賛成派との間にトラブルを抱えながら、和泉は対峙するが。社会派問題に加え、同級生の殺人事件などミステリ要素も。ヤクザの古沢と元競走馬がいい存在感を出していた。

  • 「現実とフィクションの区別がつかなくなり云々」と“識者”の先生がコメントしてたりすると「けっ」とか思っていたけれど、この小説のリアリティーは何だ?人物は勿論、地名も架空のものだと判っているのにまるでノンフィクションを読んでいるかのような。
    道南の“原発の町”にて、3.11後初の知事選に人権派の弁護士が反原発の立場で立候補することになる。参謀になるのは高校で同級生だった工務店の社長と元公安刑事だった主人公。「勝てる訳がない」選挙に保守は陣営が牙を剥く。
    問題となる殺人事件の真相はちょっと陳腐だったけれど、その後のエピローグの結び方が上手かった。

  • 最近の作品はエグさを抑えてるね。かといってつまらないわけではない。エンディングも馳作品にしてはハッピーなんじゃないかな。原発に対する現実と葛藤が表現されてるね。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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