「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

  • 集英社 (2016年5月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784087807912

作品紹介・あらすじ

敗戦の総括、集団的自衛権、表現の自由、労働・雇用問題…。世界標準からかけ離れたニッポンの「リベラル」に、本当のリベラリストはうんざりしている。まっとうなリベラリズムを再生するための社会評論集。

感想・レビュー・書評

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  • ブラックな文体に定評のある橘玲の新作です。
    いつも全面的に賛成!とは思わないものの、自分自身の思考の凝り固まりをほぐすとか別の目線が欲しい時に読むと、もっと違うタイプの本を読んで考えなおそうかな。という一助になります。

    今回も最初の章から、地雷原な「沖縄戦における集団自決」や「従軍慰安婦」などの題材を題材に斬りまくっております。

    どの章もピンと来る記述が要所要所であったのですが、全部上げているとキリがないので、最初の章でインパクトが有ったところだけ、書いておきます。

    (戦前の日本軍)市民の盾となって戦ったことがない。沖縄の「平和主義」にリアリティがあるのは「軍は自分たちを守ってくれない」という悲惨な経験に裏打ちされているから。
    なんて書かれてる部分などは、色々な思考が頭のなかをぐるぐる周る感じでした。

    1冊全体に貫かれているテーマとしては、
    ただの理想主義に走るのではなく、現実を見据えた具体的な行動を。と言われているような気分になりましたけど、多分気のせいだと思います(笑)。

  • 橘玲、安定の時評。
    本人は我こそは「リベラル」であると自任しているが、その意味は「自由」を何より尊び、国家が自分の人生に介入するのを嫌い、その代わり、責任を負うということ。言い換えればかなり徹底した「自己責任」論者。

    ではうさんくさい「リベラル」とは?
    理想(きれいごと)を主張するがゆえに無謬性に縛られている言動をするひとたち。

    冒頭の「沖縄戦における日本軍」悪玉説の徹底した再検証は必読。同時に、非正規労働の不当な扱いを徹底的に糾弾。

    思考を自由にできれば、右にせよ左にせよ「わかりやすいがうさんくさい」物語から解放される、ということがよくわかる。

  • 日本の社会で「リベラル」を名乗る人たちが、世界標準のリベラリズムと如何にかけ離れているか、また、日本の「リベラル」がどこで失敗したか、どのように立ち振る舞えばよかったのかが書かれている本。

  • 「日本のような成熟した国家では、誰が政権の座に就いたとしても政策の選択肢はほとんどないのです。」

    沖縄の話は知らなかった。鵜呑みにするのはまずいが、とても勉強になった。そこに、軍令はなかった。

    リベラルとは何か。リベラルのレッテルを貼られるとリベラルになるのか。

  • タイトルしか読んでいないが、もう本著を読むことはないだろうと思うのでコメント。

    本当のリベラリストと言っているが、マイケル・サンデルに言わせてみればリベラリストもリバタリアンもクソだと言っていた。わたしもそう思う。
    かといってコミュニタリアリズムが全て正しいかと言われると、うーんとなるが、少なくとも現代の日本(2025年現在)には、共同体主義やナショナリズムは強く必要ではないかと感じ始めてきた。
    したがって、サンデルの著者を再読するのがよいだろうと思う。

  • 覚せい剤じゃなくてもみんな何かに依存している

    けっきょくのところ、すべてのひとが、多かれ少なかれなにかに依存して生きているのです。私たちは、そんなに強いわけではありません。

  • 日本のリベラルがどう迷走したかわかる本。週刊誌?をまとめたやつっぽい。サービス残業は現代の奴隷制でそれを一掃するには経営者に懲役刑を科せばいいだけ。というのは面白い解決法。ドラッグは合法化しよう☺️

  • 金融本では学び多く多数の著作を読ませていただいたが、本作はこれまでとは趣向が異なり議題が重く社会的な内容でした。コロナ禍で感じた現在日本への不安の根幹にあるものを、更に深掘りした内容かもしれない。この思想が根底にあったからこそ、著者の国外資産退避の提案や志向が生まれたように納得できました。

  • 2015年に安保関連法が改正されてしまったタイミングで民主主義に関する書籍が多数出版され、そのうちの一冊として購入したがしばらく積読になっていた

    ロシアがウクライナに侵攻して、また民主主義的理性の限界が議論になるかも、と思い読んでみることにした

    最初の沖縄「集団自決」に関する内容には圧倒される
    恥ずかしながら知らなかったことが多数あり、とても勉強になった
    著者が批判する「リベラル」が報道機関による報道を想定していることも分かった あまり具体的な学説は想定してなさそう

    安倍政権の政策には積極的な評価をしていたように思える記載が多い気がした モリカケ問題や統計偽装問題が判明する前に出版された本なので、今でも同じ評価なのかは気になる
    原発の津波対策における国会の答弁、オリンピック誘致における虚偽の説明など、「リベラル」が安倍元首相を特に批判している問題に触れてないのが気にかかる

    外交問題、安全保障問題をゲーム理論で説明するのは強引な気がする 施政者が必ずしも合理的に判断することを期待できないからこその自由主義、立憲主義のはずなのに

    福祉国家を差別国家を断定するのには強い違和感がある 北欧の福祉の財源が必ずしも税金だけではないことも看過してる

    本文では、個人の尊厳よりも社会全体や権威を重視する権威主義的な考え方に近いと思われる主張もあったけど、エピローグでは正義の視点から権威主義的な疑いを払拭してくれて安心できた

    流し読みでは理解できないところもあった また読み直そう

  • 何時もながら筆者の刀の切れ味には快感すら覚える。ニュースを見て、マスゴミでうんざりして、タレントの政治や気取りの迷走を見て、頭の中でぐるぐる回るむかつきを、スパッ

    無論、突っ込みたくなるところもあるし、そこまで言うかぁの類もある。しかし、現実を見ているのは認識できる。

    2016年刊行だから、ニュースとは言わずオールドズの出来事を取り上げているが未だにグダグダが続いている事象もあり、極めて日本的な浪花節なんかなと感じた。
    国際的にも、そう思われている・・的なコメントもあり、母ぁと。

    戦犯安倍の事後処理がどうなるか岸田の手腕を観たいところだが、期待できそうもない方向へ舵が向きつつあるし、安倍の所業の酷さが国賊レベル・・税金を返せ的で。

    今年は野党のリーダーがやっとというか、ついに変わり、自民一党独裁に道メスが入るかも見もの・・だが・・変わらないかな。
    そして30年間ねむった平均賃金とOECD先進諸国中最下位の女性の地位・・挙げればきりがないが雇用情勢に関してのコメントは頷くものばかり。

    固まった頭に爆破仕掛けるにはいい読書だった。

  • 今更言うまでもないが、非常に合理的で論理的にいわゆるリベラルと呼ばれる人々の考え方や行動を分析している。また本来のリベラルと呼ばれた人々と現在のリベラルと思われる人々の差についても書かれてあり、非常に興味深い。まああまりこの人はリベラルだから、こう考えるべき・こう発言すべきと人を型にはめたり、型にはまっていないことを糾弾することに意味があるとは思えなく、また過去の行動・発言と現在で首尾一貫性がなかったとしても、それはそれで考え方が変わったのかもしれないという捉え方もできるとは思うが、確かに既存の事象に関してダブルスタンダード(なのかマルチプルスタンダードなのかわからんが)であるということは、滑稽に思えるのも確か。

    沖縄の自決が軍令か否かを時系列で追っていくあたりは非常に興味深い。いろいろな思惑が混じり合い、こういう事実があったとされていく過程を見るようだった。また日本で女性の地位が上がらない理由を男女差別というよりは、長時間労働をコミットできることを昇進の条件となってしまっている事実と子育てによって難しくしてしまっていることであるとしている視点も非常に興味深い。

    P.83
    社会心理学者のロバート・アクセルロッドは、「囚人のジレンマ」と呼ばれる協力と裏切りゲームを繰り返した場合、どの戦略がもっとも効果的かを調べるため、心理学、経済学、政治学、数学、社会学の5つの分野の専門家を世界じゅうから集め、コンピュータ選手権を開催しました。
    選手権に挑戦した天才たちは、さまざまな戦略を持ち寄りました。相手に裏切られも協力するお人好し戦略、逆に、相手が協力しても裏切る悪の戦略、裏切った相手には徹底して懲罰を加える道徳的戦略、ランダムに協力したり裏切ったりする気まぐれ戦略、さらには過去のデータから統計的に相手の意思を推察し、最適な選択をする科学的戦略・・・。ところがこの競技を制したのは、全プログラムのなかでもっとも短い「しっぺ返し戦略」と名づけられた単純な規則だったのです。
    しっぺ返し戦略は、次のふたつの規則から成り立っています。
    ①最初は協力する
    ②それ以降は、相手が前の回にとった行動を選択する
    しっぺ返し戦略では、とりあえずどんな相手でも最初は信頼します。それにこたえて相手が協力すれば信頼関係をつづけ、相手が裏切れば自分も裏切ります。いちど裏切った相手が反省協力を申し出れば、ふたたび相手を信頼して協力関係に戻るのです。

    P.114
    軽減税率の導入を強硬に主張する公明党は「このままでは支持者が納得しない」といいますが、国民にものの道理を懇切丁寧に説明し、納得してもらうのが政治家の務めのはずです。それをあっさり放棄して不合理な制度をごり押しするのでは、なにを目的に日本の政治に関与しているのか疑問です。

    P.118(同性婚の婚姻合法化に関連して)
    経済学には「パレート最適」という考え方があります。「誰かの効用を犠牲にしなけrば他の誰かの効用を高めることができない状態」と定義されますが、逆にいうと「誰かの不利益にならずにいまより幸福になれるなら、それは社会にとってもいいことだ」ということです。

    P.126
    野生のチンパンジーを観察していた動物学者は、彼らが集団で弱い群を襲うことを発見しました。チンパンジーの攻撃でオスを皆殺しにしてその肉を食べ、メスの抱いていた赤ん坊を食い殺してから性交を行います。授乳中は生理が止まって妊娠できないからで、赤ん坊殺しは自分の遺伝子を後世に伝える”進化論的に合理的な”行動です。
    チンパンジーと遺伝的にきわめて近接したヒトのオスにも同様の行動原理が埋め込まれていることは、古代から連綿とつづく戦争の歴史を振り返れば一目瞭然です。鉄器という強力な武器を持った弥生人も、自分たちとは姿形の異なる縄文人を敵とみなして殺戮とレイプを繰り広げ、その混血の結果がいまの日本人ということなのでしょう。
    私たちは「自分の感情に正直であるべきだ」と思っています。しかし人種差別や性差別をいまだ克服できないように、進化の過程で生まれたプログラムのなかには現代社会にとってきわめて不適切なものがあります。”あるがままに生きられる世の中”とは、1990年代の旧ユーゴスラヴィアのように、宗教や民族に分かれて再現のない殺し合いがつづく地獄のような世界かもしれません。
    「政治」のもっとも重要な役割は、ヒトの進化論的な歪みを矯正し、差別や暴力を抑制することです。それに比べれば景気がいいとか悪いとかはどうだっていい話ですが、残念なことにこの優先順位はしばしば逆転してしまうようです。

    P.155
    「自分の主張が正しいのは、自分が相手の立場になっても、その主張が正しいと納得できる場合だけだ」ということになります。
    人種差別するひとは、自分が外国に行ったときに、「お前は黄色人種だからあっちの汚いトイレを使え」と言われて、「わかりました!人を人種で差別するなんて、なんて素晴らしい社会なんでしょう」と素直に納得できなければなりません。

    P.222
    社会的な動物であるヒトは、噂を極度に気にするように進化してきました。いつもテレビで見ている芸能人を近しい存在のように錯覚するのも、自分を「被害者」と一体化して「加害者」に怒りをぶつけるのも人間の本性です。(中略)
    「道徳」の特徴は、なにが不道徳か知っていても、その理由を説明できないことです。(中略)
    「不道徳な行為」に共通するのは、他人になんの迷惑もかけていないことです。しかしそれでも、ひとびとはそれが断罪されて当然だと考えます。(中略)
    他人を道徳的に攻撃すると、脳の快感を司る部位がはげしく活性化することがわかっています。道徳は最大の娯楽のひとつですが、それを認めるのは不都合なので、ひとびとは怒りによって自分の「不道徳」を正当化しようとするのです。

    P.227(中国産食材が安全な理由について)
    日本の消費者が不安を抱けば抱くほど行政の輸入食品への規制が厳しくなり、食材の輸入・販売業者が安全ん確保に躍起になるからです。
    冷凍餃子事件の起きた2008年5月までの1年間で、日本では1292件の食中毒事件が起きていますが、このうち中国産食品が原因とされたのは冷凍餃子による3件だけで、他はすべて日本国内に原因がありました。

    P.232(井上達夫氏)
    井上氏は、リベラリズムの近代主義の思想で、その歴史的起源は「啓蒙」と「寛容」にあるといいます。
    「啓蒙」は理性によって因習や迷信を打破し、その抑圧から人間を開放する思想運動、「寛容」は、宗教改革で始まったカトリックとピューリタンの血なまぐさい戦争を終わらせるための共存の技術で、これを両輪としてリベラリズムは「正義の思想」を成熟させてきました。
    しかしいまや、リベラリズムは啓蒙を捨て、寛容d変えを強調するようになったと井上氏は嘆きます。

  • 難しくて若干斜め読みとなってしまった。

  • 日本型リベラルが世の支持を受けない理由として、そのダブルスタンダードぶりを指摘している。

  • 自称リベラルのダブルスタンダード

  • ●日本の「リベラル」は胡散臭いと疑うようになりました。世界標準(グローバルスタンダード)のリベラリズムとはかけ離れた、日本の独自の奇怪な思想であることを知ることになります。しかし「リベラル」を批判すると、問答無用で「意欲」のレッテルを貼られ「知識人」から排除される応募がまかり通ってきました。こうして、「リベラル」に疑問を持つリベラリストは、日本では居場所がなくなってしまったのです。
    ●沖縄における集団自決の真実。リベラルはなぜ取材をしなかったのでしょうか?取材すれば不都合な事実が出てくることをうすうす知っていたからでしょう。それによって「日本軍=加害者」「住民=被害者」と言うわかりやすい構図が崩れることを恐れたのです。
    ●囚人のジレンマで、1番効率の良いプログラムは「しっぺ返し戦略」①最初は協力②それ以降は相手が撮った行動を選択
    これを安全保障に応用すると、①平和主義を宣言する。②武力攻撃を受けた場合は反撃する。③相手が撤退したら平和条約を締結する。
    つまり②のためには軍事力が必要。
    ●いわゆる従軍慰安婦問題、1995年村山内閣によってアジア女性基金による解決が目指されました。それが日本のリベラルと韓国のナショナリストの活動家によって潰されてしまいます。彼らがなぜ反対したかはよくわかります。この問題が解決してしまうと、自分たちの独善的な「正義」を気分良く振り回すことができなくなってしまうのです。

  • 週間プレイボーイでの連載コラムを集めたもの。
    この人は、主張があまりぶれないので、集めてもワリと形になる。
    知識として新しい物はあまりなかった。

  • リベラルと称す人々の胡散臭さ、ダブルスタンダードが、嫌というほど書かれています。
    冒頭の沖縄戦の話は有名ですが、それにしても、取材のずさんでひどいこと。
    結論ありきの取材や、自分たちの主張ありきで、事実を捻じ曲げても無理やり結論に結び付けるやり方は、ひどいものです。
    普通に、論理的に考えれば分かりそうなものですが、いったん偏った考えに取りつかれると、なかなか抜けられないのでしょう。

  • 最初の沖縄の話は圧巻。
    本書だけを鵜呑みにするのも、またそれは短慮となるだろうが、デマ、嘘の歴史というのがどうやって作られていくのかというのを理解しておくことは必要。
    これほど大きなことではないにしても、自分になにかふりかかってくるかもしれない。

    最終章で引用された、井上達夫氏の『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』が気になる。
    次読む本の候補にしよう。

    正義の基準 p233
    ・反転可能性
    自分が受け入れられないことを相手に課してはいけない
    ・ただ乗り(フリーライド)の禁止
    コストを払わずに利益だけを得るのは不正
    ・二重基準の禁止
    ダブルスタンダードを使ったご都合主義は許されない

  • 社会
    政治

  • 週プレの連載をまとめたものなので章ごとのまとまりに欠ける印象はありますが、著者独自の視点になるほどと思うことが多く、自分がいかに思考停止状態になっているか気づかされます。
    特に沖縄戦に関する部分の密度が濃く、ここだけでも読んだ甲斐がありました。

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著者プロフィール

橘 玲(たちばな・あきら):作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』(幻冬舎)が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮社新書)で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン--世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチャルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論――「解決できない問題」には理由がある』(集英社)等多数。

「2024年 『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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